神機箭(シンギジョン)   The Divine Weapon  
 原題:神機箭 신기전(シンギジョン)<2008>

 オススメ

 ストーリー

 韓流王道

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名作

 映像

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1448年、セジョン(世宗)政権30年。
朝鮮の新しい火器開発を恐れた明の皇室は、極秘裏に火砲研究所を襲撃する。研究所都監のカソンは、神機箭開発の全てを記した‘銃筒謄録’と共に、一人娘ホ ンリ(ハン・ウンジョン)を逃がし、 完成直前の‘神機箭(シンギジョン)’と共に自爆する。計画が失敗に終わり、明は、大規模の使臣節団に偽装した武将勢力を急派し、消えた‘銃筒謄録’と ‘ホン リ’を探し始める。
 
明の使臣団が来るという噂を聞き、一山当てる計画で、大陸との貿易に参加しようとしていたプボサンダン商団の行首ソルジュ(チョン・ジェヨン)は、誤った 情報のせいで全財産を失うことになる。そんなある日、セジョン(世宗)の護衛武士のチャンガン(ホ・ジュノ)に呼び出され、秘密に包まれた女性ホンリを匿 うよう頼まれる。
 
仕方なく受諾したソルジュは、彼女が秘密兵器‘神機箭’開発の核心人物であることを知り、彼女を送り返そうとするが、彼女が見せた‘神機箭’の威力に 魅了され、同僚たちと共に神機箭開発に参加することになる。しかし、包囲網を狭めてきた明国武士の急襲で、‘銃筒謄録’を奪われ、神機箭開発は迷宮に陥 る。

一方、明は、朝鮮が屈服しないので、10万の大軍を鴨緑江(アムノッカン)周辺まで進撃させて圧力をかけ、セジョン(世宗)は、国民の安全と危機のため に、神機箭開発の中止を命じる。これに怒ったソルジュは、王命に逆らい、神機箭の最終完成のための戦いを始める。
【予 告編】
監督 キム・ユジン(金裕珍) <1990>あなたが女というだけで、<1993>おせっかいはNO、愛は OK、<1995>錦紅よ、錦紅よ、
<1996>ビールが恋人よりいい7つの理由、<1998>約束、 <2002>ワイルドカード
<2008>神機箭(シンギジョン)
脚本 イ・マニ <1998>約 束、<2002>ワイルドカード 、<2004>僕が9歳だったころ、<2008>神機箭(シンギジョン)
<2010>サヨナライツカ

出演

チョン・ジェ ヨン

出 演作品一覧

ハン・ウンジョン

<2004>あぶない奴ら ~TWO GUYS~、<2004>非日常的な彼 女(友情出演)、
<2008>神機箭(シンギジョン)

ホ・ジュノ (許埈豪)

<1999>ラブストーリー 遺 失物編、<2000>リベラ・メ、<2001>火山高、 <2003>シルミド
<2005>おまえを逮捕する、<2006>レストレス~中天~、<2008>最後の贈り物... 帰休
<2008>神機箭(シンギジョン)

アン・ソンギ (安聖基)

出演作品一覧

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【レビュー&ネタバレ】
2008年9月、韓国公開。観客動員数は、約380万人の大ヒット。
但し、この映画は、制作費100億ウォンを投入した大作という触れ込みで制作された映画で、
観客動員は、500万人は突破しなきゃいけない映画だったのでは。
”大作”というほどの映画にはなれず、それなりに観客を楽しませた映画。
その程度ですかね。
正直、”大作”という雰囲気の映画ではありません。
見所は、100本の矢がまとめて飛ぶ”神機箭”という怪物のような火箭(ロケット弾)のシーンのみ。
これは圧巻です。
予告編でも、そのスリルは少し味わえるのでは?
明と女真族の兵併せて10万人の大軍に対し、ソルジュ、チャンガン率いる兵は、わずか100名程度。
どう考えても、ソルジュらに勝ち目はない不利な戦い。
このラスト30分の戦いだけが、この映画の見所でしょう。
これを見るだけでも、気分は爽快。
損した気分にはなりません。
カンヌ映画祭で15分の特別プロモーション予告を公開したところ、
国内外から、大賛辞を浴びたとのこと。
ほんとに、ダイジェストで観たら、この映画は面白い!と、感じることと思います。
いかに、無駄が多いかということでもありますが......

グエムル~漢江の怪物グッド・バッド・ウィアード海雲台(ヘウンデ)などのミラクルヒット映画を見れば、
韓国人がどんな映画を好むのか想像することができるでしょう。
単純にスリルが味わえる映画がミラクルヒットを生むことが非常に多い。
この映画の観客380万人は、このラスト30分のスリルにより動員できたのでは?と、思われます。

監督キム・ユジンは、この映画に”悲しみ”と、”喜び”を同時に盛り込みたいと、制作しました。
しかし、ラスト30分以外はお粗末なヒューマンドラマです。
ラスト30分に向かうための序章に過ぎず、単なる”戦い”が起きるための過程説明程度。
お涙頂戴を狙った”悲しみ”のシーンも、こけ落としで、シラケルばかり。
仲間や愛する人を守るために、自分の身を犠牲にすることは、この世で最も美しい。
そのシーンも、とても美しく感動的。
でも、あまりにも白々しく、ベタすぎるため、心に響いてきません。
泣き所で泣けない映画は、厳しいですね。

mocaは、キム・ユジン監督の約束が大好き。
キャラクターが生きている。
けど、”悲しみ”を描いたラストシーンでは、まったく泣けず。
でも、ラストシーンに号泣された方も多いはず。
ですので、この映画に、”悲しみ”や”感動”を感じるかは、その人の感性しだいなのかもしれません。

キム・ユジン監督の約束も、ワイルドカードも、大好き で、
とにかく、キャラクターの設定がうまい。
なんてこと無いシーンで、ゲラゲラ笑っちゃいます。
主人公というよりも、助演陣に命が吹き込まれています。
そのキャラクターは、愛さずにはいられません。

この映画では、mocaの笑いのツボを刺激したのは、ソルジュだけでしたね。
ワイルドカード では、思いっきり笑わせてくれた店長役のイ・ドギョンが、
湾商のキム・ホンマン役で出演しておりますが、いまいち持ち味を生かせておらず、残念。

いったい、この映画のどこが問題だったのか........
脚本家は、mocaの好きな約束も、ワイルドカード も 執筆しています。
ですが、約束の”悲しみ”のシーンでは泣けませんでしたし、
”大作”を描けるほどの力量がなかったようにも思えます。

そして、何事も中途半端。これが何よりの原因でしょう。
実際、キャラクター設定も曖昧だったようです。
「ソルジュは、かっこいい役なのか、笑える役なのか、あれもこれもといううちに中途半端になるのでは?」
と、チョン・ジェヨンが自らのキャラクターについて問いただしたというエピソードもあります。

映画自体が、まさにその通りなのです。
あれもこれも.... で、中途半端。
描くべきことが、山ほどありそうなものなのに。
”戦い”へ導くための過程を描くことばかりに力を注ぎ、大切な”心情”というものを描くことが欠けています。

ソルジュは、”金”のために、神機箭開発を始め、ホンリを愛したことにより、
愛する人を守るために、戦いに身を投じます。
ホンリは、”国と国民を守るため”という信念。
チャンガンも、”国と国民のため”という信念。
ムセンも、同士であるホンリと志は同じ。

では、この四人以外は、何のために命がけの戦いに身を投じたのでしょう?
そこが、まず弱い。
”死ぬときは一緒”という、堅い絆で結ばれたソルジュのためなのか?
それとも、その堅い絆で結ばれたソルジュが愛した人を守るためなのか?
それとも、ソルジュとソルジュの仲間を守るために、自らの命を犠牲にしようとしたホンリに心を打たれたのか?
それとも、”火箭を制作した逆賊”として処刑されるところを、神機箭と共に戦うことで、生きながらえたからか?
何においても、”行動”には、何らかの”心情”があるわけで、
この映画は、あまりにも”心情”を描くことが省かれすぎています。

