マリンボーイ   Marine Boy  
 原題:マリンボーイ 마린 보이(マリン ボイ)<2009>

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生 存率0%の危険な運搬、マリンボーイは必ず死ぬ!

世界最高のダイビングの名所パラオ島を夢見て、韓国を離れる計画を立てた、元国家代表水泳選手ジョンス(キム・ガンウ)。昼間は水泳講師、夜は賭博場で ラッキーガイの名声を受けていた彼 は、「一攫千金」を夢見て飛び込んだ賭博場で、数億の借金を作り私債業者から命を狙われるようになる。

そんなある日、わけも分からず、正体不明の一行 に拉致されたジョンスは、冷たい海に投げ込まれる絶体絶命の危機に陥る。

海から脱出したジョンスを待っていたのは、麻薬ビジネスの大物カン社長(チョ・ジェヒョン)。彼は賭博の借金を帳消しにする条件で、ジョンスに危険な提案 をする…。

マリンボーイを取り巻く秘密取引、生き残るためには誰も信じるな!
【予告編】
監督 ユン・ジョンソク <2009>マ リンボーイ

出演

キム・ガンウ

<2002>コー スト・ ガード、<2003>シル ミド、<2005>台風太陽 ~君がいた夏~、<2005>野 獣と美女
<2007>人類滅亡報告書[制作中断]、<2007>京義線、<2007>食 客、<2007>仮面
<2008>純情漫画(特別出演)、 <2009>マリンボーイ、<2009>五感図 segment 2 <私、ここにいます。>、
<2009>五感図 segment 4 <終わりと始まり>

チョ・ジェ ヒョン(曺在顕)

出演作品一覧
イ・ウォンジョン <1999>NOWHERE  情け容赦 なし、<1999>ア タック・ザ・ガス・ステーション!、 <1999>反 則王
<2001>風林髙、<2001>達 磨よ、遊ぼう、< 2002>おもしろい映画、<2002>ライターをつけろ、
<2003>天国からの手紙、<2003>ザ・ブライド 花嫁はギャング ス ター2
<2003>オー! ブラザーズ、<2004>達磨よ、ソウルに行こう、 <2004>ラブリー・ライバル
<2005>チャーミング・ガール、<2005>ハノイの花嫁、<2006>救世主(特別出演)<2006>多 細胞少女
<2006>カンナさん大成功です!、 <2007>ハーブ、 <2007>里長と郡守、<2007>飛べ、ホ・ドング
<2008>ダメダメ宗婦伝(ナルラリ宗婦伝)、 <2008>マリン・ ボーイ、<2008>1724 妓房狼藉事件
<2009>チョン・スンピル失踪事件、<2009>ハヌルとパダ(特別出演)

パク・シヨン

<2006>九 尾狐(クミホ)家族、<2007>愛 サラン
<2008>タチマワ Lee -悪人よ 地獄行急行列車に乗れ!、<2009> マリンボーイ

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【レビュー&ネタバレ】
2009年2月公開。観客動員数は、約83万人。
100万人すら突破できないものの、スター俳優不在でこの数字ですから、
多少なりとも楽しめるのでは?

この映画も、”お蔵入り”とまではいかないかもしれませんが、
しばらく公開されませんでしたね。
なので、ちょっと期待できないかな.... と不安ではありました。

仁寺洞スキャンダル梨泰院殺人事件と、続けざまに犯罪スリラーを鑑賞し、
ひじょーに不完全燃焼で悶々としており、
また懲りずに犯罪スリラーに手を出してしまいました(^-^;
でも、この三作の中では、一番面白かったですね。

とはいっても、ほどほどには面白いですが、ヒット作に比べればショボいです。
スリラー好きでなければ、敢えて選ぶ必要もないと思います。

犯罪スリラーというよりも、犯罪サスペンス?うーん....
スリラーはスリラーですが、
練りに練られたスリラーで、”追い”、”追いかけ”などという単純なスリラーではなく、
本格的で、ウィットに富み、絡みに絡み合った展開。
けっこう先の読めない展開で、驚かされては感心させられます。

すべてが明らかになった後....
ラストに向けては、ちょーっと陳腐だったかな。

生 存率0%の危険な運搬、マリンボーイは必ず死ぬ!

これはかなりそそられるキャッチですよね。
でも、期待するほど危険な運搬には思えない描き方です。
運搬すること自体に”スリル”を感じるシーンはない。
と言った方がいいでしょうか。

何となく、韓国と日本の間を全て泳いで渡って、
そのために死んでしまうのでは?
というストーリーを思い描きそうですが、全く異なります。
”騙し騙され”のストーリーです。
そして、愛と、誤算。
”死にたくなければ、誰も信じるな!”
そっち系のストーリー。
その”騙し合い”が見事で、見所ですね。

ユリがジョンスに惹かれていく過程も、短期間なのに不自然でなく、
映画とうまく絡み合って、楽しめます。

確かにマリンボーイは生存率0%のキケンな仕事であることは間違いなく、
なぜ生存率0%なのかは、映画をご覧になればわかります。

ラストはきっと、大部分の方は満足かもしれません。
けどmocaは、感情移入すべき人を間違えちゃって、胸が痛くて仕方ありませんでした(笑)
それも、中途半端な”お涙ちょーだい”なもので、
泣けるに泣けず、涙が出れば少しはスッキリするものの、
胸が痛いだけで、しばらく↓落ちたままでした.....
moca的には、「それはあんまりじゃ!」というラストで、ラストを変えたのかな?
と、シナリオを読んでみましたところ、
シナリオより、まだマシになっていることがわかりました.....
それは、あまりにも情け容赦なさすぎじゃないかい?
”悪人”の中にも、”人情”や”愛”はあるっていうのに.....
しかも、罪がないのに苦しんだ人に対して、ちょっとあんまりすぎるわ........
少しは、その人のために涙を流してやれよー

シナリオはラストしか読んでませんが、けっこう変わってます。
(っていうか、カットしただけか)
シナリオ通りじゃ、あまりにもクサすぎです....


【ムン・ジョン ス】
元国家代表水泳選手
キム・ガンウ
【カン・マノ社 長】
国際的麻薬密売大物
チョ・ジェヒョン
【キム班長】
元麻薬取締班長
イ・ウォンジョン
【チェ・ユリ】
チェ・ドウクの娘
パク・シヨン
 
【チョ室長】
カン社長の部下
オム・ヒョソプ
【バウ】
カン社長の部下
チョ・サンフン
【パク博士】

オ・グァンノク
 

キム・ガンウの鍛えられた体は見事で、モムチャンに興味のないmocaでも、惚れちゃいます。
キム・ガンウのキャスティングは、”体”で決まったのでは?と、思うほど。

チョ・ジェヒョンは完璧ですね。

イ・ウォンジョンは、好きな俳優だけに気持ちはビミョー。
コミカルな役の方が、やっぱりハマりますね。

パク・シヨンはとにかく美しい!
こんなに美しいなら、整形美人でもいい!!
目をつぶってまでも美しいんですもの、ため息だわ......

