映画は映画だ  Rough Cut
 原題: 映画は映画だ 영화는 영화다(ヨンファ ヌン ヨンファダ)<2008>

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映 画を撮影していた俳優チャン・スタ(カン・ジファン)は、アクションシーンで、
カっとする性格を抑えることができず、相手俳優を暴行し、映画は制作中止の危機に陥る。ヤクザのようなスタの相手役となる俳優がおらず、窮地に追い込まれ る。

スタは、苦肉の策として、ルームサロンでサインをしてやり知り合いになった組織暴力団ナンバー2のイ・ガンペ(ソ・ジソプ)を訪ね、映画への出演を提案す る。

密かに映画俳優の夢を持っていたガンペは、スタの提案に興味を持ち、出演する代わりに、1つの条件を突きつける。アクションシーンは演技ではなく、本物の ケンカをするということ。

俳優にならなければ、ヤクザに負けないケンカの実力を持っていたち自負するスタは、この条件を受け入れ、二人の激しい戦争のような映画撮影が始まる。


【予告編】
監督 チャン・フン <2008>映 画は映画だ、<2010>義兄弟、<2010>高地戦
原作 キム・ギドク(金基徳) 作品一覧

出演

ソ・ジソプ(蘇志燮)

<2000>ラ ブストーリー ミス・ヒップホップ&ミスター・ロック、<2002>盗 られてたまるか
<2008>映画は映画だ、<2009>ソフィーの 復讐(韓中合作)、<2011>ただあなただけ

カン・ジファン

<2005>訪問者、<2008>映 画は映画だ、<2009>7級公務員、<2009>顔と心と愛の関係
ホン・スヒョン <2001>バ ンジージャンプする、<2008>宿命、 <2008>映 画は映画だ 、<2009>仁寺洞スキャンダル
<2010>カモメ(釜山プロジェクト”CAMELIA”:日本編)

チャン・ヒジン

<2005>笑 顔の記憶、<2006>アパートメント、 <2006>家門の復活-家門の栄光3
<2006>暴力サークル、<2008>待ちくたびれて、 <2008>映画は映画だ(特別出演)

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【レビュー&ネタバレ】
2008年9月韓国公開。
観客動員数は、約132万人!
いやぁ... キム・ギドク監督制作の映画ですよー
こりゃ、ビックリ。
ソ・ジソプ&カン・ジファンのネームバリューもあるとしても、それだけの映画ではございません。

面白い!

ヒットには及ばぬものの、大健闘ではないでしょうか。

キム・ギドク監督もウハウハで、「俺にだって面白い映画は作れるんだ」などと豪語しておりましたが...(笑)

原作がキム・ギドクで、シナリオ・制作にも参加しているものの、
キム・ギドクが監督すれば、風刺・皮肉が前面に押し出された「キム・ギドクわーるど」な映画になったでしょう。
この原作を、チャン・フン監督が、キム・ギドク監督の「風刺・皮肉」を引き継ぎつつ、
大衆ウケする映画に演出した感じですね。
キム・ギドクならではの面白さも残しつつ、キム・ギドクの毒々しさを除いた感じといったところでしょうか。
やっぱりキム・ギドクは面白い。
まさに異端児。
チャン・フン監督は、第一作監督作品だけあって、物足りない面もありますが、
次回作に期待したいですね。

この映画のポイントは、「面白い=楽しい」ではないということ。
この映画は、あくまでもノ アールで あること。
ノアールの行く末は、残酷で、無情な現実が待っていること。
何の心構えも持たずに観ていると、あまりにも期待を裏切られるラストであり、
金属バットで頭をカキーン!と殴られた衝撃のまま、身動きできなくなるかもですね。
やはりキム・ギドク。
甘っちょろい映画は作りません。
所詮、映画は映画だ  と、いうことですね.....
現実は現実だ。
映画とは違う。
悲しいかな... ヤクザは、ヤクザだ。とも言えるかもしれません。
劇中、ガンペが映画に影響され、変化を見せる中に淡い期待を抱いてしまいます。
ガンペが見せる人間らしさ.....
しかし、所詮「映画は映画だ」と、痛烈に思い知らされ.....
ヤクザとしての「人間らしさ」に戻ってしまう。
もちろん、ヤクザといってもピンキリで、パク社長のような極悪無情なヤクザもおり、
ガンペは現実的で非情ながらも、「義理」を重んじるヤクザであるのでしょう。
自分が映画の影響により見せた「甘さ」により、自分の子分を殺されてしまう。
怒り、悔しさ、悲しみ.....
いろんな人間らしい感情がガンペの心の中に渦巻きます。
ただ、ガンペのスタに対する感情だけが、あまりにも揺れ動いていて、読めません。
スタに対し「敵意」とさえ感じる「対抗心」しか見えなかったガンペ。
スタを巻き込まぬよう見せる配慮。
窮地に追い込まれたスタを助けようとするガンペ。
それは、スタに対する友情なのかと感じ、今後、スタとの関係に期待したのですが.....
ガンペは最初から最後まで、スタに対し、「演技なんて....」と、見下していたのでしょうか。
それとも、映画を撮影しながら変化しつつ、右往左往の末、
やはり、「映画は映画だ」と、悟ったのでしょうか。