ソルジュにおいては、「国のために火薬を開発していた父を、逆賊の濡れ衣を着せ処刑された」という
悲しい過去と、国に対する深い恨みがあるわけで、
自分も全く同じ目に遭わされ処刑されるところだったのに、
”愛する女を守るため”だけで、全てウヤムヤになってしまって、
ソルジュの心の変化というものを描かぬのならば、
「逆賊の濡れ衣で父を殺された」などという設定などしなければいい。
何においても、中途半端。

あれもこれも.....
で、大事なことを忘れてしまった映画です。
”大作”とは、非常に難しいものですね。
この映画は、キム・ユジン監督がメガホンを取りましたが、
制作は、公共の敵シリーズ、シルミドなどの監督、カン・ウソクです。
そういった心情を描くのがうまく、泣かせ、笑わせ、感動させる監督なのに、
どうして、こんな中途半端な映画になってしまったのでしょう。
アクションは、華麗で見応えあるんですが。
音楽も、大作にふさわしく、悲しくせつなく、壮大で美しい......
音楽だけで、涙腺が緩みます。


この映画は、「歴史的考証」を、取り込んだフィクション映画です。

560年間、大陸が恐れた世宗の秘密が目覚める

というキャッチフレーズ通り、神機箭という多連発型の長距離ロケット弾は、
世界で最も早く開発され、世界を威圧していた実在の兵器。
1430年頃に開発された小・中神機箭は世界初のロケット砲であり、
大神機箭は、射程距離が3kmほどにもなる、世界初の長距離ミサイルだそうです。
ヨーロッパでは、その350年後になって初めて、同性能のミサイルを作り始めたと。
それを聞くと、驚くばかりですね。

神機箭について記された”銃筒謄録”という書物も実在したそうです。
世宗大王は有名ですね。
ハングル文字を制定した人物であり、ソウル市内に銅像がいくつもあります。
1万ウォン札の肖像画も、世宗大王です。
また、世宗大王の時代、明からの圧迫と、干渉は相当なものだったようで、
映画は、「歴史的考証」を、盛り込んでおります。
ただ、明と朝鮮との緊迫した対決が、伝わってきません.....
明と朝鮮の間に居住していた、明に従属する”女真族”も、「歴史的考証」に基づいて描かれており、
”女真族”が、度々朝鮮の領土を侵すことや、これに手を焼いた世宗大王が、
”女真族”の居住地域を侵略し、併合したことは、歴史上の事実です。

こういった、「歴史的考証」を取り入れた大作を制作することを狙ったがために、
”歴史的な説明は不要”とばかりに、朝鮮の歴史を知らない人にとっては、映画に入りこむことが難しい。
日本人なら、なおさら。
また、歴史的な要素のプロローグにより、”楽しむ”ことを目的にしていた観客にとっては、
非常に堅く、重い映画になってしまったのでは。

計画性の無さは、映画そのもの以外にも顕著に現れており、
”映画の完成度を高めるために”と、チョン・ジェヨンは、ギャラを半分制作費に返還したとのこと。
チョン・ジェヨンだけでなく、キム・ユジン監督を始めとする、多くの関係者が、
”映画の完成度を高めるため”に、自らギャラを返還したそうです。
そこまでしたのに.....

そもそも制作費は、ギャラが占める割合が大きい面があります。
しかし、この映画でスター俳優といえば、アン・ソンギくらいなものでしょう。
チョン・ジェヨン、ハン・ウンジョン....
主演でさえも、スター俳優というわけではありません。
そして、助演陣は、二流、三流、無名.... そんな俳優陣ばかり。
制作費におけるギャラの占める割合は、想像できるでしょう。
名を知られた俳優.....
憎くてももう一度2002などのイ・ ギョンヨン。
ホテリアー、オー!ハッピーディのパク・ジョンチョ ル。
約束ワイルドカード などのキム・ミョン グク。
三人とも、友情出演です。

【ソルジュ】
プボサンダン商団 行首
チョン・ジェヨン
【ホンリ】
火砲科学者 都監
ハン・ウンジョン
【チャンガン】
護衛武士
ホ・ジュノ
【セジョン(世 宗)】
朝鮮の王
アン・ソンギ
【イナ】
プボサンダン商団
ト・イソン
【パンオク】
プボサンダン商団
リュ・ヒョンギョン
【ムセン】
火砲科学者 組長
ソ・ジュソン
【クムォ】
僧侶
イ・ギョンヨン
【ユボン】
プボサンダン商団
チョ・ウォニ
【オチョ】
プボサンダン商団
オ・スンテ
【パンス】
プボサンダン商団
シン・ジョングン
【世子】
世宗の跡継ぎ
パク・ジョンチョル
【サマスン大 監】
明の使臣団
チョン・ソンモ
【チン大人】
明の使臣団
パク・キョンファン
【キャオリュン 将軍】
明の護衛武士
キム・ミョンス
【イェンタウ】
キャオリュンの腹心
パン・ギルスン
【明の皇帝】

キム・ミョングク
【イ・テラン】
女真族
キム・ガンイル
【キム・ホンマ ン】
湾商 行首
イ・ドギョン
【チョン大監】
朝鮮の官僚/明の内通者
チェ・スンイル

キャスティングにおいては、チョン・ジェヨンとハン・ウンジョンは、
制作費100億ウォンの大作の主役には、ちょっと不足な感じを受けます。

ソルジュは、剣の達人であり、商才にも長けたカリスマ溢れる男。
果敢で、度量があり、義理・人情に厚く、懐が深く、分別があり、統率力もあり、情熱的、男もが憧れるような男。
チョン・ジェヨンは無難に演じてはおりますが、ちょっとカリスマが足りないのが残念。

逆に予想外だったのが、ハン・ウンジョン。
ドラマ【明朗少女成記】以来、とにかくハン・ウンジョンが嫌いで、
【フルハウス】も、ハン・ウンジョン、ソン・ヘギョ、ピ... と、トリプルパンチで途中挫折しました。
とにかくハン・ウンジョンは、いけ好かない役ばかりで、印象が悪くなるばかり。
しかし、この映画のホンリ役には驚かされました。
高潔で、聡明で、凛々しく、凛と咲く花のように美しい。
こんなヒロインが演じられるとは思いませんでした。
しかも、涙まで美しい。
ハン・ウンジョンの印象を覆されました。

凛と咲く花のよう...
ですが、ほんとのところは....
恐れても、恐れないふり....
寂しくても、寂しくないふり....
怖くとも、怖いそぶりは見せられない....
手折られないよう、必死に咲いているわけなんですね。
そんな風に強がっているうちに、
「고맙다(コマプタ)も言えない情けない女になってしまった....」
ホンリの心情、わかりますねぇ.....
ソルジュが守ってやりたくなるのもわかります。
イイ女には、イイ男がつく。
そういうもんなんですなぁ.....

moca的には、イナが好きですねー
「天下を抱いても余るのが男の胸」と、男気に溢れ、剣術にも優れている。
しかも、ヒドゥン・プリンセスで、 ヴォーカル役を演じていたト・イソンが好きなので、
かなり満足です。

霧の視程距離で、ヒロイ ンを演じていたリュ・ヒョンギョン。
今回は男勝りな役柄で、その変貌ぶりにびっくり。
ちなみに、パンオクが同僚の兄貴たちを”오라버님(オラボニム)”と呼んでいますが、
これは、年上の親しい男性を呼ぶ最高敬称です。
時代劇では、たまに使われてますね。
”오라버님(オラボニム)”より、くだけた呼び方は、”오라버니(オラボニ)”です。
これも、「お兄様」的な意味合いです。

イナとパンオクの関係は明らかになっていないのですが、新婚さんっぽいですよね。



↓  結末までネタバレしますので、ご注意を ↓

プボサンダン商団は、行首であるソルジュの商才のおかげで、仲間も増え、順調に利益を上げていた。
しかし、そんな順風満帆なプボサンダン商団にも、
次々とトラブルが巻き起こる。
ソルジュらは、近々やってくる”明”の使臣団と、
初めての貿易を行う予定だった。
これが失敗に終われば、破産の危機が危ぶまれる。
”明”との貿易の成功を祈って、奉納が行われる。
男気があり懐の深いイナと、男勝りのパンオクは、
いつどこでも、人目もはばからず、仲睦まじい。




ある日ソルジュは、
王の護衛武士であるチャンガンに呼び出される。
チャンガンはソルジュに、ある人を人目につかぬよう、
かくまって欲しいと頼む。
誰であるかも、理由も聞かずにと。