青い自転車のオ・グァンノクは友情出演。 最近、カメオが多いですね。
そして、同じくカメオの二人。


ハウス(ギャンブル場)でジョンスを諭すギャンブラーに、友情出演のチェ・ジョンウ。
日本の麻薬密売組織の鈴木には、特別出演の白竜。
この前も白竜見たのに、またかよ!という感じ....
よく見ますよね....
発音が悪いから、勘弁して欲しいのよ。
韓国語字幕見なくちゃならない日本語なんて意味あんのかー!!


↓  結末までネタバレするので、ご注意を ↓




世界最高のダイビングの名所パラオ島。
ジョンスは韓国を抜け出し、
パラオで自分の店と船を手配し、
来週パラオへと出発する予定だ。
切符はもちろん、片道切符。



ジョンスは、パラオでの店と船の残金を工面するため、
一攫千金を狙い、ハウス(賭博場)へやってくる。
携帯電話の画面に映る相手のカードを盗み見しながら、
フルベッドでコールするジョンス。
負ければ、2千万円近い負債を抱えることになる。

賭博の相手は、ジョンスを諭す。
お前はまだ若い。賭博で失敗するなと。
しかしジョンスは聞き入れない。
ジョンスはエースのツーペア。
相手は何と!フルハウス。
結局ジョンスは負けてしまい、
2千万近い借金を抱えてしまう。

ユリの部屋を果物カゴを持ち訪れるカン社長。
すると、出てきたのは半裸の男イ・ジホ。
「彼氏か?」
カン社長はジホに尋ねる。
「いいや、昨日知り合ったばかりだ」
ジホは答える。
「ユリは寝てる。朝まで飲んだから」
ジホはカン社長に告げる。
「伝言は?」
とジホは尋ねるが、
カン社長は「また会うだろう」と断ると、
ジホはドアを閉めてしまう。
カン社長は、手に持ったままの果物カゴを思い出す。
果物カゴを渡そうと再びチャイムを鳴らすと、
今度はユリが出てきた。
驚くカン社長。
「俺が会いに来ないと、顔も見れないのか?」
カン社長はユリをとがめる。
「どこかに逃げるとでも?」
ユリは答える。
「ちゃんと飯は食え。顔がやつれている」
カン社長はそう言って、果物カゴを渡す。
「ちょっと待って」
と、ユリは一旦部屋に戻る。
「限度額超過」
と、ユリはクレジットカードを差し出す。
「事務所へ来い」
と、カン社長は告げるが、
ユリは「今取り替えて」と、反発する。
「事務所に来てからだ。お前に話もある」
と、カン社長は去って行く。


スイミングスクールがジョンスの職場。
そこへ、貸金業者のイム部長が部下を連れやってくる。
賭博で貸した借金の督促だ。
ジョンスは両手を縛られ、プールの中に顔を埋められる。
「返せばいいんだろう!返してやるよ!この野郎!」
ジョンスは強気で答える。
しかしイム部長は、そんな言葉は当てにしていない。
「心臓、肝臓、腎臓二つに、目玉も二個。六人も救えるな」
と、イム部長は笑う。
借金のかたに、臓器を売れということだ。
イム部長は、カッターナイフを取り出す。
そこへ、カン社長の部下、チョ室長とバウが現れる。
チョ室長は、ジョンスを自分らに引き渡してくれないか?と、
イム部長に懇願する。
イム部長が断ると、チョ室長の命令でバウが襲撃する。
次々とヤラれていくイム部長の部下ら。
バウの強腕には、誰もが赤子同然だ。
チョ室長はジョンスに言い放つ。
「お前は俺と話をしよう」
「わ、私ですか?」
ジョンスは状況が飲み込めない。

ジョンスが連れて行かれたのは海。
「話をしよう」どころではない。
ジョンスは船につながれ、海の中を引きずり回された。
「命は助けてください」
ジョンスは懇願する。
「考えてみろ。殺すなら、助けるか?」
チョ室長は言い放つ。
「泳ぎは得意か?」
チョ室長は尋ねると、ジョンスの足にくくられた縄につながれたコンクリートの塊を海に投げ入れる。
コンクリートの重みで、海へと沈んでいくジョンス。
「5分で引き上げろ」
チョ室長はバウに命じる。
「また死にますよ、3分にしましょう」
バウは言う。
「じゃあ、4分だ」
チョ室長はバウに告げる。
もうすぐ4分。
バウがジョンスを引き上げる準備にかかると、
何とジョンスは、自力で船へ上がって来た。
カン社長の所有する地中海風レストラン「マレ」の厨房。
ジョンスは、今度は頭から紙袋を被せられ
座らせられていた。
その隣りにも、動揺に紙袋を被せられた男が一人。
二人の座る下に、ビニールを敷き終えると、
バウは二人の紙袋を外す。
ジョンスは、置かれている状況に動揺を隠せない。
隣りに座らせられているのは、
ユリの部屋から半裸で出てきた男イ・ジホだった。
チョ室長は二人に語りかける。
「女(기집:ギジプ)」と、ジホを見、
「賭博」と、ジョンスを見るチョ室長。
悲惨な人生だな、と、チョ室長は嘆く。
(ここのやりとり最高!素直に挨拶する二人ったら....)

※기집(ギジプ)とは「女(여자:ヨジャ)」を見下す場合に使う言葉ですが、卑下するのとはまた違います。
日本で言えば、「悪女」のようなものでしょうか。


厨房にカン社長が入ってくる。
ジホを見るなり「こいつは誰だ?」と、尋ねる。
「ついでに始末しようかと」
チョ室長は答える。
「調べろって言っただけだ。早まったことを」
カン社長はチョ室長を叱責する。
「解いてやれ」
カン社長は、ジホを解放するよう命じる。
「今回のことは寛大に理解し、
お互い、二度と会わないようにしよう」
カン社長はジホに語る。
チョ室長のミスでこんな目に遭わされたことを知ると、
ジホは急に強気になる。
「お前らがあの女のスポンサーか?
あんなボロ雑巾のような女を囲ってる分際で、
誰が誰を助けるだと!」
と、怒鳴りつける。
「ボロ雑巾のような女」
カン社長はその言葉に逆上し、
冷凍庫から腕ほどの大きなソーセージを取り出し、
ジホを撲殺してしまう。
隣りで見ていたジョンスは、震え上がる。
「金銭関係で知り合ったが、男同士の話もできそうだな」
カン社長はジョンスに尋ねる。
日本に遣いに行ってくれれば、
借金は帳消しにしてやると、カン社長は告げる。
「選択するな。
お前が一文無しになった理由がわかるか?
選択したからだ。
強者が強要したら、従うしかない」
ジョンスに選択の余地はなかった。