とにかく、キム・ギドク監督の痛烈なアイロニーを感じる映画でございます。




【イ・ガンペ】 ヤクザ
ソ・ジソプ
【チャン・スタ】 俳優
カン・ジファン
【カン・ミナ】 女優
ホン・スヒョン
【ポン監督】
コ・チャンソク



【ウンソン】 スターの恋人
チャン・ヒジン
【ペク会長】 ガンペのボス
ソン・ヨンテ
【パク社長】
ハン・ギジュン
【ガンペの子分】
ハン・スンド



【ガンペの子分】
チョ・ソギョン
【ガンペの子分】
カン・ホンソク
【イ室長】 スタの事務所
パク・スヨン
【スタのマネージャー】
キム・テファン

ともかく、ソ・ジソプと、カン・ジファンの演技に、圧倒されます。
ソ・ジソプは、ヤクザとしてはちょっと迫力とカリスマに欠けるような気もしますが、
もう一皮むけて欲しい!と、期待させる俳優になった感じですね。

カン・ジファンは素晴らしい。
ずーっと、「なんでこの人が?」と、顔から判断していたのですよね.... 実は....
ですが、カン・ジファンの演技を初めて観て、「まさに俳優!」と、感じずにはいられませんでした。
「チャン・スタ」にしか、見えません。
とにかく、表情の演技まで素晴らしい。
カン・ジファン... かなり気になりだしました。

ホン・スヒョン、しばらく映画には出演せず、
2008年になってから映画への出演を再開したのでしょうか。
キレイになりましたよねぇー
演技もイヤミがなくて、好きな女優さんの一人です。

そして、なんといっても!
今回、特別出演のチャン・ヒジンちゃん。
ほんと、かわいー
今後一層の活躍を期待したいものです。

そして、正しく生きようで、だーいすきになってしまったコ・チャンソク씨
今回も、まずまずイイ味だしてます。
彼にハマる役をどんどん演じて欲しいです。

* * *

結 末までネタバレしますので、ご注意を!

* * *

俳優を夢見ていたガンペは、端役で映画に一本出演したが、
ヤクザの世界へ足を踏み入れた。
組織ナンバー2へと登りつめたが、パク社長の裏切りによりボスであるペク会長が起訴され、
窮地に陥っていた。
そんな時、ルームサロンで出会った俳優のスタ。
ガンペは、スタのサインを貰おうとしたが、スタに見下され、そこで一悶着起こす。
ガンペは、「演技はしょせん作り物だ」と、スタに言い放つ。

一方スタは、頭に血が上り、ケンカのシーンで連続して相手を病院送りにしてしまい、
相手役に名乗り出る俳優がいなくなり、窮地に陥る。
そこで思い出したのが、ルームサロンで出会ったガンペだった。
ケンカなれしたガンペならば、リアルな映画が撮れる。
しかし、ガンペが出した条件は、ケンカのシーンは演技ではなく、本気のケンカでと。
結末は主人公が勝たねばならぬのに、ラストさえも
「シナリオ通りにしたければ、お前が勝てばいい」と、言い放つ。

そうして始まった映画撮影。
ハードな撮影に、音を上げそうになるガンペ。
本気で向かってくるガンペに、生傷が耐えないスタ。
ガンペに勝つことができないスタは、悔しさでハラワタが煮えくり返る思いだ。

ガンペは腹立ちまぎれに、恋人ウンソンを電話で呼び出し、カーセックスを強いる。
外を一緒に歩けない、カフェで一緒にお茶することさえできない、
することといえば、こうして車の中でセックスするだけ、
そんな関係が一年も続いており、ウンソンの我慢も限界だった。
「あなたがいっそ落ちぶれてしまえばいいのに」
ウンソンはガンペに言い放ち、去って行ってしまう。
何もかもがうまくいかないスタ。

そんな中、ミナだけがスタとガンペに理解を示す。
「スタを理解してあげて、俳優としてのプライドがある人だから」と、ガンペに告げる。
また、ガンペに対しても、悪い人ではないと感じ始める。

そんな時、ペク会長の裁判に不利になる証拠が盗まれてしまう。
その証拠と共にパク社長が証人として法廷に立てば、裁判は完全に負けてしまう。
ペク会長は、パク社長を消すようガンペに命じる。
しかしガンペは躊躇した。
ガンペの中で、何かが変わり始めていた。

ミナはガンペは悪い人じゃないと、スタに反論していた。
しかし、「ヤクザはヤクザだ。いつか暴れる」と、スタは譲らない。
その二人を遠くから見ていたガンペ。
撮影中、ミナ演じる昔の恋人を、ガンペは本気でレイプしてしまう。
スタから殴り倒され、ガンペは愉快そうに笑う。
ガンペを見直し始めていたミナは、ガンペを恨み、
スタからは罵倒される。
「俺はクズ野郎か?」
ガンペは不敵な笑みを浮かべ、立ち去って行く。

