親切なクムジャさん  Sympathy For Lady Vengeance 
 原題:親切なクムジャさん 친절한 금자씨(チンジョラン クムジャッシ) <2005>

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親切なクムジャさん

「復讐者に憐れみを」、「オールド・ボーイ」に続く、
パク・チャヌク監 督復讐三部作の第三弾。

キョンジュ刑務所。サンタクロースの衣装を着た聖歌隊と伝道師が「親切なクムジャさん」と呼ば れている女性 イ・クムジャ(イ・ヨン エ)を待っている。20才の時に「ウォンモ君誘拐事件」の犯人として逮捕され、その美貌と残忍な手口により世間を騒然とさせた女だ。刑務所の中でクムジャ は、他の囚人にいじめられた新入りの代わりに復讐を施したり、老いた元北朝鮮スパイの世話をして、この世の天使のように崇められ、「親切なクムジャさん」 と呼ばれるようになったのだった。13年の刑期を終えた彼女は、真冬だというのに、逮捕されたときと同じ夏物のワンピースを着て出てきた。キリスト教の伝 道師(キム・ビョンオク)が差し出した豆腐の皿を、彼女は片手でひっくり返し立ち去っていく。 (※出所時に白い豆腐を食べるのは、「心を白くして二度と刑務所に戻らないように」という韓国の風習)

クムジャはまず、ウォンモ君の両親を訪ね、両親の前で自分の指を切断し許しを請う。そして、刑務所でケーキ作り教えてくれたチャン氏(オ・ダルス)のケー キ店「ナルセ」で働き始める。刑務所時代、クムジャは粗末な材料で極上のケーキを作り上げ、チャン氏を絶句させたのだった。そして、先に出所していた囚人 仲間を訪ねる。みんなクムジャに恩義を感じていて、彼女の頼みなら何でも聞いてくれるのだった。ヤンヒには部屋を用意してもらう。ソヨン夫婦には元北朝鮮 スパイの老女にもらった改造銃の設計図を元に銃を作らせる。彫像アーティストになったスヒには銃の飾りを頼む。クムジャさんは言う。「すべて美しくやりた いの」と。

クムジャは18才の時妊娠し、以前教育実習に来ていたペク先生(
チェ・ミン シク)に助けを求めた。そのペク先 生は身代金目当てにウォンモ君を誘拐し、 殺した上、クムジャが罪をかぶって自首しなければ幼い娘を殺すと脅したのだった。そして彼女が刑務所に入ると、ペク先生は娘をオーストラリアに養子に出し てしまった。

クムジャは養子斡旋所から書類を盗み、娘の居所を突き止め、オーストラリアへと向かう。養父母に溺愛され、クムジャの娘ジェニーは13才に成長していた。 ジェニーはどうしてもクムジャ一緒にソウルへ行きたいと言い張り、二人は一緒にソウルに戻ってくる。

ペク先生は、子供相手の英会話塾の教師になっていたことを、先に出所したスジョンが探し当て、その塾に就職したソンウンが、彼が車を買い替えることを聞き つけ、美貌の自動車販売員イジョンがペク先生を訪ねて、ペク先生と結婚していた。だが、あの伝道師がクムジャを尾行し、イジョンと一緒にいる写真を撮り、 ペク先生にその情報を売り渡す。彼は男2人を雇い、クムジャとジェニーを襲わせるが、クムジャは冷静に対処して2人をやっつける。イジョンはペク先生にさ んざん暴力をふるわれたが、クムジャが彼らの家に踏み込み、ついにペク先生を拉致する。クムジャ、ジェニー、イジョンそしてペク先生を乗せた車が雪深い山 奥の廃校に到着する。イジョンはジェニーを連れてソウルに戻る。椅子に縛り付けたペク先生の片目に銃を突きつけ、それから力いっぱい彼の首を絞めている 時、彼の胸のポケットの携帯電話が鳴る。その携帯電話には、あのウォンモ君の宝物だったオレンジ色のビー玉の他にも、いかにも子供の宝物らしい小物がスト ラップになってぶら下がっていた。それを見て、クムジャはペク先生のさらなる悪事を悟り、ペク先生に復讐したいのは自分だけではないことを知る。