(このシーンもブラックジョークが効いてて最高)
カン社長は日本へ向かい、日本のヤクザ鈴木に会う。
麻薬密輸の相談だ。
鈴木は、麻薬の密輸方法をカン社長に語る。
麻薬をビニールで包み、それをソーセージのように結び、
飲み込むのだと。
そして、糸の先端を奥歯に結びつける。
たまには船の中で吐いたりすると。
ある者は、その長さが10mを越えたこともある。
ある者は、腹の中でビニールが破け、
麻薬過多で死んだ者も。
その次によく利用したのが肛門です。
一日絶食し浣腸するんです。
そして、麻薬をギュウギュウ詰め込む。
その量は半端じゃない。
だが、肛門というものはとても弱く、
筋肉でも傷つけば、糞を垂れ流し続けることになる。
鈴木は笑う。
そして彼らは、取締りに追われれば、
迷わず海へ飛び込む。
玄界灘、香港沖合い、フィリピンでも.....
誰も戻ってくるヤツはいませんでしたよ。
たまにニュースを見ると、
人喰い鮫のニュースをやってますが、
飛び込んだヤツらは間違いなく被害者ですよ。
人喰い鮫が欲しいのは人肉ではなくヤクなんですよ。
人は彼らを、“マリンボーイ(Marineboy)”と呼びます。

「今は個人で大量に運ぶのは難しい」
鈴木は語る。
「今回のポイントは、税関を通らないことです」
カン社長は告げる。
「ケコがいたら、簡単に行動に移せるんですが....
連絡は取れませんか?」
鈴木は尋ねる。
「ケコは要らないです」
カン社長は、意味ありげに言い放つ。
「では、誰か代わりのマリンボーイをみつけたんですか?」
鈴木は驚く。
「みつけました」
カン社長は答える。
「そうですか」
鈴木はカン社長と乾杯する。
「ところで、そのマリンボーイは今どこに?」
鈴木は尋ねる。
「おそらく、今頃どこかに逃げているでしょう」
カン社長は、あっさりと言い放つ。
カン社長の言葉通り、
ジョンスは国外逃亡を企てていた。
すぐさま荷物をまとめ高飛びするため空港へ向かう。
しかし、出国手続きをしている最中、
なんと、ジョンスは逮捕されてしまう。
違法賭博常習犯。
ジョンスは、「指名手配犯リスト」に挙がっていた。
「賭博が罪なんですか、なぜ逮捕を?全部獲られたのに」
ジョンスは訴えるが、
麻薬捜査班を名乗るキム班長は、予想外の話をする。
「お前に興味はない」と。
ジョンスがカン社長に会った後、
すぐに荷物をまとめて出国しようとした。
カン社長と何を話したか話せ、と。
「日本に遣いに行くよう頼まれただけですよ」
ジョンスは訴える。
「最近おとなしかったカン社長が、
新種の麻薬のことでヤクザと頻繁に会っている」
キム班長は告げる。
「麻薬の運び屋だなんて証拠はどこにあるんですか」
ジョンスは訴える。
「お前はカン社長にひっついて、様子を探ればいい。
ようく考えて、選択しろ」
キム班長は言い放つ。
ジョンスは、最悪の選択を迫られた。
カン社長と警察....
どちらを選ぶべきか.....






ジョンスはカン社長の元を訪れる。
「日本に行けば、
本当に借金を帳消しにしてくれるんですよね」
ジョンスは念を押す。
「私は金融人で、詐欺師ではない」
カン社長は答える。
「だったら、それをどうやって証明するんですか?」
ジョンスは更に念を押す。
「だったら、お前は俺を裏切らないと、
どうやって保証する?」
カン社長は、逆にジョンスに問う。
ジョンスは言葉に詰まる。
考えた末に、ジョンスは答える。
「俺はまだ若い。残りの人生を逃げ隠れして生きたくない」
ジョンスは答える。
「そう、そうだろう」
カン社長は、ジョンスの出した結論に満足そうに頷く。
そこへ、カードを取替えにユリがやってきた。
ジョンスは一目で、殺されたジホの相手の女だと察する。


カン社長の事務所から出てきたユリに警察が声をかける。
「イ・ジホ氏が変死体で発見されました。
お聞きしたいことがあります」と。
偶然それを聞いてしまったジョンスは動揺し、
小銭を落してしまう。
小銭を拾い上げる刑事。
ジョンスは礼を言い立ち去ろうとするが、
突然ユリがジョンスに車のキーを投げて寄越す。
「待てるわよね?」と。
「私ですか?」
ジョンスは驚く。
ユリの車を運転し、警察から自宅まで送ることになってしまったジョンス。
他人がそこまでしたのに礼一つ言わないユリに、
ジョンスは腹が立ち、ジホのことを責める。
罪悪感はないのかと。
浮気した相手が、いわれもなく殺されたのに。
「浮気?私がカン社長の女とでも?」
ユリは尋ねる。
「じゃあ、娘さんですか?」
ジョンスは茶化す。
「こんな高級車に家まで与えられ浮気するなんて、
人間の道理ではないだろう」
と、ジョンスは言い放つ。
それを聞いたユリは、
バッグでジョンスの顔を殴打する。
顔を思いっきり殴打されたジョンスは、鼻血まで出す。
一旦はエレベーターを閉めかけたユリだが、
仕方ないという表情で、再びエレベーターを開け、
「血を拭かないと。510号室よ」
と言い放ち、先にエレベーターで上がって行く。
ユリは身だしなみを整え、ジョンスを待つ。
なのに、ユリはジョンスにつれない。
そんなユリにジョンスは言い放つ。
「俺は何をしてるんだか。
先週ここを発ち、今頃パラオにいるはずなのに」
パラオを無人島だと思っているユリ。
「パラオは無人島じゃない。
本当はパラオを知らないんだろ?」
と、ジョンスは笑う。
「ほら、説明してやる。こっちへ来い」
と、ジョンスは地図の前までユリの手を引く。
少年のような情熱的な目で、
パラオの説明に夢中になるジョンス。
ユリはそんなジョンスを熱い眼差しでみつめる。

ジョンスはユリについて、チョ室長から聞かされる。
カン社長の事業パートナーだったユリの父チェ・ドウク。
事業が最高潮の時、ユリの父は銃で殺害された。
カン社長はユリをアメリカに留学までさせたが、
高校卒業と同時に韓国へ引き戻した。
ユリがヤク中で廃人になっていたからだ。
帰国時、ユリは骨と皮ばかりで食事をしなかった。
唯一口にする食堂があれば、
カン社長はユリのために食堂を買い取った。
するとその途端、ユリは一度も店には行かなくなった。
「一方的な関係だな」
ジョンスは言い放つ。
「いつか双方になるかな」
チョ室長は笑う。


カン社長に何かと反抗的なユリ。
翌日は、ユリの父の命日だった。
無理矢理ユリを墓参りに連れて行くカン社長。
しかしユリは、拝礼さえしない。

墓参りの帰り道。
社長はジョンスに店に来るよう電話をする。
それを聞いたユリは、自分も店に行くと言い出す。
空腹だと。

カン社長は、ユリに殴られたジョンスの顔の傷を問う。
「チンピラに殴られて」
と、嘘をつきながら、ユリを横目で責める。

カン社長が席を外すと、ユリはジョンスに言い放つ。
「そんな傷一つが大事?」と。
「あんたも命を懸けてみれば?」
ユリの言葉がジョンスは理解できない。
「私の家、知ってるでしょ」
ユリは言い放ち、去って行く。
呆然とするジョンス。
それは、自分もイ・ジホのように命を懸け、
ユリと関係を持てと?
ジョンスはユリのレジデンスを訪れる。
ジョンスの来ることを待ちかねていたユリ。
ジョンスが来たことを窓から確認すると、
ロビーまで降りて行く。
「どこに行かれるので?」
ジョギング中のTシャツ姿のジョンスを見た支配人は、
ジョンスを制止する。
そこへユリが現れると、いきなりジョンスにキスをする。
驚くジョンス。
「知り合いでしたか」
支配人は頭を下げる。
「彼氏よ」
ユリはそう言うと、ジョンスの手を取り案内する。
エレベーターへ乗り込むと、
待ちきれないかというように熱いキスを交わす二人。
そして、ユリの部屋で、二人は激しく抱き合う。






