最後の約束  My 11th Mother
 原題:11番目のお母さん 열한번째 엄마(ヨランボンチェ オンマ)<2007>

 オススメ

 ストーリー

 韓流王道

 泣き

 笑い

名作

 映像

×

×

×

×

×

×


11番目のお母さん

歴代の母の中で、容貌は一番美しいが、性格は一番怪しいお母さん。暇さえあれば 食っちゃ寝、食っちゃ寝。ボイラーの温度ちょっと上げなさいと小言を並べ、分別がついた子供に「お願いだから、お互い関わりあわずに暮らそう!」と、大声 を張り上げるおかしなお母さん。風がやむ日がない一日一日を送りながら、互いが必要不可欠な存在となった頃、女は急に跡形もなく消えてしまう...

【予告編】

監督 キム・ジンソン <2002>サ プライズ、<2005>コチルマル、<2007>愛 してる、泣かないで 最後の約束

出演

キム・ヘス (金恵秀)

出演作品一覧

キム・ヨンチャン <2001>ベサラメムーチョ、<2002>おもしろい映画、<2003>地球 を守 れ!、<2007>麻婆島(マパド)2、
<2007>愛 してる、泣かないで 最後の約束 、<2008> 少年監督

リュ・スン ニョン

<2004>小 さな恋のステップ、<2005>拍手す るとき発て、<2006>偉大なる系譜、 <2006> 熱血男児
<2006>千年鶴、<2007>ファン・ジニ 映画版、 <2007>私の恋
<2007>愛 してる、泣かないで 最後の約束、<2009>7 級公務員、<2009>不信地獄、
<2009>グッドモーニング・プレジデント、<2009>シークレット、<2011>子供たち、<2011>平壌城

ファン・ジョンミン

出演作品一覧

<< HOME

【レビュー&ネタバレ】
2007年11月韓国公開。
観客動員数は、約34万人。
興行大失敗。
でも、2009年1月29日に日本語版DVD発売決定。

タチャ イカサマ師で妖艶なファムファター ルを演じ たキム・ヘスが、一転して娼婦を演じる、
(元娼婦ということで、そういうSexyなシーンがあるわけではない)
しかも、地味で身なりに全く気を使わないガサツな女、
ということで話題になった映画ですが、
その変身ぶりに感嘆とした人は果たしていたのでしょうか。

それを除いては、話題になるようなネタもなし。
血縁関係のない母と息子の感動作。
という内容に期待するしかないわけですが、
あまりにもキム・ジンソン監督は無能だった。
興行失 敗の敗因は、監督の演出力の弱さ。
それだけでしょう。

実際、キム・ヘスはこの映画へキャスティングされていたわけではなく、
偶然シナリオを読む機会があり、読んでいるうちに号泣し、ぜひ出演したいと
自ら電話をかけて出演交渉したそうである。
キム・ヘスだけなく、リュ・スンニョンも、キム・ジヨンも、そして、友情出演のファン・ジョンミンも、
すべての主要俳優たちが、同じ心境で集まったそうだ。
それだけ、研ぎ澄まされた感受性を持つ俳優たちの心を揺り動かしたシナリオだったのだ。
(シナリオは監督のものではなく、ピョン・ウォンミ)
それを、監督一人でブチ壊したようなもの。

キム・ヘスは、監督の指示する演技では弱いと考え、
もっと大胆な演技を計画し提案したが却下され、
監督の指示する制限内での演技に留まらざる得なかったそうだ。
俳優たちのシナリオの捕らえ方と、監督の捕らえ方は、あまりにも異なり過ぎたことがわかる。
シナリオの持つ良さを最大限に引き出すどころか、解釈すらできていなかったのだろう。

キム・ジンソン監督といえば、短編映画で評価されているようだが、
コチルマルなど葬り去られた映画であるし、サプライズも、 あまりにもお粗末。
今回も含め、いずれも不安定な演出という悪評が高い。

そもそも、この映画はスターが出演する予定ではなかったと思われる。
キム・ヘス級の俳優の出演を考慮していない低予算映画だったからだ。
それでもキム・ヘスは、この作品が社会に訴えるメッセージ性に期待し出演を決めたし、
ファン・ジョンミンなどは、友情出演にも拘わらず、主役級の出演分量を演じている。
そんな俳優たちの心意気を無駄にした監督の責任は重い。

才能のある監督と、無能な監督、
そして、秀作と醜作の違いというのは、歴然としてますね。
この映画は、1時間半もいったい何を見ていたんだろう???という感じです。
母と息子の溝が埋まって行く過程の描き方があまりにもお粗末。
この映画に感動を求めるのは間違い。
他の作品を探してください。

この映画、観るか観まいか迷ったのよね....
けれど、もしや家族の誕生のような隠れた名作かも?などと淡い期待を抱きながら観たわけです。
舞台になるのは、冠岳区(クァナック)奉天洞(ポンチョンドン)の貧民街。
バリでの出来事の長屋の近く。
これがいけなかった!
ノスタルジックな映像と、寂びれた町並み....
mocaのツボを刺激しまくりで....
奉天洞とは、ハイグレードマンションが立ち並ぶそばに貧民街が存在するという異質な空間。
貧民街とハイグレードマンションを隔てる緑の柵。
それがあまりにもせつない。
その柵の中で暮らす人々の生活と苦悩をクローズアップ。
奉天洞の映像は美しかったけれど、そのための映画を観ろというほどの価値はありません。
ただの三文映画。

