ぼくらの落第先生 Teacher Mr.Kim |
原題:先生キム・ボンドゥ 선생 김봉두 (ソンセン キム・ボンドゥ)<2003> |
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監督 | チャン・ギュソン | <2002>おもしろい映画、<2003>ぼくらの落第先生、<2004>ラブリー・ライバル、<2007>里長と郡守 |
出演 |
チャ・スンウォン(車勝元) |
出演作品一覧 |
ピョン・ヒボ ン(邊希峰) |
<2000>ほえる犬は噛まない、<2001>火山高、 <2002>菊
花の香り、<2003>ぼくらの落第先生、 |
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ソン・ジル |
<2001>
風林高、<2001>公共の敵、<2001>ア
フリカ、 <2002>ライターをつけろ、(友情出演) |
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【レビュー&ネタバレ】 |
感動作とまではいきませんが、心温まる作品です。 展開はおおよそ読めるものの、心揺さぶられるエピソードが詰まってます。 「幸せ」とは、他人がいてこそ得ることができるもの。 そう感じさせるヒューマンドラマ。 片田舎の純朴な人々の温かさ、そして、子供たちの純粋さに教えられることでしょう。 スローライフの良さを感じさせ、羨ましくなりますね。 現代人が忘れてしまった忘れ物。 それを感じずにはいられないでしょう。 先生キム・ポンドゥ。 ポンドゥは封筒。キムは金。金の封筒(笑) 韓国では「封筒を渡す=賄賂を渡す」といった風習が度々見られます。 賄賂を要求し、賄賂を渡さなかった父兄の子供は罰を与えるという、教師失格・人間失格のポンドゥ。 萌香はこういう人間は大嫌い。 でも、あまりの節操の無さに笑うしかありません(笑) そして、度々垣間見れる人間らしさがポンドゥを憎めなくさせるのです。 子供たちを転校させようと企みながらも、子供らにプレゼントをあげ喜ぶ姿を見て微笑む姿には、 何の下心も感じさせません。 下心があるのなら、チェ老人にまでプレゼントしないでしょう。 ポンドゥも人の痛みや優しさのわかる人間なのです。 分校の生徒は5人。 子供らを、「鷲の5兄弟(독수리5형제:トクスリ・オ・ヒョンジェ) 」と呼んでますが、 これは、日本のアニメ「ガッチャマン」のことです。 ガッチャマンは知りませんが、ドラマ「ローズマリー」でペ・ドゥナがウンチクを話しており、 それが的を得ていて面白いです。 お葬式のシーンでは、終始感動し、 ソソクのエピソードでは、心が震えるほど泣きました。 何よりのお気に入りはピョン・ヒボン씨演じるチェ老人。 老人特有の口やかましさも併せ持ちつつ、温かく、お茶目でユニーク。 ピョン・ヒボンの持ち味が最大限に発揮されてます。 こんなお祖父ちゃんが欲しいです。 それが叶うなら、他には何も要りません。最高のお祖父ちゃん。 地味といえば地味ですが、良い作品です。 ホームドラマやヒューマンドラマが好きな方にオススメです。 念を押すようですが、「感動作」というほどではないので、期待しすぎないように。 でも萌香は、永久保存版にして、忘れた頃に繰り返し観ようと思ってます。 チャン監督のラブリー・ライバルでは、「キ ム・ボンドゥ」として、チャ・スンウォンがカメオ出演しています。 落第先生の後にラブリー・ライバルを観た ら、感激も一塩でしょう。 チャン監督は初監督の「おもしろい映画」から趣旨がまったく変わってしまいましたね。 本当はこういった笑って泣けるヒューマンドラマが作りたいのかもしれませんね。 ↓ 結末まで簡単にストーリー紹介(結末ネタバレ) ↓ ソウルの小学校教師キム・ポンドゥ。 父兄からの現金封筒(賄賂)を推奨し、授業そっちのけで父兄に電話をかけまくる。 