春夏秋冬そして春 Spring,Summer,Fall,Winter...And Spring |
原題: 春夏秋冬そして春 봄 여름 가을 겨울 그리고 봄(ポム ヨルム カウル キョウル クリゴ ポム) <2003> |
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監督 | キム・キドク(金基徳) | 作品一覧 |
【レビュー&ネタバレ】 |
サ
マリアの1つ前の作品となる本作。 キム・ギドクにとって、1つのターニングポイントになったことは間違いない。 作風としても、本作よりガラっと変わった。 全米で200万ドル突破のヒットを記録。 魚と寝る女や受取人不明で名は知られ ていたものの、 世界的に認められた初めての作品だ。 この映画には、サマリア以降のキム・ギドクのテーマ、そ して、こだわりが、いくつも散りばめられている。 まさに、原点であろう。 絶対の愛で描かれた’時間’ そして、輪廻ともいえる、繰り返し。 ’顔を布で覆う’という行動。 ブレスで描かれた春夏秋冬。そして、自殺。 初期の作品でのギラギラした怒りと叫びから一転し、 キム・ギドクのテーマは優しく、美しく、そして、達観したように思える。 そして何とも言えないブラックなユーモアさえも感じさせる。 この映画は、あらすじを読んでもイマイチ惹かれるものがなく、 退屈そうだと躊躇し続けておりましたが、 ちょっと優しい映画が観たくなり、選んでみました。 思った通り、優しく、温かな映画。 オチもなく、伝わりにくい部分もあり、退屈といえば退屈。 しかし、観終わった後の’悟り’にも近い穏やかな心は、日常を変化させてくれるかもしれません。 人間にとって何が大切か..... きっと、考えることでしょう。 山奥の湖に浮かぶ庵の上で描かれる春夏秋冬。 この美しさといったら、ため息が出るばかり。 キム・ギドクの持つ美的センスに、改めて唸らせられる。 そして、この四季に合わせて描かれるのが、一人の男の人生の春夏秋冬。 まだまだ幼い春。 ’青春’を謳歌し、熱い情熱で燃え滾る夏。 散りゆく葉のように、人生の挫折を味わい、人生を振り返る秋。 己の背負った業に打ち勝ち、心の平和を求める、穏やかで優しい冬。 春が過ぎ、夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎ、また春が訪れる。 輪廻..... 人が代わっても、同じことが繰り返される....... ’歴史は繰り返す’ ではありませんが、人生とはそういうものなのかもしれませんね。 キム・ギドクも、この映画を撮る前に何か心境の変化があったのでしょう。 達観したような。 この映画での秋。見ている者を不快にさせるほどギラギラした怒り。 それが初期の頃のキム・ギドクなのでしょう。 抑えきれないほどの怒り。 それを全て、映画にぶつけていた頃..... そして、この映画で’般若心経’を読んで怒りを静めたように、 キム・ギドク自身も、怒りを静めるきっかけがあったのでしょう。 そして現在は、キム・ギドク自身が映画で演じている’冬’の人生を生きているのかもしれませんね。 この映画の見所の1つは、まさに池の上の庵でしょう。 四季折々の自然の中に映える古き寺。 その装飾も見事で..... これが美術スタッフが制作したセットだとは、とても信じられない。 侘び寂びを感じさせる古めかしくも鮮やかなアジアンビューティー。 キム・ギドク的色使いの美しさに、感嘆するばかり。 寺ばかりでなく、池のほとりの門から、船まで、手を抜くことなく美しく装飾が施されております。 セットが創られたのは、水の中に木々が生えていることで有名な 慶尚北道 青松郡にある 「周王山国定公園 注山池」 環境庁を説得し許可を得るのに半年かかり、1年かけて四季の映像を撮影した苦心の作。 もちろんセットは、全て撤去されたそうです。 残念ですね...... 美しさと対照的に...... 爬虫類が何度も登場するので辛かったです...... 特に死んだ蛇は直視できません.... 女性はご注意を。 【登場人物】
無名な俳優を起用することで有名なキム・ギドク監督。 今回も無名どころばかり。 ですが、いい役者をみつけるのよいねぇぇぇ。 老僧のオ・ヨンスなんて、演技とは思えないほど達観した面持ち。 ボロを着ながら、頂き物の久々のご馳走であろう餅を頬張る姿に胸がしめつけられました。 人生にとって何が大切か..... 考えさせられました。 この老僧が大好きです。一緒に暮らしたいです。 しかし、なぜこの老僧は自殺したのでしょうか.... ’自殺’には、キム・ギドクとしてのこだわりがあるのはわかります。 ブレスでの自殺願望のある死刑囚から、 「死にたい、死にたい、言ってる奴は、本気で死にたいわけじゃない」 ということが伝わってきます。 そして本作品でも、自殺しようとした青年層を激しく叱責します。 ’死’を、苦しみからの逃げ場にしてはいけないということでしょうか。 老僧の自殺が許されて、青年層の自殺は許されない。 それは、’死の目的’の違いのように思います。 blue 様より素晴らしい解釈を頂きましたので掲載させて頂くことになりました。 ぜひご覧ください。(自分のレビューの稚拙 さが恥ずかしくなります....) 以下。 老僧の自殺はただの自殺ではなく、いわゆる焼身供 養というものではなかったでしょうか。燃え上がる舟か ら泳ぎ出たヘビが仏堂の中で青年が帰ってくるのを待っ ていますが、これは青年僧が跡を継いでくれることを老 僧が予見していたことを意味します。 老僧は自分の役目が終わったことを知り、焼身供養で最 後の功徳を積んだものと考えられます。ちなみに、帰っ てきた僧が氷を割り、沈んだ舟の中からカラス玉のよう なものを取り出していますが、これは仏舎利と言って、 高い功徳を積んだ僧の火葬時に遺骨の中から出てくると されています。本来は仏陀本人の遺骨を指すことばだっ たようですが、中国・朝鮮仏教では転じて以上の意味を 持つようになりました。 「閉」の意味は私にもさっぱりわかりませんでしたが、 もしかすると監督は観客に禅で言う「公案」をしかけた つもりなのかも知れません・・・・。 監督自身が演じた壮年期。 演技云々以前に..... 監督が真剣に演じている姿を見るだけで笑いがこみ上げてしまいますわよ...... これは誰か別の方に演じて欲しかったですね.... いくら’韓国の北野武’たって、監督としてしか見れません....... トンマッコルへようこその少年兵ソ・ジェギョ ン。 残酷な出勤のキム・ヨンミ ン。 そして、顔の露出が一切ないのが、ブレスやコースト・ガードのパク・チア。 これは彼女が演じる必要があったのか? このパク・チア演じる’名前のわからない女’の演出がホント笑えます。 ’顔も知らない女’だったら、また笑えたかもですね。 あの自殺する際の’閉’という紙といい、キム・ギドクのセンスはホント最高。 いったい何を考えているのでしょ。 意味をなさない池のほとりの門や、部屋の中の戸..... 何を意図しいているのか謎ですが、キム・ギドクらしいですね。 |
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