訪問者 -Host & Guest- 
 原題:訪問者 방문자 (パンムンジャ)<2006>

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妻に離婚され、時間講師の職まで失ったホジュン。絡まるばかりの人生は全て世の 中のせいにし、ワンルームに閉じこもったまま一人で暮らしている。彼を訪ねるのは、間違い電話やセールスマンがすべて。

そんなある日ホジュンは、ドアの取っ手が壊れ浴室に閉じ込められてしまう。いくら揺さぶっても叩いても、ドアはピクリともしない裸の まま救助を待ったホジュンは結局、寒さとストレスで失神直前に達する。

助けて... 助けて... ホジュンのうめき声は、おりしも玄関のチャイムを押した訪問伝道青年ゲサンの耳に届 く。ドアの取っ手を壊しホジュンを救出したゲ サン。目覚めたホジュンは訝しみながらゲサンを眺め、やつれた反応を見せる。ゲサンは、そんな彼にいつものように明るい微笑で応える。

ゲサンは自分のせいでドアの取っ手が壊れたといって、翌日修理のためにホジュンの家を訪問する。世間万事に不平を言いながら攻撃的に対応するホジュンだ が、この特別な「訪問者」ゲサンにだけは窮屈な態度を和らげるほかはない。

居酒屋、映画館、カラオケなど... ホジュンがいつも一人で行った場所にゲサンを連れていくようになるが、似たところが一つもない二人の男は、ふらつく のが常だ。同級生、劇場店員、タクシー相乗客など、世の中の気にくわない野郎や事件だらけで、ホジュンは行く場所行く場所で一悶着起こす。ゲサンは、そん な彼 を制止するのに忙しい。

そんな時間を過ごしながら、自分の話を一つずつ取り出し、互いを知っていく二人。ホジュンは、いつも微笑で世の中に対しているゲサンの胸の内が実際は辛く 暗いということを知る。人生の重要な瞬間ごとに神と信仰に伴う選択をしながら、普通の人々から遠ざかってきたことも。またゲサンも、ホジュンの 心を推し量るようになる。シニカルで不満いっぱいの今の姿は、むしろ人に対する信頼と希望を捨てることができず受けた傷のせい であることを。

あたかも訪問者のように世の中と人生のドアの外に立ったまま、中に足を踏み出せなかったホジュンとゲサン。思いがけない訪問者に出会い、心の扉を開く ようになった彼らは、世の中に向けて堅く閉じていた心の扉も開けてみようとする。不満屋男の前に現れた品行方正な微笑青年。彼らの怪しい友情が始まる。
【予告編】
監督 シン・ドンイル <2006>訪 問者、<2008>私の友達、彼の妻、<2009>バンドゥビ

出演

キム・ジェロク <1995>永遠なる帝国、<1995>犬のよう な日の午後、<1995>愛するのにいい日、
<1996>ゴースト・ママ、<1998>チム~あこがれの人~、 <1998>八月のクリスマス
<1999>新装開店、 <2002>THE KISEI 寄生、<2003>チャ・テヒョンのハッピー☆クリスマス、<2004>彼女を信じないでください、<2004>20のアイデンティティ、<2005>マラソン
<2005>B型の彼氏、<2005>Mr.ソクラテス、<2005>訪問者、<2007>よいではないか、
<2007>喧嘩 -ヴィーナス vs 僕-、 <2006>6年目も恋愛中、<2008>星から来た男
<2008>クロッシング、<2008>うちの学校のET、<2008>GO GO 70s、<2009>バンドゥビ、<2009>天国の 郵便配達人、<2010>暴風前夜

カン・ジファン

<2005>訪問者、<2008>映 画は映画だ、<2009>7級公務員、 <2009>顔と心と愛の関係

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【レビュー&ネタバレ】
2006年11月公開。スクリーン数2館、観客動員数は約4600人のイン ディーズ映画。
面白い映画ではないですが、良い映画です。
カン・ジファンが人気が出なければ、DVD化もされなかったと考えると惜しいですね。
まだまだ眠っている良い映画も、たくさんあるかもしれませんね。
最近mocaは、韓国のインディーズ映画っていいなぁ... と思うようになりました。
それというのも、後悔なんてしない走れ自転車俺たちに明日はない... などの作 品を観て。
つまんないインディーズ映画の方が断然多いでしょうけど。