【予告編】

監督 パク・チャヌ ク 作品一覧

出演

イ・ヨンエ (李英愛)

<1996>イ ンシャラ、<2000>JSA、 <2001>ラスト・プレゼント、 <2001>春の日は過ぎゆく
<2005>親 切なクムジャさん

チェ・ミンシ ク(崔岷植)

<1998>ナンバー3、<1998>クワイエット・ファミリー、<1999>シュリ、<1999>ハッピー・エン ド
<2001>ラブ・レター ~パイランより~、 <2002>酔画仙、<2003>オールド・ボーイ
<2004>ブラザーフッド(特別出演)、 <2004>春 が来れば、<2005>親切なクムジャさん
<2005>クライング・フィスト、<2008>ヒマラ ヤ、風が留まる場所、<2010>悪魔を見た

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【レビュー&ネタバレ】
パ ク・チャヌク監督、復讐三部作はいづれも暴力的描写が強烈ですので、
血や拷問に弱い方は遠慮された方 が賢明です。



【親切なクムジャさん】の謎を解明


*伝道師の差し出した白い豆腐を振り払ったのはなぜ か?

「他の人間から差し出されたもので許されようとは思っていないわ」、という固い決意を表している。

*法華経の経典の裏に書かれていたものは?

改造拳銃の設計図。バラした紙を一枚に繋げると、改造拳銃の設計図が現れる。

*ジェニーの養父母は心中したのか?

ガス心中のように見えるが、あの白い煙のようなものはウォンモ君の怨念。

*最後に白いケーキに顔を埋め、貪り食ったのはなぜ か?

「ほかの人間から差し出されたもので許されようとは思わない」という冒頭の白い豆腐に対して、
最後の生クリームの白いケーキは、自分の手で真心を込めて作ったケーキ。
許されたい・・・純潔に戻りたい・・・、というクムジャの心が表れている。

クムジャは利己的で、自分のためだけにすべての行動を起こしており、
贖罪についても「この程度なら許してもらえるだろう」、
という彼女の判断基準が行動の正当性を表している。
そのつもりはなかったとはいえ、ウォンモ君誘拐殺人に関わっており、
ウォンモ君にそれを詫びたいと願っていることが分かる。
しかしクムジャは、その贖罪の思いと、復讐心の区別が付いていない。
復讐を遂行することにより、 贖罪も果されると思い込んでいた。
なので、復讐を果した時、ウォンモ君に謝罪しようととするのである。
復讐を遂げた時、亡くなったウォンモの幽霊が出てきて、
「あなたのことを許します」というような言葉をクムジャは聞きたかったのだ。
しかし、謝罪の言葉を言おうとしたその瞬間、
ウォンモ君に猿轡(さるぐつわ)を咬まされ、口をふさがれる。
(ウォンモ君に許されていないということは、
ジェニーと養父母が眠っている時に現れた白い煙がウォンモ君の怨念だということからもわかる)
クムジャは、復讐=贖罪ではないことに、そこで初めて気づいた。
なので、「クムジャの魂は救われなかった」というナレーションにつながる。
クムジャは本当に望んだ贖罪が少しも果されていない事に気がつき、初めて「純潔」に戻りたいと願い、
その象徴である豆腐(のようなケーキ)を貪り食うのである。

*ジェニーの父親は誰だ?

妊娠してしまった18歳のクムジャ。困り果てて、以前教育実習に来ていたペク先生に電話する。
「妊娠しちゃって。行くところがないんです。
先生、私のこと可愛いって言ってたじゃないですか?覚えてますか?」
みたいな会話からすると、ペク先生は父親じゃないように思える。
けれど、これはいきなりペク先生が父親と言うことをためらった為かもしれない。
いくらなんでも、無関係の男性の元へいきなり押しかけたりしないかと・・・。
ペク先生を拉致した時、ペク先生は子供が作れない体だ、とクムジャが慌てて言っていた。
これは、ジェニーがペク先生の子供だと知れたら、
ジェニーも復讐の対象になってしまうのではないか?と恐れた
クムジャの防衛策ではないかと思える。
また、何人もの子供を殺したペク先生が、ジェニーだけは殺さないで里子に出したということも、
父親である可能性を匂わせる。


