馬鹿  Miracle of Giving Fool 
 原題:馬鹿 바보(パボ) <2008>

 オススメ

 ストーリー

 韓流王道

 泣き

 笑い

名作

 映像

×

×


馬鹿

スンニョン(チャ・テヒョン)は両親 が亡くなった後、一人でトースト屋をしながら妹ジイン(パク・ハソン)を誠心誠意面倒見ている。妹の学校の前の小さなトースト屋で、世界で一番おいしい トーストを作って 売るスンニョンは、ジインが学校へ行くのを見守ることが最大の楽しみだ。

いつも幸せそうに笑っているスンニョンは、毎晩、町内が見渡せる土城に上がって「小さい星(작은 별、日本名:きらきら星)」の歌を歌いながら、 10年前に留学した片想いのジホ(ハ・ジウォン)を待っている。

“バカは今日も笑います。”
そんなある日、ジホが10年ぶりに帰国した。長い歳月が過ぎたけれど、スンニョンはジホを一目で見分けることができ嬉しい。 初めは覚えていなかったジホも、蘇る思い出と共に、自分のそばをウロチョロするスンニョンの温かさに寄り添うようになる。

いつも見ているだけで嬉しい妹ジインと、10年間待った初恋ジホを毎日見れるようになったスンニョンは、 生涯最高の幸せさを感じながら、より一層楽しく暮らす。しかし、大きな幸福も束の間で、たった一人の妹ジインが、病気であることをわかる。

公式サイト:http://www.babo2008.co.kr/

【予告編】

監督 キム・ジョングォン <2000>リ メンバー・ミー、<2002>天国からの手紙、 <2006>バカ(公 開 2008)、
<2008>その男の本198ページ

出演

チャ・テヒョン

出演作品一覧
ハ・ジウォン(河智媛) 出演作品一覧

パク・ヒスン

出演作品一覧

<< HOME

【レビュー&ネタバレ】
アジアフォーカス 福岡国際映画祭2008で上映が決定。
(9/15、9/18、9/21の3日間)
原題の’パボ’で上映するとは意外だわ。

2006年にクランクアップし、2年近くお蔵入りされていた作品。
チャ・テヒョンなどはTVに出演した際に、お蔵入りされたせつなさを訴え公開を求め、
ハ・ジウォンも、ピアノの練習で苦労したのにと公開を求めた。
2008年にようやく公開。
観客動員数は、約97万人。

原作は、人気漫画家カン・プル(강풀)の漫画。
カン・プルは、アパートメントの原作者でもある。
来年公開のリュ・スンボム、キム・アジュンらがキャスティングされた
<26年(映画名:29年)>も、カン・プルの原作。

2006年は韓国映画界のバブルが弾けた。
お蔵入りされた作品は、この作品だけではない。
2008年になり、お蔵入りされていた<ドレミファソラシド>が公開され、
<特別市の人々>は公開されると発表されたが、また蔵に入った(笑)
<謝罪(サグァ)>は、 映画祭の開幕作品になったきり、日の目を見ない。(2008年10 月16日公開決定)

この映画も、お蔵入りされても仕方のない作品。
本当に完成度の低い作品。
お粗末すぎ。
くっさーいベタなヒューマンドラマ。
展開に無理がありすぎ。
感動を呼ぼうと、あれやこれや頭を絞ったのでしょうけれど、それが裏目に出ただけ。
シラケすぎて、見るに耐えない。

出演陣や関係者にとっては、せっかく作った作品が日の目を見ないことは悲しいことですが、
お粗末な作品に宣伝費をかけ更に赤字を増やすのは、韓国映画界にとっても痛みが増すだけ。
ただ、蔵に入れてはもったいない映画。
童話の ように美しい映画。



雪景色、街並み、古ぼけた家... とにかく、すべてが美しく描かれている。
韓国映画ファンのツボを大いに刺激しまくるであろう。
ストーリーは陳腐で見るに耐えなくても、温かくて優しい人間ドラマと、美しい映像で満足できるでしょう。
何度でも繰り返し見たくなるほどの美しさ。

最初、この’バカ’ってタイトルはどうよ?
と、どうも気分が悪くて....
事故で脳をヤラレてしまった人に、’バカ’と、差別用語のように使うのは....
けれど、映画を見れば、この’バカ’という言葉に、愛着を感じるようになることでしょう。
ハ・ジウォンの語りがまたよいのです。
「私達の町内にも、バカが住んでいます....」
その語りに、愛を感じずにいられないから....
その語りがこの映像にピッタリで、更に童話のような優しさを感じてしまう。
ラストでは、その半年後が描かれているのですが、
言葉にできない温かい何かがこみ上げてきます。



劇中のシーンの1カットですが、このスチール写真にどうも惹かれてしまう。
二人でチンパン(日本でいう肉まん・あんまん)をほうばるシーンも、温かく美しい。
記者村のスーパーらしいですけれど、やっぱりなぁ... と、納得。
青春漫画あしながおじさん、同じ温度を感じます。

泣き所は満載。
のハズですが... 制作意図とは裏腹に、観客の涙腺は刺激しないでしょう。
主人公スンニョンは、幼い頃の練炭事故により’バカ’になってしまった人物。
昔はオンドル(暖房)に練炭を使うのが常で、
練炭事故は映画やドラマのネタで使われます。
事故が起きた時、スンニョンの父はスンニョンだけでも助けようと
意識が朦朧する中、必死にスンニョンだけ部屋の外へ押し出した。
そんな父の愛に、涙。

そして、妹が病気だと知った時の兄の愛。
母も妹のようにして亡くなったのだと、妹を心配して泣き叫ぶ兄。
けれど、これはちょっと泣けない....
逆に、ひいてしまう....

