もし、あなたなら~6つの視線~ If You Were Me |
原題:6つの視線 여섯개의 시선(ヨソッケエ シソン) <2003> |
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Episode.1 彼女の重さ 그녀의 무게 (クニョエ ムゲ) The 'Weight' of Her | |
とある
女子商業高校。3年生ともなると、教師は就職のため容姿に磨きをかけるよう生徒たちを叱咤激励する。ある者は美容整形に走り、ある者はダイエッ
トに励む。より美しくスマートに見えるようあらゆる努力をする生徒たち。 ソンギョンは、特に可愛くもない、ちょっと太めの女の子だ。 ソンギョンも二重まぶたの整形手術を受けたいし、断食道場にも通いたいのだが、母親は無関心だ。ソンギョンは悩んだ末、二重の手術を受けるために、危険な 決断をする・・・ 【思いっきりネタバレ】 「危険な決断」に期待してたけど、なんてことないわ・・・・・ 二重の手術を受けるために、援交まがいのバイトをするのだけれど、そうして手術をしたのに失敗しちゃうのよね。 で、面接の日ソンギョンはサングラスをかけて参加するのだけれど、「面接にサングラスをしていいと思っているのか」とたしなめられ、外すよう言われるのよ ね。で、ソンギョンは手術をしたがために、物笑いの種になってしまう・・・という・・・。 今更こんなネタで問題提示をするのはどうかしら・・・・・・ 一時話題になった中国の痩せ薬のニュースがチラリと映し出されたり・・・・ 「美」を求めるあまり、やりすぎて逆に悲惨なことが起こる危険性を訴えた内容で、 見た目重の韓国の社会を批判した内容でございます。 韓国はとにかく学歴社会。 大学進学を諦めた人は就職のために商業高校へ通うわけで・・・・ そんな社会な上に、見た目重視の韓国。就職のために美容整形するなんてことは当たり前にあるんです。 商業高校なら深刻なほどに・・・・ 「整形大国」である韓国だからこそ、重みのあるテーマなのですよね。 |
監督 |
イム・スルレ (林順禮) |
<1996> 三人の友達、<2001>ワイキ キ・ブラザーズ、、<2008>私たちの生涯最高の瞬 間 |
Episode.2 その男、事情あり 그 남자의 事情 (ク ナムジャエ 事情) The man with an Affair | |
近未
来。その四角いマンションの真ん中にはすべての部屋が見渡せる吹き抜けのスペースがあり、住人たちが互いの行動を監視できるようになっている。各階の
白い壁にはいろんな道徳的標語が書かれ、無機的な空間を彩っている。 そのマンションにひっそりと住んでいるA氏。彼は最近インターネットの性犯罪者公表サ イトで犯罪者として名前が掲載された。まわりの住人は彼を無視するが、ただ一人おねしょ少年だけが彼に関心を持っている。 ある日、母親はおねしょの罰とし て少年をパンツなしで外に放り出し、近所の住民から塩をもらってくるように命じるが・・・。 【思いっきりネタバ レ】 白い壁に黒い文字で書かれたハングルは、日本人から見るとちょっとスタイリッシュ。 けど、いろんな教訓が 壁中に書かれているんだから・・・・・ 日本語に置き換えて考 えたら・・・・ダサすぎるマンションよ ね・・・・・ エレベーターの前には、話しかける前に確認しよう。やら、エレベーターに乗る前に靴を磨こう、やら・・・・ フロアの壁には「二度としないよう制裁を」とか・・・・ その制裁の対象となった二人の人間をターゲットにした映画でございます。 一人は少年、おねしょ をしてパンツなしで(裾が長いシャツだか ら見えないのだけれどね)玄関の外へ放り出されるの。 ←は、おねしょをする から水を飲むことを禁じられて、同じマン ションの友達から水をもらっているシーン 少年役は女の子。 「永遠の片想い」で、イ・ウンジュの子役 を演じたチョン・ハウンちゃん。 なぜ女の子が少年を演じたのでしょう? 