厄介なチャンガンの頼みが不満だったソルジュ。
しかし、やってきた女、ホンリの美しさに魅了され、
手のひらを返したように、愛想を振りまく。
誰にも使わせない高価な薬剤まで、
風呂に使わせるほどだ。






ホンリは、湯に浸かりながら、
悲しく辛い出来事を振り返っていた。

火砲発明家である父カソンは、王の命で新たな火箭を開発していた。
しかし、その情報が”明”に漏れ、
”明”の刺客らに襲撃されてしまう。
逃げ切れないことを悟ったカソンは、
娘ホンリに、新兵器”神機箭”の設計図や実験記録を綿密に
書き記した”銃筒謄録”を持たせ、逃亡させる。
そして自らは、開発した”神機箭”が敵の手に渡らぬよう、
自らの体に巻きつけ、仲間らと共に自爆する。

父を失った悲しみが蘇り、
また、自らの責務の重さを痛感するホンリ。
太平館(明[中国]の使臣が訪れた際に滞在する屋敷)の前に、お触れが出る。
”明”からの商団は来ないとの通達。
これを見たパンスらは、激怒する。
今まで資金を注ぎ込んだ”明”との貿易はどうなるのだ?
怒りが燃え滾るパンスら。
その最中、大々的に”明”からの使臣団が到着する。




「不埒な朝鮮よ、聞け」
”明”の皇帝からの通達は、朝鮮を侮蔑する言葉で始まった。
今まで朝鮮は、我が意に背き、幾度となく無礼を働いた。
遼東地域を侵し、国境を脅かした行為をその1つとし、
(遼東地域は元々朝鮮の領域であり、当時は、”明”に従属する女真族が居住していた)
朝貢(朝鮮からの献上品)は、役に立たないものばかり、
これを皇帝に対する侮辱として、その2となり、
三千人の女真族を皇帝の許可なく、
捕虜として捕らえたことは、
皇帝を軽視したことと見なし、その3となる。
身勝手に凶悪な蛮行をするならば、
自ら兵を率いて、お前達に懲罰を与えよう。

朝鮮の王、世宗は、”明”の皇帝の通達に、
腸が煮えくり返る思いだった。
大金を注ぎ込んだ”明”との貿易は失敗に終わった。
借金の最初の返済日まで、わずかしかない。
とにかく、損をしてでも積荷を回収するよう告げるソルジュ。
このままでは、一銭も残らないと。
ソルジュらは、今までにない苦境に立たされる。


ソルジュらが、商団のことで頭を悩ませている最中、
ホンリが消えてしまう。
町中どこを探しても見当たらない。
ホンリは、共に火箭開発をしていたムセン組長と会っていた。
ホンリの行方がわからず大事になる寸前、
ホンリがムセンを連れて戻ってくる。
「兄です」
と、偽ってムセンを紹介するホンリ。
そして、ムセンも共にかくまって欲しいと頼み込む。
ホンリの行為を、ソルジュはたしなめる。
「黙って外出し、その上平然と『もう一人頼む』とは、
道理を知っている方が、これでいいのか?」と。
「道理よりも重要なことがあり、こうなりました」
ホンリは弁解する。
ソルジュは仕方なく、ムセンを受け入れる。
世宗らの元へ報告が入る。
”明”の軍隊が、遼東地域方面へ向かっていると。
「使臣団を送っておいて、軍を動かす.....」
世子は”明”の卑劣な行為に怒りを感じるが、
まだ真意がわからぬと、様子を見ることにする。

そして、護衛武士チャンガンからも報告が。
使臣団としてやってきたキャオリュンは、
使臣団と偽った、”明”の皇帝の護衛武士であり、
”錦衣衛”という皇帝の諜報機関の首長だと。
そして、朝鮮の王室だけではなく、
大小関わらず、官僚を始め、一介の親族まで
全て監視していると。
その上、使臣団には、”火砲局”の官吏までいると。
”明”の目的は、朝鮮の火箭開発阻止であることは、
明らかであり、
火箭開発を中止しなければ、
すぐさま軍を動かし、戦争も辞さないという脅しであった。
「大きな恩を受けている上に、不本意ではありますが、
心配まで、おかけして...」
ホンリは、自分の手料理でソルジュをもてなす。
「料理は真心の表れというので、上手ではありませんが....」
しかし、その料理は、ゲロマズだった....
だが、「真心」と言われては、口にしないわけにはいかず、
「うまい!うまい!」と、
ソルジュは無理矢理くちに押し込む。

そしてホンリは、ソルジュに頼みがあるという。
大事なものを取りに、家に戻りたいと。
ソルジュは、それならば今すぐ!
と、ゲロマズの料理から逃げるように、
ホンリの家へと向かった。
しかし、「戻る」というよりは、「忍び込む」と言うべきで、
ホンリは壁を乗り越え、家に入る。
そして、”銃筒謄録”の入った包みを取り出し、
家を後にする。

しかし、その後を何者かがつけていた。
襲撃されるソルジュら。
そして、ポングが刺され、重症を負う。
その上、せっかく取りに戻った”銃筒謄録”が、
相手側の手に渡ってしまう。
ポングは、一歩間違えば死ぬところだった。
ソルジュは問いただす。
しかしホンリは、言葉を濁すばかり。
「あんたは、何者だ?」と、問えば、
「申し上げられません」
「奴らは、何者だ?」と、問えば、
「存じません」
「あの包みは何だ?」と、問えば、
「知る必要は、ありません」
ソルジュは激怒する。
「ポングは死ぬところだった。
命より重要なものが、この世にあるか!」
しかし、ホンリは頑なに答えることを拒む。
「申し訳ありません」
頭を下げるホンリ。
ソルジュは、ホンリとムセンを蔵に閉じ込める。
口を開くまで、水一滴も与えるなと。
その頃、”明”の使臣団が滞在する太平館では、
奪った”銃筒謄録”の中身を確認していた。
詳細に記された記録。
その精巧さ。
多様な発想。
見れば見るほど驚くばかりだと、チン大人は感嘆する。
「複雑な計算と、緻密な数値からして、
現存のものとは異なる新たな火箭であることは間違いない」
チン大人は断言する。
「あの娘は生きている」
サマスン大監は、
ホンリが生きていることの危険さを悟る。
「危険を覚悟で”銃筒謄録”を取りに来たのは、
どこかで火箭開発が継続されている証拠」
サムスン大監は断言する。
何としても、火箭開発を阻止せねば、
サムスン大監らは、覚悟を新たにする。


ソルジュはチャンガンから、ある事実を聞かされる。
朝鮮は早期に火箭を開発しようとしていたところ、
その秘密が”明”に漏れてしまった。
今回の”明”の使臣団の真の目的は、
”友好”のためではなく、火箭の開発を阻止することだった。
そして、火箭発明家のカソンを始め、
多くの人間が殺された。
そして現在、その火箭開発の中心人物が
カソンの娘ホンリだという。
それを聞いたソルジュは激怒する。
使臣団が来て商団が来ない理由は、そこにあったのだ。
「明の商団が来る」
などという、とんでもないデマカセのせいで、
大損害を被ったソルジュ。
大損害を被った上に、その禍の元まで押し付けられたら
たまらない。
ソルジュは、ホンリとムセンを連れ帰れと告げる。
しかしチャンガンには他に頼みの綱がない。
王朝に関わる人間すべて、”明”の監視下にあるのだ。
「火薬を作ってくれ」
チャンガンは懇願する。
チャンガンは、二人を預かり火箭を開発する代償として、
商人であるソルジュに取引を持ちかける。
宮廷への納入品と、貿易の利権はもちろん、
”明”と”倭(日本)”との私貿易権まで保証すると。
そして、それを記した念書を手渡す。
しかしソルジュは突き返す。
「父親の件を、まだ恨んでいるのか!」
チャンガンは怒鳴りつける。
ソルジュには、朝廷に対する深い恨みがあった。
「恨み?そんなに簡単に忘れられることですか?」
ソルジュは言い放つ。
そしてホンリとムセンは、
クムォ和尚の金閣寺に預けると、告げる。
その瞬間、チャンガンは剣を突きつける。
「火薬を作れ。拒めば生きてはいけない」
チャンガンは脅す。
それでも去って行くソルジュ。
「お前に選択の余地はない!」
チャンガンは叫ぶ。
ソルジュは、ホンリとムセンをクムォ和尚の元へと、
送り届ける。
道中、ソルジュはホンリに告げる。
「クムォ和尚は、천도재(薦度齋)だけは、名声を持つ方だ」
それは父を亡くしたホンリに対する労わりの言葉だった。
ホンリの父が、安らかな場所へと行けるようにと。
クムォ和尚にも、ホンリの父のことは伝えたと。
「追い出すならば、徹底的に無情になればよいのに。
なぜ、心にもない言葉を?」
ホンリは、ソルジュの中途半端な情けをとがめる。
「火筒都監のご子息!」
ホンリはソルジュに呼びかける。
「亡くなられた父上に恥ずかしくないのですか?
無念の死を遂げられましたが、
誰よりも信念を持たれていた方です」
ホンリは言い放つ。
「なぜ父の話が、あんたの口から出る?」
ソルジュは腹をたてる。
初めから、チャンガンと仕組んで自分の元へ来たのかと、
ソルジュは、ホンリを疑ってかかる。
しかしホンリは否定する。
「とんでもない!」と。
こんなに不甲斐ない人だと知っていれば、
屋敷のそばにすら近づかなかったと。
「これは全て国民のためです!」
ホンリは言い放つ。
「あんたも、この国の忠臣として名を残すことだろう。
だが、自分のような卑しい商売人には、
そんな大義は、わからぬ」
ソルジュは怒って怒鳴りつける。

