イテウォン殺人事件   The Case of Itaewon Homicide  
 原題:梨泰院殺人事件 이태원 살인사건(イテウォン サリンサゴン)  <2009>

 オススメ

 ストーリー

 韓流王道

 泣き

 笑い

名作

 映像

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二 人とも無罪だなんて…それでは私たちの息子は誰に殺されたの?

うちの息子は三代にわたる一人っ子で、一族の末っ子でとても優しい子でした。そんな子が何の理由もなく殺されて、犯人たちはゆうゆうと釈放されました。私 は死 んだあの子と過ごした時間の中で止まっています。あの世で悔し涙を流す息子のために、私は死ぬまでに必ず犯人を探します。あの子が安らかに眠ることができ るときまで…。-故チョ・ジュンピル君の母

「こんなヤツらは 初めてだ!」

1997年4月8日夜10時頃。梨泰院のハンバーガーショップのトイレで残虐な殺人事件が発生した。何の罪もない大学生を、10代の未成年者である韓国系 米国 人が殺害した。面白半分に人を殺しておき、図々しい嘘をつき通す。殺人も法廷も”ただのゲーム”である残忍な二人の少年たち。法廷を手玉にとるほどの余裕 があるヤツは 初めてだ。私が必ず犯人を捕まえる。これ以上お前たちの被害に遭わないように…!-事件担当パク・デシク検事

「俺たちが殺しま した。しかし、俺は殺してません…」

あの日の夜を忘れることはできない。俺たちは二人ともドラッグと酒に酔って、完全にハイな状態だった!そして、単にコリアン1人が死んだだけなの に、こんな大騒ぎ。俺がもっと熱いものを見せればよかった。俺は悠々と解放され、自由に元気に暮らしている。あの日の真実、本当に殺したヤツを知りたい か?-容 疑者ピアソン&アレックス

本当の犯人が気に なるだろう?見せてやる、ついて来い!

I’ll show you something cool, come with me.

【予告編】

監督 ホン・ギソン <1983>生活、<1984>視線、<1987>関係、<1989>オー!夢 の国、
<1992>胸に芽生えた刃で悲しみを断ち切って、<2000>風が吹く、<2002>選択、
<2006>三番目の視線:私どうしたら、<2006>0.5、<2009>梨 泰院殺人事件

出演

チョン・ジ ニョン(鄭進永)

出演作品一覧

チャン・グンソク

<2006>着信アリ Final(日本映画)、<2007>楽しき人生、 <2008>待 ちくたびれて
<2008>ドレミファソラシド(制作2006年)、 <2008>赤 ちゃんと僕、<2009>イテウォン殺人事件
<2010>きみはペット
シン・スンファン 出演作品一覧

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【レビュー&ネタバレ】
2009年9月公開。観客動員数は、約50万人。
大ゴケのラインぎりぎりの50万人。
チャン・グンソクを以っても、この数字。
というか、チャン・グンソク出演の映画は、どれもこれも興行失敗作。

楽しき人生は、何とか約120万人な ものの、
待ちくたびれては、約45万 人。
ドレミファソラシドは、約20万人。
赤ちゃんと僕は、約44万人。
そして、梨泰院殺人事件は、約50万人。

チャン・グンソクの人気があれば、駄作でも何とかなるだろう... という考えなのでしょうか。
彼は、あまりにも作品に恵まれなさすぎるというか、
誰がいったい出演を決定しているのだ?本人なのか???

今回は、イメージチェンジを計るということで、悪役に初挑戦したわけですが、
ドラッグに溺れ、ゲーム感覚で人を殺すようなギャング役には、ちょっと演技力が足りず、
未熟さが露呈してしまいましたね.....
但し、文句なしにカッコイイ。あの片方の肩を出したファッションがSexyでお似合い。

この映画は、ジャンル分けするとすれば【犯罪スリラー】の一種でしょう。
犯罪スリラーであれば、”追い”、”追い詰められる” スリルがあるからこそ、”スリラー”であるべき、
しかしこの映画は、スリルが全くありません。
この映画は、観客動員数が少ないだけでなく、観客の評価も低い映画です.....
期待したらガッカリしますので、期待せずに観てください......

この映画は、1997年に梨泰院で実際に起きた”梨泰院殺人事件”と呼ばれている
実際の事件をモチーフにしております。
韓国人は、実在する殺人事件を描いた映画が好きなのか、けっこうありますね。
真実ゲーム殺人の追憶シルミドホ リデイあいつの声チェイサー....
しかも、けっこうヒットしています。
実在する事件を描く場合、事件が未解決であれば、
映画もやはり未解決で終わるのが常....
それでも、真実ゲームも、殺人の追憶も、その過程のスリル感が最高です。
ラストも、それなりに深い余韻を残してくれます。

しかし、この映画は、大失敗ですね。
この映画は、商業映画ではありません。エンターテインメントではないのです。
人を楽しませるための映画ではありません。
他の映画が、”事件をモチーフ”にしているのに対し、
この映画は、当時の捜査資料やら人物やらをとことん調べ取り入れています。
フィクションでありながら、よりノンフィクションに近い映画。”モチーフ”どころではありません。
いわば、実録映画のようなもの。
内容的には、かなり真実ゲームに近いものがありま すが、ここまで差が出てしまうものなんですねぇ。
商業映画としては破綻しておりますが、
韓国社会にとっては、大 変意義のある映画だ と思います。
問題提議映画ですね。
結局、容疑者として逮捕されたアメリカ国籍を持つ二人の韓国系アメリカ人。
二人のうち、どちらかが間違いなく犯人であるのに、
二人とも殺人犯としては無罪になり、その後アメリカに戻り、自由に暮らしているのです。

アメリ カ人にとって、犯罪天国

だということを国民に悟らせるために、非常に大きな意味を持つ映画だと思います。
実際その事件が、どういう経緯で、どのように終結したのか.....
それを知るためには、非常に有効な映画です。
国民がそのような現状を知ることは大切なことです。
いつ自分や家族が同じ目に遭うかもわかりません。
知ることは大切なことです。
この事件は、米軍が関わった事件ではありませんが、
実際90年代は、米軍が関わった事件のほとんどが、起訴されずに終わったそうです。
米軍が「基礎を取り下げるように」と命じれば、韓国検察側は、従うしかなかったそうです。
実際、そのような実情を許していいのか。
この事件で殺人罪を問われなかった二人の青年は、許されていいのか。
それを、韓国国民に問うための映画です。

