ほえる犬は噛まない  Barking Dogs Never Bite 
 原題:フランダースの犬 플란다스의 개(プルランダスエ ケ) <2000>

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吠える犬は噛まない

団地に住む大学の時間講師コ・ユンジュ(イ・ソンジェ)は、ある家の子犬の吠え 声に耐えら れずペンドリという子犬をアパートの地下に監禁する。

一方、アパート管理室に勤める女子経理職員パク・ヒョンナム(ペ・ドゥナ)は、極めて平凡な日常に退 屈していた。彼女は、幼い少女スルギの行方不明の犬ペンドリを探すビラ張りを手伝う。

ビラを見たユンジュは、自分が監禁した子犬が声帯手術で吠えられない ことを知り、地下室に下りて行ってみるが、子犬はもうその場にいなかった。そして、本当の騒々しい子犬は別の犬だった。

ユンジュは問題の子犬を捜し出し、 下の階に住む一人暮らしの老婆から拉致して屋上から落として殺してしまう。その光景を目撃したヒョンナムは、ユンジュを追撃するが、突然に開いたアパート 玄関の扉にぶつかり倒れてしまう。

ユンジュは、長い間の失職のために妻との関係が悪化しており、挙句の果てに彼女が子犬を買ってくると不満は極限に達す る。しかし、問題が解決されない うちに、ユンジュの妻が買ってきた子犬スンジャが失踪する。この事件の犯人は、地下に住んでいる浮浪者(キム・ルェハ)。団地の中でおかしな追跡劇が 始まる。

日本公式サイト:http://www.hoeruinu.com/
【予告編】
監督 ポン・ジュノ(奉俊昊) 作品一覧

出演

ペ・ドゥナ (裵斗娜)

出演作品一覧

イ・ソンジェ (李誠宰)

<1998>美 術館の隣りの動物園、<1999>愛のゴースト、 <1999>アタック・ザ・ガス・ステーション!
<2000>吠える犬は噛まない、 <2000>エン ジェル・スノー、<2001>風林高、<2001>公共の敵
<2004>氷雨、 <2004>風の伝説、<2004>シン・ソッキ ブルース、<2006>ホリデー
<2006>デイジーデイジー アナザー・バージョン)、 <2007>マイ・ボス マイ・ヒーロー3
<2010>夢は叶う、<2010>絃の歌

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【レビュー&ネタバレ
とにかく、韓国人には人気の高 かった作品。
韓国人と日本人の笑いのツボは違うとよく言うけれど、
韓国人の笑いのツボが何か、mocaにはわかってきたわ。
この映画はまさにそのストラクゾーンでしょう。
かといって、日本人は笑えないかといったらそうじゃないわ。
アタック・ザ・ガス・ステーション!
で大笑いした方には、よろしいのではなくて?
ブラックな笑い、シニカルな笑い、
とにかく、アホくさくてバカバカしい笑いが盛りだくさんよ。
mocaは、かなり苦痛な映画でございました。

ペ・ドゥナちゃんも、お笑い芸人並の捨て身の演技。
黄色いパーカーのフードをすっぽり被ったペ・ドゥナちゃんは笑えます。
(緊張するとフードを被るらしい?)
彼女だから、笑えつつもキュートなんだけど。

そして、その他の登場人物もおかしさを醸し出しているわ。
ペ・ドゥナといつもつるんでいるおデブちゃん、コ・スヒ。
親切なクムジャさんでは、漂白剤で殺される受刑 者。
グエムル~漢江の怪物~では、人質になる看護 婦。
一度見たら忘れない強烈なキャラクター。
この作品は冷め切ったシニカルなキャラでありつつも、
ペ・ドゥナを助けに現れたり、
肩にもたれて眠るペ・ドゥナの前髪を直してあげたり、
最後には、意気消失するペ・ドゥナと山登りに出かけたり、
情が深くて、頼もしい姐さん。
今回、一番好きなキャラクター。

ポン・ジュノ監督の最新作グエムル~漢江の怪物~で は、
子供を深く思いやる韓国の父を演じたピョン・ヒボン。
この作品では、一風変わった警備員。
mocaは、どんなキャラであっても、見れるだけで嬉しい大好きな人。

コメディー映画でありつつも、実は文学的だったりするのよね。
原題の<フランダースの犬>ってのはなんぢゃ!という感じですが、
(ちなみに、何の意味もないそうです)
邦題<吠える犬は噛まない>は、英題<Barking Dogs Never Bite>を訳したもの。

<吠える犬は噛まない>は、主人公コ・ユンジュのことを比喩しているわ。
言いたいことを何も言えず、我慢して、我慢して、溜め込んで・・・
それが爆発して、<犬殺し>なんていう、八つ当たり的事件を起こしてしまう。
普段言いたいことを言って溜めていなければ、こんな事件を起こすこともない。
<吠える犬は噛まない>
そんなアイロニーを描いているわ。

そして、もう一人。
ヒロイン(ヒロインって言っていいものか)ヒョンナム。
銀行強盗を素手で取り押さえた女子銀行員。警察から表彰されてTVにも出演。自分もああなりたい。
そんな夢を持つ、正義感の強いまっすぐで、純真な女の子。
しかし、この事件が解決する頃には、人間の裏側を知り、世の中というものを知り、
大人になるというか、純真ではいられなくなるというか・・・
最初は、最初たばこを吸った時にはむせ返っていたのに、
事件を終え、二度目のたばこを口にする頃には、
すっかりタバコも板についたような雰囲気で、
「人間ってそんなものなのね・・・」
と、言わんばかりの表情で、タバコをふかす。
「あの犬がいないと、私死んじゃう」
という女の子の言葉に打たれ、正義感に燃えるヒョンナム。
なのに、ある日女の子が別の犬を連れて笑って歩いている姿を目撃する。
その上、「よいこと」をしたはずなのに、
待っていたのは職務怠慢によるクビ。
なんだろう、この消失感・・・
そうやって、人間は人と人との情を忘れ、他人に無関心になり、
「そんなものよ」と、覚めて生きて行くことになるのよね。
不条理で報われない世の中。
その完成形が、ヒョンナムの友人ジャンミなのかも。
彼女も元は、ヒョンナムのように純真だったように思うわ。
だからこそ、一見合わなそうなのに、いつも一緒で、
ヒョンナムのことを、妹のように慈しむ目でみつめていたりするのかも。
何より、いざという時に情の深さが溢れているもの。

