夏物語  Once in A Summer  
 原題:その年の夏 그 해 여름(ク ヘ ヨルム) <2006>

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夏物語/その年の夏

1969年夏、ソウルから田舎にボランティア活動に来た大学生達。 その中でも一際目立つ顔をしたソクヨン(イ・ビョンホン)。 父親を避けて逃げるようにやって来たボランティア活動だから、全てが嫌でサボるだけの毎日。そんな彼の目に留まった女性ジョンイン(スエ)。 家族を失い天涯孤独でありながら、明るく純粋なジョンインにソクヨンは惹かれていく。 ボランティア活動も終わりに近づき、二人の別れも近づいてくる。 だが、別れは思がけないところからやってくる。

時が流れ─────
ユン・ソクヨン先生の初恋の相手のソ・ジョンインを探し出すためにテレビ作家のスジン(イ・セウン)とキムPD(ユ・ヘジン)は取材に出る。ジョンイン の行方を探し、田舎に来た。村でジョンインのことを尋ねるが、彼女の名前を耳にした途端、村人たちの顔色が変わる。 そして、当時一緒にボランティアに来ていたナム先生(オ・ダルス)から、思いも掛けない懐かしい恋話を聞かされる。

日本公式サイト:http://www.excite.co.jp/cinema/natsu2007/

【予告編】

監督 チョ・グンシク <2002>品行ゼロ、<2006>夏物語(その年の夏)

出演

イ・ビョンホ ン(李炳憲)

出演作品一覧

スエ

<2004>ファ ミリー、<2005>ウェディング・ キャンペーン、<2006>夏物語
<2008>あなたは遠いところに、 <2009>炎のように蝶のように、 <2010>深夜のFM

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【レビュー&ネタバレ】
2006年11月末韓国公開、 2007年1月末日本公開
「夏物語(その年の夏)」でございます。
当初は「夏物語」というタイトルだったけれど、
公開前に「その年の夏」に変更になったのよね。
案を出したのはイ・ビョンホンだと。
「夏物語」よりも、「その年の夏」の方がしっくりくるわ。
その年の夏の美しい思い出を胸に、何十年もの間生きてきた男女。
「夏物語」なんていうほど洒落ているわけでも、ドラマティックでもなく、
その当時なら有り得たであろう、せつない悲恋。

韓国での動員数は26万人程度。かなり人気のなかった作品。
けど、日本ではわりとヒットしているのよね。
イ・ビョンホン人気もあるだろうけど、
ストーリーが韓流好きのツボにハマっているのだとも思うわ。
最初は期待するのが怖かったけれど、
期待以上によい映画だったわ。

1969年当時の時代背景を知らないと、
この映画の価値がちょっと薄れてしまうかも。
この時代背景を知ってこそ、二人が引き裂かれる悲劇というものが、
胸に迫ってくるのでは?

スパイ容疑をかけられるということがどれほど恐ろしいことか・・
「スパイ容疑=死」を意味する、といっても過言ではないと思うわ。
死とはいっても、ただの死ではなく、
酷い拷問の上の死でしょう・・
1945年に日本が敗戦により撤退し、
その後は、反共軍事独裁政権による支配で、
大変な時代だったのよね。
朴大統領は「恐怖独裁」で有名だけれど、
一方では、韓国に高度成長をもたらした人物。
このことに触れると長くなるので割愛。

とにかく、スエがよかったわー
mocaはスエのこの地味顔というか・・・
不細工さが納得できませんので・・・
不細工ではないのだろうけど、mocaの好みじゃないのよー
観る前はかなりテンション下がってたけれど、
本当にスエにピッタリの役だったわ。
それ以上に、スエの見事な演技に感服ですわよ。
わざとらしくない熱演。
取調室での演技は涙を誘うわよ。

イ・ビョンホンの老人役は公開前から話題とされたけれど、
うーん・・・
今まで見てきた中で、
他の俳優が演じた老人役よりは、ずっとよかったかな。
ただ、かっこよすぎるって!(笑)
下手したら、今よりかっこいいんじゃ?(笑)
シルバーグレイのシブくて、ジェントルマンな老紳士。
しかし、顔が若いまま(笑)
銀髪長髪にしたイ・ビョンホンという感じで、
老人に見えない場面も多々あり・・・
ただ、あの哀愁漂う感じはよかったわよねぇ。