生まれてすぐ孤児院に捨てられ、天涯孤独で金もなく、体も病むばかりの娼婦。
そして、母親と4歳で死に別れ、ギャンブル狂の父の暴力にも耐え、
洞から支給される金(生活保護のようなものでしょうか)で何とか生活し、
洞から支給される食券を他の子供たちのように菓子に換えたりせず、大事に溜め込み、
家事はもちろん、牛乳配達やポスティングをしながら金を貯める
11歳とは思えない生活をする孤独な少年。
自分がこの世で一番不幸だと思っていた二人。
しかし、互いの不幸を知ってから、相手がこの世で一番可哀想で、自分が二番だという気持ちになる。
自分が痛みを知っているからこそ、相手の痛みも自分の痛みのように感じることのできる二人。
満たされなかった孤独を女が埋めてくれたその日、
鳥肌が立つほど幸せだった少年。
そして、その少年の気持ちを知った女は、胸がしめつけられるほどの衝撃を感じる。
少年が感じた孤独も、喜びも手に取るようにわかる不幸な女。
そんな女が、初めて誰かに幸せを与えた。
二人の間に、絆が生まれる。

本当に、涙が止まらなくなるほどよい話。
キム・ヘスが損得考えずに出演したいと思った気持ちはわかる。
なのに、映画からはまったく感動を感じられず............
名作にもなったかもしれないのに残念。

【女】
キム・ヘス
【キム・ジェ ス】
キム・ヨンチャン
【ジェスの父】
リュ・スンニョン
【ペクチュン】
ファン・ジョンミン
【ペクチュンの 母】
キム・ジヨン

子役のキム・ヨンチャンは、子役として経歴を積んでおりますが、
イマイチでございましたわね。
この子の演技力が悪いのかとも思いましたけれど、やっぱり演出のせいもありますね。
とにかく可愛らしくないんです。

リュ・スンニョンは、ファン・ジョンミンとは、ソウル芸術大学演劇科の同期。
同期には、偉大なる系譜で共演したチョン・ジェヨ ンも。
1年先輩には、チャン・ジンが。なので、チャン・ジン作品に出演しているのね。

ファン・ジョンミンは素晴らしい!
ファン・ジョンミンの素晴らしさを改めて感じさせられる映画!
自動車免許の試験に8回も落ち続け、やっと入社した会社は倒産し、
親のすねをかじる35歳というダメ男。
そんなダメ男を演じさせたら右に出る者なし。
その上、純朴で優しい一面も持ち合わせている。
この映画の一番の功績者はファン・ジョンミンでしょう。

そして、ファン・ジョンミンの母を演じるキム・ジヨンも素晴らしい。
多くの女優が尊敬する女優。
さすがです。
出演分量は少ないながらも、強烈な印象。
ファン・ジョンミンを一喝する烈女ぶりは最高!
こんな親子のそばで暮らしてみたい。

* * *

それでは、あらすじではわからないストーリーを補足程度に。

11番目のお母さんというのは、そのままで、
季節ごとに新しい女を連れてきては逃げられる父のせいで、
11人もの母を持つことになった11歳(日本では10歳)のジェスと、11番目にやってきた女。
家事をするどころか、ジェスの作った食事を食べ、一日中寝ているばかりの女。
その上、ジェスの大事な食べ物を横取りするありさま。
ジェスはそんな女が目障りで仕方がない。
そんなある日、女が腕に注射針を刺す現場を目撃する。
「麻薬までするなんて!人間のクズだ!出て行け!」
ジェスは女を罵り、注射器も、薬も、全て捨ててしまう。
しかし、それは麻薬ではなく、糖尿病のためのインシュリンだった。
薬を捨てられてしまった女の容態が悪化してしまい、ジェスはうろたえる。
その時、初めて女が天涯孤独の不幸な身の上であることを知る。

学校の宿題である経験報告書を、エバーランドで行ったという嘘で埋めるジェス。
そんな嘘はいつものことだと、ジェスは女にあっさり言う。
「だったら、一度行ってみたらいいじゃない」
女は小奇麗に身なりを整え、ジェスをエバーランドへ連れて行く。
遊園地で二人で家族写真を撮る女とジェス。
照れながらも、親子のようなポーズで写真に納まる二人。
帰ってきたジェスの報告書を覗き見た女は言葉を失う。
「鳥肌が立つほど幸せだった」
ジェスの言葉と、二人で撮った写真。
女の心は衝撃で震える。

ある日、ジェスが隠し持っていた生母の写真が父にみつかってしまう。
激しく殴られるジェス。
見るに耐えない女は、ジェスを庇って殴られる。
「殴るな!子供を自由にしろ!子供を殴るのは最低だ!」
泣き喚き、父に抵抗する女。

ようやく心が触れ合った二人。
けれど、幸せな日は長くは続かなかった。
女は糖尿病だけではなく、膵臓ガンまでも宣告されてしまう。
「私がいなければダメな子がいるんです。今は死ねない。あと1年、あと半年でも....」
そんな女の願いも空しく、病状は悪化するばかり。
家事など一切しなかった女。
ジェスのためにキンパブ(のり巻き)をたくさん作り、家を出て行く。
女が家を出て行ったことを知ったジェスは、ショックを受ける。
自分は捨てられたのだと.....