映画公開に合わせてブログで
‘97年梨泰院殺人事件 再捜査促求署名運動’が、行われました。
映画試写会に参加した遺族は
「まだ公訴時効が残っている。映画公開が犯人を捕まえるきっかけになるように願う」と訴えたそうです。

日本人にとっては、ちょっと取り扱いの難しい映画ですね。
その”意義”は、日本人にとっても考えるべきところではありますが、
映画としては、楽しめません。
実際の事件が、どのように無罪を勝ち取ったのか知るには、面白いかもしれませんが。
日本も、もしや”アメリカの犯罪天国”になってやしないか?
と、心配になったりもします。

正直、mocaは観る前から「つまらなそう...」と感じていましたが、
その通りでした。
でも、何だかとっても気になって、観てみたくて.....
ですが、ガッカリです.....
考えてみれば、過去の作品のラインナップを見ても、商業映画がありませんしね.....
まぁ、犯罪スリラーとしては退屈な映画ですが、
登場人物のキャラクターで、まずまず楽しめると思います。
特にチョン・ジニョンとシン・スンファンのやり取りは最高です(笑)

ちなみに.....
この映画で初めて耳にした組織..... CID
CIDとは、米陸軍犯罪捜査隊 。FBIと同等の捜査権を持つそうです。
このCIDが、アメリカ国籍を持つ市民を徹底的に守るため、やるせない気持ちになりますよ。
アメリカ国民には”人権”があって、”殺された韓国人の被害者”には、”人権”がないのか!と。
この事件は、”理由なき殺人”です。単なる”快楽殺人”なのです。
”面白いから人を殺した”
それで殺人罪で問われないならば、韓国人は、あまりにもやるせないでしょう。
一種の反米映画かもしれませんね。
この監督は、”1980年代のアメリカ問題”を取り上げた映画”オー!夢の国”を撮っているそうです。

この実際の事件は未解決です。
ですので、映画も未解決のまま終わりを迎えます。
この映画は、”未解決に至るまでの過程”を描いています。
しかし、制作側は明らかに1つの”答え”を提示しています。
最初から、結末をネタバレしちゃってよいでしょうか?
未見の方は、見ないようご注意ください。
ご覧になる方は、マウスで反転させてご覧下さい。

--- 制作側の提示する答え ---

ピアスンとアレックスは共 犯です。
二人で殺害したのです。
実況見分の際、ピアスンも アレックスも、証言していたことに嘘があったことが判明します。
二人で共謀して殺害し、そ れを隠すために嘘をついていた。
嘘だから、実況見分で嘘が バレてしまう。
被害者に”抵抗痕”がない のは、”抵抗できない状態”にあった....
アレックスが刺している間 に、ピアスンが押さえ込んでいた。
最初に刺したのはアレック ス。スプレー状の血痕からそれが判断できます。
アレックスが最初に刺した 後、今度はピアスンが刺します。
最初に刺したのはアレック ス。
最後に刺したのはピアス ン。
アレックスとしては、「最 後に刺したのはピアスンだから、殺したのはピアスンだ」と主張し、
ピアスンとしては、「最初 に刺したのはアレックスだから、殺したのはアレックスだ」と主張し合っている。
これが、制作側の答えで す。

--- 答え END ---


* * *

実際の事件について

* * *

1997年4月:事件発生
1997年5月:韓国系アメリカ人エドワードを殺人の疑いで、米軍人の息子パターソンを凶器所持疑いなどで起訴
1997年10月:1審。エドワードに無期懲役、パターソンに懲役1年6ヶ月宣告
1998年1月:2審。エドワードに懲役20年、パターソンに懲役 長期で1年6ヶ月、短期で1年を宣告
1998年4月:最高裁判所。エドワードに対し、証拠不十分で無罪判決
1998年8月:パターソン、8・15特赦で釈放
1998年11月:遺族、パターソンを殺人の疑いで検察に告訴
1999年8月:パターソン、検察が出国禁止延期手続を取らず、その隙にアメリカへ出国

※ 劇中では、エドワード=アレックス、パターソン=ピアスン。事件の日は、4月8日になっています。

1997年4月3日。梨泰院のとあるハンバーガー店で、弘益大学校のある学生(当時23歳)が殺害された事件。
この事件の犯人が誰かは、まだ明確に明らかになっていないが、
有力な容疑者で、当時18歳だったアメリカ人である二人を検挙し起訴したが、相変らず論難が起きている。
特に担当検事の過失で容疑者に対する出国禁止延長措置が取 られておらず、
容疑者の一人がアメリカに逃走し、社会的に糾弾を受けたりした。

韓国系アメリカ人と混血アメリカである10代の男女20人余りが、
1997年4月3日、梨泰院のビルの4階のクラブに集まりパーティーをしていたが、
空腹により同じビルの1階にあるファーストフード店に下り、
混血アメリカ人であるパターソンが、ジャックナイフでハンバーガーを切りながら、
仲間たちでナイフをテーマにした会話を交わした。
その後、仲間が外に出たり、4階に戻ったが、
パターソンとエドワードはハンバーガー店のトイレに入り、
そこで偶然 にトイレで出くわしたチョ・ジュンピル氏をジャックナイフで9ヶ所刺して殺害した。
その後彼らは、4階のクラブのトイレに行き血をぬぐった。
パターソンは、アメリカ第8軍基地に行き、友達に会ってズボンを着替えた。
そして、犯行に使ったナイフを捨てたが、
4月4日、匿名の情報提供を受けた犯罪捜査隊(CID) 要員に逮捕された。
4月6日、アメリカ出張に行って来たエドワードの父は、
息子の友達パターソンが TVのニュースに出ていることを見て息子を追窮し、
息子が犯罪を認めると、弁護士に会った後、4月8日検察に自首させた。

有力な容疑者として逮捕されたパターソンとエドワードは、
互いに相手が被害者を殺したとし、自分は横にいただけ主張した。

熾烈な法廷攻防の挙句、1審ではエドワードを真犯人として判決を下したが、
最高裁判所ではエドワードは無罪で、パターソンが犯人だと判決を下した。
そんな渦中で、国家はパターソンに対する出国禁止延 長措置を取らず、
出国禁止解除三日後に、パターソンはアメリカに逃亡し、捜査が不可能になった。
それに怒った遺族が国家を相手に損害賠償を請求し、
1審、2審では原告敗訴判決を受けたが、
最高裁判所で "担当検事の過失と遺族たちの精神的苦痛の因果関係が認められる"と判決が下された。

【パク検事】

チョン・ジニョン
【ピアスン】
容疑者/混血の米国人
チャン・グンソク
【アレックス】
容疑者/韓国系米国人
シン・スンファン
【キム弁護士】
アレックスの弁護士
オ・グァンノク
【アレックスの 父】

コ・チャンソク
【部長検事】

ソン・ヨンチャン

シン・スンファンって、イイ味出しますよね。
でも、こんな事件を起こすような”凶悪”さがないのはどうなんでしょう........

mocaの大好きなコ・チャンソク씨
でも、”コミカル”な役が好きです。何を演じても、”さすが”ですが。


以外だったのが、判事を演じたキム・ジュンギ。
コミカルなイメージしかなかったのに、こんなに穏やかな人格者が演じられるんですね。
まさに役者!