<冬のソナタ>のジンスク役のイ・ヘウンが
スエの同僚役なのだけれど、
あまりにも太っちゃって誰だかわからなかったわ。

そして、一つ。
この作品は老人イ・ビョンホンの過去の恋を語るわけなのに、
物語の語り手がいない。
あらすじを読めば、語り手はナム先生(オ・ダルス)なわけよね。
スジン(イ・セウン)とキムPD(ユ・ヘジン)の取材により
回想されていくわけなのに・・・
ナム先生の登場なし(笑)
というわけで、勝手に過去の物語が進んで
ちょっと違和感を感じるわ。

ドラマならともかく、2時間という短い時間の中で
主人公に感情移入できる作品は少ないもの。
これほどまでに、主人公二人が結ばれて欲しいと
せつに願った作品は、あまりなかったわ。
一生、一人の人を愛して
その美しい思い出を胸に生きていくのもいいわね・・
mocaには、その方が合ってそう。
ただ、そんな人現れなそうだわ。


政治にも、農村ボランティアにも興味のない大学生ソギョン(イ・ビョンホン)
父親の小言から逃げるように農村ボランティアにやってくる。
そこで、図書館で司書をするジョンイン(スエ)に出会う。
お互い快く思わない二人。
夜、若者同士の親睦会が開かれる。
ジョンインはソギョンの落とした学生証を届けに行くが、
無理矢理歌を歌わされる。
「ケナリ峠は・・・」と歌いだすが、調子外れのジョンインの歌は、
皆の冷やかしの的となる。
好きな子をいじめる天邪鬼のように、ソギョンもジョンインをからかう。

北のスパイを捕まえる訓練に参加するジョンインを見た村人たちは、
陰口を叩き始める。
「アカがアカを捕まえるために頑張ってるわ」と。
ジョンインの父が北朝鮮に逃げ、村人たちは大変な目に遭ったのだと、
ソギョンは村人たちの会話を耳にする。
居た堪れなくなったジョンインは、出て行ってしまう。
ジョンインをおいかけるソギョン。
突然の雨に雨宿りをするが、そこでソギョンは、
ジョンインからマンオサ(萬魚寺)の話を聞かされる。
そこには、魚が石に変化した石があり、
雨が降ると悲しくて、「テン・・・テン・・・」と、泣くのだと。
ソギョンはバカにして取り合わない。

ジョンインが街へ出かけるのを見かけたソギョンは、自分も無理矢理ついて行く。
電気屋の前で音楽に耳をすませているジョンインを見かけたソギョンは、
ジョンインについ見とれてしまう。
そんな時、最終のバスが出てしまったことに気づきジョンインは慌てるが
ソギョンは「歩けばいいだろう?健康な足があるんだから」
と、涼しい顔をしている。

村まで延々歩き続ける二人。
ソギョンは先程までの強気さとは裏腹に「もう歩けない」と弱音を吐くが、
ジョンインは涼しい顔で歩き続ける。
途中、川を横切ると聞いたソギョンはへこたれる。
ジョンインは平然と川の中を歩いて行くが、
水の音と共にジョンインの姿が消えてしまう。
ジョンインが川に沈んだと、ソギョンは必死でジョンインを探し回る。
しかし、それはジョンインの悪戯で、ジョンインは草陰に隠れていた。
ジョンインが無事だと知ったソギョンは安堵し、
ジョンインを抱きしめキスをしようとするが、拒まれてしまう。
(のけぞるスエに笑えるわ)

ようやく村に辿りつくと、ソギョンはジョンインにプレゼントを渡す。
魚の形をした石。
マンナオの話をソギョンが覚えていたことに、感動するジョンイン。

最初に出会った空き家に行き語り明かす二人。
どこからか漂ってくる匂いが気になるソギョン。
ジョンインは、糸杉の葉から出る匂いだと教える。
両親のことを尋ねたソギョンは、ジョンインの両親は亡くなったことを知る。
「この家は元々は私の家だったの。両親はいつもここにいるから平気なの」
ジョンインは明るく答える。