善良であるか故に報われない世の中。
そんな世の中の中で足を踏み外してしまう男。
足を踏み外したくなるような気持ちになりながら、
一歩手前で踏みとどまるきっかけになるのは、やはり、人間の善良な心。
煮え湯を飲まされながらも、悪にはなりきれない・・・
そんな善良な人間には、心に染みるものがあるかもしれないわ。


さて、ストーリーですが・・・

団地に住む大学の時間講師ユンジュ。
同期や後輩に先を越され、教授のポストを心待ちにする不甲斐ない男。
家ではといえば、家計を支える年上の妻ウンシルに頭が上がらない。
そんなユンジュは、最近犬の鳴き声が気に障って仕方がない。
この団地は動物禁止のはずなのに!
ユンジュのイライラは限界を到達し、全てのストレスはそこへ吐き出された。
団地で一匹の犬を捕まえるユンジュ。
殺そうとしたものの、邪魔が入り、地下のタンスに閉じ込める。

一方、ヒョンナムの勤める管理事務所に、一人の女の子が訪れた。
行方不明の犬を探すために、チラシを貼りたいと。

飲み会に参加したユンジュはそこで、教授になった同僚が学長に賄賂を贈ってポストを得たことを知る。
しかも、酒好きの学長の付き合いで飲んだ帰りに、地下鉄に撥ねられ死んだと。
ようやく待ちに待った教授のポストが空いた。
しかも、賄賂を注ぎ込めば何とかなるのだ。
しかし、そんな金はどこにある?
ユンジェは失意に陥りながら帰宅するが、犬の鳴き声を聞き、呆然とする。
団地の貼り紙を見たユンジェは、愕然とする。
それは自分が捕まえた犬だった。しかも、声帯手術をして、声が出ないのだと。
しまった!間違えた!
ユンジェは慌てて地下のタンスを開けるが、犬はそこから消えていた。
犬は警備員に殺され、犬鍋にされてしまう。

そしてユンジュは、例の泣き声の主が切り干し大根のお婆さんの犬だと気づく。
今度はお婆さんのチワワを捕らえ、屋上から投げ落とす。
それを望遠鏡で偶然見てしまったヒョンナムは、ユンジュを追いかける。
ヒョンナムの追跡劇。
だが、もう一歩でユンジュに手が届くところで、マンションのドアが開き
ドアに激突し倒れたヒョンナムは、ユンジュを取り逃がしてしまう。

今度は、管理事務所に切り干し大根のお婆さんがやって来る。
またもや「探し犬」の貼り紙。
ヒョンナムはお婆さんを転落死した犬の元へと連れていくが、
ショックを受けたお婆さんは、倒れて病院に担ぎ込まれる。
犬殺しの犯人への怒りがメラメラと湧き起こるヒョンナム。

一方、ユンジェは更なる問題に直面していた。
なんと!妻が犬を買って来たのだ。
賄賂の金策に走る中、こんな高価な犬を買い、
その上、その世話まで押し付けられ、ユンジェの不満は溜まるばかり。
しかし、散歩の途中ユンジェは、犬に逃げられてしまう。
散々探して帰宅した挙句、「もう一度探しに行け」と言われ、ユンジュはキレる。
しかし、そこで初めて真実を知らされる。
妊娠した妻はリストラされ、そのわずかな退職金を夫の賄賂に当てようと、
残ったわずかな退職金で買ったのがあの犬だった。
何も知らなかったユンジェは、打ちのめされる。
何も知らずに、妻への不満を溜め込んで・・・
ユンジェはチラシを作り、犬探しを始める。
それを知ったヒョンナムも、ユンジェに協力する。
しかし、仕事そっちのけで犬探しに翻弄していたヒョンナムは、職場をクビになる。
その上、切干し大根のお婆さんの死の知らせまで受ける。
ヒョンナムに残されたお婆さんの遺言。
屋上の切り干し大根を、ヒョンナムに残して逝った。
犬殺しの犯人への怒りが収まらないヒョンナム。
切り干し大根を取りに屋上に向かうヒョンナム。
屋上で浮浪者が犬を焼いて食おうとしているところをみつける。
ジャンミの活躍で、犯人を捕らえるヒョンナム。

犬は取り戻され、賄賂のおかげで教授になったユンジュ。
しかし、心から喜べない。
その上、ヒョンナムから<犬殺し>の一件で
事務所をクビになったことを聞かされ、ユンジュは罪の意識に苛まれる。
「君に告白することがあるんだ」
ユンジュはヒョンナムに背中を見せた。
「この後ろ姿に見覚えはないか?」
そして、狂ったように走り出す。
ヒョンナムも、ユンジュの後を追って走り出し、あの日の追跡劇を思い出す。
脱げてしまったユンジュの靴を拾い、笑顔で靴を差し出すヒョンナム。

緑の木々の中、散策するヒョンナムとジャンミ。
その表情は、清々しい。





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