撮影は順調に進み、スタはガンペに勝つためにトレーニングにも余念がなかった。
その頃ガンペは、パク社長を監禁し、裁判の証拠となる帳簿と契約書を出すよう脅していた。
「証拠を出せば助けてやる」
ガンペの子分の言葉に、パク社長は仕方なく証拠を手渡す。
しかし、それは建前で、都合の悪い人間は消すのがガンペのやり方だった。
だが今回は、パク社長を助けるという。
「死人として生きろ」と、出国させる。
まさに映画の主人公に感化されていたガンペだった。

そんな頃、スタにも問題が起きていた。
ウンソンとのカーセックスを撮影したビデオをネタに脅迫されていた。
あの場所はウンソンとの秘密の場所だ。
しかもウンソンは、「落ちぶれればいいのに」と、捨て台詞を残して去って行った女だ。
スタはすぐさまウンソンを疑う。
しかし、ウンソンは答えない。
その時、犯人が金を要求してきたと、スタの元へイ室長から電話が入る。
ウンソンを疑って責めたことを後悔するが、バツが悪くて言葉が出ない。
「どうして私にこんなことをするの」
ウンソンに責められ、スタはうなだれながら去って行く。
しかし、それからウンソンに連絡しても、「連絡しないで」と、ないがしろにされてしまう。
後悔するスタ。

スタはテープを取り戻すため、金策に走るがどうにもならない。
そして、ガンペに金を貸してくれるよう頼み込む。
ガンペは金を貸すだけでなく、密かに尾行し、犯人を襲撃する。
しかしスタは逆上する。
「俺とお前は違う!俺には犯人とお前の違いがわからない!」
と、スタはガンペを罵る。

そんな時、思いも寄らぬことが起きてしまう。
外国へ出国したはずのパク社長が帰国していたのだ。
「死人のふりができぬ」と。
パク社長は、裁判でペク社長を打ち負かすつもりだった。
その上、ガンペの子分の一人が、自殺とみせかけ、殺害されてしまう。
ガンペは、映画に感化された甘い自分に腹が立つ。
ガンペは子分の敵討ちと、報復を決意し、映画を降板することを告げる。
「ここはお前の場所じゃない。さっさとうせろ。クズとして生きていけ」
スタはガンペを罵る。
ガンペの子分たちはスタを捕らえ、殴りつける。
何度殴られても睨み付けるスタだったが、痛みに負け目を逸らしてしまう。
「映画と現実は違う。わきまえろ」
ガンペは言い放つ。
それは、スタにだけでなく、自分にも向けた言葉だった。

スタは警察から連絡を受ける。
ビデオをネタに脅迫した犯人が捕まったと。
そこには、イ室長の姿が.....
「アニキがやったのか!?」
スタは激憤する。
結局、イ室長は犯人からの連絡を受け、途中から仲間に加わわったのだが、
金額を吊り上げた張本人だった。
バクチで作った借金を返すため.......
「お前は俺に何かしてくれたか!」
イ室長は、スタを怒鳴りつける。
散々好き勝手にやり、仕事を下ろされるやら、賠償金やら、
迷惑かけ放題だったスタは身につまされる。
だが、信じていたイ室長にまで裏切られ、スタは心底打ちのめされた。
そんな時に思い出すのは、ウンソンのことだけだった。

ガンペはパク会長襲撃に出る。
しかし、逆にパク会長に捕らえられ、今度は自分が殺される立場となってしまう。
パク社長の部下になることで、生きながらえたガンペ。
ガンペは、もう一度映画に出ると告げる。

スタは、ウンソンをカフェへと呼び出した。
周りの目を気にしつつも、ウンソンを気遣うスタ。
そんなスタの気持ちがウンソンにも伝わる。

そして撮影はクライマックスへと突入する。
死闘が続き、目が離せない展開。
本気のケンカ。
どちらが勝つのか、監督にさえわからない。
最後の力を振り絞り、殴りあうガンペとスタ。
そして、立ち上がったのはスタだった。
負けたガンペは、清清しい気持ちだった。
ようやくクランクアップ。
ガンペはその足で、パク社長の元へと向かった。
「ようやく俳優らしくなったな」
ガンペはそう、スタに言い残して。
ガンペの様子が気になったスタは、ガンペの後を追う。

そして、壮絶な殺害現場を目撃することになる。
「これから映画を撮るんだ。お前がカメラだ」
そう言って、ガンペはパク社長を仏像で何度も殴打し、殴り殺した。
あまりの壮絶さに言葉も出ないスタ。
パク社長を殺害すると、ガンペはその仏像をスタに手渡した。
「これが現実だ」と。
映画は、しょせん映画.......
と言わんばかりに、ガンペはスタに向かって笑みを浮かべる。





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