バス、停留場  L'Abri 
 原題:バス、停留場 버스, 정류장(ポス,チョンニュジャン) <2002>

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ジェソプ(キム・テウ)は、予備校で国語を教える32歳の講師。裏切られた過去 の恋人や予備校の 同僚、大学の同期たちに嫌気がさし、売春婦以外には何の人付き合いも持たない。

そんなジェソプに、教え子の17歳の少女ソヒ(キム・ミンジョン)が近づく。妊娠したソヒを連れて産婦人科に行くが、泣くソヒの肩を抱いてもあげれず、ド ライブが 好きというソヒの言葉を聞き運転を習うが、突然消えた彼女に電話1つできない。ジェソプは、`停留場` のような男。

一方ソヒは、援助交際をする17歳の高校生。援助交際、妊娠、堕胎... 友達の死を体験し、あまりに早く世の中の暗い面を知ってしまっていた。彼女はあ る日、 寄りかかって休みたい男ジェソプに出会う。セックスを要求する中年男性を冷たく拒み、男に頬を叩かれ、すぐさま男の頬を叩き返すほど強気なソヒの裏面に 、好きなジェソプが別の女学生と親しいと嫉妬したり、 妊娠を恐れたりする少女の姿がある。そんなソヒの複雑な内面は、ジェソプに向かって`バス`のように近づくかと思えば離れ、彼の心を傷つける。

【MV】 Brown Eyes 언제나 그랬죠(いつもそうだったよね)

監督 イ・ミヨン <2002>バ ス、停留場

出演

キム・テウ (金泰佑)

<1997>接続、<1999>ラブストーリー 記憶の持ち主、 <2000>JSA、 <2002>バス、停留場
<2002>頑張れグムスン、<2004>女は 男の未来だ、<2004>顔のない女
<2006>ドント・ルック・バック、<2006>浜辺の女、<2007>1942 奇談、 <2007>リターン
<2008>サグァ(2005年制作)、<2008>知りもしないくせに、<2009>キッ チン ~3人のレシピ~
<2010>インフルエンス、<2010>元に戻せ ない

キム・ミンジョン

<1998> 囁く廊下~女校怪談~、<2002>バス、停留場、 <2004>僕ら の バレエ教室
<2006>恋の罠~淫乱書生~、<2009>作戦-The Scam-

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【レビュー&ネタバレ】
2002年3月公開。いかにも「ミニシアター」向けといったような雰囲気の映 画。
決して万人向けではない。
ですが、ミニシアター映画が好きな人にとっては、味わい深い作品であることは間違いないでしょう。
ストーリーを重視する方は不完全燃焼で終わってしまうため、見てはいけません。
この映画は、雰囲気を味わう映画です。
映像にしても、音楽にしても、暗く、けだるく、そして、美しい。
主人公二人の感性を淡々と描いている面白みのない映画ですが、
雰囲気を味わうだけであれば、ボーっと心を休める癒しの時間となることでしょう。
窓の外から降りしきる雨をみつめるような気分。
→に、冒頭のシーンをUPしました。
この雰囲気だけでも、mocaはよい映画だと思ってしまいます。

大嫌いなキム・ミンジョンだから.....
と、ちょっと躊躇しましたが、あまりその心配はありません。
顔のアップもほとんどないように、内面的にも遠くから描いております。
演技というほどの演技がなく、サラリと見られます。

キム・テウは、やっぱりよいですね。
あの何ともいえない魅力。決してイケメンではありませんが、人を引きつける。
今回は、閉鎖的に生きている30男ということで、11kg減量したそうです。
引き締まってこれまたステキ。
ですが、癒し系すぎて、閉鎖的な人間に見えないような?

公開前には、大々的な宣伝を行ったようですが、
興行では大惨敗。
古い作品なので、正確な数字はみつかりませんでしたが。

わざわざ見る価値があるとは思えませんが、
韓国映画らしくない、貴重な1本であると思います。

感性を描いた作品といえども、内面を掘り下げた作品ではなく、
あくまでも表面に出ているものだけを描いており、
主人公の心の奥に潜む闇や傷を理解し、カタルシスを感じるまでには至らない。
いったい何が言いたいんだ!と思う方もいるでしょう。
名作になり損ねた名作という感じで、本当にもったいない。

いわゆる作家性の高い作品で、印象深いセリフも多い。

唯一心を開ける売春婦への言葉。

君に嫉妬している。君の人付き合いは表面的 で、相手には何も期待していない。

この言葉1つで、
主人公ジェソプがどんな人間であり、
どんな心の苦しみを抱え、
どんな想い、願いを持って生きているかが全てわかるであろう。
期待しては傷つき、深くつきあえば傷つけられるだけ....
いっそそんな感情も、期待も、持たずにすんだら...


他人と人生を交換できるなら....

僕は人生を楽しめるようになるだろうけれど、相手の人生を台無しにしてしまうだろう。
そして、誰も僕の人生なんて、生きたくもないだろう。

その言葉から、ジェソプは、こんな人生を生きているのは、
全て自分に原因があることもわかっているのだ。
自分の持つ繊細さを、崇高なものだと考えているのではなく、
面倒で、厄介で、価値がないものだと。

そして、「詩」の授業から、ジェソプのあまりにも生真面目である性がわかるであろう。
自分のような人間が詩を教える資格などはない。
しかし、自分は他の人間よりはマシだと。
自分なんて.... と、自分はたいしたことないと認め、受け入れ、
しかし、周りを見れば自分よりろくでもない奴ばかりだと、
そんな葛藤をも伺われる。

ジェソプは繊細で、神経質で、生真面目で、
現代社会で生きるには、あまりにも純粋すぎて、不器用なのだ。
人はこれを「弱い」という。
適当に要領よく生きることができない人間。
それができる人間を「大人」と呼び、それができない人間を「子供」というのだろう。
劇中のジェソプの言葉に、「自分は大人の女性は好きになれない」とあるが、
きっとそういう意味なのであろう。

社会不適合と呼ばれ、現代社会で生きるのに居心地が悪くて仕方なく、
自分の居場所を見出せない人間。

それがこの映画の主人公ジェソプとソヒだ。
厭世的で、潔癖で、けれど、それ故に自分が一番苦しんでいるのだ。
売春婦の言うように「考えすぎ」で終わらせられたら、生きるのがどれほど楽か。

この映画は、現代社会でもがき苦しんでいる二人の男女が出会い、
心を寄せ合うまでを描いている。
その先に何が待っているかなど、わからない.....
未来はとても明るいとは思えないが、
ただ黙って寄り添う相手が隣りにいることの幸せは、二人にしかわからないだろう。

ジェソプは、ソヒのために仕事を辞め、車の免許を取るなど大胆なことをするくせに、
電話1つできない情けない男。
傷つき、優しく抱きしめて欲しいと願うソヒに対し、肩すら抱けない。
走っていくバスを追いかけることのできない、停留所のような男。
そんな男、そばにいて心強いものなのか....

ジェソプにもたれかかるソヒ。
あのラストシーンは、もたれかかっているのではなく、
ソヒがジェソプを抱きしめているようなものであろう。
自分の前で号泣したジェソプに、ソヒは母性愛を感じ、受け入れたのであろう。
きっと二人は、大人になることなく生きていくのであろう。
世界の片隅でひっそりと.......





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