渇き Thirst 
 原題:コウモリ 박쥐(パクチュイ) <2009>

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 映像

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病院に勤める神父サンヒョン(ソン・ガンホ)は、死んでいく患者を看取るしかな い自分の無力さに 悩み、海外で秘密裏に進められているEV(エマニュエル・ウイルス)のワクチン開発実験に自発的に参加する。

サンヒョンは、実験途中でウイルスに感染して死に至り、謎の血の輸血を受け、奇跡的に蘇生する。しかし、その血は、サンヒョンをヴァンパイアにし てしまう。

血を望む肉体的欲求と、殺人を願わない信仰心の衝突は、サンヒョンを抑制するが、血を飲まなければ彼は生きられない。だが、人を殺さないで人の血 をどのように手に入れるのか。

奇跡的に命を救われたサンヒョンは、彼が奇跡を起こせると信じて祈祷を求める信奉者として、幼い頃の友人ガンウ(シン・ハギュン)と、彼の妻テジュ(キ ム・オクビン)と再会する。

ヴァンパイアになったサンヒョンは、テジュの妖しい魅力に抑えきれない欲望を感じる。テジュも、ヒステリックな姑(キム・ヘスク)と、無能な夫に抑えられ ていた欲望を悟 らせたサンヒョンに執着し、危険な愛に陥る。

ますます大胆になって行くサンヒョンとテジュの愛。サンヒョンがヴァンパイアという事実を知ったテジュは、恐怖のため距離をおくが、それも束の間、サ ンヒョンの恐るべき力を利用して夫を殺そうと誘惑する。

愛という名目で、より一層彼を追い詰めるテジュ。殺人だけは避けようと思ったサンヒョンは、ガンウを殺したいというテジュの提案を受け入れる。一寸先も分 か らない彼らの愛。果たしてその終わりは、どうなるのだろうか。

日本公式サイト: http://kawaki-movie.com/

【予告編】

監督 パク・チャヌク 作品一覧

出演

ソン・ガンホ (宋康昊)

出演作品一覧
キム・オクビン <2005>女 子高の怪談4-ヴォイス-、<2005>ハノイ の花嫁、 < 2006>阿娘(アラン)[特別出演]、
<2006>疾走(未公開)、<2006>多細胞少女、 <2008>1724 妓房狼藉事件、<2009>渇き Thirst
<2009>女優たち、<2011>高地戦
キム・ヘスク(金海淑) 出演作品一覧

シン・ハギュ ン(申河均)

出演作品一覧

パク・イナン(朴仁煥)

<1998>ク ワイエット・ファミリー、<1999>北朝鮮から来た男、 <2000>な せば成る
<2001>ミラクル・サッカー、<2001>春の日は過ぎゆく、 <2004>あぶない奴ら~TWO GUYS~(特別出演)、
<2006>無道里、<2007>ハピネス(特別出 演)、<2009>渇き Thirst

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【レビュー&ネタバレ】
2009年4月、韓国公開。観客動員数は、約220万人のヒット。
日本でも、2010年2月に公開決定。
原作は、フランスの自然主義文学の定義者であり、代表的存在でもあるエミール・ゾラ。

カンヌ映画祭や、アメリカの有名誌で、大絶賛された本作。
しかし韓国での評判は両極端。まさに賛否両論。
絶賛と 酷評とで、二分されている。

moca的には、後者。
なんてったって、芸術のわからない女ですからー(笑)