* * *

천도재(薦度齋)は、死者の魂を弔う経典[お経])で、
後に長谷川が切望した”금강경(金剛経)”も、
有名な経典の1つ。
반야심경(般若心経)は、皆様も、ご存知では?


一方、プボサンダン商団では一大事が起きていた。
湾商のホンマンが、
「オチョを出せ!」と、乗り込んできたのだ。
屋敷内は、大乱闘になる。
その上、オチョを始め、ユボン、パンオク、パンスら全て、
ホンマンに捕らえられてしまった。
資金繰りに困ったオチョが、
ホンマンから借金をしたことが原因だった。
「なんで、あいつに借りたんだ!
あの男は、ねずみの糞まで食らう男だ!」
皆、オチョの考えのなさにあきれ果てる。

「2ヶ月待ってください」
ソルジュはイナを引きつれ、
ホンマンに、返済を待ってくれるよう頼みこむ。
しかしホンマンは相手にしない。
困り果てるソルジュ。
気の知れた兄貴分であるクムォ和尚に相談するソルジュ。
「意地を張らずに、チャンガンを訪ねろ」
クムォ和尚は諭す。
「兄貴や俺の親父が、どうやって死んだ?」
逆にソルジュは、クムォ和尚を責める。
なぜ、チャンガンなどに頭を下げられる、と。
ソルジュとクムォ和尚の父は、
”反逆罪”の汚名を着せられた上に処刑されたのだ。
ソルジュの父は火薬を、
クムォ和尚の父は弓と剣を作っていた。
全ては国と、国民のために。
だが、国が取った行動は、
大国相手の戦争を諦め、
ソルジュの父らに”反逆罪”の罪を着せ、処刑した。
国を正当化するには、
”逆賊”という役目を負う者が必要だからだ。
ソルジュがチャンガンに食ってかかるのは、
その恨み故のことだった。
国が父を殺したも同然。
クムォ和尚が僧侶になったのも、それ故だった。
和尚の言葉を拒みつつも、
仲間を助けるには、他に手立てがなかった。
そこへ、ホンリが通りかかる。
「その新しい火箭とは、いったい何なんだ?」
ソルジュはホンリに声をかける。

新しい火箭 ”神機箭” は、父カソンの手により完成していた。
ホンリらは、その現物を再現すればよいだけだった。
父の残した "神機箭" の威力を、
ソルジュやチャンガンらに披露するホンリ。
それは、驚くべき威力だった。
100本もの矢が一度に連発した上に、
それが自ら爆発するのだ。
"神機箭" が狙った圏内にいる者は、全て爆死する。








ソルジュは、人目でその威力に魅了される。
「これが完成すれば、戦争の情勢が変わる」
チャンガンは断言する。
ソルジュは、仲間らと共に、神機箭開発に乗り出す。
もちろん、ホンマンに捕らえられた仲間を救うため、
金と引き換えにだ。
神機箭開発のための敷地へ案内されるソルジュら。
約束通りチャンガンは、金を用意した。
しかしソルジュは、「これの倍はくれ」と、約束を翻す。
それに怒ったのはホンリ。
「これは国の最重要機密。
なのにソルジュは、それを金儲けにしようとしている。
開発は、心根が綺麗でなければ成功しない」
ホンリはチャンガンに訴える。
しかしチャンガンは、ホンリの訴えを退ける。
「一度信じてみましょう」と。
大金に目を輝かせ、浮かれる仲間たち。
そんな仲間たちをソルジュは一蹴する。
「これは命の代償になるんだぞ」と。
その一言で、神妙な気持ちになるパンスら。
「火箭開発とは、命がけの仕事です」
ホンリは皆に言い聞かせる。
それは大袈裟ではなく、本当のことだった。
火薬を扱う火箭開発。
一つ間違えば爆発し、死ぬことになる。
「当面の課題は、焔硝土の収拾です」
ホンリは語る。
集めるには、多くの人員が必要になると。
だが、人目についてはいけない。
この問題をどうするのか。
ホンリはソルジュへ難題を突きつける。
ソルジュはクムォ和尚の元を訪ねる。
多くの人員、人目についても怪しまれない。
それには、寺の僧侶はうってつけだ。


クムォ和尚の快諾の元、僧侶たちの協力を得るソルジュ。
僧侶らに、焔硝土についての説明を始める和尚。
軒下の湿った黒い土、それが焔硝土だと。
僧侶らは、順調に焔硝土を集め始める。




火箭開発には、硫黄が必須だ。
しかし朝鮮では、硫黄は、ほぼ産出されない。
倭(日本)からの輸入に頼らざる得ない。
それを心得ているサマスン大監らは、
硫黄を倭から輸入している商人を監視し、
ホンリを探し出す作戦に出る。
”明”の内通者であるチョン大監は、
ホンリの似顔絵を受け取り、
湾商のホンマンに、ホンリを見つけるよう命じる。
ホンリはソルジュに、
倭人(日本人)の遊郭の長谷川を訪ねるよう言いつける。
長谷川は、倭から硫黄を輸入しており、
長谷川から硫黄を買い付けることが目的だった。
「ホンリ様の使いで来ました」
ソルジュがそう言っても、長谷川はとぼける。
「ホンリとな?」
「硫黄を買いに来ました」
ソルジュがそう言っても、
「そのような者は存じない。硫黄も扱わない」
長谷川は、すげなく断る。
ソルジュから長谷川の対応を聞かされたホンリは、
危険を承知で、自ら長谷川の元へと向かう。
ホンリの顔を見た途端、長谷川はガラリと態度を改める。
「失礼致しました。
硫黄のことを訪ねる怪しい輩がおりましたもので...」と。
ホンマンらが、ホンリを探し回っているということだ。
まずは倉庫にある分を渡し、来月船で入ってくる分で、
必要な分は足りるはず....
長谷川は、快くホンリに硫黄を譲る。
しかも、代金はいらぬと。
ホンリの父のおかげで、こうして朝鮮で生きてこられたと。
しかし代わりに、 ”금강경(金剛経)”は入手できないかと、
相談を持ちかけられる。
信心深い母が所望していると。
そしてホンリに、あるものを授ける。
「アキコのピニョ(かんざし)」だと。
アキコは日本で最も有名な妓生で、
多くの女性がアキコを真似たので、そう名づけられたと。
ソルジュとホンリが店を出ようとすると、
ホンマンらが店に入ってくる。
「あの者たちです。硫黄のことを聞きまわっているのは」
長谷川は、小声で囁く。
ソルジュはホンリを隠すように、店の隅へ腰掛ける。


