箪笥  A Tale of Two Sisters 
 原題:薔花、紅蓮 장화,홍련(ジャンファ ホンリョン)<2003>

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箪笥

人里離れた片田舎。名も知れない野の花が咲き、新作路に和風の木造家屋がひっそ りと立ってい る。昼間ならピアノの音が聞こえてきそうな美しいその家は、闇がおりれば鬼気迫る陰鬱さを発散し始める。

スヨン(ムン・グニョン)、スミ(イム・スジョ ン)の姉妹が、ソウルから長い療養を終え、この家に戻った日、新しい母ウンジュは(ヨム・ジョンア)は、子供たちを喜んで迎えるが、姉妹は彼女をあからさ まに敬遠にする。

一緒に暮らすようになった初日から、家にはおかしな気勢が漂い、家族たちは幻影を見たり悪夢に苦しめられたりする。

スミは死んだ母の代わ りをし、父ム ヒョン(キム・ガプス)と妹スヨンの面倒を看ようとし、生母によく似たスヨンはいつも怯えている。神経が鋭敏なウンジュは、そんな二人の姉妹といつも争う ようになり、父ムヒョンは彼らの不和をただ傍観するだけだ。

ウンジュは、情緒不安な症状を見せ、て家中を険悪な雰囲気に追い込み、妹を守るためにありった けの力を振り絞るスミが、それに対抗する中で、家のあちこちで奇怪なことが相次いで起こり始め る。

【予告編】

監督 キム・ジウン(金知雲) <1998>ク ワイエット・ ファミリー、<2000>反則王、 <2003>箪笥、<2005>甘い人生
<2008>グッド・バッド・ウィアード、 <2010>悪魔を見た

出演

イム・スジョ ン

<2002>ピ アノを弾く大統領、<2003>箪 笥、<2003>アメノナカノ青空、<2005>サッ ド・ ムービー
<2006>角砂糖、<2006>サイボーグでも大丈夫、<2007>ハピネス、<2009>田禹治(チョン・ウチ)
<2010>キム・ジョンウク探し、<2011>愛してる、愛さない

ムン・グニョ ン(文根英)

<2002>永遠の片想い、<2003>箪笥、<2004>マイ・ リトル・ ブライド(幼い新婦)
<2005>ダンサーの純情、<2006>愛なんていらない

ヨム・ジョン ア

<1999>カル、<2002>H[エイチ]、<2003>箪 笥、 <2004>ビッグ・スウィンドル!
<2004>ラブリー・ライバル、 <2004>20のアイデンティティ、<2005>サッド・ ムービー
<2005>少年、天国へ行く、<2007>な つかしの庭、<2007>里長と郡守、<2007>私の生涯で最悪の男、
<2009>チョヌチ(田禹治)

キム・ガプス (金甲洙)

<2001>バ ンジージャンプする、<2002>これが法だ、 <2003>箪笥、 <2003>トンケの蒼い空
<2004>あいつはカッコよかった、<2004>まわし蹴り、<2005>潜伏勤務、<2005>タイフーン
<2006>コンピル・ドゥ、<2010>悪魔を見た

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【レビュー&ネタバレ】
わりと話題になっている映画です が・・・
はっきり言えるのは、一度観ただけではわからない。
謎ばかりが残る映画です。
いわゆる不完全燃焼。
謎解きが好きな方にはピッタリな映画ですが・・・

ホラーとしては、moca的にはイマイチ。
そうドキドキすることもなく、背筋が凍るほどのことでもなく・・・
ホラーが苦手な方にはちょうどよいくらいでは?

そんなイマイチながらも、人を惹きつけるのは・・・
そのスタイリッシュで耽美、そして、クラシカルな映像美と、
あとに残るせつなさ・・・・
監督が壁紙一枚、家具一つ一つ・・・その色までこだわったという・・
専門のアートディレクターまで用意したというから驚き。
その美しさは、ホラーに相応しい。
ポスターからして、美しい。

そして、この作品は、韓国では「美少女ホラー」と呼ばれている。
この映画の中で姉妹を演じるイム・スジョンとムン・グニョン。
まさに美少女。
特にムン・グニョンが素晴らしい。
ちょっと「ロリコン」の気持ちがわかるかもしれない(笑)
怯え、涙を溜め、そんな表情の一つ一つが、絵に描いたように美しい。
スヨンは知恵遅れの子らしいです。
イム・スジョンは元々、妹スヨンのオーディションを受けたようですけれど、
気の強い姉スミの方がピッタリ。