パク・チャヌクも、前作サイボーグでも大丈夫から、独自の 世界観を突っ走ってしまっている。
この映画も、前作同様、「わかる人にだけ、わかればいい」といったような、強気な主張が見える。
万人に受け入れられる内容ではなく、自己満足の映画だ。
そのパク・チャヌクの思想に共感できる人、または、その斬新さに圧倒された人、
そのような人は、大絶賛するのであろう。
現にこの映画、公開3日で71万人を動員し話題となるが、
それ以降は、急速に客足がダウンしてしまった。
要するに、クチコミで観客の興味を損なわせてしまったのだろう。
一言で言えば、期待ハズレ。
あまりにも予想していた内容とは、かけ離れすぎているのだ。
そのギャップに、観客は失望してしまったのだろう。
ゾクゾクするような面白い映画を期待していたが、
開けてみれば、そこに広がるのは、人間としての尊厳とは... といった、奥深い内容。
そのギャップが、酷評を生み出したのであろう。

この映画は、韓国映画で初めて、アメリカのメジャー映画配給会社が投資したことで話題になった。
また、アメリカでは、大絶賛されている。
これは、国民性の違 いという ものが、大きく関わっているものと考えられる。
アメリカでは、このような儒教色の強い人間的情緒が斬新であり、
ハリウッドでは制作されないような、韓国独特な色を持つのである。
それが他国の人間には、奇異に映り、刺激的なのであろう。
ステーキばかり食べている国が、日本の寿司が斬新なのと同じ感覚でしょう。

無宗教の国と言われる日本では、なおいっそう、共鳴しにくいのでは。
韓国は儒教の国であり、また、キリスト教信者も非常に多い、
国民のほとんどが、何らかの宗教を信仰している。
パク・チャヌクは、幼い頃からカトリックの環境にあったので、
神父のアンデンティティについても、よく考えることがあったのだと。
そして、神父という身分に就いた人間が、人を殺さねば自分の生命を維持できない状況下に陥った時、
精神的苦痛がどれだけ大きいか描きたかったと、
この映画の構想を、10年以上も温め続け、
JSAの撮影時、ソン・ガンホにこの映画を提案した のだそうだ。

そうであれば、そのテーマに絞って映画を作るべきだった。
そうすれば、観客も苦悩と苦痛に耐える神父に感情移入できたことであろう。
いろんな要素を欲張って取り入れ、それ故に散漫になり、
結局、この映画は何だったんだ?ということになってしまう。
10年も温めていたにしては、ちょっとお粗末といいますか、完成度が低いようですね。
結果的には、愛してはいけない女性を愛してしまったが為に苦境に陥る男の物語であり、
「神父がヴァンパイヤに」
という、斬新なアイディアが活かしきれておりません。

この映画は、韓国映画の中でも、非常に独特だ。
パク・チャヌクの過去の作品を見ても、その独自性は明らか。
復讐三部作(復讐者に憐れみを、オールド・ボーイ親 切なクムジャさん)も、
好き嫌いがハッキリ分かれる作品であり、
美しい夜、残酷な朝も、一般ウケする作品ではない。
そこをよく踏まえて、期待せずに観ることをオススメします。

そしてもう1つ、参考までに付け加えると、
復讐三部作を観れば、パク・チャヌクの残虐なシーンはリアルに描写されることはご存知でしょう。
moca的には、復讐三部作に比べれば、この映画は全然目を伏せるほどの残虐さはないように思いますが、
韓国の映画館では、嘔吐してしまったり、途中退場してしまう女性が後を絶たなかったそうです。
スプラッターなどが苦手な方は、遠慮した方がよいのかもしれませんね。

さて、ここまでどちらかといえば、否定的なことを述べてきましたが、
この映画には、この映画なりの面白さがあります。
ちょっとシュールで、コミカルで、
そこを楽しめれば、まずまずではないでしょうか。
とにかく、キム・ヘスクが驚くほどのイイ味を出してくれます。
派手で、ある意味ホラーチックな(笑)メイクからも、ちょっと想像できることでしょう。

そして、ソン・ガンホとキム・オクビンの大胆なベッドシーンも話題です。
どちらかといえばエロティックではなく、美しい絵画のようなベッドシーンです。
しかし、キム・オクビンの脱ぎっぷりは、この作品に対する覚悟を伺わせます。
そして、もしやソン・ガンホはフルヌード?
彼の股間の間にブラブラしているものは...... ホンモノで?