恋人となった二人。
ジョンスはユリを海へ連れて行き友達に紹介したり、
「この家と船を買う」
と、パラオのボートハウスをユリに見せ夢を語る。
「行きたい場所はないか?」
ジョンスはユリに尋ねる。
ユリは世界地図である場所を指す。
「ここ以外なら」
それは、韓国だった。
ユリの心を察したジョンスは、ユリに言い放つ。
「可哀想な者同士、出かけよう」と。

二人は、ユリの行きつけのジャズバーに行く。
トイレでバーの女主人が、ユリにタバコを渡す。
箱の奥に白い粉が。
「これが最後よ。カードの持ち主が店に来たわ」
女主人は告げる。
「あんたが鬱になる理由がわかったわ」
女主人はユリに同情する。
「もうウンザリ。何とかしてここを離れる」
ユリは言い放つ。
「そうすべきね」
女主人はユリを励ます。

席に戻ったユリ。
「何に乾杯する?」
ユリはジョンスに尋ねる。
「もちろんパラオだ。夢のために」
ジョンスは答える。
「私の夢は違うわ」
ユリは答える。
「お前の夢は?」
ジョンスは尋ねる。
「覚えてないわ」
ユリは答える。
「一緒に行こう」
ジョンスは告げる。
「ここへ戻らないなら考える」
ユリは答える。
二人は乾杯し、酒を飲み干す。
そして、熱いキスを交わす。

決行が決まった。
ジョンスは、キム班長に報告する。
「カン社長には気をつけろ。ヤツは悪だ」
キム班長は言い捨てる。
「では、キム班長は善なんですか?」
ジョンスは尋ねる。
キム班長は、過去の話をジョンスに聞かせる。

12年前、カン社長は麻薬で摘発されたが、
それが”ケコ(犬鼻)”という麻薬捜査官の車で発見された。
要するに、カン社長の相棒チェ・ドウクと”ケコ”までいる
憧れのチームだった。
その夜、チェ・ドウクは銃で殺され、
”ケコ”は現行犯で逮捕された。
カン社長が保身に走り引き渡したに違いないが、
全く証拠がなかった。

キム班長はジョンスに尋ねる。
「マリンボーイの話は聞いたか?」と。
「いいえ、どうして?」
ジョンスは答える。
「ヤクザらの麻薬を運ぶ息子をそう呼ぶ。
しかし、マリンボーイの存在をなぜ秘密にしたのかな?」
キム班長は、意味深に語り始まる。
「あまりにも重要な役割だから?
笑わせるな。
結果とは関係なく、マリンボーイは全て殺した。
生き残った者が一人もいないということだ。
なぜだかわかるか?
マリンボーイは組織の機密なのではなく、
その機密を知る存在だからだ」
キム班長の話を聞いたジョンスはの心は揺れる。
自分も死ぬ運命にあるのかと....


「あそこ(カン社長のレストラン”マレ”)に戻ればいいの?
それが全てなの?」
ユリはジョンスに尋ねる。
「もしもだけど、俺が行かなければどうなるのかな?」
ジョンスの予想外の発言に、ユリは驚く。
「例えば、お前がここで俺を待っていたり.....
俺たちは逃げるんじゃない。
”ポン”と、消えるんだ」
ユリは悩む。
そして答える。
「待ってる。ここでじっと動かず待ってる」
ジョンスに、カン社長の言う通り日本に行けということだ。
そして、ジョンスをみつめて念を押す。
「必ず、生きて戻ってね」
日が傾き、空気が冷えてきた。
ユリは眠っているジョンスの上着を羽織る。
そしてポケットから、
麻薬捜査課のキム班長の名刺をみつける。」
ユリは驚愕する。
「いったい何者?」
ユリはジョンスの本意がわからなくなる。







ユリはキム班長の名刺の番号に電話をかける。
相手の声を確認すると、
何かを確信したように電話を切る。



ユリはカン社長とのゴルフの約束にワザと寝坊し、
チョ室長と二人きりの場を作る。
ワザと車の中で着替え、チョ室長を誘惑するユリ。
そして、さりげなく尋ねる。
「ジョンスは日帰りで日本へ?」
チョ室長は驚く。
「どうしてそれを?」
ユリは平然とウソをつく。
「社長の机の上で航空券を見たの」と。
「なぜ、日本に?ヤクのために?」
ユリは尋ねる。
「ヤク?何をおっしゃってるんだか」
チョ室長はトボける。
「社長が私には秘密にしろと言ったのでしょ?
あなた(자기:チャギ)は?」
チョ室長は、ユリの誘惑に負けてしまう。
「社長から、何か聞かれたようですね?」
チョ室長は、思わず口が緩んでしまう。
「ヤクの話ですか?」
ユリは尋ねる。
「はい」
チョ室長は、ユリの思惑通りにハマってしまう。
「いいえ!聞いてませんよ」
ユリの言葉に、チョ室長はマズった!というように驚く。
その途端、ユリは運転席にピッタリ寄り添い、
耳元で囁く。
「秘密にしますから、教えてください。
捕まったらどうなるの?」
ユリは、チョ室長の肩にボディタッチする。
「絶対にありえません」
チョ室長は答える。
「もし摘発されても、ジョンスだけが捕まる。
社長には害は及びません。
そのわけは......」

※ ユリはチョ室長のことを「室長は?」ではなく、
「자기(チャギ)は?」と尋ねる。
「자기」とは、いわば「ダーリン」のような意味。
チョ室長は、見事にユリに手玉に取られてしまいましたね。
ユリはゴルフ場で一人きりになった隙に、
ジョンスに電話をかける。
「そのまま聞いてて!
死にたくなければ、社長の言うとおりにして。
あなたを信じてるから、教えたの。
あんたが麻薬を持ち込もうと捕まろうと、私には関係ない。
戻っても、私には連絡しないで」
そう言うと、ユリは電話を切る。
ジョンスを信じたいが、信じられない。
だが、ジョンスを助けたい。
ユリの心は揺れる。
ジョンスは、飛行機で日本に入国する。
そして、取引相手の日本のヤクザと会い、
計画について説明を受ける。
船は23時50分に出発。約束の場所には10分後に到着。
そしてエンジンを切り、しばらく無動力で運航する。
その間、船の後尾にあるハシゴで上がるようにと。
船の後尾には大きなプロペラがある。
巻き込まれれば、体中切り刻まれてお陀仏だ。
そしてジョンスは、約束の品を受け取り海へ向かう。
約束通り船が到着すると、ジョンスは海へダイブする。
乗り遅れれば、日本から韓国まで、
泳いで運ばねばならぬことになり、
プロペラに巻き込まれれば、一貫の終わりだ。
ジョンスは必死に揺れるハシゴを登っていく。
そして、計画は成功。
ジョンスは無事に、約束の品を持ち、
”マレ”まで戻ってくる。
「夜にまた来い。社長から良い贈り物があるはずだ」
と、チョ室長はにこやかに去って行く。