そして、ローファームの弁護士には、雪の女王な どのパク・ジニョン씨
この方は、いつも人格者ですね。
でも、こんな凶悪犯を無罪にしちゃう役というのは.... 弁護士って、悪にも善にもなりますね.......

チェ・イルファが、ジュンピルの父役で、チョイ役扱いなのは驚きですね。
もったいない。
ホン・ギソン監督の【選択】でメインキャストだったので、
そのお礼として出演したのでしょうか。

被害者ジュンピルを演じたのはソン・ジュンギ。
被害者だけに、遠目とか、無残な姿しかないのですが、けっこうイケてるのでは?と、思ったら、
ユチョン主演の【成均館スキャンダル】のメインキャスト4人組にキャスティングされました。
やっぱりカッコよかった(笑)



↓  結末までネタバレしますので、ご注意を ↓




1997 年4月8日。梨泰院。
夜の10時頃、クラブ”スカイハイ”は、
若者たちで、にぎわっていた。

そ の頃、どこかへ向かう男が二人......










に ぎわう”スカイハイ”の入ったビルの1階にある
アメリカ系ハンバーガーショップの男子トイレ。
そこで用を足していた大学を休学中のジュンピル。
突然背後から何者かに、ナイフで虐殺されてしまう。

翌 日、担当検事であるパク検事は、現場を訪れる。
しかし、そこは既にキレイに清掃された後で、
何も残されていなかった。
どよめく警察関係者たち。
「現場写真は撮ったのか?」
キム刑事は部下に尋ねる。
「30分程は....」
部下は答える。



パ ク刑事は、ジュンピルの遺体安置室を訪れる。
首の右側に3ヶ所、胸に2ヶ所、首の左側に4箇所、
刺し傷は全部で9ヶ所。
あまりにも惨い。
まだ23歳だというのに..... キム刑事は哀れむ。
どんなクズ野郎が梨泰院のど真ん中で、
こんな風に人を.... キム刑事は、憤る。






パ ク検事とキム検事は、ジュンピルの祭事場を訪れる。
ジュンピルの父はバスの運転手で、
質素な暮らしぶりだったようです。
被害者も、アルバイトしながら大学に通っていたようで....
キム刑事は説明する。

悲しみに暮れる遺族たち...
「こんなことになるなら、もっとお小遣いをあげてれば...
思いっきり遊ぶことも知らないで...」
母は嘆き悲しむ。


パ ク検事は、昨夜一緒だったという
ジュンピルの恋人に事情を聞く。
二人は図書館で勉強した後、ビールを数杯飲み、
その後、彼女とまだ一緒にいたいジュンピルは、
「トイレに寄るだけで」と、
事件現場となるハンバーガーショップに立ち寄った。
あまりにも長いので心配になる彼女。
すると、トイレから客が血相を変えて出てくる。
心配した彼女は、男子トイレを覗く。
そこには、変わり果てたジュンピルの姿が......





CID の捜査の結果容疑者とされたピアスンを、
検察は確保する。
「日が西から昇ったのか?米軍はどうしたんだ?
いつもは、捕まえても自ら調査すると、
無理矢理連れて行くのに、すんなり引き渡すなんて。
他に何か意図があるのかもしれません」
キム刑事は、CIDの態度に驚く。




容 疑者として逮捕されたのは、
メキシコ人で米軍駐在の父と、韓国人の母を持つ、
混血系アメリカンのピアスン。
韓国のアメリカンスクールに通う18歳。
韓国語は話せないという。
「演技じゃないのか?」
パク検事は疑う。

「韓 国語を話せるだろ?」
事務官のチェ係長は、韓国語で話すよう求める。
しかしピアスンは、何もわからないという表情。
「korean speak!母親に教わっただろう!」
そう言っても、ピアスンはとぼける。
「この野郎、役者だな」
チェ係長は、呆れて笑う。
「このクソ野郎!」
と、チェ係長がピアスンを叱責しようとしたその瞬間、
CIDのナンシーが取調室に入ってくる。









ナ ンシーは、米国市民を守るため、
韓国側が遵守すべき項目を読み上げる。

今から合衆国と貴国間で結ばれた行政協定に従い、
被疑者ロバート・J・ピアスンを捜査する際、
捜査当局が遵守すべき事項をいくつか公示致します。
貴韓国検察は、合衆国軍隊の構成員、
軍属とその家族の拘禁と引渡を合衆国が要請すれば、
この要請に対し好意的に考慮すべきであり、
米国代表が参席しない限り、被疑者の陳述は、
有罪の証拠として採用されません。
また、適切な軍服や民間服で手錠をしないこと。
ピ アスンの取調べが、通訳を介して行われる。
「小便に行って、人殺しをしたのか?」
パク検事は尋ねる。
「ただ見てただけだ。韓国人が殺されるのを」
ピアスンは訴える。




「こ の野郎、何を言ってやがるんだ!」
パク検事の相手を侮辱する言葉に、
ナンシーは敏感に反応する。

「ト イレの中に、お前以外の誰がいた?」
パク検事は尋ねる。
「韓国人1人と、A.J」
ピアスンは答える。
「その韓国人は死んで、
そのA.Jは今捜してるから、すぐ来るさ。
そうなれば、お前の嘘は全てバレる。
それでも、やってないと?」
パク検事は問い詰める。
「とにかく俺は殺してない」
ピアスンは言い張る。





パ ク検事は、CIDから預かった証拠品を見せる。
血に染まった衣服や靴。
ピアスンのものだ。
「お前がやったから、ロッカーに隠したんだろう?」
パク検事は問いただす。


そ こへ、電話がかかってくる。
竜山署から、A.Jがみつかったという連絡だった。


A.J こと、アレックス・ジョンは、
父親に付き添われ「証人」として、出頭してきた。





ア レックスへの尋問は、父親同伴で行われる。


パ ク検事は、尋ねる。
年齢は?本籍は?などと、アレックス自身への質問を。
アレックスは憤慨する。
「そんなことよりも、重要なことを聞いてくれよ!」と。
「重要なこととは何だ?」
パク検事は尋ねる。