↓ 結末ネタバレ。ご注意を↓


自分の育った孤児院で最期の時を迎えようと思った女。
しかし、寝てもさめても、浮かぶのはジェスの顔ばかり。
そんな時、ジェスの学校で学芸会が開かれることを知る。
「私は知らない!」
と、一時は無視しようとしたが、どうしても忘れられない。
女は、めいいっぱい美しく化粧し、着飾り、学校へ向かう。
しかし、そんな女の姿を見たジェスは少しも喜ばない。
「なんで来たんだ!捨てたくせに!」
女は泣きながら謝り、去ろうとするが、
「行かないで!オンマ!(お母さん)」
ジェスは女に泣きながらすがる。
「オンマ?」
女は泣きながらジェスを抱きしめる。

本物の親子以上に仲むつまじい女とジェス。
病状が悪化している女のために、PCを買うために貯めた金で高価な健康食品を買うジェス。
「洞からの支給品なんだ」
と、嘘をつき女に渡すジェス。
しかし、商品に貼られているプライスを見た女は、
それはジェスが貯めた金で買ったのだとすぐに見破る。
「バカな子。何してるの。PC買うために貯めたのに。開けてないから返してくるのよ」
そういって健康食品を袋に戻そうとする女の手から箱を奪い開封してしまうジェス。
「オンマが飲まないなら、今日から僕はご飯を食べない」
そんなジェスの気持ちがわかるだけに女は胸が苦しくて仕方がない。
末期ガンの女にとって、そんなものは気休めにもならないからだ。
それなのに、自分のために大切に貯めた金を......

死期が迫っている女は、死への準備を始める。
愛するジェスへの贈り物を用意すること。
ジェスに料理を教えること。
やらなかっただけで、できないのではないと。
そんな時、ジェスは父からの電話を受ける。
「女の荷物を明日までにまとめておけ」
ジェスは、それがどんな意味かわかっていた。
ブローカーである父は、病気の女を安い身請け金で買取、
健康な女だといって横流しするつもりだったのだ。
女はまたもや娼婦としての暮らしに戻されてしまうのだ。
ジェスは慌てて女の荷物をまとめる。
「早く逃げて!」
しかし、病状が悪化し女は動けない。
「明日は絶対に逃げるんだよ、わかった?」
ジェスは女のために買い物に出る。
そして女は、隣りに住むペクチュンにお願いをする。
自分を抱かせてやる代わりに、約束してと。
「私がいなくなって... あの子がもし、あいつに殴られたら、あいつを止めて!お願い...」
泣きながらペクチュンに頼む女。
そんな女の心を知ってやるせなくなるペクチュン。
怒りを抑えきれず、戻ってきたジェスの父に殴りかかってしまう。
「犬扱いしないで少しは人間らしく扱え!」
ペクチュンと父は、ケンカの仲裁に来た警官に連行されるが、
ジェスの父が詐欺容疑で指名手配されているとわかり、
ジェスの父だけが連行されて行く。

翌朝、ジェスは母のためにおいしい食事を準備する。
しばらくは温かいご飯を食べれそうにないと。
ジェスは女を起こすが、女はビクともしない。
女は、二度と目を覚まさなかった。

時が流れ─

ジェスの元へ宅急便が届く。
送り主の名は、「엄마(オンマ)」だった。
いつかジェスが女に話していた。
「洞から冷凍弁当を10日分ももらったんだけど、うちには電子レンジがないから..」と。
女が死ぬ前にジェスのために注文したプレゼント。
そして、女からの手紙。

誕生日おめでとう。
一番下の引き出しの服は似合うかしら。
初めてのプレゼントだから、照れるわ。
母親の真似をしてみたけど、あなたに伝えたい言葉があるのに
口じゃ言えないから手紙にしたの。
ジェス。
ありがとう、お母さんって呼んでくれて.....

手紙を読みながら微笑むジェス。

そして、刑務所の父に面会に行くジェス。
「学校に行っているのか?」
父は尋ねる。
「うん、オンマがちゃんとしてくれる」
「あの女がそんなに好きか?母親みたいに...」
父の問いかけにジェスは微笑む。
「うん、ホントのオンマだ。永遠に.....」
ジェスの言葉に、父は何も言えない。
帰ろうとするジェスを呼び止めるが、言葉が出てこない。
ジェスはそんな父の気持ちを察し、微笑む。
ジェスは父の全てを許していた。
父も、そんなジェスの気持ちを察し、かすかに微笑む。





<< HOME

inserted by FC2 system