今度はキム班長に報告だ。
ジョンスはキム班長を責める。
「約束を破っていいのか?
品物がすんなり渡ってしまったぞ。
捕まえるんじゃなかったのか?」
キム班長は平然と言い放つ。
「今回は練習だと知らなかったのか?」
ジョンスはユリからの電話を思い出す。
ユリも言っていた。
「今回は、ただのリハーサルよ。気づかないフリして」と。
「今回の練習でルートを確認し、
裏切り者も割り出し、一石二鳥だ。
危うく気づかれるところだった」
キム班長は言い放つ。
「俺は、これからどうすれば?」
ジョンスは尋ねる。
「待つしかない。本当の決行日が来るはずだ」
キム班長は、あっさり言い放つ。
「もう一回やれっていうのか!」
ジョンスは憤る。
夜、約束通りジョンスはカン社長を訪ねる。
「ご苦労だった。約束だからな」
と、カン社長はジョンスの借金の契約書を燃やす。
そして、受け取った荷物を開ける。
中には、銃一丁が入っていた。
ジョンスは呆然とする。
「何だ?」
カン社長はジョンスに言いたいことがあるのかというように尋ねる。
「いえ、苦労して持ち込んだのが銃一丁で気抜けして....」
ジョンスは、言い訳する。
「麻薬でも持ち込むと思ったのか?」
カン社長は尋ねる。
ジョンスは笑って誤魔化す。
「お前は賭博が好きだったな?私と2回賭けをしよう」
カン社長は言い放つ。
「まず第1場。背後に誰かいるそうだ。私の全財産を賭ける」
ジョンスはその言葉を聞き、笑って誤魔化す。
「何をおっしゃるんですか。言われた通り従いました」と。
「確かに完璧にやった。しかし、そこが問題なんだ」
カン社長は、予想外の言葉を話をする。
「お前が通っていたハウスの取締りを知ってるよな?
俺が警察に頼んだ。お前を指名手配し、出国停止にしろと」
それを聞いたジョンスは驚愕する。
「どうしてですか?」
ジョンスは、平然を装い尋ねる。
「お前が逃げるとわかっていたからだ」
カン社長は言い放つ。
「逃げるだなんて。なら、なぜ僕はここにいるんですか」
ジョンスはシラを切る。
「あまりにも私を甘く見過ぎてないか?」
カン社長は言い放つ。
「お前が空港へ入るところまでは見た。
しかし、翌日お前は俺に従うと言ってきただろう?
人が180度変わったように」
ジョンスは追い込まれる。
「はい。確かに空港へは行きました。でも、戻りました。
あの時言いましたよね?
僕はまだ若いので、残りの人生を隠れて暮らしたくないと」
ジョンスは必死に訴える。
「俺も初めは、その言葉を信じそうになった。
しかし、手配中のお前が、なぜ日本に行けたんだ?
今回の仕事は、失敗してこそ正しかった」
カン社長は言い放つ。
ジョンスは、何とか言い訳を探そうとするが、
カン社長はそれを遮る。
「まだ第2場が残っている!
お前がユリと組んだことに、私の命を賭ける」
カン社長は言い放つ。
「お前の手の内を明かせ」
追い詰められたジョンス。



ジョンスは目の前の銃を取り、カン社長に銃を向ける。
しかし銃は、空砲だった。
二人は素手で格闘し始める。
「ユリをどうやって口説き落とした!」
カン社長は言い放つ。
「ユリも、俺を好きだと言ったんだ」
ジョンスは言い訳する。
ジョンスは気合だけは十分だったが、
あっさりノックダウンされる。
気がつくと、船の上だった。

またもやロープで縛られた先にはコンクリートの塊が。
ロープはどんどん海に引き込まれ、
ジョンスは絶体絶命に陥る。
「ユリと逃げようとしたのか!」
カン社長は問いただす。
「はい....」
ジョンスは素直に答える。
「持ち逃げしてか!」
カン社長は問いただす。
「いいえ!いいえ!夢にも思いませんでした!」
ジョンスは必死に訴える。
「お前の背後にいるのは誰だ!」
カン社長は問い詰める。
ジョンスは、言葉に詰まる。
ロープもどんどん短くなっていく。
更にカン社長は、ジョンスの首を絞める。
追い詰められたジョンスは、白状してしまう。
「け、、警察、、、」
「警察?」
その言葉を聞いたカン社長は、
すぐさまジョンスの縄を解く。
ジョンスは、全てを白状した。
麻薬取締班が、全てを知っていたと。
リハーサルのこともだ。
それを聞いたカン社長の表情が険しくなる。


「リハーサルのことを知っていたのは、
私以外に二人だけだ」
と、チョ室長とバウを見やる。
神妙な表情になるチョ室長。

「これからは個人行動は禁止だ。
誰かに電話でもかけたら、そいつがネズミだ。
互いにしっかり監視しろ」
カン社長は、室長とバウに言い放つ。

カン社長は、表向きは鍵屋を営むパク博士を訪ねる。
「パク博士、内視鏡を頼む」
「私は医学博士じゃない」
カン社長の頼みに、パク博士は答える。
「昔のよしみで頼む」
パク博士は尋ねる。
「患者は誰だ?」
カン社長は答える。
「チェ・ドウク兄貴の娘だ」
それを聞いたパク博士は、唖然とする。
「なぜ彼女に内視鏡を?恋愛関係の浮気でもあるまいし」
パク博士は尋ねる。
しかし、カン社長は答えない。
「彼女は、娘のような子なのでは?」
パク博士は問う。
「あの子は成長した」
カン社長は告げる。
「その先に、幸せはあるのか?」
パク博士は尋ねる。
「わからない」
カン社長は答える。

その頃、ジョンスは船の中にいた。
「A21374-9」
ジョンスは暗号のような文字をメモしていた。
それを遠くからみつめるキム班長は、
しびれを切らしていた。
パク博士はカン社長の頼みを受ける。
内視鏡とは、「盗撮」のことだった。
パク博士は、盗聴・盗撮などの世界では権威だった。
パク博士は、ユリの部屋に忍び込んで仕掛けたカメラのモニターを監視する。
すると、ユリの部屋に誰かが訪れる。
ユリはドアをチラリと開け、怒鳴りつける。
「しばらく会わない約束でしょ!」と。
しかし、仕方なく相手を部屋に入れる。
パク博士は、画面に見入る。
いったい、誰なのだ...?
そして、相手の顔が映し出されると、
あまりの驚きに、カップを落としてしまう。
「お前は、ケコ...」