ボランティアにやってきた学生たちは、
村人たちのために映画の上映会を開催する。
ソギョンはジョンインを校舎の中へと連れて行く。
そこは、布を張ったスクリーンの裏側。二人だけの特等席。
感動するジョンイン。
ソギョンはさりげなくジョンインの手を握るが、
ジョンインは戸惑いを隠せない。

上映会が終わった時、
韓国電力の社員がキム・マンドク(チョン・ソギョン)を訪ねてくる。
韓国電力に勤めるマンドクの息子が感電死したと。
遺骨を持ってやってきたのだ。
マンドクは、数日前にジョンインに息子から手紙が来たと言われたと、
息子の死を信じようとしない。
マンドクを気の毒に思ったジョンインが嘘をついたのだ。
ジョンインの嘘だとわかると、マンドクはジョンインを殴り倒した。
「お前の父親は村を台無しにして、今度はお前か?
お前の家族のせいで息子が死んだんだ」と、マンドクはジョンインを責める。
そんな時、蝋燭の火が燃え移り、図書館が火事になる。
燃えていく図書館を呆然とみつめるジョンイン。

夜、マンドクがジョンインを訪ねてくる。
さっきは悪かったと。
ジョンインの父が図書館を建てた時、有難くて何度も頭を下げたんだ。
これで息子や孫が、俺のように字が読めなくてバカにされずに済むと・・
今もその気持ちは変わっていない。
でも、こんな時代だ・・・どうしょうもない。
お前を叩いたりして、お前の父親に合わせる顔がない。
ジョンイン。図書館のことは俺も悲しいんだ・・
マンドクはジョンインに「忘れなきゃいけないんだ」と、言い聞かせる。

ようやく村に電気が灯るようになる。喜ぶ村人たち。
村人たちはTVの周りに集まり、アポロが月に行った映像を見て騒ぎ立てる。
そんな中、ジョンインは一人ぼっちで池に佇んでいた。
ソギョンはジョンインを笑わせ、
「一人より二人の方がいいだろう?一人で我慢するな。
これからは、辛いことがあったら俺に言えよ」と、ジョンインに告げる。

ボランティアの学生たちの様子が何やらおかしい。
しかも、予定を切り上げてソウルへ帰るという。
ソギョンは、先輩にジョンインとの交際をたしなめられる。
ソギョンとジョンインは、昔のジョンインの家で過ごす。
ジョンインは糸杉の葉を栞にする。
こうしてたまに両親に手紙を書くのだと・・・
「私は元気よ。幸せに暮らしてるわ。心配しないでね」と
糸杉の葉はその暗号で、言葉はいらないのだと。
ソギョンは一緒にソウルに行こうと切り出すが、
ジョンインは、お願いだからこのまま帰って・・と、断る。


そろそろ結末よ、ご注意を。


後ろ髪を引かれる想いで村を後にするソギョン。
ジョンインは遠くから、ソギョンの乗る列車を涙で見送った。
傷心のまま森を歩くジョンイン。
そこには、いるはずのないソギョンが立っていた。
「このまま帰ろうとしたんだ。君の願いを叶えたくて・・・」
必死に言い訳しようとするソギョンに、ジョンインは抱きつく。
「なぜ戻ったの?我慢して見送ったのに」
「また帰れと言うの?行かないで、だろう?」と、
ソギョンは不満を漏らすが、
「いけないことだけど、あなたを待ってたらそこにいたの・・・」
ジョンインの言葉に、ソギョンは嬉しそうに笑う。
「ソウルに一緒に行こう」
ソギョンの申し出に、ジョンインは頷く。
抱き合い、キスを交わす二人。

ソウルに着いた二人は、ソギョンの大学へ向かう。
休学届けを出すために。
しかし、大学は学生デモで騒然としていた。
デモと間違えられたソギョンは機動隊に殴られ、捕らえられる。

留置場に面会に来た父に
「ジョンインのことは知らないと言え」と、諭される。
お前のために彼女まで巻き込んでしまうぞ、と。
ソギョンにはスパイ容疑がかかっているのだと。
「何とか裏から手を回し釈放させるから、あの女のことは知らない。いいな?」
父はソギョンに言い聞かせる。