「重 要なこととは... あの日、トイレの中であったこと。
俺は、韓国人が死ぬところを見たんだ」
アレックスは、興奮しながら話し始める。



4月8日、梨泰院にある”スカイハイ”
ピアスンはアレックスに尋ねる。
「ハンバーガー食いに行かないか?」
「OK!腹が減って死にそうだ」
アレックスは快諾する。







そ して、夜の10時頃。

ピ アスンは、ハンバーガーを切るために、
ジャックナイフを取り出す。
ナイフを見て、皆、感嘆の声を上げる。
「映画で見たのと同じだ!
バーガーを切るには惜しいな」
アレックスは、ナイフに興味津々だ。
「俺は人を刺してみた」
ピアスンは、さらりと言い放つ。
しかし皆に問い詰められると、
「映画の話さ」と、トボける。
皆 はタバコを吸いに外に行き、
アレックスとピアスンの二人だけになる。
「その話は嘘だろう?」
アレックスは人を刺したという話を問い詰める。
「ここで起きたら、かなり笑えるよな?」
ピアスンは、イカレた表情を見せる。
アレックスは、ただ笑うしかない。
「何を言ってんだよ」
しかしピアスンは本気だった。










ピ アスンの目が、誰かを追う。トイレに向かう一人の男。
事件の被害者ジョンピルだ。

そ の途端、ピアスンはナイフを手にする。

I’ll show you something cool, come with me.
(いいもん見せてやるから、ついて来い)
ピアスンは言い放つ。
アレックスは冗談だと、笑って受け流す。


そして、手がベタベタだと、トイレに行って手を洗う。
そこへ、ピアスンが入ってきたと思えば、
いきなり用を足していた韓国人をメッタ刺しにしたのだ。




と つぜんのことに、アレックスは震え上がる。
「なんてことを....」
だが、ピアスンは余裕気に笑うだけだ。


そ れが、アレックスがあの日見たことだと。
犯人はピアスンだ。
アレックスは証言する。






パ ク検事はピアスンを問い詰める。
「理由はなんだ?」
ピアスンは答えない。
「最後まで答える気がない。そうなのか?」
パク検事は言い放つ。
すると電話を取り「中に入れろ」と指示をする。
入ってきたのはアレックスだ。



「気 分はどうだ?」
アレックスはピアスンに尋ねる。
無視するピアスンに、アレックスは呆れる。




「4月8日の夜。二人は一緒にいたな?
アレックス。韓国人青年を殺したのは誰だ?」
パク検事は尋ねる。
「ピアスン」
アレックスは、ピアスンを指差す。



「俺 じゃない」
ピアスンは、しれっと言い放つ。



ピ アスンの言葉に、アレックスはいきり立つ。
「何言ってんだ!お前が殺したじゃないか!」
「お前が殺したろ」
「俺じゃない」
延々と二人は繰り返し、挙句の果てにピアスンは、
「アレックスが殺した」と言い出す。



パ ク検事は、CIDの捜査報告書をピアスンに突きつける。
「あそこでは『自分がやった』と自供し、ここでは覆す、
その理由は何だ?」
パク検事は問いただす。



「あ の調査官は、俺をゴミ扱いした」
ピアスンは、悔しい思いを吐き出す。
「俺は殺してない。
そこに何が書かれているのか、俺は知らない」
ピアスンは主張する。
「だったら、アレックスがやったのか?
お前がナイフを隠した理由は!」
パク検事は問い詰める。


「A.J は、友達だから.....」
ピアスンは、答える。

そして、あの夜のことを語りだす。


4 月8日のあの夜。
ジャックナイフを出したピアスンに対し、
「人を殺したことあるか?」
と、アレックスが挑発してきたのだと。
皆がタバコを吸いに外へ出て行くと、
「情けない」
アレックスはピアスンを侮辱した。
「やれ、誰かを刺してみろ。
お前に、そんな度胸ないよな」
アレックスは更に挑発する。
「A.J!お前はハイなのか?(ヤクをやったのか?)」
ピアスンは呆れる。
その時、アレックスの後ろをジュンピルが通り過ぎる。
そしてアレックスは言い放つ。





I’ll show you something cool, come with me.
(いいもん見せてやるから、ついて来い)





ピ アスンは、アレックスが理解できない。


(→hydeそっくりじゃないですか?)




ト イレに向かったアレックスに続き、
トイレに向かうピアスン。
中に入ると、
突然アレックスがジュンピルをメッタ刺しにした。
自分の顔にまで血しぶきが飛び、
ピアスンは動揺して声も出ない。





ア レックスは、ジュンピルを刺し続ける。
そしてジュンピルは、助けを求めるように
ピアスンに抱きついてくる。
驚いたピアスンは、ジュンピルを個室側に押し返す。







全 身血だらけの自分の体を見て、
ピアスンは驚愕する。
アレックスといえば、興奮冷めやらぬといった表情で、
誇らしげに笑うと、ナイフを捨てトイレを出て行く。




ト イレに一人残されたピアスンは、
どうしていいかさえわからない。
とにかく、アレックスが落して行ったナイフを拾い、
自分もトイレを出て行く。







パ ク検事は、法医学の教授を訪ねる。
「被害者こそ、本当の目撃者じゃないか?」
と、教授は解剖結果を差し出す。
教授は説明する。
ジュンピルには防御痕がないと。
80過ぎの老婆でも防御痕が出来るのというのに...
これは、被害者が加害者に
一瞬で制圧されたということだ。

そ して右首に最初の傷痕があるが、
これは、上から下へ向かって刺したものだ。
加害者は、被害者よりも背が高く、
力も強いということだ。
それを聞いたパク検事は、教授の言う意味を悟る。
「今の私に、アメリカの捜査結果をひっくり返せと?」
パク検事は苦悩する。

し かし、パク検事はアレックスを緊急逮捕した。
アレックスへの尋問が始まる。
思いがけない逮捕に、アレックスは動揺を隠せない。
「本当に殺してないですってば」
アレックスは訴える。



「お 前は被害者を殴ったと言ったが、
あの男の顔に殴られた痕はなかった。どういうことだ」
パク検事は問いただす。
「その通りです。
殴ったんじゃなく、押し返しました....」
ピアスンは答える。