ドラマティックな商業映画とはまた違い、地味な内容でもドラマを見せてくれ、
そして、特有の質感が何とも言えず好きです。

【ホジュン】  主人
大学講師
キム・ジェロク
【ゲサン】 訪 問者
伝道青年
カン・ジファン

キム・ジェロクとカン・ジファン以外は、目立つキャラクターはなし。
この二人だけのドラマなのに、飽きさせない。

キム・ジェロクは端役専門俳優と言え、ほんの数秒の出演の作品がほとんどです。
その気持ち悪さから(失礼)、ついつい「キム・ジェロクを探せ!」じゃないですが、目に付いて仕方なく....
彼が主演を演じるのは、後にも先にもないと思います。
このホジュンというキャラクターは、キム・ジェロクに適役だったと思いますが、
とにかくヤツのヌードシーンがなげーんだよっ!(怒)
それさえなければ、好演でした。←ちょっと違う?

カン・ジファンはすごい。
観る作品ごとに、異なるキャラクターを完全に作り上げている。
タフな役も、ソフトな役も、違和感なく自然に見せてくれます。
驚くべき演技力。天性の才能というべきでしょうか。
この映画では、天然記念物並の品行方正な好青年。
それがピタリとハマっています。
カン・ジファンは「なぜ、この顔で人気が?」と不思議だったのですが、
作品を観れば観るほど魅力がわかるような気がします。

「Host & Guest」というサブタイトル&英題からわかるかもしれませんが、
この映画は、「主人」に当たるホジュンの元へ、
「ゲスト」に当たる伝道青年のゲサンが布教活動のため訪問することから始まります。
「訪問者」は、ゲサンです。
しかし変な縁から二人の付き合いが始まり、
互いを知るうちに、最後にはホジュンがゲサンを訪問する「訪問者」になります。

ホジュンは非正規雇用者であり、大学講師をクビになったばかり。
履歴書を送っても不採用。
妻には離婚され、幼い息子は放りっぱなし。
世の中からも、人間からも背を向け、ワンルームに閉じこもり、
不満ばかりを抱え、一人きりで世の中を生きている。
うまくいかないのは全て世間や他人のせい。
自分の価値がわからないのは相手が悪い。そうして自分とさえも向き合わない。
そんなホジュンの中に、「ゲサン」という訪問者が入り込んでくる。
純朴な好青年であるゲサンは、偏屈なホジュンに、当たり前のようにコミュニケーションを取ろうとする。
普段なら門前払いするはずのホジュンも、ゲサンに命を助けられた手前、邪険にできない。
最初は「用事」があり、会っていた二人。しかしいつしか、奇妙な友情が始まる。
理屈っぽいだけのようなホジュンに見えるが、その心の奥にある信念や哲学をゲサンは見抜いたのだ。
ゲサンは人当たりが良いように見え、実は人間に対する不信感がある。
そのゲサンも、罪人になっても自分の信念を貫こうとする。
それを目の当たりにしたホジュンは強烈なショックを受け、自らを省みる。
今まで向き合うことのなかった社会、人間、自分と向き合うようになり...
そして、今まで訪問していたゲサンに代わり、今度は自分がゲサンを訪問するようになる。

とても文学的な作品です。
全体的に良い作品なのですが、商業映画のように観客が求めているものを与えてはくれません。
そこが文学であり、インディーズであるわけですね...
観客としては、ラストに感動を期待してしまうことでしょう。
しかしそんな観客の期待は無視し、映画は終わってしまう....
この映画のテーマとしては、ホジュンが「訪問者」に変わる心の変化が重要なわけで、
それを伝えれば十分なのです。
作り手と観客の求めているものがすれ違ってしまう感じですね。
そこが不完全燃焼になり、不満に思う方もいらっしゃると思います。

ゲサンの行動はあまりにも衝撃的でした。それを観るだけでも価値があると思います。
一人の人間の価値観を変えてしまうほどですから。

不満だらけで理屈っぽいだけに見えるホジュンも、
人間に対する信頼と希望を捨てきれず受けた傷がそうさせた。
その気持ち、よくわかります。



↓  DVD発売されていますので、簡潔にストーリーを。結末までネタバレします ↓


妻に離婚され一人で暮らすホジュンの元へ、ある日伝道青年のゲサンが訪問する。
しかしホジュンは冷たく門前払いを食らわせる。


ホジュンは近所の公園で散歩する。
するとそこには、蔚山で逮捕されたスパイ夫婦が銃を隠匿していた場所だという立て札があった。
銃を隠匿していた場所に、小便をかけるホジュン。