ソルジュはホンリに、店の妓生のように
胸元をはだけるように囁く。
長谷川も、ホンリを妓生だと思い込ませるために、
一芝居打つ。
イヤイヤ胸元をはだけるホンリ。
ホンリは店の中を見回し、驚愕する。
自分の似顔絵を持ち、一人一人女の顔を確認しているのだ。
それは、”明”のキャオリュン将軍の腹心イェンタウ。
ホンリは慌てて、極端なほど胸元をはだけさせ、
ソルジュに寄り添う。
ソルジュは、目の前にあるホンリの顔に驚き、
思わずキスしてしまう。
(チョン・ジェヨン初キスシーン)
そして調子に乗り、胸元をまさぐるソルジュにホンリは激怒。
平手打ちを食らわせる。

ソルジュが平手打ちされるのを目撃し、
愉快になったホンマンは、思わず酒を吹き出してしまう。
そのせいで、ホンリの似顔絵は滲んでしまい、
ホンリは危うく難を逃れた。


火箭開発は順調に進んでいた。
焔硝も出来上がり、火薬作りの工程に入る。
しかしホンリは、告げる。
小神機箭、中神機箭ならば、今の爆発力で十分だが、
大神機箭には、今の倍の爆発力が必要だと。
単純に火薬を二倍にすればいいわけではない。
ソルジュは頭を悩ませる。
そして、最大の難関は、火筒に火薬を詰める作業だ。
鉄の筒に鉄の棒で火薬を詰めるのだ。
一歩間違えば、爆死することも、手が吹っ飛ぶこともある。
しかしホンリは言い捨てる。
「火箭開発は、利益を得る商売ではありませんので」と。
焔硝土を収拾していた僧侶たち。
その様子に”明”の役人が目をつける。
袋に入っているものは何だ?と。
中身が焔硝土だとわかると、
役人は僧侶らを捕まえにかかる。
それを見ていたクムォ和尚は、役人を撲殺してしまう。



クムォ和尚が火箭開発に関わっていることは
明白になってしまった。
寺に、キャオリュン将軍らが詰め掛け、
「ホンリはどこだ?」と、尋問するが、
和尚はのらりくらりと、知らぬ存ぜぬを突き通す。
和尚は指を剣で跳ねられ、その上、刺殺されてしまう。
クムォ和尚の亡骸を抱きながら、ソルジュは怒り狂った。
残っていたキャオリュン将軍の部下を、
一人残らずメッタ斬りにした。
驚いたのはキャオリュン将軍だ。
一体誰が私の部下を.... そんな人物がおるのか...?
”明”の内通者、チョン大監は、
武術の優れた武士を全て調べたが、
この件に、官僚は関わっていないようだと報告する。






ソルジュは無言のまま、黙々と和尚の亡骸を火葬した。
ソルジュの鎮痛な面持ちを見て、ホンリの心も痛む。
ホンリはソルジュに近寄り、
手を握ろうとしたが、
その瞬間ソルジュは立ち去っていく。
ホンリに気づきもせずに。


怒りが収まらず、竹林で、一人剣を振るうソルジュ。
それを見たホンリはたしなめる。
「それでは、怪我をされます。武術は平常心ですべきもの。
怒りで振り回しても怪我をするだけだと知らないのですか」
商売の達人、剣術も達人...
女を怒らせる達人....
と、ホンリはソルジュを和ませようと茶化す。
「邪魔しないでくれ」
ソルジュは言い放つ。
「誰かがそばにいて邪魔になるなら、真の達人じゃないわ。
真の達人なら揺らいてはいけないものでしょ?」
ホンリは、ソルジュの気持ちに構わず突っかかっていく。
「あんたのような信念に満ちた女は、この世には多くない。
どんなことがあっても、揺れそうにない」
ソルジュは言い捨て去って行く。
ソルジュの言葉を聞いたホンリは涙ぐむ。
ため息をつくと、一人弱音を吐くホンリ。

その通り。誰もできないわ......
それが、どれだけ大変なことか......
怖くても、怖くないふり....
寂しくても、寂しくないふり...
恐れても、恐れるそぶりは見せられない.....
これがどんなに大変なことか......

ホンリは涙をこらえながら、
自分に言い聞かせるようにつぶやく。
ホンリのつぶやきをこっそり聞いていたソルジュ。
ホンリはそれに気づくと、気まずそうに語る。
「父は控えめであるようにと。
謙虚でいなければ、誰にも愛されないとおっしゃったけど、
『고맙다(コマプタ)』と、
礼も言えない情けない女になってしまった....」
ソルジュは、去ろうとするホンリの手を掴むと、
そのまま黙って抱きしめた。
サマスン大監ら使臣団は、世子の元へ行き、
無理難題をふっかけた。
とんでもないほどの朝貢を要求したのだ。
その上、貢女と宦官まで要求する。
朝鮮では早婚のため、13歳ほどで嫁に行く。
宦官も、去勢をすれば2人に1人は死ぬ、
千人の宦官を要求するなら、千人の死者を出すことになる。
民を死に追いやるのは妥当ではないと。
しかしサマスン大監は強気だ。
今、”明”の兵が5万人、女真族の兵が5万人、
総計10万人の兵が集まっている。
朝鮮が抵抗すれば、すぐさま戦争だと目論んでいるのだ。
サマスン大監は言い放つ。
「妥当でない?朝鮮の民は明の皇帝のものでは?」と。
そして、付け加える。
「よかろう、宦官は800人にしよう。
貢女の件は、早婚禁止令を出そう。
16歳にならねば結婚できぬよう」
世子を初め、朝鮮の官僚たちは怒りが燃え滾るが、
要求を拒むことはできない。






ようやく、神機箭の実験が開始される。
自信に満ち溢れるホンリ。
しかし、神機箭は的へ向かって飛ぶことすらできず、
散り散りに飛んでいく。
呆然とするホンリ。
正確な推進力が欠けているのだ。
何を間違えたというのか.....
血相を変えて去って行くホンリの後ろ姿を、
ソルジュは心配そうに見守る。

ホンリは、照尺や比率などを再確認する必要があると、
ムセンに告げる。
しかし何度確かめても、正確に作られている。
何が問題なのか、全く見当がつかない。
ムセンは思わず本音を漏らす。
「銃筒謄録があればすぐに解決できるのに」と。
それを聞いたホンリは怒鳴りつける。
「銃筒謄録?それで、取り返そうと言うのですか。
誰が行くのですか?私が行きましょうか?
それとも組長が行くの?
あの人たちを行かせろとでも?
なぜ組長は最初から出来ないと決め付けるのですか!」
冷静になったホンリは、ムセンに詫びる。
「銃筒謄録は確かに必要です。
ですが、あの人達は、大切な人達です」
ホンリは沈痛な思いを告げる。
ムセンはホンリの心を察する。
ホンリにとって、ソルジュは特別な人なのだと。




火筒への火薬詰め作業が始まる。
一歩間違えば、爆発し、腕が飛ぶことも。
皆、慎重にゆっくり詰め込む。

しかし気を緩めたパングが爆発を起こしてしまう。
すぐにソルジュが火を消し、大事には至らなかった。
「気をつけろと言ったよな、パング」
と、パングの頭から水を浴びせるソルジュ。

このシーンが一番好き。

一方朝廷では、”明”の要求に応えるため、
たくさんの少年らが去勢された。
痛みを堪えながら叫ぶ少年らの姿に、
チャンガンは痛恨の思いを募らせる。


チャンガンはソルジュを呼び寄せる。
火箭を一刻も早く完成させねば...と、気が逸る。
そんなチャンガンの様子を察したソルジュは尋ねる。
「そんなに急ぐのですか?」
チャンガンは、ため息混じりに漏らす。
「もしかすると、朝鮮朝廷の運命が、
君らに懸かっているような気がする」と。
チャンガンの思いを汲み取ったソルジュは、
「都監に急ぐように伝えるよ」と、微笑む。
ソルジュは、一人で黙々と火薬開発に勤しむ。
そして、ホンリの望む通り、
倍以上の爆発力を持つ火薬を開発する。
その威力に驚くホンリ。
「いったい、どうやって?」
ソルジュは告げる。
「父だけの秘法だと」



ソルジュは、褒美に頭を撫でてくれとせがむ。
喜びでいっぱいのホンリは、すぐさま頭を撫でようとするが、
ちょうどムセンが部屋に入ってきてしまい、
照れて、そそくさと逃げてしまう。