パ ク検事は、疑いの目を向ける。


「俺 は手を洗いながら顔をあげたんだ。
それで、ピアスンがその男の首を刺してた」
アレックスは訴える。
「その時、お前は何をした?」
パク検事は尋ねる。
「恐ろしくて、こんな風にそのまま鏡で見ていた」
アレックスは答える。
「よしよし、わかった。次は?」
アレックスは言葉に詰まる。
「思い出せない.....」

だがピアスンは、冷静に答える。
「右首に3回、左首に4回、胸に2回だ」
パ ク検事は、法医学の教授に電話で尋ねる。
「解離反応を知ってるか?
人を殺した犯人の大多数が被害者の血を見た後、
次の行動を記憶できなくなる。
それは犯罪心理学の一般常識です。
それに薬物を使っていれば、更にその確立が高い」
教授は説明する。


教 授の話を聞き、
パク検事は薬物反応の検査結果を調べる。
しかし、二人とも陰性だった。
キム刑事は「何かがおかしい」と告げる。
「CIDの捜査報告によれば、
ピアスンは事件当日薬物を使ったとなっています」
キム刑事の報告をパク検事は叱責する。
怪しいのはアレックスだ。
「アレックスの薬歴が目に入らないのか!」

ア レックスの父は、パク検事に対し怒り狂う。
「検事が、あんなに横暴でいいのか!」と。
キム検事は、アレックスの父に告げる。
「アレックスは、今とても不利な立場にある」と。
担当検事が、偏見を持ち始めたら、
難しいことになると。
「ここで一発打破する何かが欲しいのだが....」
キム弁護士は、頭を悩ます。
「そうだ!嘘発見器を使いませんか?
法律的には証拠として扱われませんが、
検事の心証を変えるには効果があります」
キム弁護士の言葉に、アレックスの父は賛同する。
ま ず、ピアスンが嘘発見器にかけられる。
冷静に答えるピアスン。
嘘発見器の結果は、シロだった。

今 度はアレックス。
アレックスは、最初から同様を隠せなかった。
嘘発見器では、針が大きく揺れる。
結果、アレックスの容疑が更に強まってしまう。
ア レックスの父は、パク検事に訴える。
ピアスンには英語で質問し、
アレックスには韓国語で質問したそうじゃないか!
アレックスは見た目はコリアだが、
言語も、思考もアメリカンなんだと。
しかしパク検事は、受け入れない。
韓国人に韓国語で質問して何が悪いと。
アレックスの父は、怒り狂う。
検 察は、事件の関係者から事情を聞くべく証人に収集をかけた。しかし、マイケルは姿を現さない。
パク検事は、ナンシーを問いただす。
「なぜ、マイケルは来ないんだ!」
ナンシーは言い放つ。
「マイケルは米国市民であることをお忘れなく。
彼は事件以後、苦しんでいます。
彼もSOFA(在韓米軍地位協定)対象者で....」
パク検事は怒り狂う。
「一番苦しんでいるのは、被害者の家族だ!」
ナンシーの言葉を遮り、怒鳴りつける。

そしてマイケルが検察庁に出頭する。
ピアスンがCIDの捜査で容疑者とされたのは、
マイケルの有力な証言があったからだ。
しかしマイケルは、よくわからないと答える。
「ピアスンが血だらけなのを見て、どうしたのか尋ねると、
韓国人が近づいてきたから、押しのけたと」
マイケルの証言は、ピアスンの証言と一致した。
アレックスに刺された被害者が突然、
ピアスンに倒れ掛かってきたので、
恐ろしくて押し返したという....
パク検事は、ピアスンは冤罪だと確信する。
パ ク検事は、部長検事にマイケルの件を報告する。
「CIDが捜査ミスをしたと?」
部長検事は苦い顔をし、パク検事を諭す。
「これからチャンスも多い、整理して公判に渡せ」と。
しかしパク検事は納得できない。
「自信あるのか?」
部長検事は、パク検事に尋ねる。
パク検事は、言葉に詰まる。

つ いに公判が始まる。
アレックスを殺人罪で、
ピアソンを凶器所持及び、証拠隠滅罪にて起訴した。



ア レックスの父は息子を救うため、
元検事のキム弁護士を雇用する。
キム弁護士はアレックスに質問する。
ピアスンは、どんな友人だったかと。
「危険なヤツでした」
アレックスは答える。
「どんな風に?」
キム弁護士は、更に突き詰める。
「常にナイフを持っていて、何か起こしそうでした」
アレックスは訴える。
しかしパク検事は異議を申し立てる。
「被告人の推測です」と。
あの日ピアスンとどんな会話をしたか弁護士は尋ねる。
「オヤジ狩り(아리랑치기:アリランチキ)をやろうとしたが、
一度も挑戦したことがないと言っていた」
アレックスは答える。
「その理由は?」
キム弁護士は、その先を促す。
「いつも、最後にビビるそうです。
それで、ここでやればかなり楽しいはずだと」
アレックスは勝ち誇ったように主張する。
「この件を言った事実はありますか?」
判事はパク検事に尋ねる。
「ありません」
パク検事の言葉を聞いたアレックスは、弱気になる。
「あの時は... あのオジサン(検事)が苦しめるから、
思い出せなかった....」

(オジサンって/爆)

※아리랑치기(アリランチキ)とは、泥酔している人から
金品やカードなどを盗む強盗のことです。
日本式に言えば「オヤジ狩り」かな?
どこの国も、犯罪まで、やることは同じなんですかね......
検 事が集まったサッカー試合。
パク検事は先輩検事から、助言を受ける。
「あの事件は、共同起訴にすべきだろ?」と。
「アレックスの嫌疑が立証できなければ、
ピアソンにも嫌疑を問うべきだろう?
共犯の可能性だってあるわけだし」
先輩検事は諭す。
「単独犯だと確実な事件で、
無実の人に嫌疑はかけられない。
よくそんな発想ができるよな?本当に検事なのか?」
パク検事は言い放つ。
今 度はジェイクが証人台に立つ。
ジェイクは以前検察で、
ナイフを最後に持っていたのはアレックスだと証言した。
しかし、公判で証言を翻した。
あの時はそう答えたが....
アレックスがポケットに入れたのは見たが、
タバコを吸いに行ったので、
最後まで持っていたかは、わからないと。
公 判が終わると、キム弁護士とアレックスの父が、
ジェイクを歓迎する。
「君は、友人のために正しいことをした」と。
アレックスの父が金に物を言わせ、
ジェイクを懐柔したのだと、パク検事は悟った。