その相手は、キム班長...
そう、キム班長は、12年前にユリの父親が殺された夜、
麻薬所持の現行犯で逮捕された麻薬捜査官ケコだった。
ユリは、ケコと組んでいたのだった。
「なぜ裏で別の行動を?
全面的に私に任せたのでは?キム班長」
ユリは尋ねる。
「あぁ、ジョンスか。
保険だ。謝る必要があるか?」
ケコは悪びれない。
「二重にチェックを入れるから、
余計なことはするなよ、という意味では?」
ユリは言い放つ。
「そこまで正確にわかってるなら、自分の役目を忘れるな。
なぜジョンスと会わない?」
ケコは問いただす。
「カン社長の目が光ってるわ、注意しないと」
ユリは答える。
「本当は、愛し合ってるんじゃないか?」
ケコは怪しむが、ユリは鼻で笑う。
そんなユリの態度に逆上したケコ。
ユリに瓶を投げ、歩み寄る。
「7対3だと?お前以外にもヤツを落せる女は多い」
ケコはユリを脅す。
「見てなさい。7を渡しても後悔させないわ」
ユリは言い放つ。
「そうか、賭けようか?
ジョンスは、誰の元へ来るかなぁ?
勝者の望みを聞くのはどうだ?」
ケコは、ユリの髪に顔を押し付けてくる。
「いいわ。私が勝ったら、誰も殺さないで。
もう血を見るのはイヤなの」
ユリは言い放つ。
「俺の望みはわかってるな?」
ケコは、ユリの顔を指で撫で回す。
「父親を殺したヤツとの墓参りは最高だろう?
俺はな、自分の名前も使えず、
12年も日陰で過ごしたんだ。
俺にできないことはない」
ケコは言い捨て去って行く。
ケコとユリのやり取りをパク博士に見せられたジョンスは、
激しいショックを受ける。
まさか、ユリに騙されていただなんて....
ジョンスは信じられず、何度も録画を再生する。
やるせないジョンス。
ジョンスは、パク博士のバンを飛び出していく。
ジョンスを引き止めるカン社長。
「行ってどうするつもりなんだ。
ユリに気づかれたら、俺たちは終わりだ」
しかしジョンスは反抗する。
「もし失敗したら、地球の果てまで追って粉々にしてやる。
わかったか!」
カン社長は言い放つ。
「ユリの父親を殺したように?」
ジョンスは不敵な笑みを浮かべる。
それを聞いたカン社長は、逆上する。
「それ以上言うな!泣き叫ぶお前を助けたが、
命がいくつもあると思うな!」
カン社長はジョンスの首を締め上げる。
「殺せよ。また次のマリンボーイを探せばいい」
ジョンスは言い放つ。






カン社長は、ユリの父が死んだ12年前のことを
ジョンスに話して聞かせる。

「カン社長!この野郎ふざけやがって!
チェ・ドウクはどこだ?
しばらく静かにするはずが、どうなってるんだ!
麻薬班の検挙順1位がお前らなんだ。
チェ社長は俺が説得する。居場所を言え」
ケコがカン社長の元へ乗り込んでくる。
「説得できなかったら?」
カン社長は言い放つ。
「消せ、とは言わない」

葛藤するカン社長。
「今夜、埠頭に船が入る」
カン社長は、ケコに情報を漏らす。
「まず、俺たちが関わった証拠を全て消せ。
火をつけてでも、紙切れ一つ残すな!わかったな!」
ケコはそう言い捨て去って行く。

カン社長には、別の思惑があった。
ケコが既に手に負えなくなっているのは明らかだった。
カン社長は部下に命じる。
ケコのことを警察に密告するよう。
麻薬班は仲間がいるから、強力班に引き渡せ、と。

しかしケコは、カン社長が懸念する以上に悪質だった。
チェ社長の居場所をカン社長から聞きだしたケコは、
ユリの父チェ社長を射殺し、麻薬を奪い去ったのだ。
しかし、そのせいでケコは、麻薬所持の現行犯で逮捕されてしまう。

カン社長は、まさかケコがチェ社長を始末するとまで、
考えていなかった。
いつまで経っても、悔恨の念から逃れられない。
またユリは、ケコが自分の父を殺したとも知らず、
カン社長を憎み続けている。
「犬は犬でも、完全な狂犬だ。絶対に敵に回すな」
カン社長はジョンスに言い聞かせる。
敵になるなら、それ以上に狂うしかない。
「これからどうしますか?社長が選択する番です」
ジョンスは尋ねる。
「お前は?」
カン社長は尋ねる。
「終わらせるには、黙って従うしかない」
ジョンスは答える。
「ユリには、テスト通りに行うと、情報を流せ。
ケコにも、同じ情報を与えるんだ。
情報が同じなら、疑わない」
カン社長は、ジョンスに命じる。
「本当の目的は何なんですか?」
ジョンスは尋ねる。
「それが全てだ。テスト通りにすればいい」
カン社長は答えない。
「10時までに来て。会いたいの」
ジョンスの元へ、ユリから早速連絡が.....
まだ心の傷が癒えないジョンスの心は複雑だ。


ユリとの思い出の写真を燃やし、
体に盗聴器を仕込んでユリに会いに行くジョンス。

ジョンスは割り切ってユリに会う。
しかしユリの予想外のユリの態度に、
ジョンスは慌てふためく。
「キム班長は本物の警察ではないわ。
知らなかったの?
通称”ケコ”。元警官よ。
向こうが訪ねてきたの。カン社長に謀られた。
俺を助ければ、お前の父親の復讐になると言ったの。
応じて当然よね」
自分の手の内を明かしたユリを、
ジョンスはどう受け止めていいかわからない。
盗聴器を通じて、
ユリの話はカン社長らも聞いているはずだ。
ユリも、全てを明かしたことに、心の動揺を隠せない。
「お前の望みは、いったい何だ?」
ジョンスは尋ねる。
「俺なのか?それとも、麻薬なのか?」
ユリは笑う。
「あなたが必要なの。
そして、お金持ちなら、なおさらいいわ。
私が、あなたの灯台になるわ」
そう言ってジョンスに歩み寄るユリを、
ジョンスは力いっぱい殴りつける。
「初めから、お前は偽物だった。
お前が憎んでいる奴らと同じだ。わかってるのか?
二度と俺の前に現れるな」
ジョンスは言い放つ。


ジョンスに殴られた頬の痛みを心で感じるユリ。
「私を信じられないのね」
ユリは言い放つ。


そんなユリをみつめるジョンス。
ジョンスだって、ユリを信じたい。
心が熱くなり、思わずユリを抱きしめてしまう。
その途端、盗聴器がハウリングを起こし、
二人の会話は、カン社長らに聞こえなくなってしまう。
「よく聞け、俺は言うとおり従う。
少しでも俺を好きなら、ここで抜けろ。
そしてもう、何もするな。
もし生き残れたら、二人の話はその時にしよう」