この映画は、韓国に古くから伝わる古典怪談
「薇花紅蓮伝」を現代風ホラーに仕上げたものですが、
このストーリーを知らない日本人だから、
楽しめる部分もあり、意味不明な点もあり、ということでしょう。
ちなみに、この映画では姉妹の名前は現代風にアレンジされております。
「スミ」の「ミ」は「薇」であり、「スヨン」の「ヨン」は「蓮」
姉妹だから、共通する「ス」を頭につけたのでしょうね。
「薔薇」と、「蓮」という花の名前を持った姉妹ということらしいわ。
日本での古典怪談といえば、「四谷怪談」とか?
現代風にアレンジしながら、名前が「お岩さん」だったら笑っちゃうものね。

ちなみに、原作は日本の「姉妹」だと思ってらっしゃる方もいらっしゃいますが
「姉妹」は映画をノベライズ化したものです。
この映画は「
薇花紅蓮伝」を元に、一般から公募した「怖い話」を織り交ぜ、
現代風にアレンジしたものだそうです。


この映画は、スミが医者に質問されるシーンから始まって。
「あの日あったことを話してくれないか?」
結局、その「その日あったこと」が、この映画の要となっている。
けれど、それは最後まで明らかにはなっていない。
(素直にそのまま受け入れれば、明らかにされているということになりますが)

長い療養を終え、家に戻ってきたスミ、スヨン姉妹。
継母ウンジュは、二人を笑顔で迎える。
継母に敵対心をむき出しにする姉スミ。
威圧的な継母に怯えるスヨン。

自室に入った二人。
スミは荷物を解き、日記帳を机に置こうとする。
するとそこには同じ日記帳がすでにある!
それだけではない。
洋服ダンスには、同じ服ばかり。
父ムヒョンはどこかに電話をかけている。
「ああ、無事に着いたから。大丈夫だ」

夕食時。そこには冷たい空気が流れている。
父ムヒョンは、ウンジュの弟夫婦を週末に招待すると言い出すが、スミは反抗する。
そんなスミにウンジュも堪忍の緒が切れかかる。
ムヒョンは、ウンジュに黙って薬を差し出す。

父ムヒョンは、妻と娘たちの不和を知りながらも傍観しているだけだ。
スヨンが継母ウンジュのことを訴えても、適当にあしらう父。
そしてウンジュに対しても、どこか無関心な父。

夜。ベッドでムヒョンを待つウンジュ。
しかしムヒョンは、ウンジュが寝付くとベッドから離れ、
一人でソファに横たわる。

スヨンは部屋で誰かの気配を感じ怖くなり、スミのベッドに潜り込む。
スミは妹を溺愛しており、スヨンを優しく抱きしめる。
 そして、今度はスミが悪夢にうなされる。
亡くなった実母が血を流し、幽霊となり蘇る・・・
うなされて目覚めるスミ。
手についた血を見て、驚く。
それは、眠っている間に生理になったスヨンの血だった。
こっそりと両親の寝室を横切り、
生理ナプキンを持ち出すスミ。
しかし、それをウンジュが見ていた。
「おかしいわね。私と生理が同じ日?」
そして、部屋に戻ろうとしたその時、スミにも生理が来る。

スミは屋外の倉庫から、昔の写真などを運び出す。
スヨンと眺めながら、懐かしい日々に浸る。
ふとスヨンの腕を見たスミ。
そこには、傷跡が・・・
「あの女に何かやられたら言えって言ったでしょ!」
ウンジュは、亡くなった先妻に生き写しのスヨンを目の敵にしており、
影でこっそりスヨンを折檻していたのだ。

ウンジュの弟夫婦がやってきた。
しかし、スミとスヨンは反抗して、食事会には参加しない。
ウンジュは一人ハシャギながら、幼い頃の弟の笑い話を話し始める。
「覚えてないよ」
弟は浮かない表情だ。
隣りの妻も、どこか様子が優れない。
その時…、突然弟の妻が発作を起こして倒れてしまう。
「気が進まなかったけど、義兄さんに頼まれたから仕方なくて…」
ウンジュの弟は妻に申し訳なさそうに言う。
「あの家の流し台の下に、女の子が見えた…」
妻は、無表情のままポツリと漏らした。