※やはり、ソン・ガンホはフルヌードだそうです。
 全世界がボカシなしの18禁にて公開するのに、
 日本だけがボカシを入れて、15禁にするそうです。15禁にして意味あるのかしら.....

 ソン・ガンホが、なぜフルヌードにまでなったか!
 その「モノ」自体に意味があるのです。勃起していないでしょう?「犯す気はなかった」ということです。
 ソン・ガンホを神のように崇める人々に、「神父(神の代わり)がレイプした」と思わせることに意味があるのです。
 なので、自分の思惑通りに人々が非難する姿に、「ニヤリ」と笑って去って行くのです。
 「ボカシ」を入れてしまうと、「勃起していない」という表現が見えません。
 これを、どのようにフォローするつもりなのでしょうか?

何といっても、キム・オクビンが美しい!!
この美しさに、神父が自分を抑えきれなくなる気持ちもわかるものです。
そして、期待以上の演技力を見せてくれます。
今までの映画やドラマ以上の、本格的な演技力が求められるこの作品。
世の中の全てを恨んでいるようなひねくれた女、そして、したたかさ、
また、キュートで、茶目っ気のある女、そして、素直で純粋な女。
テジュはいろんな側面を持った女。
そしてラストでは、キュートさと、図太さと、全てが凝縮された魅力を見せます。
何よりもラストシーンは可憐で、哀れで、せつなくて、
抱きしめてあげたくなります。
正直、この映画の主役はキム・オクビンでは?と思ってしまう。
それだけの存在感がありました。
これから女優としての成長が期待できそうですね。

【サンヒョン】
神父
ソン・ガンホ
【テジュ】

キム・オクビン
【ラ女史】
テジュの姑
キム・ヘスク
【ガンウ】
テジュの夫
シン・ハギュン
【老神父】
サンヒョンの師
パク・イナン
【スンデ】
ラ女史の麻雀仲間
ソン・ヨンチャン
【ヨンド】
ラ女史の麻雀仲間
オ・ダルス
【イブリン】
ヨンドの妻
CabralMercedes Cabral


* * *

病院に勤める神父サンヒョン。
いくら祈りを捧げても、患者は救われず、
自分にできるのは、安らかな気持ちで逝けるよう力づけ、看取ることだけだ。
そんな自分の無力さと、信仰に限界を感じたサンヒョンは、
「人を救いたい」
という気持ちを抑えきれず、独身男性だけが感染するという謎のウイルスEV(エマニュエル・ウイルス)の
ワクチン開発に自ら参加することを決めた。
そのウイルスに感染すれば、間違いなく命はない。
そのために、「自殺志願」として、やってくる者もいるという。
感染対象は独身男性だけということもあり、
志願者のほとんどは、サンヒョン同様、信仰に限界を感じた神父や、宣教師だった。

サンヒョンは実験に参加し、EVに感染し、心配停止となる。
しかし、輸血した血液の中に、謎の血液が含まれており、サンヒョンは蘇生して蘇る。
感染した志願者が全て亡くなっていく中、命を取り留めたサンヒョンは、
「奇跡の人」として、神のように崇められる。
サンヒョンの祈祷を受ければ、病やケガも治癒するだろうと、
大勢の人々が、サンヒョンの祈祷を求めた。
そして、その中に、幼い頃の友人ガンウの母がいた。
ガンウは食道ガンなのだと。
サンヒョンはガンウを訪ね、祈祷を捧げる。
そして、どういうわけか、ガンウの腫瘍は跡形もなく消えてしまった。
ガンウの母は、サンヒョンの祈祷の話をしていた時に、
ガンウが「ココが熱い!」と、腹を指し叫び、その後、検査結果で腫瘍が消えていたという。
単なる診断ミスか?
それとも、奇跡か?
真実はわからないまま、ガンウの母は、サンヒョンの存在を有難がり、
いつまでも家にいてくれと願い出る。