ドアのノブの調子が悪い浴室。
ある日ホジュンは全裸のまま浴室に閉じ込められてしまう。
助けを呼んでも、誰にも届かない。
ホジュンはそのうち朦朧とし、失神寸前となる。


以前門前払いされたホジュンの家が気になり再び訪問するゲサン。
するとドアの向こうから、かすかに「助けてくれ...」という声が...
(あんな声が外まで聞こえるかー)
慌てて家の中に入り、ドアをこじ開けホジュンを救出する。


意識を取り戻したホジュンは、ゲサンに礼がしたいという。
以前冷たく追い払ったのに助けてくれるなんて... ホジュンは以前ゲサンに取った態度を後悔する。
ゲサンは自分が伝道している宗教の冊子をホジュンに差し出す。
ペラペラとめくってみるものの、ゲサンに突き返すホジュン。
「これでも教師の端くれだ。教えを請うなんてマッピラだ」と。
そして、他のことで礼をさせてくれ... と、ゲサンを映画に誘う。


最近の映画は暴力的だったり淫乱だったりするので... と、拒んでいたゲサンだが、
映画学科の講師であるホジュンは、「感動できるトルコ映画だ」と、ゲサンを連れて来る。
ゲサンも、ようやく興味津々になり期待する。
予約なしに来館したため(韓国の映画館は全席指定で予約もできます)、前方の悪い席に。
「始まったら後ろの空席に移ろう」
とホジュンはゲサンに耳打ちするが、ゲサンはここでいいと言う。
しかしホジュンはゲサンを連れて後方に移動する。
だが、開始時間に遅れた客がやってきて、席を移動するよう係員に指示されたホジュンは逆上する。
「遅れてきたヤツは空いている席に座らせろ!人の気持ちがわからないのか!」と。
「規則なので」と言い訳する支配人に対し、更に激怒するホジュン。
「規則?だったら、客の気持ちを考えて規則を作れ!」と。
映画館の支配人が警察を呼ぼうとするのを見て、ゲサンはホジュンを無理矢理連れ帰る。


翌日ホジュンが家に戻ると、そこにはゲサンが。
「ドアのノブを自分が壊したので修理しないと」と。どこまでも律儀なゲサン。
ホジュンは今度はゲサンを酒に誘う。
宗教のせいで差別を受けたゲサンに対し、「平凡なヤツほど省かれる」と、ゲサンを理解するホジュン。

酒を浴びるほど飲むホジュンを心配するゲサン。
「カラオケに行こう」
ホジュンは言い出す。
「代わりに、お酒はその一杯で最後にしてください」
ゲサンはそう言ってカラオケにつき合う。


しかしカラオケを歌っていると、部屋にホステスがやってくる。
ホジュンが呼んだのだ。
激怒して部屋を出て行くゲサン。
「あなたと僕とは、違いすぎる!」
追いかけてきたホジュンに、温厚なゲサンが言い放つ。
「俺が悪かった... もうしない」
謝るホジュン。


ホジュンはゲサンを家まで送ると言って、タクシーを止める。
しかしホジュンは、相乗りの客と殴り合いのケンカになってしまう。
(韓国のタクシーは”乗り合い”のように相乗りがあります)
タクシーの中で流れていたブッシュ大統領の演説について意見が衝突したのだ。
「アメリカ国民は賢明な選択をした。ブッシュは敬虔なクリスチャンだ。
サタンの退治にはもってこいだ」
相乗りの客は自分の主張を次から次へと口にする。
それを聞いていたホジュンは逆上する。
「十戒に書いてあるだろう!汝の敵を愛せと!
イラクで多くの人間を殺しておきながら何を言ってるんだ!」と。
ケンカになりタクシーを降ろされたホジュンとゲサン。
ゲサンはホジュンに告げる。
「死ぬまで、あなたを見捨てません」と。
ゲサンに、ホジュンの心の中にある一貫した信念が伝わったのだ。