パ ク検事は、怒りが収まらない。
チェ係長に、全ての証言記録を見せるよう命じる。
証言記録は、原文ではなかった。
「原文は?」
パク検事は、キム刑事に尋ねる。
「原文まで添付する必要はないので....」
キム刑事は答える。
「これは誰が訳したんだ?」
パク検事は尋ねる。
キム刑事は答える。
英語に堪能な警官がおり、その警官が訳したと。
「そいつを呼んで来い」
パク検事はキム刑事に命じる。
キム刑事は、言いづらそうに告げる。
「転役しましたが.... 確か、10日前に......」
パク検事は、怒りが湧き上がる。
「なら、通訳した奴を呼べ」
今度は、チェ係長に命じる。
「今はおりません。語学研修に行きました」
チェ係長は答える。
どいつもこいつも、
アレックスの父の息がかかった者ばかりだ。
「ふざけやがって....」
パク検事は、怒りを露にする。


今 度は、デービッドが証言台に立つ。
デービッドは、ピアスンとアレックスがナイフを振り回しているのを見て幼稚だと思い、マイケル、ジェイク、シェリーと非常口でタバコを吸っていたと証言す る。
その後、バーガーショップのビルの4階にある
”スカイハイ”に戻ったと。
そして戻る途中、ピアスンとアレックスが非常階段を上がってくるのを目撃した。
最初に上がって来たのはアレックスで、続いてピアスン。
しかしキム弁護士は、階段を上りながら下を見下ろした場合、トイレの出入口は見えない。
従って、どちらが先にトイレを出たのかは見ていないことになると主張する。
「ピアスンとアレックスは、トイレを出た後一度も遭遇しなかったと答えている。それは、先にアレックスがトイレから先に出て、階段を上ったということで は?」
パク検事は反論する。
公判は、検事と弁護士の言い争い状態になる。
判事はデービッドに尋ねる。
階段を上がって来たアレックスの服には、
スプレーで撒いたような血の痕があり、
ピアスンは、全身血まみれだった。
それは間違いないかと。
「間違いない」
デービッドは証言する。
アレックスの父は、留置場の質素な食事に耐える息子を哀れみ、アメリカのジャンクフードを大量に差し入れする。
父は嘆く。全て自分のせいだと....
こんなことになるならば、
問題を起こしてもアメリカに留めるべきだったと....
「早く出してよ、気が狂いそうだよ」
アレックスは父に訴える。
「俺も気が狂いそうだ。だが、
最終公判までは、どうすることもできない」
父は答える。
「ジェイクがうまく言ってくれたじゃないか」
アレックスは訴える。
「彼らの証言だけでなく、
お前には、不利な証拠が多すぎる」
父は諭す。


父 の言葉を聞いたアレックスは、凶悪な表情を見せる。
「あの野郎どもには、もっとハッキリ見せておくべきだった」
アレックスは、ポツリと漏らす。
そんな息子を見た父は、驚愕する。
「何だって....?」
息子を疑い始めた父。
それに気づいたアレックスは、慌ててとりなす。


4 回目の公判が開かれる。
今度は、法医学の権威でもある医大の准教授が証人台に立ち、解剖の結果から証言をする。
まず、最初に刺されたのが右の刺し傷。
「ここを刺せば、血はどのように出ますか?」
パク検事は尋ねる。
「頚動脈のせいで、血は噴水のように出ます」
教授は答える。
「それが衣服につけば、どんな形態になりますか?」
パク検事は尋ねる。
「たぶん、スプレーを撒いたようになります」
教授は答える。
「そのように噴出した血が、アレックスが主張するように、
洗面台で手を洗っていた状態で付着しますか?
しかも、ピアスンが前方をふさいでいた状態で」
パク検事は尋ねる。
「噴出すとは言っても水しぶきのようではなく、
前に人がいたのなら、不可能でしょう」
教授は答える。
パク検事は尋ねる。
「法医学者としての見解として、どちらかが犯人だとすれば、どちらだと考えられますか?」
教授は答える。
「判断するのは困難ですが、どちらか一方だとするならば、
用を足している被害者の右首が最初の攻撃ならば、
たぶん、スプレーのように付着した方でしょう」
これで、アレックスは更に不利になる。

今度は、キム弁護士の弁護になる。
現場の写真について説明するキム弁護士。
「洗面台の角に大量の血が付着しており、
ピアスンは洗面台の角にいて事件を目撃し、
被害者が近づいたので、押し返したと言いました。
しかし、どうすれば洗面台の角に、
このように血が付着するのでしょうか?」
キム弁護士は、証人である教授に尋ねる。
「どうでしょうね... 被害者の血が噴き出す過程で、
ピアソンの方に倒れ、ピアソンが血を浴びながら
体が後ろに反れれば、その可能性もあるのでは?」
教授は答える。
「ピアスンは被害者を押し返したと言った。
それならば、小便器に倒れた被害者が再び立ち上がり、
洗面所の方に血痕を残し、
再び小便器の方に倒れたということでしょうか。
これが常識的に可能だと思いますか?
ナイフで9ヶ所も刺されたままですよ?」
キム弁護士は尋ねる。
「それは見ていないので、何とも言えません」
教授は答える。

その瞬間、パク検事の中で新たな疑惑が生まれる。
パ ク検事は、息子と娘が水鉄砲で遊んでいるのを見て、
実験を試みる。
ピアスンとアレックスの衣服などについた血痕は、
どのような状況でついたものなのか。
ピアスンが洗面台の前にいながら、
洗面台の角に大量の血の痕がつくことは可能なのか。
結局、答えは出ないまま。




次 の公判では、パク検事とキム弁護士が、
ジュンピルの用を足していた時の姿勢について、
大議論となってしまう。
ジュンピルは、ズボンを少し下げていた。
「ズボンを下げていれば、腰を少し下げるはずだ」
と、キム弁護士は主張する。
そうすればジュンピルの姿勢は低くなり、
ピアスンの身長でも、上から刺すことは可能だと。
二人がジュンピルの姿勢について双方譲らないため、
公判は全く進行しない。
判事は、公判の後、二人をとがめる。
「二人があのようなことでは、公判が進まない。
私も事件のせいで、最近休みが取れません。
理解してください」と。
そして判事は提案する。
「一度、実況見分をしてみては?」と。
二人は了承する。
事 件のあった梨泰院のハンバーガーショップ。
容疑者であるピアスンとアレックスが到着すると、
周囲は大騒ぎとなる。