そして、その家には、テジュの妻テジュがいた。
サンヒョンはテジュのことを、ガンウの妹だと勘違いしていた。
幼い頃、ガンウの妹が自分の顔を見ると逃げていったというサンヒョンの言葉を、
ガンウの母は笑った。
「あの子はガンウの妻だと」
幼い頃、テジュの親はガンウの家に間借りしていたが、テジュを置いて逃げてしまったと。
それ以来、ガンウの母がテジュを育ててきたのだと。
「娘のように、子犬のように」
と、ガンウの母は笑う。

一方サンヒョンは、自分が血を飲まねばEVウイルスが再発することに気づいた。
人を殺さずして、どうして人の血を手に入れられようか。
サンヒョンは苦悩する。
生きるためには人を殺さねばならず、人を殺すことは、信仰心が許さない。

サンヒョンは病院から輸血用の血液を盗んだり、
意識不明の患者の血をこっそりと、患者の腕の点滴用のチューブを差し替え血を飲んだり、
はたまた、自殺志願者の血を飲みつくし、失血死を手伝ったりと、何とか凌いだ。
血を飲めば、体内のEVウイルスは影を潜める。
自分が生きながらえるためには、一生、誰かの血を摂取しなければならないのだ。

ある日サンヒョンは、裸足のまま通りを駆け抜けるテジュと遭遇した。
驚いて逃げようとするテジュをサンヒョンは抱き上げると、
自分の靴を脱ぎ、テジュに履かせてやった。
サンヒョンの行動に、衝撃を受けるテジュ。
その日以来、テジュはサンヒョンのことが気になって仕方がない。
テジュは、ヒステリックで抑圧的な姑と、無能でバカな夫との生活に耐えかねていた。
「子犬のように」
どころか、まるで下女のような扱い。
下女のように扱われた上に、バカな夫の自慰の手伝いまでしなければならない。
何度、ベッドの上の夫に殺意を抱いたことか。
その鬱憤のため、家族には「夢遊病」と思い込ませ、
真夜中、通りを裸足で疾走していたのだ。
この地獄から逃げ出したくて。

テジュはサンヒョンを小部屋に招き入れる。
あの晩の靴を大切そうにサンヒョンに見せるテジュ。
そして、サンヒョンの顔をじっとみつめる。
サンヒョンは心が逸る。自分の体の消えかかった水疱が気になり、テジュに言い訳する。
「一種の伝染病のようなもので.... 怖いだろう...?」
「どうしたら感染するの?」
テジュは尋ねる。
「キスでは感染しないことは確実だ。けど、キスをしたことがなくて....」
サンヒョンのその言葉を聞いたテジュは、サンヒョンと唇をそっと重ね合わせる。
そして、しだいに激しく、二人は求め合う。
その間、テジュは語る。
釜山にいた幼い頃、サンヒョンを待っていたのだと。
サンヒョンが好きだった。
けれど、ガンウはサンヒョンが好きで、テジュをサンヒョンに会わせたがらず、
サンヒョンが来た日は、テジュは追いやられたのだと。
「待っていたの。神父様」
テジュはそうサンヒョンに告げる。
そして、更にサンヒョンを求め、裸体となったテジュは、サンヒョンの下着を脱がそうとする。
しかし、女性と交わることを禁じられている神父であるサンヒョン。
良心の呵責との葛藤で、膨張してしまった自分の性器を棒で殴り痛めつける。
そんなサンヒョンをテジュは制止し、無理矢理サンヒョンの股を広げさせ、二人は交わる。
しかしその時、家の奥からテジュを呼ぶ声。
姑と夫だ。
湯たんぽをもってこいと。
テジュは仕方なく、不機嫌そうに部屋を出て行く。