そうして、二人の友情が始まる。
ゲサンは田舎で暮らす母の家にホジュンを招待する。
その日はゲサンの誕生日だった。
ゲサンの母は、ゲサンのためにワカメスープを作るが、ゲサンは一口も飲まなかった。
「せっかくオモニが作ってくれたのに、あの態度はないだろう?」
ホジュンはゲサンをたしなめる。
「うちには誕生日なんて必要ないんです。365日毎日が記念日です」
ゲサンは言う。
「お前の信じてる宗教とやらは理解できん。神よりも人間を信じろよ、ゲサン」
ホジュンは諭す。
「人間は不完全だ。神は完全です」
ゲサンは言う。
「じゃあ聞くが、神が何をしてくれる?”真理は自ら悟れ”と突き放すだけだ」
ホジュンは反論する。
「神はいつも僕らと共に生きている」
ゲサンは言う。
「それで?この世の不条理や矛盾... 人々の苦しみに無関心すぎるだろ、違うか?
自分たちの信念だけが正しいと思うな。むしろ少数派じゃないか」
ホジュンの言葉に、ゲサンは不満を覚える。
「ヒョンも、僕らを異端者だと思うのか?ヒョンだって、何か自慢できるようなもの持ってるのか!
いつも口だけじゃないか!」
ゲサンの痛烈な言葉が突き刺さるホジュン。
「その通りだ... 俺は無能な人間だ...」
ホジュンは力無く応える。
「言い過ぎた、悪かった...」
ゲサンは謝るが、ホジュンにとっては痛いところを突かれたのであり、認めざる得なかったのだ。


被告席に座るゲサン。
そして、ゲサンの裁判を見守りに来たホジュン。
裁判長に「言いたいことは?」と求められ、堂々と主張するゲサン。

僕はこの場に立つまで、多くの批判とわずかな激励を頂きました。
この場にこうして立つ勇気を持てたのは、私の良心と宗教的な信念が支えてくれたからです。
イエス様は、「刀を持つ者は、刀で滅びる」とおっしゃられました。
僕はイエス様の教えに従います。
銃は手にしません。
その信念により監獄へ送られるのであれば、それを受け入れます。
過去半世紀もの間、1万人もの若者が良心的な兵役拒否により投獄されました。
最後に... 一つだけ祈ります。
このような痛みを受ける者が、僕で最後になりますことを。
裁判長。
アボジは戦争により命を奪われました。
人の愛し方が人それぞれのように、兵役を拒む者と受け入れる者とでは、
社会を愛し、奉仕する形が異なるだけです。
隣人と助け合う平和な世界が現実になることを確信します。
ありがとうございます。

ゲサンの言葉に、拍手が湧き起こる。
裁判長は念を押す。
「被告は国家遺功者の息子であるため、4週間の予備訓練のみで兵役を終えられます。
それでも、拒否しますか?」
「拒否します」
ゲサンはハッキリと答える。
複雑な気持ちでゲサンを見守るホジュン。ゲサンの、不器用なまでのまっすぐさ。
ホジュンは激しい衝撃を受ける。
ゲサンは、懲役1年6ヶ月の刑に処された。


ゲサンの行動に衝撃を受けたホジュンは、
身なりも整え、人間としての自分も、恥ずかしくない父親としての自分も取り戻した。
人間とも、社会とも、向き合うようになった。


ホジュンは息子を連れゲサンの面会に行く。


「ゲサン。俺が... 俺が、ここから出してやる」
ホジュンは微笑む。
ホジュンから出た思いがけない言葉に、ゲサンは涙ぐみ微笑む。


ホジュンは銃の隠匿場所に穴を掘る。
鼻歌を歌いながら、穴の中に看板を埋め、足で踏み固める。

END

ちょっとこのラストでは物足りないですよね。
どうやってゲサンを出すのか、また、ゲサンを出してあげるための苦労などの感動が欲しかった。
それが商業映画なんでしょうね...
心の変化が、この映画のテーマですから、逆にそんな劇的なラストにしてしまったら、
テーマがぼやけてしまうでしょうから.....
助け出してやるのが大事なのではなく、心が大事....

隠匿場所の看板を埋めるのは、いろいろな解釈があるとは思いますが、
・ゲサンを助け出すための行動なのか、
・自分もゲサンのように信念を貫くための行動なのか、
それだけはハッキリさせて欲しかったですね。

前者であれば、
「こうして看板を立てるほど銃を持った人間を非難するのに、銃を持つのを拒んだ人間を罪人にするのか!」
と世間に訴え、ゲサンを救おうとする。

後者であれば、
「人の命を奪う銃を隠匿した場所を見世物にするな!」
というホジュンの信念を貫いたのでしょう。
以前は小便をかけるだけで、その行為は誰にもわからないものだったことに対し、
今回は明らかに、その行為が判明してしまいますから。

どちらにしろ、ホジュンが自分を、自分の信念を信じ、行動へと移すようになったことが大きな意味を持つのでしょう。



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