神機箭(シンギジョン) The Divine Weapon |
原題:神機箭 신기전(シンギジョン)<2008> |
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監督 | キム・ユジン(金裕珍) | <1990>あなたが女というだけで、<1993>おせっかいはNO、愛は
OK、<1995>錦紅よ、錦紅よ、 <1996>ビールが恋人よりいい7つの理由、<1998>約束、 <2002>ワイルドカード 、 <2008>神機箭(シンギジョン) |
脚本 | イ・マニ | <1998>約
束、<2002>ワイルドカード
、<2004>僕が9歳だったころ、<2008>神機箭(シンギジョン)、 <2010>サヨナライツカ |
出演 |
チョン・ジェ ヨン |
出 演作品一覧 |
ハン・ウンジョン |
<2004>あぶない奴ら
~TWO GUYS~、<2004>非日常的な彼
女(友情出演)、 <2008>神機箭(シンギジョン) |
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ホ・ジュノ (許埈豪) |
<1999>ラブストーリー 遺
失物編、<2000>リベラ・メ、<2001>火山高、
<2003>シルミド、 <2005>おまえを逮捕する、<2006>レストレス~中天~、<2008>最後の贈り物... 帰休、 <2008>神機箭(シンギジョン) |
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アン・ソンギ (安聖基) |
出演作品一覧 |
【レビュー&ネタバレ】 |
2008年9月、韓国公開。観客動員数は、約380万人の大ヒット。 但し、この映画は、制作費100億ウォンを投入した大作という触れ込みで制作された映画で、 観客動員は、500万人は突破しなきゃいけない映画だったのでは。 ”大作”というほどの映画にはなれず、それなりに観客を楽しませた映画。 その程度ですかね。 正直、”大作”という雰囲気の映画ではありません。 見所は、100本の矢がまとめて飛ぶ”神機箭”という怪物のような火箭(ロケット弾)のシーンのみ。 これは圧巻です。 予告編でも、そのスリルは少し味わえるのでは? 明と女真族の兵併せて10万人の大軍に対し、ソルジュ、チャンガン率いる兵は、わずか100名程度。 どう考えても、ソルジュらに勝ち目はない不利な戦い。 このラスト30分の戦いだけが、この映画の見所でしょう。 これを見るだけでも、気分は爽快。 損した気分にはなりません。 カンヌ映画祭で15分の特別プロモーション予告を公開したところ、 国内外から、大賛辞を浴びたとのこと。 ほんとに、ダイジェストで観たら、この映画は面白い!と、感じることと思います。 いかに、無駄が多いかということでもありますが...... グエムル~漢江の怪物、グッド・バッド・ウィアード、海雲台(ヘウンデ)などのミラクルヒット映画を見れば、 韓国人がどんな映画を好むのか想像することができるでしょう。 単純にスリルが味わえる映画がミラクルヒットを生むことが非常に多い。 この映画の観客380万人は、このラスト30分のスリルにより動員できたのでは?と、思われます。 監督キム・ユジンは、この映画に”悲しみ”と、”喜び”を同時に盛り込みたいと、制作しました。 しかし、ラスト30分以外はお粗末なヒューマンドラマです。 ラスト30分に向かうための序章に過ぎず、単なる”戦い”が起きるための過程説明程度。 お涙頂戴を狙った”悲しみ”のシーンも、こけ落としで、シラケルばかり。 仲間や愛する人を守るために、自分の身を犠牲にすることは、この世で最も美しい。 そのシーンも、とても美しく感動的。 でも、あまりにも白々しく、ベタすぎるため、心に響いてきません。 泣き所で泣けない映画は、厳しいですね。 mocaは、キム・ユジン監督の約束が大好き。 キャラクターが生きている。 けど、”悲しみ”を描いたラストシーンでは、まったく泣けず。 でも、ラストシーンに号泣された方も多いはず。 ですので、この映画に、”悲しみ”や”感動”を感じるかは、その人の感性しだいなのかもしれません。 キム・ユジン監督の約束も、ワイルドカードも、大好き で、 とにかく、キャラクターの設定がうまい。 