そして、二度目の実験が行われる。
爆発力も得た。
「今度こそ」と、ホンリの自信は揺るがない。
しかし実験は、またもや失敗だった。
しかも神機箭は、仲間らに向かって飛んできたのだ。
矢に射抜かれた者、
爆発を止めるために火を消す者、
大騒動となる。
散々たる結果に、ホンリは言葉を失う。
「いったい何を間違ったと....」










オチョが矢に射抜かれ重症を追った。
まさに命がけの仕事だ。
皆、心穏やかではいられない。
パンスは頭に血が上り、ムセンを怒鳴りつける。
「いつまで、こんなことを続けるつもりだ!」
ムセンは、あっさりと言い返す。
「火箭開発には、変数がつきものだ」
その言葉に、パンスは更に怒りを募らせる。
「変数?その変数とやらは、何人死んだら終わるんだ!
能力がないなら諦めるべきと違うか!何が神機箭だ!」
その言葉が、今度はムセンの逆鱗に触れる。
「行商人のくせに何がわかるんだ!」
二人は喧嘩になる。
「女が関わって成功した例などない!」
パンスは言い放つ。
それを聞いてしまったホンリは、胸が痛む。
仲間やホンリを心配したソルジュは、
ムセンにこっそりと問いただす。
「何が問題なんだ?」と。
しかし、ムセンも答えることができない。
わからないのだ。
「”銃筒謄録”さえあれば、問題は見つけられます」
ムセンは、不用意にもソルジュに告げてしまう。
”銃筒謄録”は、太平館にあるのだ。
おいそれとは取り返せない。
ソルジュは頭を痛める。
ソルジュは決心する。
一人、太平館へ乗り込むつもりだ。

しかし、屋敷を出て行くソルジュを、
仲間らが待ち構えていた。
「死ぬときは一緒よ」
と、パンオクは告げる。
「太平館の内部もわからのに、一人でどうしようと?」
イナは、太平館の内部地図を広げてみせる。
”銃筒謄録”があるべき場所はここだと、イナは示す。


ソルジュらが、”銃筒謄録”を取り戻しに行ったことを
知ったホンリは、ムセンを責め立てる。
「なぜ話したのですか!
なぜ、あの人達を死地に行かせたのですか!!」


ソルジュらは、濠に身を潜めながら、
太平館へと侵入する。
壁に刀で足場を作り、次々と侵入するソルジュら。
しかし、パンオクが足場の刀を誤って蹴り落としてしまい、
刀は濠の水の中へと落ちてしまう。
水音を聞いた警備らが、気配を察知する。
すぐさま、大勢の警備の者が松明片手に、
濠の周りを捜索し始めた。
一人、濠の中へ取り残されてしまったイナ。
水の中へと潜水し、身を潜める。




しかし警備らは、水の中目掛け、次々と矢を放つ。
矢が命中してしまったイナ。
そして、もう息がもたなかった。
どこにも逃げ場はない。
パンオクはポングに命じる。
戸を開けるようにと。
イナを守るため、戦う決意だ。
しかし、そんなパンオクを、ソルジュは優しく制止する。
戦っても、共倒れになるだけ.....
ソルジュの、苦渋の決断だ。
イナは覚悟を決める。
水中に生えた大木に、自分の着物を結びつけ、
死んでも死体が水面に浮かぬよう、
その上、自らの手を刀で大木へ突き刺し、
何としても自分の死体を浮かび上がらせぬようにした。
深い絆で結ばれた仲間と、愛するパンオクを守るため....
”銃筒謄録”を無事取り返したソルジュら。
しかし、水中からイナの所有物(あれは何?)
が引き揚げられ、
太平館に何者かが侵入したことが明らかになってしまう。
屋敷中をキャオリュン将軍の部下らが取り囲み、
ソルジュらは、逃げ場を失ってしまう。
「俺が引き付ける」
ソルジュはパンオクに”銃筒謄録”を託し、
自らがオトリになり、皆を逃がすことを決意する。
「死なないで!絶対に死んだらダメ!」
パンオクはソルジュを抱きしめる。
そしてソルジュは、敵の中へと突撃していく。
たった一人で多くの兵士を相手に戦うソルジュ。
そして、キャオリュン将軍とイェンタウも姿を現す。
「たいした商売人だ」
キャオリュン将軍は、ソルジュを見るなり言い放つ。
キャオリュン将軍は、チャンガンと妓房で密会した後、
酒を酌み交わした相手だった。
キャオリュンは、まさか商人が神機箭に関わり、
剣の達人だとは想像もしなかった。
キャオリュンはソルジュに剣を向ける。
”明”の護衛武士の長だけあり、並大抵の相手ではない。
さすがのソルジュも苦戦を強いられる。
その時、逃げ延びたユボンらが、矢を放ち、
次々と兵士を射抜き、ソルジュをサポートする。
そして大木に、足場となるよう矢を射ると、
ソルジュは矢を足場にし、颯爽と木を登り逃げ失せる。

ソルジュらの帰還を待ちわびるホンリ。
だが、主を失った馬が一頭....
イナが命を落としたことを悟るホンリ。
パンオクは”銃筒謄録”をホンリに預けると、
木の陰で一人嗚咽した。
ソルジュは胸が痛むが、言葉をかけることすらできない。








取り戻した”銃筒謄録”を基に、
神機箭の設計を再確認するホンリとムセン。
しかし、どこが間違っているのか、一向にわからない。
ふと、ホンリは気づく。
あるページだけが、厚みがあるのだ。


「もしや?」
と思い、袋とじを開封してみると、
中には、父が残した”神機箭”の秘法が隠されていた。
「筒低穴よ!」
ホンリは驚愕する。
いくら見直しても、問題が発見できないわけだ....
筒の底に、ほんのわずかな穴を開けていたのだ。
火薬筒の大きさと内部の容積は、少しずつ異なる。
火薬の直径が9分7里の時、
噴射穴の大きさが、1分2里であれば、
正確な推進力を得られる。
「こんな小さな穴に合う計算方法があったのか....」
ムセンも、感嘆の声を漏らす。
「本当に素晴らしい....」
ソルジュは、長谷川との約束通り、
船に積まれた硫黄を受け取りに船場へと向かう。
そして、約束の金剛経を渡す。
(太平館から失敬したんですかね?)
長谷川は感激し、礼を述べる。
「この貴重な本を、アキコが読みたいと言いましたが、
貴重な法文を読まずに、亡くなってしまうとは....」
長谷川は告げる。
その言葉で、ソルジュは長谷川の異変を感じ取る。
金剛経を読みたいと言ったのはアキコではなく、
長谷川の母だったはず。
周囲を見渡すソルジュ。
密かに監視されていることを感じ、
長谷川に一言礼を言い、すぐさま去って行く。
思った通り、ソルジュらの後を、
キャオリュン将軍らがつけていた。


ソルジュは、キャオリュン将軍を、
白い布が張り巡らされた迷路のような場所に誘い込む。
そこでは、影だけで敵か味方か判断せざるえない。
キャオリュン将軍の部下らは、仲間同士で斬り合ってしまう。
キャオリュン将軍はソルジュの思惑を悟ると、
部下らに「一歩も動くな」と、制止する。
キャオリュン将軍とソルジュの一騎打ち。
「剣とは、本来人を助けるためのもの、
お前らは、武士の根源を汚した!」
ソルジュはキャオリュン将軍に言い放ち、
トドメを刺そうとするが、
イェンタウが助けに現れ、ソルジュは火を放ち、
逃げ去って行く。


”銃筒謄録”を奪われ、”明”は窮地に追い込まれた。
神機箭が完成でもすれば、”明”は絶対的に不利だ。
サマスン大監は、世子の元へ行き、
最後の手段として、2つの要求を突きつける。

1つ、3千人の女真族の捕虜を解放せよ。
2つ、朝鮮はこれまで、4軍6陣を敷き、
婆猪江の軍事活動で挑発した。
直ちに、遼東の全ての兵を、引き揚げさせろ!