少年の엄마(オンマ:母)は、ピョン・ジョンス(ミリョン@星を射る)よー で、ミリョン(って呼ばせてね)が意地悪なんだー 少年が足が冷たいからせめて靴をはかせてとせがむと、遠くへ靴を放り投げるのよ。 近所の住民から塩をも らってくるまで家には帰れないのよ。 この風習は昔はあったらしいけど、今はすたれているようよ。 で、近所の人は塩をせがむ少年を見て、おねしょをしたとすぐに悟るわけ。 少年が二度とおねしょをしないよう制裁を加えるわけね。(かるーく) 「それが人に物を頼む態度か」とか、「おねしょをするなんて恥を知れ」とかね・・・・ で、残ったのは・・・・もう一人の制裁の対象、全面的に無視しろとミリョンに言い聞かせられている性犯罪者A氏。 A氏のドアの前に立ったところで物語は終わりなんだけど・・・・ 韓国の社会は犯罪者に対する制裁は厳しいわよー 日本人が見たら最初は驚くわね・・・・ 警察の中にマスコミは自由に入れるし、犯人の顔写真を撮りまくり・・・ メディアに載せ放題・・・・・ 犯罪者に人権などないのよ・・・・ね。 で、性犯罪者に限っては、インターネットの性犯罪者リストに、住民登録番号までも載せられちゃうの・・・ 住民登録番号というのは、18歳になったら申請できる番号で、韓国ではすべてこの番号で管理されているのよ・・・ この住民登録番号はその人を示す絶対的な番号だから、本名なんて比べ物にならないほどよね。大小は置いておいて・・・・ この映画は罪を犯した人間にも人権はあるんじゃないか・・・そういうことを謳っております。 |
監督 |
チョン・ジェ ウン |
<2001> 子 猫をお願い |
Episode.3 大陸横断 대륙횡단 (テリュクェンダン) Crossing | |
この短
編は、脳性麻痺という重い障害を抱えるキム・ムンジュの日常生活を11のエピソードで描いている。 就職に必要な履歴書用の写真をセルフ・ポートで撮 るため、しかめっ面をしてみせる<履歴書>。 やっとドアから外に出られたのに、彼が家の中に入ろうとしているとカン違いした近所の人から、親切にも家の中 に入れられてしまう<18年ぶりの外出> 親族の慶弔事には留守番させられる彼の気持ちに家族さえ気づかない<婚約パーティ> 階段を車椅子専用リフトで 上げられる間の何とも言えない数分間<音楽鑑賞時間> 好きな女性に告白できない<この気持ち分かってくれる?> 友人と障害の問題について突っ込んだ話 をする<友達>など・・・ 最後のエピソード≪大陸横断≫で彼は、障害者移動権闘争のためにデモをして刑務所に入れられた友人のことを考えながら、光化門の交差点を 突っ切ろうとする。 【思いっきりネタバ レ】 ちょっとブラックジョークの利いたユニークな作品よ。 この6話の中では比較的観やすい感じよね。 あらすじにはないけれど、「この醜い足がないと、よけいに大変」みたいなエビソードが、mocaにはグサリときたわ・・・ 最後のエピソード、そして、この話のタイトルにもなっている「大陸横断」。実際は大陸ではなく、大通りなんだけれどね。 この光化門という場所は、交通量もすごく多いのよ。ムンジュにとっては大陸横断のようなものよね。 それだけではなく、この場所は韓国の政治的中心地らしいわ。 そこを障害者のムンジュが松葉杖を突きながら歩くということは、大陸横断なんかよりもずっと覚悟のいることよね・・・ ムンジュの友達が逮捕された障害者移動権闘争というのは、 「障害者が安全かつ健常者と区別されることなく、移動できるような社会にする」ということを目的に行っている運動だそう。 障害者にも人権がある・・・・そう謳ったお話よ。 正直言って・・・mocaの気持ちは微妙だわ・・・・・・ ムンジュの友人が逮捕されたデモのせいで、市内の交通は麻痺して・・・・ mocaが健常者としてその場にいたとしたら、仕事に遅刻して怒り爆発してたと思うわ。 迷惑をかけられて・・・・その人々の人権を考えてあげる・・・・なんて気持ちまでなかなかなれないわ。 