取調べを受けたソギョンは、
ソギョンのカバンから、総学生会の宣言文書が出てきたと、
刑事から知らされる。
そのカバンは、休学届けを出しに行く際にジョンインに預けたものだった。
刑事は、北へ逃げたソ・ミンヒョクの娘ジョンインが持っていたと、
完全にソギョンとジョンインをスパイと見なしていた。
農村ボランティアは、総会の打ち合わせのために行ったのだと。
農村ボランティアに参加した学生たちが危険を感じ、
ソギョンに罪をなすりつけたのだ。
しかし、刑事たちはソギョンをなじり、蔑み、容赦なく殴りつけた。
カバンを持っていたジョンインも拘束されていた。
「私は何も知りません。ソギョンさんに聞いてください」
ジョンインは必死に抵抗する。
その時、ジョンインの取調室にソギョンが連れてこられる。
ジョンインは安堵するが、
ソギョンは「村で何度か見かけたが、それだけです」と答える。
嘘をつくソギョンに、呆然とするジョンイン。
しかし、刑事たちに痛めつけられても、
必死に「知らない」と言い張るソギョンに居た堪れなくなったジョンインは
「その通りです。私も見かけたことはあるけれど、それだけです」と、ソギョンを庇う。
ソギョンを庇えば、自分がスパイとして死ぬ運命にあることを知りながら・・
部屋から連れ出されるソギョン。
ソギョンは刑事たちを振り払い、ジョンインに駆け寄る。
「ジョンインのそばにずっといるよ。俺がそばにいるよ」
ソギョンはジョンインを抱きしめる。

ソギョンは父親の力で釈放される。
ソギョンは、折り合いの悪かった父に頭を下げる。
「彼女をあそこから出してください」と。
ジョンインもようやく釈放される。
ソギョンは全てを捨ててジョンインと二人でどこかへ行こうとするが、
それを悟ったソギョンは、うろたえる。
「頭が痛い」
と、ソギョンに薬を買いに行ってもらうジョンイン。
しかし、なかなかソギョンの手を離すことができない。
「すぐに戻るよ」
と、ソギョンは笑う。
「すぐに戻ってね」
と、ジョンインはようやくソギョンの手を離す。
笑顔でソギョンを見送りながら、
「今度は、絶対に私の手を離さないでね」と、
遠ざかるソギョンの後姿に向かって語りかけるジョンイン。
そして、ソギョンが戻ってくると、そこにはジョンインの姿はなかった。
ソギョンのためを想って、ジョンインは姿を消したのだ。

現在に戻り─
ソギョンの容態は悪化していた。
「早くよくなって、あの方に会うべきです」
と、スジンはソギョンに手紙を書く。
その手紙の中には、スジンがキムPDから貰った栞が入っていた。
その栞を見たソギョンは、驚愕する。
昔ジョンインが作っていた栞と同じものだったのだ。

ソギョンは、スジンとキムPDと一緒に、キムPDが栞を貰った場所へと向かう。
「辛く寂しく暮らしていないか・・。それが一番心配だ」
ソギョンはスジンに話す。
ジョンインが先生をしていた学校の校長は、
ジョンインが急に糸杉の木を植えたのだと話す。
目的を尋ねると、葉を取るためだと答えたという。
糸杉の葉は、
「私は元気よ、幸せに暮らしてるわ。心配しないでね」という暗号。
いろんな人に配れば、いつかソギョンの元にも届くかと・・・
その栞にはジョンインのソギョンへの愛が込められていた。
ジョンインの遺品の詰まった箱を開けたソギョンは、
そこにいつかの魚の形をした石があることに驚く。
その石は、ジョンインが消えた後マンナオを訪ね、そこへ残してきたのだ。
そんなソギョンの姿を、ジョンインは密かに遠くからみつめていたのだ。
ソギョンの残していった石を、ジョンインが持ち帰ったことを
ソギョンは数10年経って初めて知った。

人生で辛い時、
いつもあなたと過ごした時を思い出すの。
もう泣かないで、
大切な時間を美しく憶えていましょう・・・







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