現金封筒を渡さない父兄の子供らは、罰としてしごかれる。 ポンドゥがお金に執着するには理由があった。入院中の父の入院費用を工面するためだった。 しかし、現金封筒の事実が発覚し(怒鳴り込んでくる男は特別出演のイ・デヨン)、 過疎の片田舎の分校へとトバされる。 既に廃校が決定している分校で、長くても1年だと慰められながら。 分校の生徒は5人。 カッコウの鳴く、平和で静かな学校。 ソウルの学校とは勝手が違い、ポンドゥは無気力でやる気が出ない。 タバコを買おうにも、店がない。 タバコをたくさん買い溜めているというチェ老人に、タバコを譲ってもらいに行くが、 「ソブラニー」が欲しいと言うと、「教師のくせに考えがないのか!洋タバコを吸うなんて!」と、 水をかけられ追い返される。 昼食は給食でなく、子供らは自宅に帰り食事を摂る。ポンドゥは仕方なくインスタントラーメンで腹を満たす。 ここでひらめいたポンドゥ。 ギラギラする目つきで「子供たちにソウルと同じ環境を!」と父兄に訴え、給食を開始することに成功。 (家の事情で昼食が食べられないソソクにとっては、良い出来事ですね) ようやく活気を取り戻したポンドゥ。今度は、現金封筒を促す計画に。 子供ら一人一人に封筒を渡すポンドゥ。 「先生のために何ができるかが宿題だ」と、ポンドゥは、ほくそ笑む。 しかし純朴な子供や父兄に賄賂などという考えが浮かぶはずもなく、中身は手紙だけ。 ナモクだけが「つる人参」を父に言われ封筒に入れて来た。 失望し腹を立てるポンドゥ。そして、その怒りを子供らにぶつける。 授業を自習にし、「家庭訪問ですよ」と、父兄らを訪ねるポンドゥ。 しかし、またもや思惑とは異なり、野菜やら惣菜らを持たされて帰宅する。 ポンドゥの元へチェ老人がやってくる。 「ハングルを教えて欲しい」と。 そして、ポンドゥが欲しがっていた「ソブラニー」を授業料代わりに差し出す。 結局ポンドゥは、チェ老人にハングルを教えることに。 無気力で心ここに在らず。ポンドゥは虚しく空を眺めるばかり。 そんな時、ソウルから親しいホステスのソニョンがやってくる。 「子供らがいなくなれば廃校になるのに」 というソニョンの言葉に目を輝かせるポンドゥ。 「それだ!」 翌日から、ポンドゥは父兄と子供らの説得を開始した。 タレントの才能があるから... 絵の才能があるから... などと、ソウルの学校へ転校するよう勧めるポンドゥ。 そして、ソソクの母が、夫が家出し発狂し気が触れてしまったことを知る。 ポンドゥが家庭訪問をしている姿を見てチェ老人は寂しい。 「うちには家庭訪問しないのか?」 と、ポンドゥを家に呼ぶ。嬉しそうにご馳走を振舞うチェ老人。 チェ老人はアメリカの孫からの手紙を嬉しそうに見せる。ハングルを読めるようになり、ようやく手紙が読めたと。 孫からの手紙は三年も前からのものだった。 「読む喜びで夜を明かすんじゃあ」 と、嬉しそうに孫の手紙を慈しむチェ老人を見て、ポンドゥは入院中の父を思い出す。 父に電話し元気付けるポンドゥ。俺の教え子に会わせてやるからと。 ある日ポンドゥは、レジャー会社から呼び出される。 廃校になった分校をレジャー施設にする予定が、廃校にするのが困難になったので助けて欲しいと。 そして、久々に現金封筒を受け取って舞い上がるポンドゥ。 ポンドゥは受け取った賄賂で、子供らとチェ老人にプレゼントを与えた。 これも、皆をソウルへと転校させるための企みだ。 しかし、皆の喜ぶ姿に微笑むポンドゥ。 活気が戻ったポンドゥ。 しかしそこへ思いもよらぬ事件が。 転校生がやってきたのだ。 補助金を出して転校生を集めているらしく、本校から「まだ数人行くと思いますのでよろしく」と言われ、 ポンドゥは怒り狂う。 腹の虫の居所の悪いポンドゥ。 授業を放棄し、子供らに自習させ続けるポンドゥ。 「自習はイヤだ。授業がしたい」 という子供の言葉にキレ、子供ら全員の手の平を鞭打つ。 