だって・・・エピソードの中にある<音楽鑑賞時間>だけれど、車椅子をリフトアップするためにエスカレーターが塞がれて遠回りさせられたこととかあっ て・・・そういう時は、障害のある人のことよりも、自分のことしか考えられないもの・・・ mocaって心が狭いのよ。mocaだけじゃないと思うわ・・・世の中、心の余裕がない人がたくさんいるのよ・・・ 障害者の立場からしてみれば、本当に辛い世の中だわよね・・・・・ 自分で好きで障害になったわけじゃないのに・・・・ 健常者のように自分の思うままに生きれない上に、邪魔者扱いされて生きなきゃだなんて・・・ |
監督 |
ヨ・ギュンド ン |
<1994>セサン・パクロ 外の世界へ、<1995>マン?、<1997>殺
す話、<2000>私のコンピューター、 |
Episode.4 神秘的な英語の国 신비한 영어나라 (シンビハン ヨンオナラ) Tongue Tie | |
1999
年の冬、ソウルにある名門英語幼稚園でクリスマス会が開かれている。6歳のジョンウは両親の期待にこたえ、英語の発表会で上手に歌っている。だ
が、ジョンウの母親は少しがっかりしたようだ。息子の発音が他のネイティブの子どもほど完璧ではなかったからだ。それから3年後、ジョンウは小児歯科の手
術台の上に横たわっていた。痛みは避けられないが、RとLの発音が上手になるよう手術が行われた。母親が期待したようにジョンウの未来は輝かしく、素晴ら
しいものになるのだろうか? 【思いっきりネタバ レ】 これはハッキリ言って映画じゃありません。 ノンフィクションであり、ドキュメンタリーであり・・・・・・ ジョンウの英語の発表会を除いては、延々ジョンウの舌を切ったり縫ったりして形を整える手術の映像よ。 この手術は実際の手術を撮影したもの・・・・・ 実際にこんな残酷な舌の形を整える手術が行われていることも、この手術の映像も・・・ショッキングですわよ・・・・ この映像を正視することで、親が「子供のため」という名目の下、子供に対してどれだけ残酷なことをしているかを直視するよう訴えた作品よ。とにかく・・・ 目を覆うことなく正視するにはキビしい映像。この映像を観ることで、少なくても舌の手術をさせるなんてことは減るかもしれないわね・・・・・ この監督が「君は僕の運命(ユア・マイ・サンシャイン)」の監督とは、ちょっと驚き。 |
監督 | パク・ジンピョ | <2003>も
し、あなたなら ~六つ
の視線~、<2005>ユア・マイ・サンシャイン、
<2007>あいつの声、 <2010>私の愛、私のそばに |
Episode.5 顔の価値 얼굴값 (オルグルガプ) Face Value | |
ソウル
のどこか。葬儀場の駐車場で料金所の女性係員と男性ドライバーとのあいだで諍いが起こる。接客態度のなっていない美人係員に対して、ドライバーが
「その顔なら、他にも仕事はいくらでもあると思っているんだろう」と言ったことから、相手を不快にさせる言葉のやり取りが<顔の価値>に関する激しい口論
へとエスカレートしていく。そして、ドライバーが駐車場から出るやいなや見たものは・・・ 【思いっきりネタバ レ】 ちょっとミステリー仕立ての作品でございます。 このオムニバスの中で唯一名の知れた俳優・・・チ・ジニが出演しておりますわよ。 <顔の価値>というか・・・<偏見>がテーマでございますわね。 出口から出てはまた入ってきて、グルグルグルグル何度も係員の前にやってきて難癖つける男。美人だから思い上がってるのだと・・・・。人間とはそうやっ て、偏見の目でグルグルグルグル同じところを廻っているということを言いたいのでしょうね。 人権映画にしても、ミステリー映画にしても、中途半端な作品でございますわ。 男がそこまで執着して難癖つける意味もわからないし、係員の女が実は既に死んでいて、その事実を知った男は立体駐車場の中で慌てたあまりに衝突事故を起こ して死んでしまう・・・のかしら?うわーという叫び声と音だけで、よくわかりませんが。 とにかく、係員の女の「あなたプレイボーイなのね、注意した方がいいわ」という言葉の「プレイボーイ」の部分は無視して、女を偏見で見た男に対して、偏見 で物事を見ると痛い目に遭うわよ・・・というメッセージを込めた映画なのかしらね。 <顔の価値>についてはどこへいっちゃったやら・・・ |
