The Bow 
 原題: 弓 활(ファル)<2005>

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キム・ギドク 弓

人里離れた島の前の海に浮かんでいる古い船に、老人と少女が10年前から暮らし ている。老人は、釣人 を乗せることで生活しており、少女は老人を手伝っている。淫蕩な釣人たちから少女を守る老人の武器は弓であり、普段は楽 器として使われる。 ある日、大学生が釣りにきて、少女に魅了される。そして、老人が少女と結婚することを知った彼は、少女を陸に連れていこうとする。



【予告編】

監督 キム・キドク(金基徳) 作品一覧

出演

ハン・ヨルム

<2004>サ マリア、<2005>、<2006>太 陽の裏側、<2007> ファンタスティック自殺騒動、
<2008>待ちくたびれて

チョン・ソン ファン

<2003> 清風明月、<2005>

ソ・ジソク

<2005>、< 2006>絶対の愛(時間)

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【レビュー&ネタバレ】
’サマリア’、’うつせみ-空蝉-’ と、世界三大映画祭で連続して受賞した
キム・ギドク監督の次作。
mocaの中では’サマリア’を越える作品は難しいと思ってるわ。
’サマリア’と’うつせみ’は、やはり何かが違う・・・
そして、キム・ギドク作品の中では、わりあい一般的に受け入れやすい。
この<弓>は、鮮烈でありながらも、’サマリア’、’うつせみ’の流れを汲むような
どこかせつなく美しい作品で、<悪い男>の哲学を引き継ぐような作品。
そして、「魚と寝る女」、「春夏秋冬そして春」に続く’水の上’の作品。


映像美は、これまでの作品とはまた一味違い、韓国というようりも東南アジアのよ うな、ノスタルジック で、東洋的な美しさに溜息が出るわ。映画の舞台となる古びた船が、侘び寂びがあり、うっとりさせる。この古さ、汚さがよいのです。そして、この汚い船に、 鮮やかな色使い。少女の衣装といい、小物といい、船の上のソファーといい、その色彩センスに圧倒されるわ。

キム・ギドク作品は’もう二度と観ない’と宣言しつつも、どうしても気になってしまう。この’弓’は、また特殊な愛。老人と17歳(日本では16歳)の誕 生日を迎えようとする少女の愛の物語。とはいっても、少女は10年前に老人に誘拐され、’少女の17歳の誕生日に結婚する’という醜悪な老人の欲望のため に、10年間、海の上に浮かぶ船の上に閉じ込められていたのである。’愛’は老人の一方的なものであり、少女にとっては’情’であり、家族のような’愛’ に過ぎず・・・そこから二人の間に溝ができるのですが・・・
描かれている世界は、これまた’異常’な世界で・・・’悪い男’の中で描ききれ なかったものを、この 映画で描いているような・・・とにかく、重なる部分が多い作品。
どちらの作品も、ヒロインは主人公により無理矢理連れてこられ、軟禁され・・・ラストも、訴えているのは’精神的な結びつき’それこそが愛であり、肉体の 結びつきなど、どうでもいいこと・・・
それを、また違った形で描いているわ。

少女を演じているのは、<サマリア>のハン・ヨルム。
カク・チミンは可愛いと思うけど、ハン・ヨルムは好みじゃないわ。
この映画でも、可愛いー!と思う時と、ブサイク・・・と思う時の差が激しすぎ・・・・
それでも、この妖艶さは彼女にしか出せないように思うわ。若いのにすごい女優。
ちょっとやりすぎの部分もあるけれど。


反して、少女を救おうとする大学生を演じるソ・ジソクが癒し系。犬のような目を して愛くるしいわ。彼 は2007年5月初旬に入隊通知を受け’不良カップル’を降板し、5/29に現役で入隊して世間を驚かせたわ。

この映画もまた、’悪い男’同様、主人公にセリフがまったくない作品。
主要キャストでセリフがあるのは、少女を救おうとする大学生のみ。
老人と少女を演じた二人はすごいわ。
セリフなしで、すべてが伝わってくるもの。
キム・ギドク作品が苦手な方には、絶対にススメられない作品。
mocaのように、キム・ギドク作品は苦手だけれど、’サマリア’や’うつせみ’が好きだという方なら、観てみる価値はあるかも。
観終わっても、心から離れないわ・・・・・・
ラストには納得いかないけれど、
中盤のせつなさは、さすがキム・ギドク。

この映画は、’人間の恥部’をさらけ出した作品。
恥ずかしくて、とても他人には言えないような・・・ 隠したい欲望を赤裸々に描いているわ。
その代表となるのが、老人の欲望。
幼い少女を拉致し、船の上で10年もの間軟禁し、17歳の誕生日に結婚するという夢のために生きている。
一般的には絶対に考えられないこと。
だから、’もしかして、裏があるんじゃ?’
’結婚するつもりだと周りが思い込んでいるだけじゃ?’などと、思ってしまうのだけれど、
それが事実というのが、やはりキム・ギドク。
結婚式のために、こつこつと衣装やらを買い揃え、目を輝かす老人。
考えてみれば、親子以上に年の離れた嫁をもらう老人なんて、いくらでもいるのよね。
世間から非難されそうなことを、キム・ギドクは堂々と描くのである。
老人に体を洗ってもらう姿を恋する大学生に見られて恥ずかしがるどころか、
挑発するような目で青年を見る少女。小便をするシーンもだ。
そういう、普通’隠したい’と思うようなことを、キム・ギドクは晒させるのだ。
それが人間の本能ということなのだろうか。