サンヒョンは、毎週水曜日にならないと家にはやってこない。
水曜日だけの麻雀の集まりがあるからだ。
テジュは次の水曜日を待ちきれず、姑にある決意を打ち明ける。
「実は私、こんな風に生きたくないんです。誰かを助けるような生き方をしたい」と。
日曜日のボランティアに参加したいと。
そのボランティアには、サンヒョンが参加している。

そして日曜日。
二人は病室のベッドで、激しく求め合う。
そしてサンヒョンは、テジュが驚くような行動を取る。
テジュの首に、血が出るほど強く噛み付いたのだ。
しかしテジュは、「気持ちいい」と、少しも苦痛を感じないという。
自分は変態なのか?それとも、他の女も同じなのか?テジュはサンヒョンに尋ねる。
サンヒョンは答えず、激しくテジュを求める。

激しい情事の後、テジュはお腹をすかせ、イースター用のゆで卵を食べてしまう。
しかしサンヒョンは食べようとしない。
「食事したの?」
と、テジュは疑問に思う。
するとサンヒョンは、「隠し事はしたくない」と、自分の真実を見せようとする。
横のベッドで寝ていた意識不明のヒョソンの点滴のチューブから、血を吸い出した。
脅えたデジュは、慌てて病室を飛び出していく。

そして、家に戻り、トイレで用を足していたテジュ。
そこへ、窓からサンヒョンが入ってくる。
脅えて逃げようとするテジュに、サンヒョンは必死に弁明する。

俺は殺人はしない。
以前から、あの方は、空腹の人を助けていた。
意識があったとしても、まず自分の血を分け与えてくれたはずだ。
君も、あのカステラの話を聞くべきなのに....
交通事故に遭って非難される人はいないだろう?
病気になって責めるか?
ワクチンの研究所には、善意で行ったんだ。
と、自己弁護するサンヒョン。
「ヴァンパイアであることがそんなに大事?神父だから好きだったの?」
サンヒョンは、なおもテジュに詰め寄る。
「そうじゃないだろう。神父はただの職業だ。
ヴァンパイアであることも、単に食性や生活のリズムの違いじゃないかな。
ヴァンパイアだからイヤなの?
でも、神父のままだったら、君と寝ることはなかったんじゃないかな。神父がそうするとでも?」
サンヒョンは、必死にテジュを説得する。
そして、テジュを抱きかかえ、窓から逃げ出そうとする。
「一緒に行こう。この地獄から連れ出してあげる」
というサンヒョンの言葉にも、テジュは脅えて逃げようとするだけだった。
「僕だと感じたでしょ?ガンウはSexが下手でしょ?」
なおも、テジュを説得するサンヒョン。
しかし、物音を聞きつけた姑が、「テジュ、どうしたの!」と声をかけ、
サンヒョンは、一人窓から逃げて行った。

しかし、テジュのサンヒョンへの恐怖心も、束の間だった。
サンヒョンへの恋しさには勝てず、サンヒョンの全てを受け入れた。
そしてその時、サンヒョンはテジュの足の傷に気づく。
ガンウは、暴力まで振るっていたのだ.......
サンヒョンは、テジュの心を察した。
そして、ガンウを殺したいという、テジュの願いを聞き入れることを決意する。

サンヒョンは、師である老神父に全てを打ち明ける。
自分はヴァンパイヤになってしまったと。
老神父は、自らの手を切り、血をサンヒョンに分け与えた。
盲目である老神父は、不思議な力を手に入れたサンヒョンを羨む。
自分も、一度でいいから海を見てみたい。
サンヒョンは、「昼間外に出たら、僕は死んでしまいます」と、断る。
それでも老神父は、「夜の海でもいいんだ」と、サンヒョンにせがむ。
「その血で奇跡を起こせるだろう?少し分けてくれ」
しかしサンヒョンは、老神父の願いを聞き入れようとはしない。
そして、言い放つ。
「私はもう修士でも、神父でもない」と。
そして、これからは全ての快楽に身を投じると、サンヒョンは宣言する。