ようやくユリとジョンスの心は通じ合った。
熱いキスを交わす二人。


ジョンスは、パク博士の店へと戻る。
カン社長は、ユリの車に盗聴器を仕掛けるよう、
パク博士に依頼する。
「久しぶりの再会はどうだ?」
カン社長は、意地悪く尋ねる。
「全部聞いていたのでは?」
と、ジョンスは盗聴器を手に取る。
「目の前にしたら、迷うはず」
ジョンスは答える。
「お前は迷ってないよな?」
カン社長は問う。
「顔を見たら手が出てしまった。
使えないヤツと知った以上は、
余計にケコ側につくはずでは?」
ジョンスは去って行く。
パク博士の作った追跡機。
日本で麻薬の中に仕込むためだ。
ジョンスは釈迦の手の内のように、
どこにも逃げられないということだ。
「計画が終わった後、ヤツはどうするので?」
パク博士はカン社長に尋ねる。
「消すしかないだろう....」
カン社長は答える。


今度はケコにどやされるジョンス。
「いつまで遊んでる気だ」と。
「班長の予想通り、次は月末です」
ジョンスは答える。
「前回のリハーサル通りに実行します」
ジョンスは告げる。
ケコはジョンスに銃を向ける。
「最近、誰を盗聴してるんだ?
パク博士は、その世界の権威だろうが?」
ケコはジョンスを問い詰める。
「班長、僕はバカじゃない。
生涯、手配者として生きるとでも?」
ジョンスは訴える。
ケコは仕方なく納得する。
「今度は実践だから、カン社長も来るはずです。
今度は遅れないでくださいよ。
ブツを渡せば、その瞬間僕は殺されるはず」
ジョンスは念を押す。
「わかってる。俺にも考えがある」
ケコは答える。
「そう祈りますよ」
ジョンスは言い放つ。
その頃ユリは、ジャズバーの女主人に会っていた。
ユリとジョンス二人分の
航空券と偽造パスポートを頼んでいたのだ。
「ありがとう。連絡するわ」
ユリは女主人を抱きしめる。


ユリは密かに荷造りを始めた。
そこへ、カン社長がやってくる。
カン社長は、ボストンバッグを差し出す。
中身は、札束だった。
「これを持って、二度と俺の前に現れるな」
カン社長は言い放つ。
「要らないわ」
ユリは断る。
「なぜ、おかしなことをする?
今まで断ったことはないだろう?」
カン社長はユリの腕をギリギリと握り締める。
ユリは痛みに悲鳴をあげる。
「そうだ、叫べ。
寝た男の中で、一人でもお前を助けてくれたか?」
カン社長の言葉に、ユリは逆上し殴りつける。
カン社長も逆上し、殴りつける。
ユリの髪を鷲づかみにし、更に殴ろうとするが、
ユリの目を見て冷静になる。
カン社長は去って行く。
「頼む。二度と現れるな」
カン社長は、懇願し去って行く。
ユリとは争いたくない。カン社長の痛恨の願いだった。

「ケコ、この手で殺してやる.....」
廊下を歩きながら、カン社長はつぶやく。


一方、ケコらの準備も万全だった。


ユリはジョンスの説得も聞かず、
”マレ”が見渡せる場所に車を止め、
双眼鏡で”マレ”の様子を探る。
予定通り船は”マレ”付近に差し掛かる。
海へとダイビングするジョンス。
カ ン社長らは、麻薬に取り付けた追跡機で、
ジョンスの動きを追う。
”マレ”に、ケコの手下らが忍び込む。
チョ室長やバウらに、次々とヤラれるケコの手下たち。
ジョンスは順調に”マレ”に近づいていた。
その時、”マレ”にジョンスが現れる。
「お前が、なぜこんなに早く?」
チョ室長は驚く。
しかしそれはジョンスではなく、ケコの手下だった。
チョ室長は、様子がおかしいことを察知し、
銃に手を伸ばすが、一歩遅く、銃殺されてしまう。

強腕のバウも、相手にはてこずらされた。
身軽な相手に体を雁字搦めにされ、刺殺されてしまう。

ケコの手下は、防犯カメラを銃で撃ちぬく。
これで、”マレ”の様子は、カン社長らにはわからない。
後は、ジョンスを待つだけだ。
部下から報告を聞いたケコは、満足そうだ。
「ジョンスは?」
カン社長は慌てる。
追跡機を見ると、”マレ”には到着したようだ。
双眼鏡で海を覗き込むケコの部下。
海には、ケコの部下の死体が一体浮いていた。
その影から、ジョンスが銃を向ける。
ケコの部下は、撃ち抜かれた。
しかしそれを双眼鏡で見ていたユリは、慌てふためく。
ジョンスが銃殺されたと思ってしまったのだ。
慌てて車のエンジンをかけ、”マレ”に向かう。
”マレ”に到着するユリ。
慌てて死体を抱き起こすユリ。
だが、死体がジョンスではない。ユリは悲鳴を上げる。
「ユリ!」
その時、ユリを呼ぶジョンスの声が。
「大丈夫?」
ジョンスに歩み寄り抱きしめるユリ。
「どういうことなの?」
ユリは尋ねる。
「このままだと、二人とも殺される。
急いでここから離れよう」
ジョンスはユリを追い立てる。
ジョンスは、車のキーを探し始める。
「お前の車じゃダメなんだ。盗聴されてる。
なぜって、ケコを捕まえるためさ」
ジョンスは窮地に、思わず口を滑らしてしまう。
ジョンスの言葉を聞いたユリは驚愕する。
ユリはジョンスに銃を向ける。
「ケコを捕まえるために、どうして私を盗聴するの?
いつから監視していたの?」
ジョンスにまで欺かれていたと知ったユリは憤る。
慌てふためくジョンス。
「ユリ、そうじゃないんだ...」
必死に言い訳しようとするジョンス。
「だったら?」
ジョンスは、返す言葉がない。
「私がケコの話をした時、既に知ってたんでしょ?」
ユリはジョンスを責める。
「仕方が無かったんだ」
ジョンスは言い訳する。
憤ったユリは、二人で逃げるために用意した航空券と
パスポートを投げ捨てる。
それを見たジョンスは、
ユリを騙したり、疑ったことに心が痛む。
「カバンを渡して」
ユリはジョンスに指図する。
「これはダメだ。欲張るな」
ジョンスは諭す。
そこへ、無線を通じてケコの声が聞こえる。
「状況を報告しろ」と。
それを聞いたジョンスは慌てる。
「奴らがここへ向かってる!時間が無いんだ!」
ユリは命じる。
「車に乗りなさい」と。



車に乗った途端、盗聴を防ぐため、
ユリはオーディオのボリュームをMAXにする。
盗聴していたパク博士らは、
突然の大音量に腰を抜かす。
「ユリ!俺たちのものは別にある!」
ジョンスは訴える。
「出しなさい」
ユリは命じる。
ジョンスが差し出すと、ユリは「降りろ」と命じる。
ジョ ンスは、猛スピードで走る車から放り出される。
一方、カン社長もケコも、ユリの車を追っていた。
その時、逆車線から向かってくるケコの車が、
ユリは衝突を避けるため、大きくハンドルを切る。
ユリの車は、車道からダイビングしてしまう。
二転、三転とする、ユリの車。
放り出されたジョンスの元へ、カン社長がやってくる。
横転したユリの車を眺め、
「車に乗れ」
カン社長はジョンスに命じる。
「ユリは?」
ジョンスは尋ねる。
「俺が何とかする、乗れ」
カン社長はそう命じると、ジョンスを手錠でつなぐ。
「ブツは?」
カン社長は尋ねる。
「知ってるだろう?」
と、ユリの車を指すジョンス。
「もうやめよう!もう二度もあんたの言うとおりにした」
ジョンスは訴える。
「ユ リは、一晩中ケコには連絡しなかった。
その意味がわからないか?」
カン社長は言い放つ。
「え?」
ジョンスは突然の言葉に、すぐさま理解できない。
「泣かせたりせず、幸せにしてやれ」
カン社長はそう言うと、ユリの救出に向かう。
横転した車の中で、もがき苦しむユリ。
そこへカン社長が現れる。
ユリへ手を差し伸べるカン社長。
ユリは躊躇しながらも、カン社長の手を取る。
ユリは無事、救出される。