それには、世子も黙ってはいられない。
「よく聞け!遼東地域は、朝鮮古代から、
厳然なる朝鮮の土地だ!」
しかし世子の言葉など、サマスンは耳も貸さない。
「今、10万の兵が義州に向かっておるのだ!」
と、戦争を匂わす言葉で、世子を脅す。
「朝鮮の火砲開発に対する皇帝の意思は固い。
時間はない。すぐさま火箭開発を中止し、
”銃筒謄録”と、ホンリを差し出せ。
それだけが、戦争を防ぐ道だ。わかったか!」
サマスン大監は言い放つ。
だが、世子は不敵な笑みを浮かべる。
「戦争になれば、”明”も損失を被るはず」
痛いところを突かれ、サマスン大監は去って行く。


サマスン大監の言う通り、
10万もの兵が、義州に向かっていた。
世宗は決断を迫られる。
朝廷に官僚たちが集まる。
「大国相手に戦争はできませぬ。直ちに火箭開発を中止し、
彼らの申し出を受け入れてください」
”明”の内通者であるチョン大監は、世宗に訴える。
また、他の官僚は、
「絶対に引き下がってはなりません」と、訴える。
世宗は頭を痛める。
「遼東地域を取り戻し、朝鮮の主権を立てることが、
これほどまでに険しく遠いことなのか....?」
世宗は決断する。
チャンガンは、ソルジュを呼びつける。
「命令を取り下げてください」
ソルジュは、納得がいかない。
神機箭の開発を即刻中止し、ホンリと”銃筒謄録”を差し出せというのだ。
「完成は間近なんだ!命令を取り消してくれ!」
ソルジュは訴えるが、
「残りの残金だ」
と、金を差し出し、チャンガンは有無言わさず去って行く。
怒りが燃え滾るソルジュ。
またもや、国に裏切られた......
しかも、愛するホンリを差し出せなどと.....




屋敷に戻ったソルジュに、ホンリは声をかける。
ソルジュは、ホンリに悟られぬよう、おどけてみせる。
大神機箭も完成していた。
明日の発射実験を終えれば、全てが終わる。
喜びに満ちたホンリの言葉を聞き、ソルジュは言葉に詰まる。
「内禁衛長(チャンガン)が、何かおっしゃってましたか?」
ホンリは尋ねる。
ソルジュはホンリの手を取り、
「二人で手を取り合い、仲良くしろと...
朝鮮の運命が、二人の手に懸かっていると」
ソルジュは、本当のことなど、とても言えなかった。
ホンリをみつめるだけで胸がせつなく痛むソルジュ。
ソルジュはホンリを引き寄せ、キスをする。


翌朝、何者かの侵入の気配を察知したソルジュ。
部屋を出ると、そこにはチャンガンが部下を引き連れ、
待ち構えていた。





ホンリは、護送車に乗せられ、
仲間らは、捕らわれの身となっていた。
「これはどういうことだ!」
ソルジュは言い放つ。
「王の命です」
チャンガンは、あっさりと告げる。
「これが!あれが!本当に王の選択なのか!
こんなバカな話があるか!」
ソルジュは、いきり立つ。
「もう私に御命を下す王は死んだ!」
ソルジュは逆らい、ホンリを護送車から助け出す。


「お前のような卑しい奴が御命に逆らうのか!」
チャンガンは、ソルジュに剣を向ける。
二人の激しい格闘が始まる。

「私が行きます!」
二人の争いを制止し、ホンリは言い放つ。
ソルジュは、納得がいかない。
「絶対に行かせない!」
ソルジュは受け入れない。
「彼らの狙いは私です。私が行けば、全てが終わります」
ホンリはソルジュに訴える。
「一体、誰の為に行くのだ?そなたを捨てた朝廷の為に?」
ソルジュは頑として突っぱねる。
「この国の民のためよ!」
ホンリの言葉が、ソルジュは無念でならない。
「だったら、俺は...?」
ソルジュは尋ねる。
「些細な感情。無駄な真似でした」
ホンリは、心にもないことを告げる。
ホンリの言葉が、胸に突き刺さるソルジュ。
ソルジュは、去って行くホンリに、問う。
「今は、怖くないのか?」
ホンリは答える。
「いいえ....」
「今は、寂しくないのか?」
「いいえ....」
ホンリの声は、涙で震える。
「今は、恐れないのか!」
ソルジュは、責めるように言い放つ。
「いいえ!」
ホンリも、声を荒立てる。
「なぜだ!」
ソルジュは、涙ながらに訴える。
「あなたのせいよ.... あなたがいるから......」
ホンリは、涙を堪えながら言い放つ。
ソルジュはホンリの涙を、そっと拭ってやる。
「私が行けば、あなたを助けられる.....
あなたの仲間を救う道だと... わかってるでしょ?」
ホンリは、切々と訴える。
「わかる、わかっている.....」
ソルジュはホンリを、しっかりと抱きしめる。
「俺の命を懸けて、必ず君を守ってみせる」
ソルジュはホンリに告げる。
感激したホンリが、今度はソルジュを抱きしめる。
ホンリはソルジュの目をしっかり見つめると、
自ら護送車の中へと入って行く。
心配そうにホンリを見守るパンオクや、ムセンら....


チャンガンは、王へと報告に上がる。
「どうなったのだ?」
世宗は尋ねる。
チャンガンは、無言のまま涙をこぼした。
それを見た世宗は悟る。
「私が、過ちを犯したようだ....」



チャンガンは、世宗からある物を授かる。
王の意を察したチャンガン。
国を挙げての戦争はできない.....
だが、黙って引き下がるわけにもいかない.....
御命ではなく、チャンガン自らの決断として、
”明”と戦うこと.....
チャンガンは、王の意を汲み取り決断する。


チャンガンはまず、”明”に通じていた、
チョン大監を襲撃する。
「お前の誤った信念のせいで、
多くの民を殺し、
数千万年を、奴らの属国として生きていくことを、
本当にわからなかったのか!」
チャンガンは、チョン大監を斬り捨てる。


チャンガンが次に向かったのは、留置場だ。
そこには、ソルジュを初め、
商団の仲間らが捕らえられていた。
(ホンリが自らを犠牲にしたのに、結局は逆賊かよ!)
チャンガンは、ソルジュらを解放する。
ホンリは護送車に乗せられ、大軍に囲まれ移送されていた。



その大軍が、突然襲撃される。
チャンガン達だ。






(←このシーン、ゾクゾクするほどカッコイイ!)
予想外の襲撃に、”明”らの兵達は次々とやられていく。
ソルジュは、ホンリのすぐそばまでやってくる。
しかし、敵が体制を建て直し、
無念ながらも、撤収することになる。
「行って!」
ホンリは、ソルジュに告げる。
しかし心の中は、不安と恐怖でいっぱいだ。




チャンガンらは、山間の平地へと敵を誘い込む。
敵の姿を確認した女真族の長イ・テランは、
悔しさに怒り狂う。
「100人程度の兵じゃないか!あんな奴らにヤラれるとは!」
イ・テランは、すぐさま攻撃を開始しようとするが、
キャオリュン将軍が、それを制止する。
「私の部下だけでも、3千人を越えます!
何をためらうので?」
イ・テランは、キャオリュン将軍に食って掛かる。
「背水の陣を敷いている奴らだ。油断するな。
暗闇の中で戦えば、味方同士で斬り合い、
3千人の半分の部下を失うだろう」
キャオリュン将軍はたしなめる。
「夜が明けるのを待つようだ」
チャンガンらは、キャオリュン将軍らの狙いを悟る。
ソルジュは、パンオクに命を出す。
次なる作戦のためだ。
そして、夜が明ける。
100人程度のチャンガンらの兵に対し、
”明”と、女真族の兵は圧倒するほどの数だ。
サマスン大監らは、勝利を疑わない。


ホンリは、ただただ祈るばかりだ。

「準備はいいか!」
チャンガンは、仲間たちに声をかける。
いよいよ、戦闘開始だ。
一斉に、敵めがけて突進していく。
「槍を持て!」
チャンガンが命を出す。
すると、砂に隠していた井げたに組んだ槍を取り出し、
突進してくる敵めがけて突き出す。
勢いよく突っ込んできた敵らは、次々に槍に突き刺さる。
井げたの槍の隙間から、更に槍で突き刺すチャンガンら。
絶対的に不利と思えた戦いが、作戦勝ちで有利に働く。
そしてチャンガンらは、敵に四方を囲まれる。
しかし、これも作戦のうちだ。
「今だ」
チャンガンはソルジュに耳打ちする。
ソルジュはパンオクに合図を送ると共に、
味方に「退避!」と、命じる。
するとソルジュらは、予め作っておいた落とし穴の中に隠れ、
頭から盾で覆う。
その瞬間、一箇所に集まった”民”らの兵めがけて、
小神機箭が次々と発射される。