夜のとばりが降りると、テジュと、サンヒョン、ガンウ、三人は連れ立って釣りに出かけた。
そしてサンヒョンは、ガンウを湖の中に突き落とし、溺死させた。
しかし、その夜からサンヒョンは、ガンウの亡霊に脅えるようになってしまった。

ガンウの亡霊に脅えるサンヒョンは老神父を訪ねる。
サンヒョンの顔には、EVの水泡が現れていた。
血が欲しい....
老神父は老神父で、サンヒョンに血を分けて欲しいとせがんだ。
しかし残酷にもサンヒョンは、老神父の心臓を貫き、そのほとばしる血を貪った。

一方、ガンウの母は、ガンウを失ったショックで、気が触れてしまった。
意識があるが、何の反応も見せない姑。
そして、テジュは変わってしまった。
まるで飢えた猛獣のように、妻のいるヨンドとも体の関係を持ち、
今まで誕生日すら祝ってくれなかった姑に対し、抵抗できない姑を殴りつけた。
しかし姑を殴りつけたテジュに対し、サンヒョンはテジュを殴り叱る。
「だけど、いつもお腹一杯食べさせてくれた」
と、テジュは素直にサンヒョンの言うことを聞く。
「ありがとうございます」と言え、というサンヒョンの言葉を素直に受け入れ、
頬にキスをすると、感謝の言葉を伝えた。
そして、姑の前で、サンヒョンにキスの嵐を浴びせるテジュ。
しかし、言葉が滑ってしまった。
「サンヒョンさんは私を叩いた。でも、ガンウは一度も手を上げなかったと」
その言葉を聞いたサンヒョンの態度が豹変する。
自分はテジュに騙されて、ガンウを殺す計画に乗ってしまったことを悟る。
サンヒョンは怒りを露にし、テジュを責めるが、テジュは開き直る。
「言い訳しないで。あいつを殺して、私を手に入れたじゃない」と。
しかしサンヒョンは責め続ける。
「人を殺したくないという葛藤との辛さがわかるか?
体が血を欲して、体の中の猛獣が暴れだす。それでも、人を殺さず、何とか凌いでいるのだ」と。
それなのに、テジュの嘘を信じて、ガンウを殺してしまった。
お前を助けるために.....
しかしテジュは自分の罪を認めない。
姑に駆け寄り、「あの男に殺される!」と。
ガンウが可哀想。いいえ、一番可哀想なのはお母さんだわ。
こんな風になるために、あの悪魔のような男を息子のように接したの?」
テジュは自分に罪はない。殺したのはサンヒョンだと主張する。
そして、テジュとサンヒョンはガンウの亡霊に襲われる。
恐怖に脅えたテジュは、全ての罪をサンヒョンの被せようとする。
「親子三人で仲むつまじく暮らしている家に入り込んで、お前には病原菌だ!」
テジュはサンヒョンに言い放つ。
その言葉には、さすがのサンヒョンもブチ切れた。
テジュを持ち上げると、そのまま壁に叩き付けた。
サンヒョンへの恐怖で脅えるテジュ。
「ガンウのところへ行きたい。お願いだから殺して」
テジュは脅えながら懇願する。
サンヒョンは、力いっぱいテジュの首を締め付ける。涙を流しながら.......
サンヒョンのあまりの力の強さに、テジュは窒息するどころか、
血を吐いて死に絶えた。
嗚咽しながらテジュを抱きしめるサンヒョン。
しかし、テジュから流れ出る血に気づいたサンヒョンは、悲しみよりも欲望に駆られた。
貪るようにテジュの血をすするサンヒョン。
しかし、それをみつめるガンウの母の憎むような視線に気づき、我に返る。

↓  結末ネタバレしますわよー ご 注意を! ↓



そして、テジュを蘇生させようと、自らの腕を切り、サンヒョンの血をテジュの体に送り込む。
また、自分はテジュの血を吸い、サンヒョンとテジュの血は、体の中で完全に混ざった。
そして、テジュは蘇生する。