本当に、10年もの間拉致して、17歳になったら結婚・・・だなんて、怒り爆発で・・・
なんとか少女を救って欲しいと観ていながら願うわけだけれど・・・
なんだか、老人が哀れでせつなくなってくるの・・・
少女との結婚を夢見ながら、10年間少女には一切手を触れていないのよ。
少女を湯に入れ体を洗ってやること、
二段ベッドに別れて眠り、少女の手を握ることだけが老人の日々の幸福。
けれど、少女が心を奪われる青年が現れ、
嫉妬する老人に少女が反抗しだしてからというもの、
二段ベッドを壊し、ダブルベッドのようにして一緒に眠るようになったりと、
老人はなんとか少女を束縛しようとするのだけれど、
老人は老人なりに、10年間少女を大切にしてきたのよね・・・
それがちょっとせつなかったり・・・
少女があからさまに青年にばかり心を奪われて・・・
老人と青年が乗った小船が到着すると、青年ばかり笑顔でみつめ手を差し出して・・・
一人で船に上がる老人が可哀想になってしまったり・・・
老人はどうして、少女を’一人の女’として見てしまったのでしょう・・・
そもそも、少女と結婚するのが目的で拉致したのかしら・・・
そういう性癖?それとも、大人の女を信じられず、子供の頃から育てたかった?
幼い頃から育てられ、少女にとって老人は家族。
愛はあるけれど、種類が違う・・・

少女が老人に拉致されて結婚させられることを知った青年は、
老人に’少女の両親を捜し出す’と宣言して、本当にみつけるのよね・・・
少女は’ミア’という名で、両親は10年もの間少女を探し続けている。
’あの子の人生を台無しにして・・・いい加減解放してやってくれ。明日の朝彼女を連れて行く’
青年は老人に告げ・・・
老人は少女を憎むけれど、少女の中には家族としての愛情はあって・・・
青年は少女を連れ、小船で船を離れようとするけれど・・・・


↓結末↓

老人は、少女がいなくなれば生きていても仕方ない、と・・・
二人が乗った船につないだロープを首に巻きつけ自殺を図り・・・・・
でも、その苦しさに耐え切れず、ロープをナイフで必死に切ろうとして・・・・・
けど、少女は老人が自殺を図ろうとしていることに気づき、
老人が切るより早くロープを切断して船に戻り、
老人はナイフを隠して、’死から逃げようとした’ことを隠す。
少女は、老人の想いを知り、結婚を決意する。
老人と少女は婚礼の儀式を行い、小船でハネムーンへと繰り出す。
老人は少女の服を脱がせ、音楽を奏でる。
そして、少女が眠っている姿を老人はみつめ・・・・
少女に向かって矢を放とうとするが・・・・
結局、少女を殺すこともできず、空に向かって矢を放ち、自分は海へと身を投げる。
少女が眠る小船が、船のそばにたどりつく。
青年は船に老人の姿がないことに驚き、少女を助けようとするが、
突然少女はまるでSexをするような姿勢でもがき始める。
そして、少女の股の間に老人が放ったと思われる矢が突き刺さり、
少女の真っ白な衣装は鮮血で染まる。


とまぁ、老人は肉体の結びつきを持っても
少女をつなぎとめることはできないと考えたのでしょう。
少女を殺そうとしても、それもできず・・・ 老人なりに、少女を愛しているから・・・
結局、自らの命を絶つことを決意。
少女は、’弓占い’で未来を占う力があるのは、霊感や超能力などの力を持っているからでしょう。
少女の衣装が血で染まったのは、処女を喪失したため。
肉体ではなく、精神的なもので二人は結ばれた・・・
少女はその不思議な力のせいで、老人を受け止めることができたのでしょう。
老人は、欲望を達成。
そして、古くなった船は、突然なぜか沈み始める。
それは、少女が不思議な力で船を沈めたと思われるような不自然さ。
沈み行く船に手を振り別れを告げる少女。
少女の新たな旅立ち。

老人が自ら命を絶つ場面はあまりにもせつなくて・・・
老人は心から少女を愛していたのね・・・
なんて、せつなさに浸っていたら・・・驚きのありえないラスト。
普通の映画なら、老人が命を絶ち、お涙頂戴の感動で終わらせるのに、
やはりキム・ギドク。
そんなラストの方が非現実的、ということね。
人間の姿をリアルに描くのであれば、そこでは終わらないわけね。





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