なんてこと無いシーンで、ゲラゲラ笑っちゃいます。 主人公というよりも、助演陣に命が吹き込まれています。 そのキャラクターは、愛さずにはいられません。 この映画では、mocaの笑いのツボを刺激したのは、ソルジュだけでしたね。 ワイルドカード では、思いっきり笑わせてくれた店長役のイ・ドギョンが、 湾商のキム・ホンマン役で出演しておりますが、いまいち持ち味を生かせておらず、残念。 いったい、この映画のどこが問題だったのか........ 脚本家は、mocaの好きな約束も、ワイルドカード も 執筆しています。 ですが、約束の”悲しみ”のシーンでは泣けませんでしたし、 ”大作”を描けるほどの力量がなかったようにも思えます。 そして、何事も中途半端。これが何よりの原因でしょう。 実際、キャラクター設定も曖昧だったようです。 「ソルジュは、かっこいい役なのか、笑える役なのか、あれもこれもといううちに中途半端になるのでは?」 と、チョン・ジェヨンが自らのキャラクターについて問いただしたというエピソードもあります。 映画自体が、まさにその通りなのです。 あれもこれも.... で、中途半端。 描くべきことが、山ほどありそうなものなのに。 ”戦い”へ導くための過程を描くことばかりに力を注ぎ、大切な”心情”というものを描くことが欠けています。 ソルジュは、”金”のために、神機箭開発を始め、ホンリを愛したことにより、 愛する人を守るために、戦いに身を投じます。 ホンリは、”国と国民を守るため”という信念。 チャンガンも、”国と国民のため”という信念。 ムセンも、同士であるホンリと志は同じ。 では、この四人以外は、何のために命がけの戦いに身を投じたのでしょう? そこが、まず弱い。 ”死ぬときは一緒”という、堅い絆で結ばれたソルジュのためなのか? それとも、その堅い絆で結ばれたソルジュが愛した人を守るためなのか? それとも、ソルジュとソルジュの仲間を守るために、自らの命を犠牲にしようとしたホンリに心を打たれたのか? それとも、”火箭を制作した逆賊”として処刑されるところを、神機箭と共に戦うことで、生きながらえたからか? 何においても、”行動”には、何らかの”心情”があるわけで、 この映画は、あまりにも”心情”を描くことが省かれすぎています。 ソルジュにおいては、「国のために火薬を開発していた父を、逆賊の濡れ衣を着せ処刑された」という 悲しい過去と、国に対する深い恨みがあるわけで、 自分も全く同じ目に遭わされ処刑されるところだったのに、 ”愛する女を守るため”だけで、全てウヤムヤになってしまって、 ソルジュの心の変化というものを描かぬのならば、 「逆賊の濡れ衣で父を殺された」などという設定などしなければいい。 何においても、中途半端。 あれもこれも..... で、大事なことを忘れてしまった映画です。 ”大作”とは、非常に難しいものですね。 この映画は、キム・ユジン監督がメガホンを取りましたが、 制作は、公共の敵シリーズ、シルミドなどの監督、カン・ウソクです。 そういった心情を描くのがうまく、泣かせ、笑わせ、感動させる監督なのに、 どうして、こんな中途半端な映画になってしまったのでしょう。 アクションは、華麗で見応えあるんですが。 音楽も、大作にふさわしく、悲しくせつなく、壮大で美しい...... 音楽だけで、涙腺が緩みます。 この映画は、「歴史的考証」を、取り込んだフィクション映画です。 560年間、大陸が恐れた世宗の秘密が目覚める というキャッチフレーズ通り、神機箭という多連発型の長距離ロケット弾は、 世界で最も早く開発され、世界を威圧していた実在の兵器。 1430年頃に開発された小・中神機箭は世界初のロケット砲であり、 大神機箭は、射程距離が3kmほどにもなる、世界初の長距離ミサイルだそうです。 ヨーロッパでは、その350年後になって初めて、同性能のミサイルを作り始めたと。 それを聞くと、驚くばかりですね。 神機箭について記された”銃筒謄録”という書物も実在したそうです。 世宗大王は有名ですね。 ハングル文字を制定した人物であり、ソウル市内に銅像がいくつもあります。 1万ウォン札の肖像画も、世宗大王です。 また、世宗大王の時代、明からの圧迫と、干渉は相当なものだったようで、 映画は、「歴史的考証」を、盛り込んでおります。 