ま ずは、アレックスから行われる。
おどおどしながら、トイレに入ってくるアレックス。
アレックスは証言通り、
洗面台の前で手を洗っている真似をする。
そして、アレックスの証言通り、
そこへピアスンがトイレに入って来ると、
いきなり韓国人青年ジュンピルを刺し始めたと。


ピ アスン役の警官がトイレに入ってくる。
しかし狭いトイレで、
体格のいいアレックスがかがみながら手を洗っていれば、
通路はふさがれ、いくら頑張っても、
アレックスの体により、つっかかってしまう。
人間が後ろを通ることは不可能だった。
「入ろうとしても、入れません」
ピアスン役の警官は答える。





予 想もしなかった状況に、アレックスは呆然とし、
キム弁護士でさえ、失笑するしかなかった。
そしてパク検事は、確信する。
犯人はアレックスだ。

今 度はピアスンの実況見分が始まる。
アレックス役の警官が被害者を刺し始めると、
「そうじゃない!」
と、ピアスンは否定し、自ら再現してみせる。
そして、説明する。



鮮 やかに再現してみせるピアスンを見て、
パク検事の中で、確信は更に強まる。



「アレックスが刺すのを見ていたら、
韓国人が俺の方に倒れてきた」
そして被害者役のマネキンが、
ピアスンに向かって倒される。
ピアスンは、そのまま個室側へ押し返した。
パク検事は倒れ掛かったマネキンを抱きかかえ、
ピアスンに言い放つ。



「こっ ちじゃなく、この方向に押し返したんだろうが」
と、実際の現場で被害者が倒れていた小便器側の角に
マネキンを起き直す。
パク検事のピアスンを庇うような行動に、
ピアスンは呆然とする。
キム弁護士は、パク検事の行動を非難する。
「何のつもりだ?ふざけてるのか?」


判事も、パク検事の行動を見て、何かを確信する。
「実況見分は、収穫がありましたね」と。
ハ ンバーガーショップを出て行くパク検事。
そこで待ち構えていたキム弁護士とアレックスの父。
「まるで、ピアスンの弁護士だな」
キム弁護士は、パク検事を非難する。


パ ク検事は、キム刑事を無理矢理酒につき合わせる。
「犯人は誰だと思う!」
パク検事は、キム刑事を問いただす。
「あのデブが麻薬を使って、ヤったんでしょう」
キム刑事は答える。
「麻薬の結果は陰性だったと言ったじゃないか」
パク検事は、言い放つ。
「あの薬は、出にくいからですよ」
キム刑事は答える。
「米軍でのピアスンの自白はどうなる?」
パク検事は、更に問い詰める。
「メキシコ人の父に、母親米軍部隊の出身だから、
彼らの目には、ピアスンは人間として映りませんよ。
この際に、邪魔な奴らを排除するつもりですよ」
キム刑事は答える。
「本当にアレックスなのか?」
パク検事は尋ねる。
キム刑事は、うんざりし始める。
「わからないのなら、このまま決めましょう。
決めても、50%じゃないですか」
キム刑事は言い放つ。
それを聞いたパク検事は逆上する。
「何だと!この野郎!」




次 の公判が始まる。
パク検事が自分の味方だと悟ったピアスンは、
パク検事に気軽に微笑みかける。
だが、パク検事は冷たく言い放つ。
「お前は犯人ではない。だが、お前は欠陥だらけだ」と。


そ して今度は、CIDの捜査官が証人席に立つ。
捜査官は、ピアスンの手に入れたタトゥについて説明する。
「今は4つのタトゥですが、CIDでの調査当時は3つでした。
左手3点のタトゥは、ギャングの証です。
”狂った人生”を意味します。
CIDでは、今までの状況により、ピアスンが、
フェニックス系ギャング”ノルテ14”の一員だと確信した」
捜査官がタトゥやギャングについて説明し始めると、
ピアスンは、急にソワソワし始める。
キム弁護士は、証人に尋ねる。
「韓国検察側は、証人が所属するCIDの意見を、
ほぼ黙殺しましたが、何が理由だと思いますか?」
捜査官は、「わからない」と、答える。
キム弁護士は、FBIと同等の捜査権を持つCID、
しかも、そこに15年勤続している捜査官の意見を、
韓国側は”公に”信用できないと発言していると、
パク検事の判断に問題があると指摘する。





今 度は、チャー ルズが証言席に立つ。
チャールズは、アレックスらがバーガーショップに下りた後、アレックスが戻ってきた時の状況を証言する。





血 まみれのアレックスを見たチャールズは、
アレックスを問い詰める。
「いったい、何をしでかしたんだ!」と。
すると、アレックスは、大胆な笑みを浮かべる。
「やり遂げたんだ。たった今、ある人間の首を刺した」
アレックスは、興奮しながら喜びを語る。
それを聞いたチャールズは、アレックスを怒鳴りつけた。
「お前は狂ってる!人を殺したのか?なぜだ!」




チャー ルズは証言する。
アレックスが”スカイハイ”に戻ってきた時、
「面白いから殺した」と言ったと。
法廷内は騒然とする。
遺族は、たまらない気持ちだ。




「殺 人動機は、”面白いから!”」と、
新聞は見出しに載せる。
部長検事は新聞を読みながら、パク検事に語る。
「世の中が歪んでる。こんな時、何が重要かわかるか?
”基準”だ。それでこそ、法と正義が正せる。
辛いだろうが、最後までやり遂げろ」
事件に対するパク検事に否定的だった部長刑事も、
「面白いから殺した」
そんな動機に怒りを露にした。






そ して、結審公判がやってくる。
6回に渡る審理を終え、
判事は最後に、判事ではなく、人間として二人に問いたい、
と、告げる。
「2つ質問します。二人はやはり、被告人としてではなく、
一人の人間として、正直に答えて欲しいと思います」
そして判事は尋ねる。
「そこに立つどちらかの一人が犯人で間違いありませんか」
二人とも、「はい」と、答える。
「まず、アレックスに尋ねます。
チョ・ジュンピル氏を殺害したのは、誰ですか?」
アレックスは答える。
「私の横にいるピアスンです」と。
判事は、今度はピアスンに尋ねる。
「私の隣りにいるアレックスです」
ピアスンは答える。
判事は、パク検事に求刑を求める。




