コースト・ガード Coast Guard |
原題:海岸線 해안선(ヘアンソン) <2002> |
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監督 | キム・キドク(金基徳) | 作品一覧 |
出演 |
チャン・ドン ゴン(張東健) |
出演作品一覧 |
パク・チア |
<2002>コースト・ガード、<2003>春夏秋冬そして春、
<2004>うつせみ-空蝉-(空き家)、 <2007>ブレス(息)、<2007>奇談 |
【レビュー&ネタバレ】 |
「ぜひ出演したい」 と、破格の安ギャラで出演した作品。 果たして・・・ その意味はあったのか? 「美形俳優」という肩書きを捨てたかったチャン・ドンゴンにとっては、 意味があったのでしょう・・・ mocaは美形チャン・ドンゴンが見たいのに・・・ この映画の「カン上兵」も、かなりチャン・ドンゴンのイメージを裏切る狂気の人物。 とはいっても、最初からそうだったわけではなく、 彼が狂気の人物となっていく過程を描いているわ。 元々、キム・ギドク作品は好きではないmoca その中でも、この作品は最高に苦痛だったわ。 チャン・ドンゴンが出演させしなければ、見ることもなかったのにー この作品は、キム・ギドクの「怒り」の全てが込められているわ。 南北分断への怒り。 同じ民族同士で争わなければならなくなった怒り。 軍人などになりたくない者にまで、兵役を負わせ、 消えない痛みを与えられた怒り。 そして、身勝手な人間たちへの怒り。 実際にキム・ギドクは海軍に5年間いたそうで、 この映画の内容はかなりリアルなんでしょうね。 「韓国海軍」といえば、 泣く子も黙り、 水戸黄門の印籠のように、人々は平伏する。 男としての勲章のようなもの。 それくらい、厳しく・・・辛く・・・ハードな軍務なのでしょう。 この映画は、 大衆映画好きや、韓国映画好きの方にはオススメしないわ。 まったく異なる世界よ。 映画を観て、論議を投じるのが好きな方にはよいかもね。 キム・ギドク作品は、「メッセージ性」が強いもののそれを明らかにせず、 課題を投げつけ「ほら、考えてみろ」的な作り方をするので。 mocaは頭を使う映画はイヤだわ。 日々頭を使いすぎてるのだもの、 映画を観る時くらい、単純明快がいいのー 人間はとても儚くて・・・ 限界を超えたら、人は壊れていくわ・・ 主人公カン・ハンチョル上兵は、皆が遊んでいる時間にも 一人黙々と訓練に打ち込むほど 北のスパイを捕らえる情熱に燃えていた。 そんなカン上兵でさえも、実際に人を撃つ時には 恐怖で震え、めくらめっぽうに乱射するのがせいいっぱいだ。 そして、人を殺してしまったことで、 カン上兵はしだいに精神を病んでいく。 しかも、殺したのは北のスパイではなく、 酔って禁止区域に入り込み、野外セックスをしていた民間人だった。 しかし、カン上兵は咎められるどころか、 任務に忠実だったとのことで、彼は表彰され勲章をもらい特別休暇を得る。 憧れの栄誉。 しかし、カン上兵は喜ぶことなどできない。 周囲の住民や殺してしまった男の家族からは猛烈な批判を受け、 石を投げられ、殺された男の恋人ミアが狂った姿を見て激しく同様する。 自分の家族にでさえ距離を感じ、恋人には逃げられる。 罪の意識に苛まれ、しだいに精神が病んでいく。 一方、自分の体の上に覆いかぶさっていた恋人が 銃弾を浴び、狩猟弾でバラバラに吹っ飛ぶさまを目の前にしたミアも 精神が破壊されてしまった。 店の魚をおもちゃにして遊んだり、髪の毛を包丁で叩き切ったりと。 そして、男を見れば、 それがすべて恋人の顔に見えるのか、 湾岸警備隊の隊員たちと見境なくセックスしてしまう。 カン上等兵は隊員に暴力を振るったり、物を盗んだり・・ 結局、「精神異常」の判定を受け、軍を早期除隊させられる。 しかし、カン上兵に行く場所など、もうどこにもない。 まだ自分を軍人と思うのか、部隊の周りをうろつき、部隊に戻ろうとする。 一方ミアは、誰の子かもわからない子供を妊娠してしまう。 それを知ったミアの兄は、怒って軍に乗り込む。 軍の上官は、ミアの相手は誰だと尋ねるが、誰も名乗らない。 しかし、狂っているはずのミアは、 体の関係を持った男を、一人残らず覚えていた。 それを知った軍により、強制的に手術され、堕胎させられる。 そろそろ結末ですわ。 部隊に戻ることを許されないカン上兵は、 やり場のない怒りを、湾岸警備隊員に向ける。 暗闇の中、カン上兵と隊員達との銃撃戦が始まってしまう。 カン上兵は、仲間たちからの銃撃を浴びる。 翌朝、兵士たちがカン上兵の死体を探し、昨夜の場所を覗き込むと そこには脱ぎ捨てられた軍服が落ちているだけだった。 高らかに笑うミアの笑い声が響き渡る。 笑いながら、海の中に消えていくミア。 晴れ渡った美しい青空。 有刺鉄線で囲まれたコートには隊員たちがバレーボールをしている。 ネットで仕切られたその地面には、ちょうど分断された朝鮮半島が浮き上がる。 エンドロールが始まる頃、そのネットは消えている。 いつか南北の間にある境界線も消える日が来るという、 キム・ギドク監督の願い。 |
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