【おまけ】

前2作の出演者がカメオで出演してます~
前2作との関連ということを位置づけたいということで、ノーギャラで友情出演してもらったそうよ。

・ソン・ガンホ&シン・ハギュン → クムジャとジェニーを拉致しようとした二人組
・カン・ヘジョン → クムジャ逮捕時のニュースキャスター
・ユン・ジンソ → 囚人役
・ユ・ジテ → 成長したウォンモ君

ペ・ドゥナも出演予定だったが、急なTVドラマの仕事が入った為に出演できず。
ペ・ドゥナの役は、ユ・ジンソが演じている 「あ、親切なクムジャさん」という台詞がある囚人役。
(ユ・ジンソは「オールド・ボーイ」のユ・ジテの姉役の女優)
ペ・ドゥナに出演してもらう為に、養子縁組斡旋センターにクムジャが訪ねる場面で、
「そういうことはお答えできません」と答える役をもう一度設定したが、それも参加できなかった。

うーん・・・、二度も・・・となると、やむを得ずというより、
出演したくなかったんじゃないかなぁ・・・・・
ペ・ドゥナは、「プライペート・レッスン 青い体験」の出演さえも
汚点と思っていて触れられたくないくらいだから、
「復讐者に憐れみを」なんて、あんなに大胆に脱いじゃってるのだもの、葬りたいわよね・・・・
「オールド・ボーイ」で、あれだけ有名になっちゃった「復讐3部作」だもの。
関連づけられる方が迷惑かもしれないわね・・・・
ペ・ドゥナは「チョナン・カン2」で、好きな男性のタイプを、熱心に仕事をする姿だと回答。
「仕事をしている姿に惚れてしまうから、いつも現場で恋に落ちます」と、率直に答えてたわ。
「復讐者に憐れみを」の共演がきっかけで、
シン・ハギュンとの交際が始まったけど、2年目で破局。
「親切なクムジャさん」の撮影時には、破局してたわけだから、
余計にこの映画には出演したくなかったのかもしれないわ・・・。

【真実のラスト】

映画の原作では、クムジャは復讐を果たした後、自殺するそうです。

【レビュー】

相変わらずエグい作品ね~~~
思わず目を覆いたくなるシーンもあるけど、前2作よりは軽いかしら・・・・・
今回の映画は謎が多くて、その謎が解明されないと、この映画のメッセージは理解できないと思うわ。
結局、復讐=贖罪ではないということよ。
ウォンモ君や殺された子供たちの復讐=ペク先生殺害
に至るわけだけれど、それは少しも殺された子供たちは救われていないということなのよね。
あの白い煙がウォンモ君の怨念だとは気づかなかったわ・・・・
これはパク・チャヌク監督本人が語っていることなので間違いないんだけど、
そんなのわかるわけねーだろう!だわよね。
復讐を果たしたけれど、ウォンモ君の恨みはまだ消えておらず、
クムジャに対して恨んでいるということが汲み取れるわよね。
「復讐者に憐れみを」では、復讐した自分も復讐されてしまう・・・因果応報。
「オールド・ボーイ」では、両者が加害者であり、被害者であった・・・。
「親切なクムジャさん」では、復讐=贖罪ではない。
そんなテーマでよいのかしら。
「オールド・ボーイ」では、観終わった後に残るせつなさが、映画のテーマを印象づけていたけれど、
この映画は単純な復讐劇にしか感じれなかったことが残念だわ。
謎ばかりが残ってすっきりしないし。
原作通りクムジャが自殺していたら、
彼女が「贖罪」を願っていたことが、せつなく伝わってきたかもしれないわね・・。
「クムジャの魂は救われなかった」
その一言では、なかなか理解まで辿りつけませぬ・・・・。
伝わってもこないし・・・・。
ウォンモ君が生きていたら同じ年だった
ケーキ屋の店員と寝てしまうのも、何か意味があるのかしら?
復讐のためだけに生きてきたというクムジャだったけど、
その割には、そんな軽率なことをしてしまう、
浅はかさ、身勝手さを示したかったのかしらね。

カメオ出演は楽しかったし、ノーギャラで出演する彼らの心意気もステキよね。
格言的な名作ではあるのだと思うけど、特に観ることはオススメできないわ。
好き嫌いがかなり分かれる作品ね。




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