そして、兄の愛を知った妹の兄への愛....
その人は、私の兄です...
私は、その人の妹です....

頭の悪いスンニョンが何度も繰り返したように、
妹も繰り返し繰り返し訴える....
パク・ハソンの演技は見事で、涙腺が緩みますが、
ちょっとひいちゃってねぇ......

そして、タバン(茶房)のオーナーとホステスの話も、実は純愛。
胸に突き刺さるような感動を意図したのでしょうけれど、
三文映画のようなお粗末さ。
もちろんヒヨン(ホステス)のサンスへの愛も同じ。

ほんとに、レベルが低すぎ......


この映画の価値は、映像の美しさと、チャ・テヒョンの笑顔と愛らしさ。
それだけ。
チャ・テヒョンでなければ、ゴミ映画になっていたかも。
こ汚い身なり、古ぼけたジャンパーとジャージに、穴の開いた靴......
そんなスンニョンが愛おしくて.....
「小さな幸せ」の意味を教えてもらいました。
貧しくとも、幸せになれることを。
人間に大切なのは、何かということを....

ハ・ジウォンちゃんは、本当に平凡な役。
別に彼女じゃなくても?と、思うほど。
クラス委員タイプの性格のよさ。
’バカ’に対する接し方に、目から鱗。

そして、moca的には、パク・ヒスンに完全にヤラレたわ。
セブンデイズでも、妙にかっこよくて忘れられな かったけれど、
やっぱカッコいいわ。
サンスのキャラクターがまた、mocaのストライクゾーンなわけ。
ちょっと道を外れちゃったアウトロー。
孤独で無愛想で、けど、優しくて男らしい。
バカなスンニョンと親友になってしまうことも、
昔の負い目を感じ続けていることも、
何もかもが、スキすぎる。
イケメンになり損ねたような顔ですが、ドキっとするほどイイ男に見えてしまう。
チャ・テヒョンは76年3月生まれ、ハ・ジウォンは79年6月生まれ、
そして、パク・ヒスンは70年2月生まれ。
実年齢から言えば、三人が同級生の役だなんてありえない。
なのに、違和感なし(笑)

【スンニョン】
チャ・テヒョン
【ジホ】
ハ・ジウォン
【サンス】
パク・ヒスン

【ジイン】
パク・ハソン
【ヒヨン】
パク・クリナ
【ジェジン】
イ・ギヨン
【ジホの父】
ソン・ジェホ
【スンニョンの 母】
チョン・ミソン
【キム社長】
チョ・ドギョン
【古物商】
イ・サンフン

チャ・テヒョンの妹には、アパートメントのパク・ハソン。
あしながおじさんの試写を見に行き、そこでハ・ジウォンのマネージャーにスカウトされた子。
でも、何度見ても納得いかないのよね。男の目から見たら可愛いのかしら???

タバン’小さな星’のホステス、ヒヨンには、ドラマ<魔王>の女刑事パク・クリナ。
女は化粧でこんなに変わる!を実証!
mocaも、化粧の仕方を研究しようと本気で思いましたわよ(笑)
ここまでじゃなくとも、魔王でももう少し考えて欲しかった。
まるで高校生みたいな刑事でしたから。

タバンのオーナー(ってか、ヤクザ)には、マラソンの イ・ギヨン。
この方も、とってもスキ。
報われない純愛ってのが、妙に似合う人。
ドラマ<ガラスの靴>も、イ・ギヨン目線で見ちゃったら、せつない、せつない。

mocaの大好きなソン・ジェホ씨!!
ドラマ<ピアノ>のような、人情家の医者はハマリ役。

スンニョンの母には、特別出演のチョン・ミソン。
バンジージャンプするでは、イ・ ビョンホンの妻。
エデンの東では、ソン・スンホン、ヨ ン・ジョンフンの異母妹の母で出演。

チョ・ドギョン。最近なんだか目につくわね。
正しく生きようの腰ぎんちゃ く、裸足のギボンの隣村の里長、セブンデイズのオカマなデザイナー
ようやく顔を覚えました。
この映画のキャラクターは笑えます。
古物商と一緒にトーストを焼く姿には、笑いが止まりません。