監督 |
パク・クァン ス |
<1999> イ・ジェスの乱、<2003>もし、あなたなら~6つの視線~、 <2007>まぶしい日に |
Episode.6
N.E.P.A.L 平和と愛は終わらない 믿거나 말거나, 찬드라의 경우 (ミッコナ マルゴナ, チャンドゥラエ キョンウ) Never Ending Peace And Love |
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【あら
すじ】 1990年代のソウル。ネパール人女性チャンドラ・クマリ・グルンは、働いている工場近くの食堂でラーメンを食べたが、食べ終えて財布を持っていないこと に気づいた。食堂の主人は警察を呼んで無銭飲食で彼女を訴えた。警察は、韓国人そっくりの顔つきで、つたない韓国語を操る彼女のことを、精神障害者だと思 いこみ、その後、チャンドラは6年4ヶ月もの間、精神病院などをたらい回しにされた。看護婦はネパール語は精神障害者のしゃべる韓国語に聞こえるといい、 何年もしてやっと彼女の言葉を解する人が現れるまで放って置かれたのである。現在チャンドラさんは生まれ故郷ネパールに帰っている。 【ネタバレ】 原 題の「믿거나 말거나, 찬드라의 경우 (ミッコナ マルゴナ, チャンドゥラエ キョンウ) 」は、「信じようが信じまいが、チャンドラの場合」という意味でございます。 「平和と愛は終わらない」というタイトルは、英題から取ったものですね。 リアルなタイトルよりも、ロマンティックなタイトルを好む、日本人向けなタイトルでございます。他の作品は原題のままなのにね。 <人権>をテーマにした社会的な映画なのに、商業向けの映画に見せようという醜さでございますわね。この映画は、ネパール人のチャンドラという女性の実話 を基に作られた映画なのだけれど、チャンドラがネパール人だから 「N.E.P.A.L」なんてタイトルにしたわけじゃなく・・・・ Never Ending Peace And Love Never Ending Peace And Love の頭文字を取ると、「N.E.P.A.L」になるわけでございます。いかにも日本人が好きそうなネタよね。 平和ボケのミーハー気質が伺われるタイトルでございます。 他の作品は10分程度の短い作品だったのに、この作品だけ30分近いのよ・・・・・ あらすじを観るとそれなりに興味を惹かれるけれど、ドキュメンタリータッチのこの作品。 「面白さ」を期待しちゃいけません・・・・ ドキュメンタリーだって、興味深さや、人を惹きつけるものがあるわ。 けれど、この作品には何も感じなかったわ・・・・ こんなことがあったという事実を知ることは重要なことだけれど、ニュースで見れば十分。 わざわざ映画で見なくても・・・・・ けれど、実際にチャンドラに対して行われた数々の過ち・・・・人間の落ち度を知らなければ、この事実の残酷さは伝わらないかもしれないわね・・・ 「無関心」や「無知」が、他人を傷つける・・・・そういったテーマだけれども・・・・ それだけじゃないわ・・・・「怠慢」よ。 チャンドラの捜索願いが出ているにも関わらず、それを忘れて精神病院に送っちゃったんだものね・・・ パク・チャヌクの哲学は、すごくmocaと似ているって感じるのよね。 もう1人の自分じゃないか?と思うほど・・・・ けれど、パク・チャヌク監督の作品を好きになれないのはなぜ・・・・・? オールド・ボーイだけだわよ・・・・好きなのは・・・ |
監督 |
パク・チャヌ ク |