ただ、明と朝鮮との緊迫した対決が、伝わってきません..... 明と朝鮮の間に居住していた、明に従属する”女真族”も、「歴史的考証」に基づいて描かれており、 ”女真族”が、度々朝鮮の領土を侵すことや、これに手を焼いた世宗大王が、 ”女真族”の居住地域を侵略し、併合したことは、歴史上の事実です。 こういった、「歴史的考証」を取り入れた大作を制作することを狙ったがために、 ”歴史的な説明は不要”とばかりに、朝鮮の歴史を知らない人にとっては、映画に入りこむことが難しい。 日本人なら、なおさら。 また、歴史的な要素のプロローグにより、”楽しむ”ことを目的にしていた観客にとっては、 非常に堅く、重い映画になってしまったのでは。 計画性の無さは、映画そのもの以外にも顕著に現れており、 ”映画の完成度を高めるために”と、チョン・ジェヨンは、ギャラを半分制作費に返還したとのこと。 チョン・ジェヨンだけでなく、キム・ユジン監督を始めとする、多くの関係者が、 ”映画の完成度を高めるため”に、自らギャラを返還したそうです。 そこまでしたのに..... そもそも制作費は、ギャラが占める割合が大きい面があります。 しかし、この映画でスター俳優といえば、アン・ソンギくらいなものでしょう。 チョン・ジェヨン、ハン・ウンジョン.... 主演でさえも、スター俳優というわけではありません。 そして、助演陣は、二流、三流、無名.... そんな俳優陣ばかり。 制作費におけるギャラの占める割合は、想像できるでしょう。 名を知られた俳優..... 憎くてももう一度2002などのイ・ ギョンヨン。 ホテリアー、オー!ハッピーディのパク・ジョンチョ ル。 約束、ワイルドカード などのキム・ミョン グク。 三人とも、友情出演です。
キャスティングにおいては、チョン・ジェヨンとハン・ウンジョンは、 制作費100億ウォンの大作の主役には、ちょっと不足な感じを受けます。 ソルジュは、剣の達人であり、商才にも長けたカリスマ溢れる男。 果敢で、度量があり、義理・人情に厚く、懐が深く、分別があり、統率力もあり、情熱的、男もが憧れるような男。 チョン・ジェヨンは無難に演じてはおりますが、ちょっとカリスマが足りないのが残念。 逆に予想外だったのが、ハン・ウンジョン。 ドラマ【明朗少女成記】以来、とにかくハン・ウンジョンが嫌いで、 【フルハウス】も、ハン・ウンジョン、ソン・ヘギョ、ピ... と、トリプルパンチで途中挫折しました。 とにかくハン・ウンジョンは、いけ好かない役ばかりで、印象が悪くなるばかり。 しかし、この映画のホンリ役には驚かされました。 高潔で、聡明で、凛々しく、凛と咲く花のように美しい。 こんなヒロインが演じられるとは思いませんでした。 しかも、涙まで美しい。 ハン・ウンジョンの印象を覆されました。 凛と咲く花のよう... ですが、ほんとのところは.... 恐れても、恐れないふり.... 寂しくても、寂しくないふり.... 怖くとも、怖いそぶりは見せられない.... 手折られないよう、必死に咲いているわけなんですね。 そんな風に強がっているうちに、 「고맙다(コマプタ)も言えない情けない女になってしまった....」 ホンリの心情、わかりますねぇ..... ソルジュが守ってやりたくなるのもわかります。 イイ女には、イイ男がつく。 そういうもんなんですなぁ..... moca的には、イナが好きですねー 「天下を抱いても余るのが男の胸」と、男気に溢れ、剣術にも優れている。 しかも、ヒドゥン・プリンセスで、 ヴォーカル役を演じていたト・イソンが好きなので、 かなり満足です。 霧の視程距離で、ヒロイ ンを演じていたリュ・ヒョンギョン。 今回は男勝りな役柄で、その変貌ぶりにびっくり。 ちなみに、パンオクが同僚の兄貴たちを”오라버님(オラボニム)”と呼んでいますが、 これは、年上の親しい男性を呼ぶ最高敬称です。 時代劇では、たまに使われてますね。 ”오라버님(オラボニム)”より、くだけた呼び方は、”오라버니(オラボニ)”です。 これも、「お兄様」的な意味合いです。 イナとパンオクの関係は明らかになっていないのですが、新婚さんっぽいですよね。 ↓ 結末までネタバレしますので、ご注意を ↓
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