ユリの無事に安堵し、ユリを抱きしめようとするカン社長。
しかし、バックミラーに映るケコの姿に気づく。


二人に向かって銃を乱射してくるケコ。
カン社長はユリを守るため、
咄嗟にユリを抱きしめ撃たれてしまう。
ケコは二人に銃を向けたまま、
横転した車の中から、麻薬の入ったバッグを奪う。
勝ち誇ったように高らかに笑うケコ。

その頃、ジョンスは手錠を外す鍵を必死に探していた。
「ケコ、お前も歳を取ったな」
カン社長は、息切れ切れに言い放つ。
それを聞いたケコは、ブツの包み慌てて破る。





包みの中の白い粉。
味を確かめるケコ。偽物だった。
今度はカン社長が勝ち誇ったように笑う。
ケコは悔しさに怒り狂う。
カン社長に銃を向けるケコ。
「やめて!」
ユリが叫ぶ。
ようやくカン社長へのわだかまりが溶けたのだ。
カン社長は驚いてユリの方を振り返る。
「何を言ってるんだ?ロマンスのつもりか?」
ケコはあざ笑う。
「その子は放っておけ。俺たちだけで決着つけよう」
今度はカン社長がユリを庇う。
「お前の恋人はどこだ?」
ケコはユリに銃を向ける。
「私にも偽物を渡したのよ、私も騙されたのよ!」
ユリは答える。
「あの野郎、俺を欺いたのか」
ケコは憤る。
「お前が知らなくても、カン社長は知ってるな」
ケコはユリに銃を向ける。
カン社長は必死にケコを説得する。
「ユリは置いて、俺と行こう。約束する」
「二度と騙されるもんか!」
ケコが叫んだその時、
手錠を外したジョンスが突っ込んでくる。

※シナリオでは、ここでユリの父を殺したのが、
カン社長ではなくケコだということが
明らかになるんですけどね。
でも、命を懸けて自分を守ってくれたことで、
わだかまりが溶けるには、十分でしょうか。
それに、父を殺した相手と思いながらも、
ユリもカン社長を憎みきれなかった気持ちを表すには
この方がいいのかもしれませんね。
ケコはユリを人質に取り、
ジョンスの運転する車に向けて銃を乱射する。

ジョンスは降参し車を降りる。
「撃つな!ちょっと待て」と。
ジョンスはウェットスーツのジッパーを下ろすと、
いきみ始める。
ケコは、ジョンスの行動が理解できない。
ふんばり続けたジョンス。
そして、ソーセージ状に包まれた白い粉を差し出す。
「そんなところに隠してたのか!」
ケコは大笑いする。
ジョンスが包みを投げると同時に、
ケコはユリを手放す。
しかしユリは逃げる途中、
ケコの手に渡らぬよう包みを叩き落し、ケコに殴られる。
怒ったケコは、ユリに銃を向ける。
ユリを庇うジョンス。
その時、カン社長が車のバンパーでケコの頭を殴りつける。
怒り狂ったケコ。
ケコはカン社長を崖まで引きずり、
海へ投げ捨てようとする。

ジョンスは車に乗り、ユリを後部座席に乗せると、
ケコ目掛けて突進する。


(その前にカン社長を助けろよ!
わざわざユリまで車に乗せるなよ!)
突進してくるジョンスにケコは慌てふためき、
逃げ出そうとする。
その時、カン社長がケコを羽交い絞めにする。
逃げられないケコ。
その瞬間、ジョンスの目にカン社長の姿が飛び込んでくる。
ブレーキを踏むが、距離が近すぎて間に合わない。
カン社長は諦めて、目をつぶる。




バンに追突され、崖から落ちていくケコとカン社長。



※シナリオでは、ケコが岸壁に激突死。
カン社長は溺死とあります....
カン社長まで殺すなんて....
胸が痛くて、痛くて、仕方ありませんでした.....
バンは、崖ギリギリで辛うじて止まった。
しかし、少しでも動けば、海へ落ちるだろう。
バンはグラグラ揺れ、ユリは悲鳴を上げる。
「もし助かっても、あんたの顔は見たくない」
ユリは、カン社長が殺されたことを怒っているのだ。







※「助かっても、あんたの顔なんて見たくない」
これはシナリオにはありませんから、
少しだけ、心が救われました。


「先 に降りろ」
ジョンスはまず、ユリを逃がそうと、
後部のドアを開けるが、
「あんたはどうするの?」
と、ジョンスを心配する。
「お前が降りるのと同時に海にダイブだ」
ジョンスは言い放つ。
それを聞いたユリは、開いたドアを閉めてしまう。
「3つ数えたら飛ぶわよ」
ユリは言い放つ。
「3!」
ユリはカウントと同時に前方のジョンスと抱き合い、
二人はバンから海へとダイブする。
エピローグ

海へ浮かぶ船が一隻。
気持ちよさそうにユリが海風を受けている。
ジョンスといえば、スキューバの準備をしている。




ジョンスの手には、いつかのメモが。
浮標の固定番号を記したメモだ。
「あんだけ苦労して、まだ海に潜りたいの」
ユリはイヤミを言う。
「ちょっとだけ待ってろ。鯨を捕まえてすぐ戻るから、OK?」

ジョンスは、浮標の固定番号を目印に海へ潜る。
そこには、白骨化した死体が一体。
よく見ると、白骨からは、ソーセージ状の白い包みが、
延々と続いている。
犠牲となった先代マリンボーイの死体だ。
ジョンスは、白骨の奥歯にくくられた糸を刃物で切る。


── いつかの鈴木の言葉がナレーションで流れる

たまには船の中で吐いたりもしたが、
その長さが10mを越えたこともある。
そして彼らは、取締りに追われれば、
迷わず海へ飛び込む。
玄界灘、香港沖合い、フィリピンでも.....
誰も戻ってくるヤツはいませんでしたよ。
人は彼らを、“マリンボーイ(Marineboy)”と呼びます。



ソーセージ状の麻薬を手に浮上するジョンス。
海へ上がったジョンスは、”マレ”を見やる。




”マレ”に戻ると、ユリが待ち構えていた。
ジョンスを抱きしめ、熱いキスを交わす二人。

END

※おまけ※

シナリオでは、ラストシーンはパラオでした。
いつかジョンスがユリに見せた写真のボートハウスを買い取り、
Marineboy” という看板に付替え(笑)
パラオの白い砂と青い海が映し出され.... END





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