「一 人の韓国人青年が亡くなりました。
苦しい家計の中で、アルバイトをしながら大学に通った。
家族の希望であり、自慢の息子が、
ある夜、理由もなく死にました。
被告人アレックス・ジョンは、
事理判断が未熟な18歳の少年ですが、
単に自身の試みや面白さから、
一人の人間を切り裂きました。
しかも裁判過程においても、
罪を反省するどころか、友人に罪を着せるなど、
米国国籍を前面に出し、
常に韓国の法体系を嘲弄しました。
このような被告人を寛容に配慮する価値は
一切ないと判断し、最高刑の死刑を求刑します」
パク検事は、判事に告げる。
「死 刑.....」
それを聞いたアレックスの父は驚愕し、
アレックスは恐怖で脅える。
「俺が... 俺がやったんじゃない!」
アレックスは叫ぶ。

そして、判決が言い渡される。
アレックスは、殺人罪として、無期懲役。
ピアスンは、凶器所持と証拠隠滅罪で、
懲役長期1年6ヶ月から短期1年と。
アレックスも、アレックスの父も、納得がいかない。
こ のままでは引き下がれないアレックスの父。
何としても息子を出してやらなくては。
アレックスの父は、
ロー ファームのチャン弁護士を訪ねる。
裁判日誌に目を通す、ローファームの弁護士たち。
チャン弁護士は断言する。
「この喧嘩は、互いを相手に勝てません」
アレックスの父は、言葉に詰まる。
だが、チャン弁護士は予想外の言葉を口にする。
「勝てませんが、負けないようにしてみます」
ア レックスの裁判は、最高裁判所へ上告する。
チャン弁護士の言う通り、勝つことはできなかったが、
「証拠不十分」に持ち込み、負けずに済んだ。

ア レックスが上告したことで、
ジュンピルの父は、あまりのやるせなさと悔しさで、
仕事中涙を流し、バスの運転ができなくなってしまう。






ピアソンとアレックスが、
互いに異なる主張をしていることに対し、
どちらに信憑性があるか比較することが必要だった。
被告人の単独犯とは、必ずしも断定できない。
用を足す姿勢は、一般論であり、
被告人の麻薬使用については、
記録されておらず、根拠が無い。

以上の理由から、原審判決は破棄された。
つまり、アレックスは無罪となった。


ジュ ンピルの家族は、あまりにもやるせない。
二人のうち、どちらかが犯人なのに、
二人とも殺人罪にならないとは。
それでは、ジュンピルは誰に殺されたというのか。
家族はパク検事を訪ねる。
判決が不服なのはパク検事も同じだ。
チェ係長は、そんなパク検事を配慮し、
家族に引き取るよう促す。
証拠を再度収拾して、再度収監するそうです、と。
「最高裁判所で無罪になったのなら、無罪ですよね?」
ジュンピルの従兄弟は反論する。
「アレックスが無罪なら、ピアスンを起訴してください。
二人の内、どちらかが殺したと言ってたじゃないですか。
一方が無罪なら、もう一人が犯人ですよね」
ジュンピルの姉は願い出る。
チェ係長は説明する。
「ピアスンは既に刑が確定しているので、
一度刑が確定すれば、起訴できない。
もしピアスンを再起訴したとしても、
アレックスと同様に無罪が成立してしまいます」と。
「ありえない.....
そんな法があるの......
誰も殺してないなら、誰が息子を殺したの!」
家族は悔し涙を流すばかり。
パ ク刑事は、部長刑事に捜査令状の発令を依頼する。
キム弁護士の事務所を捜査すれば、
必ず何かが掴めると。
ジェイクが途中で証言を覆したのも、
必ず連中が絡んでいる。
最高裁判所に提出した弁論書にも疑惑があると。
それを明かせば、私は再び勝てます。
パク検事の言い分を、部長検事は否定する。
「最高裁判所の判断は、アレックスの犯人否定ではなく、
100%の証拠がないというだけだ!」
「だから、その証拠を探し出してみせます!」
パク検事は言い張る。
「今更、君の検事としての捜査を誰も否定はしない。
事件から手を引け。
君が逮捕すべき犯人は、アレックス以外に大勢いる」
部長検事は命じる。
キ ム弁護士は、新しく事務所を構える。
アレックスは父の代理だと、贈り物を届けに現れる。
アレックスは大学に入ったという。
「勉強は、うんざりだ」
と嘆くアレックスに対し、キム弁護士は諭す。
「人生は、うんざりな事を克服する過程なんだぞ」と。
アレックスは笑う。
アレックスは、恋人をキム弁護士に紹介し帰って行く。



「誰?」
と、アレックスの恋人は尋ねる。
「昔あることで世話になった人」
アレックスは答える。
「どんなことで?」
恋人は更に尋ねる。
「知らなくていい」
アレックスは、言い聞かせる。
「何なの、気になる。何があったの?」
恋人は、引き下がらない。

二人の会話を耳にした金弁護士は、
廊下に出て、二人の会話に耳をすます。
「かなり苦労したけど、面白いことがあったんだ」
アレックスは、全く悪気を感じていない。
「面白い?何が?早く話してよ」
恋人はねだる。
「マジで聞きたいのか?」
アレックスは尋ねる。そして、言い放つ。
I’ll show you something cool, come with me.」
(いいもん見せてやるから、ついて来い)
あの事件の時の言葉だ。
キム弁護士は、驚愕する。
犯人は、やはりアレックス?
キム弁護士の中で、疑惑が生まれる。
果たして、自分のしたことは正しかったのだろうか...
キム弁護士は、葛藤する。
パ ク検事は、地方の検察に行くことにした。
パク検事は、荷物の整理を始める。
その時、何者かが声をかける。
「僕も、これで失礼します」
パク検事は告げる。
「私は優秀な検事ではない。だが、お前だけは救った」

声 の主は、刑期を終えたピアスンだった。
ピアスンは微笑みながら答える。
「わかってます。僕は殺してません。
これが僕の確信であり、検事さんの確信ですよね?」
ピアスンは、流暢な韓国語で話した。

「ピ アスン!」
去って行くピアスンを、パク検事は呼び止める。
「お前、韓国語を話せるようだな」
パク検事の言葉に、ピアスンの表情は強張る。

「監 獄で教わりました」
作り笑顔を浮かべ、ピアスンは去って行く。

パ ク検事の中にもまた、疑惑が生まれる。
果たして、本当にピアスンは犯人ではないのか?
自分は、判断を誤ったのでは?

去っ て行くピアスン。
先程までの好青年のような笑みは消え、
勝ち誇ったような笑みを浮かべる。
それは、法廷までも翻弄する
ギャングのピアスンの表情だった。

パク検事は、事件のあったバーガーショップを訪ねる。
しかし、あのトイレは塞がれ壁になっていた。
全ては、あの壁の向こうに封印されてしまった。

END





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