その日の帰り道、転校生が5人の子供らを待ち伏せていた。 「おまえらのせいで、俺まで叩かれた」と、食ってかかる転校生とソソクがケンカになる。 「俺のオンマは先生に、お金を渡したのに!」 という転校生の言葉に、子供らは言葉を失う。 子供らから賄賂の話を聞いた父兄らは、相談しあう。 しかしそんな金はこの貧しい村で暮らす両親らには無かった。 「渡さないことにしよう」 そう決めて解散する父兄ら。 しかし各々ポンドゥの家を、漢方薬やら高麗人参やらを持って訪ねてきた。 そして、「金を渡しに来たのか?」と、抜けがけしようとしたことを互いに責め合う父兄ら。 翌日、すっかりやる気のなくなったポンドゥは辞表を書くが、それを子供らにみつかってしまう。 そして、ソソクと転校生が学校に出てこない。 ナモクらは理由を聞かれるが、「2人はケンカした」とだけ告げ、理由を言いあぐねる。 村人らにソソクの居所を尋ねると、ソソクには食べ物は分け与えてあげていたが、急に金が必要になったらしく、 大人らと一緒に山へ仕事に行ったと聞かされる。 そこへ転校生の母が子供を連れて怒鳴り込んでくる。 「授業を求める子供らに体罰をするとはどういうことだ。うちの子は無関係だし、くれぐれもよろしくと頼んだのに」と。 こんな人間は教師失格だと子供らに同意を求める転校生の母。 しかし、「先生は悪くない。自分らが悪いのだ」と、子供らは泣きながら訴え始める。 「先生、辞めないで!」と。 純粋な子供らの心に心打たれるポンドゥ。 ポンドゥは、いつか宿題に出した「先生のためにできること」の手紙を読み始める。 ポンドゥへの想いがたくさん詰まった純粋な子供らの気持ちに、ポンドゥは涙を流し、自分の過ちに気づく。 そして、帰宅したポンドゥは、玄関に現金封筒が置かれているのに気づく。 慌ててソソクの家に向かうポンドゥ。 そして、ソソクを叱り、罰として足を鞭打つ。 「誰が学校を休めと言った!誰がこんなことをしろと言ったんだ!」と、何度も何度も鞭打つ。 「ごめんなさい」と、泣いて詫びるソソク。 「先生が学校を辞めるのはイヤだ。先生と、ここにいたいんだ」とソソクは訴える。 涙を流しソソクを抱きしめるポンドゥ。 翌日、皆の前で辞表を破るポンドゥ。皆、嬉しくて仕方がない。 ようやくポンドゥは教師として目覚めた。 しかし、そんな時にソウルの病院から電話が。 ポンドゥの父が亡くなった。失意に陥るポンドゥ。 そこへ、はるばるソウルまで、子供らと父、そして里長が弔問に訪れる。 「こんな遠くまで来て頂かなくて良かったのに...」 というポンドゥの言葉に、「水臭いな。先生も家族じゃないか」と、ソンマンの父が告げ、皆微笑む。 皆の心に心を打たれるポンドゥ。 「この子らが俺の教え子達だ。アボジ、会いたがってたろう?」 ポンドゥは父の遺影に語り掛ける。 そして、お辞儀をする子供らにお辞儀を返し、ポンドゥはそのまま泣き崩れてしまう。 そして、時が流れ.... 廃校となる日がやってきた。ナモクの卒業式と、廃校式が行われる。 ポンドゥは語る。 「ここでの思い出は私にとって一番大切なものです。本当にお世話になりました。 特にこの5人の子供たちには。 私が教えたのではなく、私が子供らに教えられたのです。 皆には、大人になっても今の純粋な心を忘れないで欲しい」 感慨深げに校舎を眺めるポンドゥにチェ老人が走りより、白い封筒を手渡す。 「皆で少しずつ集めたんだ」と。 「こんなことしないでください」 ポンドゥは頑なに拒む。 「学校も無くなるんだ。誰が賄賂として渡すんだ?この金は、他で貰う金とは違うぞ」 チェ老人はそう言って無理矢理ポンドゥに押し付ける。 封筒をみつめ、父兄らの想いを噛み締めるポンドゥ。 「先生、ありがとう。ワシは孫に手紙を書けるようになった。君は本当にステキな先生だ」 チェ老人は告げる。 END |
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