そして、ホームレスのような古物商。
大好きなイ・サンフン!
偉大なる系譜では脱走仲間、息子ではチャ・スンウォンに付き添う刑務所職員。
今回は笑わせてくれました。

チョ・ドギョンと、イ・サンフンが、この映画に笑いを運びます。

* * *

ストーリーをもう少し詳しく説明しますと、

10年前に留学した初恋のジホを待ち続ける’バカ’のスンニョン。
そして、そのジホが帰国する。
嬉しくてジホの周りをウロつくものの、ジホにみつかると
「ごめん」と、申し訳なさそうに走り去ってしまう。
ジホにはそれがなぜだかわからなかった。
実は、まだ小学生だった頃、ジホの父が学校に寄贈したピアノが燃やされてしまったのだ。
学校中がそれをスンニョンの仕業だと言った。
そして、スンニョンは学校から追放されることに.....
大切なピアノを燃やされたことを知ったジホは、
「二度と顔を見せるな」と、手厳しい言葉をスンニョンに浴びせていたのだった。

ジホを見ては逃げ出してしまうスンニョンに、ジホはもう逃げないでと声をかける。
大好きなジホに会ってもいいのだと、スンニョンは大喜び。
そして、ジホはタバンでサンスと再会する。
自分の前で嬉しそうにスンニョンの話をするジホ。
しかし、サンスのことは気づかない。
ジホとサンスとスンニョンは、小学校の同級生だった。
サンスはジホが好きだった。
そして、ピアノを燃やしてしまったのも、実はサンスだった。
サンスはそのことをずっと悔やみ続けていた。
そのことで学校を追い出されてしまったスンニョンに対しても......
今ではスンニョンとは親友だ。
あの日のことを心の中に閉じ込めたまま。

少しずつスンニョンの温かさを感じるようになるジホ。
そして、スンニョンに告白する。
実は、ここへは逃げてきたのだと... あることがあって、ピアノを捨て逃げてきたのだと。

来る日も来る日も、明け方に起きてトーストを焼くスンニョン。
死んだ母がスンニョンに言っていた。
妹に残せるものは、あなただけなのと。
スンニョンにとって、妹がすべてだった。
しかし妹は、バカでトーストを焼くことしかできない兄がうっとおしくて大嫌いだった。
兄を見下し、無視する妹。
そんなある日、スンニョンの大事な妹ジインが病気で倒れてしまう。
ジインを背負って泣き叫ぶスンニョン。
母ちゃんも、こうやって死んでいったのだと。

ジインを助けるには腎臓移植しかないが、スンニョンの腎臓が合わないことがわかる。
ジインは妹だ、僕はジインの兄だ。
泣きながら繰り返すスンニョン。
そして、サンスは自分が腎臓を提供すると申し出る。
「サンスが腎臓をくれるってー」
大喜びするスンニョン。
そんなスンニョンに苦笑いしつつも、
「お礼を言わないのは嬉しいから。そして、自分も逆の立場だったらそうするつもりだから」
だと、スンニョンの気持ちをサンスに代弁するジホ。

妹に嫌われていることを自覚しているスンニョンは、妹の病室にも入らない。
「顔を見ると妹が嫌がるから」と、廊下のソファで夜を明かすスンニョン。
病院の院長であるジホの父は、ジインに話して聞かせる。
幼い頃から明け方に起きトーストを焼いていたスンニョン。
だが、着ているものといえば、ボロのジャンパーとジャージだけ。
お金を何に使っているのかと気になっていたが、
ジインの入院費を払っているスンニョンの笑顔を見て、全てを悟ったと。
そんな院長の話を聞き、ジインの心は揺れる。
スンニョンを病室へ招き入れるジイン。
しかしスンニョンの手の包帯を見た途端、苦労しながら自分の世話をする兄が腹立たしくなってしまう。
スンニョンを怒鳴りつけ、病室から追い出してしまう。

↓ 結末ネタバレ↓


スンニョンは妹の着替えを持って病院に向かう。
その時、見知らぬ男たちに声をかけられる。
手の包帯でサンスと間違われたのだった。
サンスは店のホステスであるヒヨンを逃がそうとしたことで、ジェジンの怒りを買っていた。
ヒヨンを愛するジェジンは、ヒヨンの心がサンスにあると知り、サンスを抹殺するよう手下に命じたのだった。
サンスと間違われたスンニョンは、手下たちに襲われる。
血まみれのスンニョンは、ジホの家の前で息絶える。

ジインは兄の部屋を見回しながら、兄の自分への愛を改めて知る。
兄が大嫌いだったジイン。
今では、兄の名前を聞くと笑みがこぼれる。
スンニョンの死亡届を提出しに言ったジインは、職員にただ繰り返す。
その人は、私の兄です。
私は、その人の妹です。
今まで、兄だと認めなかったジインの目からは、悔恨の涙が溢れた。

そして、5ヶ月後─

デパートで働くヒヨン
スンニョンのトースト屋を引き継ぎトーストを焼くサンス
そして、大舞台の上でピアノを弾くジホがいた。
スンニョンから勇気をもらったジホ。
いつかスンニョンが歌ってくれた「小さな星」が、ジホにピアノを弾く勇気をくれたように。






<< HOME

inserted by FC2 system