↓結末↓


ウンジュが可愛がっていた小鳥が殺される。
それを見つけた父ムヒョンは、こっそりと庭に小鳥を埋葬しに行くが、
ウンジュは、小鳥が殺されたことを既に知っていた。
怒り狂ったウンジュは、スヨンの部屋に怒鳴り込む。
そこには、スミが倉庫から持ってきた写真が・・・
ウンジュだけが切り抜かれた上に、顔は真っ黒く塗りつぶされていた。
「お仕置きをしてやる!」
ウンジュは、スヨンを箪笥に閉じこめ鍵をかけてしまう。
スヨンは泣き叫ぶが、誰も助けに来ない。
しばらくし、眠りかけていたスミが気配を感じ、スヨンの部屋にやって来る。
箪笥からスヨンを助け出したスミは、守ってやれなかったことを詫びる。
そこへ父ムヒョンもやってくる。
スミは、ただ泣くだけのスヨンを怒鳴りつける。
「バカみたいに泣いてばかりいないで、あの女に何をされたか言ったらどうなの!」
そんなスミの様子に限界を感じたムヒョンは真実を口にする。
「いい加減にしろ!スヨンは死んだじゃないか・・・」
そばで聞いていたスヨンは絶叫する。
「いやー」

「頼む、来てくれ。俺にはお手上げだ」
ムヒョンは誰かに電話すると、出かけていった。
目覚めて父の残したメモを見たスミは驚く。
あいつと私達だけ・・・・
「スヨン!」
スヨンの部屋に慌てて駆け込むスミ。
廊下にはベッタリ血のあとが。
血のあとを追うスミ。
そこには、血まみれの布ぶくろが。
スヨンがあいつに殺された・・・
スミは必死に袋の紐を解こうとするが、
そこへウンジュがやってきて、もみ合いになる。
気を失ったスミはウンジュに引きずられ運ばれる。
(この後、廊下の血が消える。スミの妄想ということ)
石膏像をスミの上に落とそうとしたその時、ムヒョンが帰宅する。
倒れていたスミを見たムヒョンはソファーへ運ぶ。
薬を取って戻るムヒョン。
(血まみれの袋にムヒョンが気づくが、中は人形)
戻ると、ソファーに座っていたのは、ウンジュ。
そして、戸を開け誰かが入ってくる。
ウンジュは目を見張る。
入ってきたのは本物のウンジュ。
その瞬間、ソファーに座っていたウンジュはスミに入れ替わる。

スミはまたもや入院してしまう。
「もう終わったのよ」
と、ウンジュはスミの頭を撫でる。
病院から家へ戻ったウンジュは、箪笥に何かがあると考え、
箪笥のある部屋に入るが、
箪笥の中から出てきたスヨンの亡霊に襲われる。
病室のスミは、過去を思い出しながら涙を流す。

スミとスヨンが遊んでいると、父とウンジュが帰ってくる。
「今日はパーティーだぞ」
スミはいやがらせのような態度を取った上、
部屋に篭って音楽を聴き始めた。
スヨンは実母が寝ている部屋に行き
「ママと一緒にいたいよ・・」 と甘えていた。
母はスヨンを泣きながら抱きしめる。
いつのまにか眠ってしまったスヨン。
目覚めると、母の姿がない。
その時、箪笥がほんの少し開く。
中を覗くスヨン。
そこには、クビを吊った母の姿が・・・
「ママ!今助けてあげるからね!」
泣きながら、紐を解こうとするスヨン。
しかし、無理矢理紐を引っ張ったため、
箪笥が倒れ、スヨンは下敷きになってしまう。
箪笥が倒れた音に気がついたスミは、様子を見に行こうとするが、
部屋から出てきたウンジュと鉢合わせする。
「勝手にママの部屋に行かないでよ!」と、悪態を吐き、
「今から出かけるの」 と、スミは家を出ようとする。
「あんた、この瞬間を一生後悔するかもしれないわよ」
ウンジュは、意味ありげにスミに言い放つが、スミは家を出て行ってしまう。
「お姉ちゃん...... 助けて.... 行かないで.... 」
その時、箪笥の下敷きになっていたスヨンは息絶える。

END

結局、全て精神を来たしてしまったスミの自作自演。
多重人格。

同じ服や日記帳がいくつもあるのは、
何度も何度も家と病院を往復している(入院している)ということで、
その度に記憶を抹殺しているということ。

姉妹を敵視するウンジュは、全てスミの妄想で、
最後に父に呼ばれてやってきたウンジュだけが本物。
スヨンは実際に死んでいて、
自分が死んだという事実に気づかぬまま幽霊として
あの家に住みついていた。
「スヨンは死んだんだ!」
という父の言葉で、初めて事実を知ってしまう。

スミはウンジュの時にはスヨンを敵視し、
スミの時にはスヨンを溺愛する。
敵視するのは、スヨンが父が愛する母に生き写しだから。
溺愛するのは、スヨンを見殺しにした罪悪感から。