まとめて100本連発される小神機箭の矢が、
いくつも空から降ってくる。
これでは、”明”の連合軍も、ひとたまりもない。
次々と矢に射抜かれ、どんどん死体の山となっていく。


神機箭の威力に圧倒されるキャオリュン将軍。
しかし、大国”明”の護衛武士の長。
すぐさま指示を出す。
兵らに、盾を持たせ突進させるキャオリュン将軍。
「そうだ!そうだ!盾だ!」
サマスン大監らも、キャオリュン将軍の作戦に
浮かれてしまう。
それを聞いたホンリは、密かにほくそ笑む。
今までは小神機箭。
中神機箭、大神機箭は、自ら爆発するのだ。






そして今度は、中神機箭が発射される。
「1、2、3....」
ホンリは密かにカウントする。
すると、今度は矢で射抜かれるだけでなく、
次々と爆発していく。
これを見たチン大人たちは驚きを隠せない。





次々と中神機箭が発射される。
あらゆる場所で爆破していき、”明”の連合軍は、
爆撃に巻き込まれていく。


キャオリュン将軍の腹心イェンタウでさえも、
これには対抗する手立てもなかった。
それでもキャオリュン将軍は、立ち向かっていく。



しかしまだ、油断はできない。
ソルジュらは、神機箭の威力に圧倒されると共に、
キャオリュン将軍の執念に、息を呑む。


パンオクは、すぐさま神機箭の発射命令を出す。
キャオリュン将軍は、中神機箭に次々と射抜かれ、
そして、爆死する。


ようやく戦いの終わりが見えてきた。
ソルジュらは、戦いの行く末を見守るばかりだ。

次々と陣営に戻っていく敵の兵。
それを見つけたパンオクは、すかさず指示を出す。
「あそこに、女真族の残党が!大神機箭用意!」
ようやく、大神機箭が姿を現す。
”明”の兵士は、ほぼ全滅した。
勝利を疑わなかったサマスン大監は、
この状況に怒り狂う。
「あの女を殺せ!」
ホンリを殺すよう、部下に命じる。
ホンリは、護送車から、引きずり出される。
「やめんか!」
チン大人が制止する。
「皇帝に捧げる女だ!一族を滅ぼす気か!」と。


その瞬間、大神機箭が発射される。
まるで大空を飛ぶかのように突進していく大神機箭。
その威力に、”明”の連合軍はもちろん、
ソルジュらも圧倒される。
ホンリも、思わず感嘆の声を漏らす。
凄まじい爆破の威力。
まさにロケットミサイルだ。
これには、ホンリ自身が圧倒された。
一瞬にして、”明”の連合軍が爆死する。




チン大人は、驚きのあまり言葉も出ない。
”明”の連合軍は、まさに絶滅寸前だ。
パンオクらは、次々と大神機箭を発射させる。
”明”の連合軍は、うろたえながら逃げ惑う。
オロオロするチン大人。
ホンリはチン大人に言い放つ。
「死にたくなければ、伏せなさい」と。
あれほどの大軍が、一瞬にして絶滅した。
ソルジュンはホンリの安否が心配で、
いても立ってもいられず、敵軍に向かって疾走する。

ホンリは無事だった。
ホンリの助言により、チン大人も生きながらえた。
サムスン大監は、無残にも爆死した。



ホンリをみつけたソルジュは、ホンリをしっかりと抱きしめる。
再会できた喜びを分かち合う二人。

死体の山を前に呆然とするチン大人。
そして、命を助けられたホンリに対し、一礼して去っていく。
”明”を守るための行動ではあるが、
チン大人がいなければ、
ホンリは、今頃生きてはいなかったかもしれない。
二人は、チン大人の後ろ姿を見送る。
朝鮮と”明”の今後を案じながら。




予想もできない”明”の敗北。
皇帝は「妻が多すぎる」とボヤき、
「朝鮮に帰せ」と、命じる。
チン大人に向け、「これでよいか?」と、尋ねる。
チン大人は満足げに微笑む。

チン大人は、今度は正真正銘”使臣団”として、
朝鮮へとやってくる。
皇帝の言葉を伝えるために。
「遼東を境に起きていた昨今の事態は、
狡猾な者が招いた愚かな行為であった。
今までの誤解を解くために、早急に使臣団を送るが故、
朝鮮の王は、今までの怒りを鎮め、
確固たる友好を維持されるよう願う」
チン大人は、皇帝からの文書を読み上げると、
世宗に献上した。
(このオッチャン可愛い)

ホンリらが命を懸けて完成させた神機箭のおかげで、
ようやく朝鮮は、長年の屈辱から解放され、
本来のあるべき姿に戻ることとなった。


ホンリとソルジュは、世宗に朝廷へ招かれる。
そなた達に頼みがあって呼んだと、世宗は告げる。
「사표국(司豹局:朝鮮時代に、焔硝を焼くことを受け持った臨時官衛)を受け持って欲しいと」
しかし、ホンリは慎んで辞退する。
「国を救い平和をもたらしたのは、そなた達だ。
これから力を蓄え、朝鮮を繁栄させるのも、
そなた達ではないか?」
世宗は説得する。
「私達は、このままで十分です」
ソルジュは答える。
ホンリは、”銃筒謄録”を、世宗に献上する。
そして、二人は朝廷を後にする。

世宗は、去って行く二人に、
膝をつき、深々と頭を下げる。
そんな世宗を、官僚たちは制止しようとするが、
世宗は聞き入れない。
敵国の一介の使臣に四拝した私が、
ましてや、この国の民に頭を下げることが、
なぜ過ちになるのだ。
世宗は言い放つ。
世宗の言葉を聞いた官僚たちは、神妙な表情を浮かべる。
世宗は続ける。
「私は王だが、あの方達は皇帝なのだ」と。
朝廷からの帰り道、
市場を歩きながらソルジュはホンリに話しかける。
「なぁ、このまま婚礼を挙げよう。問題ないだろ?」
女心を知らないソルジュ。
それを聞いたホンリは、呆れ果てる。
「婚礼を、市場でふざけながら挙げる人がどこにいるの?」
そこまで言われても、少しも理解できない鈍感なソルジュ。
ホンリは怒って先を歩いて行く。
プボサンダン商団は、”明”の商団を招いて、
火薬の取引を行う。
ユボンらは、自信ありげに”爆裂炭”という火薬を披露。
しかし”明”のチン大人らは、
「あれは”明”にもあるじゃないか」
と、コソコソと耳打ちし、火薬を買い叩こうとする。
露骨に不満を露にするオチョら。
「銀貨50枚」がせいぜいの値。
納得いかないソルジュは、”明”の奴らを一泡吹かせようと、
パンスに合図を送る。




その瞬間、夜空に華麗な花火が打ち上がる。
それを見た”明”の商人らは、驚くばかりだ。







我 先にと、どんどん値をつける。
仕舞いには、「銀貨150枚!」とまで、値が吊りあがる。
しかしソルジュは言い放つ。
「あれは、非売品だ」と。
そ れを聞いたホンリは、ソルジュをたしなめる。
「銀貨150枚なら、米300買えるじゃない。
どうして売らないの?」と。
利益を求めず、国の民のためと生きてきたホンリは、
すっかり利益を求める一般人になっていた。
「あ れは、君のために作った求婚用の祝砲だ。
誰が売るもんか」
ソルジュは、つぶやく。
そ れを聞いたホンリは、嬉しくて顔が緩んでしまう。
ソ ルジュは、ホンリに頭を向ける。
「よくできたでしょ?」
と、ご褒美をねだる子供のように。

ホンリは、皆の見ている前で、ソルジュの頭を撫でてやる。
二人に当てられる仲間たち。


朝鮮の平和を象徴するかのように、
華麗な花火が夜空を彩る。

END



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