スヨンと、(姉妹を敵視する方の)ウンジュが存在しないということは、
父はスヨンには一切話しかけず、スミにしか話しかけない。
父は娘たちとウンジュの不和を傍観しているだけ。
ウンジュにも無関心。
ウンジュに、なぜか慣れたように薬を差し出す。
ウンジュの弟夫婦が姉の話についていけないのは、
そこにいたのは、ウンジュに成りきったスミだったため。
スミの作り話についていけず「覚えてない」と答えた。
小鳥が殺されたことを知っていた。(自分で殺したから)
いろいろありますが・・・

スミが父に対して近親相姦的な愛を感じていたことも、
ベッドで父を待っていたり、
まるで妻のように振舞ったり、頬を撫でたりと、
十分わかる話。

流し台の下にいた幽霊がスヨンということは、
そばに落ちているのは、スヨンの髪飾りだそうで、
シナリオからスヨンと断定されております。
スヨン、スミ、ウンジュの三人が同時に生理になったということは、
スヨンはスミが演じているものと、
幽霊のスヨンの二通り存在するということでしょうね。

結局、' スミと敵対 ' するウンジュという存在はなかったわけで、
スミが出かける時に言い争ったのも、スミの妄想の中でのウンジュ。
スミはスヨンが瀕死だと知りながら見捨てたということ。

というのが、映画を観て最も考えられることですが、
実際にスヨンを見殺しにしたのは、ウンジュではないかと思います。
病室から帰ろうとした時のウンジュは優しい母という印象ではありません。
「離して」
とスミを突き放そうとする時に性根の悪さが現れています。
そして、それが父ムヒョンにバレていないかと、ムヒョンを振り返る。
ただ、箪笥から出てきた幽霊に襲われるのはスミのような気がして仕方ありませんが・・
その直前にテーブルで過去を思い出しながら悲しむウンジュは、
とても性根の悪い継母には見えない。
それとも、こんな人間でも懺悔をすることもあるのだろうか。

---
元々のシナリオでは、
スヨンは箪笥の下で死んだわけではなく、助かっている。
けれど、スミはスヨンを道連れに貯水池に身を投げ、
自分だけが助かってしまう。
スヨンの遺体は大々的な捜索をしたにも関わらずみつからない。
スミは毒物を飲んで自殺を図ろうとするが、一命を取り留める。
そして、多重人格に陥るのだと思われる。

「自分以外の人格は生存者の人格なのに、
なぜ死んだ人の人格に執着するのかわからない。
私もこのように深刻で複雑な多重人格障害を見せる患者は初めてだが
普通は、死んだ人の人格を呼び起こしはしないですね。
スミさんが何か執拗に伝えようとしていたメッセージはないですか?」
と、医者はムヒョンに尋ねる。

スミは病室で、スヨンの霊に呼びかける。
「スヨン、どこにいるの?出てきても大丈夫」
「お姉ちゃん」
「ごめんね、お前の体を捜してやらなきゃ・・・」

そして、貯水池(*)
ドブン!という音と共に抱き合ったまま水の中に飛び込んだスミとスヨン。
スヨン、スミの首を抱いて水の中深く、下に下に降りて行く。
スヨンは目をあけたまま、スミを穴があくほどみつめながら、
「逃すものか!」というのように、スミの首を強くぐるぐる巻きつける。
しかし、スミの表情は幸せそうだった。

病室で横たわるスミの頬には、まだ乾いていない涙が・・・
---

医者の言葉から考えれば、
スミが執拗に伝えようとしていたのは、
「スヨンがあの女にいじめられている!」ということで、
スヨンを見殺しにしたのはウンジュのように思えるけれど、
(*)で、スミはスヨンに殺される。
これはスヨンへの罪悪感から見た夢なのか?
しかし、スミは結局自殺してしまって、
それは、病室で涙を流している時だと思われる。
(映画の方でも、この涙を流しているシーンだけはある)
シナリオを読んでも、スヨンを見殺しにしたのは、
ウンジュにしか思えないのに、
なぜスミはスヨンに殺されなければならないのか?
実際には病室で亡くなったと思われるので、
あの貯水池で殺されるのは、スミの夢(願望)なのでしょう。

死んだスミは幽霊となって、
「私の妹を捜してください」
と、スヨンの写真を持って、交番に現れる。
その話を警官から聞かされたムヒョンは、
「スミはいったい何を伝えたかったのだろう・・・」
と考え、そして、スミの意図を悟る。
そして、姿を消してしまう。
(自殺したか、亡霊に殺されたか)

ウンジュは一体どうなったのか?
結局、ウンジュに騙された父が悪いのだと父だけが罰を受けるのか。





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