しかしテジュは、血を求め、みやみに人を殺す殺人鬼となってしまった。
そんなテジュを見るに見かねたサンヒョンは、テジュを諭す。
血は俺が手に入れる。
すると、テジュはあざ笑う。
「輸血用の血を盗むの?」と。
サンヒョンはテジュを説得する。
「自殺志願者の自殺を手伝っている。私が手伝うと、どういうわけか、安らかに逝けるようだ」
と、サンヒョンは自らを弁明するかのように、テジュに告げる。
しかし、そんなサンヒョンの気持ちをテジュは、またもや嘲笑う。
「すんなり差し出されておいしいの?」、と。
糸切りバサミを取り出し、「これが一番おいしいの」と、高らかに笑う。
「味にこだわって、何人殺すつもりだ!」
サンヒョンは諭す。
「500人程度かしら」
と、テジュは少しも悪びれない。
「人間的に考えないで、人間でもないくせに」
テジュは言い放つ。
「それじゃあ。俺達は何なんだ?」
真剣なサンヒョンをからかうように、「人を食らう獣」と、テジュは言い放つ。
「キツネが鶏を殺すのは罪?」
テジュは、少しもサンヒョンの苦悩を理解しようとしない。
サンヒョンはテジュを殺そうとする。
しかし、「俺には君しかいない」と、テジュをまっすぐみつめる。

そして、テジュが吐血した。
EVに感染したのだ。
独身男性しか感染しないとEV。
しかし、サンヒョンの血が混じってしまったテジュは、感染してしまったのだ。
「もう私は、女でもないのね...」
テジュは悲しげに呟く。
サンヒョンは慌てて医者を呼ぶが、テジュは医者を殺し、血を貪ってしまう。

そして、水曜日がやってくる。
久しぶりに、スンデと、ヨンド夫妻がやってくる。
しかし、ガンウの母は麻雀をすることなど、到底できない。
スンデらは、ユニークなことを思いついた。
ヨンドの妻イブリンに手伝わせ、目をパチパチさせて「イエス」「ノー」と指示をするようにと。
目をパチパチしたら、「YES」だと。
そうして、ガンウの母を交えて、不思議な麻雀大会が始まる。

しかし、それが悲劇を招くことになる。

指は動かせるガンウの母は、爪でテーブルや椅子をひっかき、文字を書いていた。
「殺した」
それを聞いたテジュらは、動揺する。
「誰を殺したんだ?」
ヨンドらが尋ねると、ガンウの母は、ガンウの遺影をみつめる。
「ガンウを殺したのか?」
するとガンウの母は、目をパチパチさせる。
「YES」ということだ.....
「誰が?」
と、尋ねると、ガンウの母は、テジュとサンヒョンをまっすぐみつめた。
「二人がガンウを殺したのか?」
と、尋ねると、ガンウの母は、何度も、何度も、目をパチパチさせた。
イブリンが悲鳴を上げる。
スンデとヨンドも、背筋が凍る思いだ。
テジュは開き直った。
ゆっくりと部屋のカーテンを閉めると、楽しむように、一人一人殺し始めた。
そんなテジュの姿を見たサンヒョンは、苦悩する。
人間を、こんな風に殺していいわけがない....
全ての責任は、自分にある.....
サンヒョンは、イブリンを殺して血を吸っているように見せかけ、テジュの魔手から、イブリンだけは救った。

そして、テジュとガンウの母を連れて車で逃走する。
医者、スンデ、ヨンド、イブリン、と、4人もの人間が消えたら、
まず、この家から捜査が始まると、テジュを言いくるめ。
しかしサンヒョンは、密かにあることを決意していた。

サンヒョンは途中、キャンプ村に立ち寄る。
以前、サンヒョンを「奇跡の人」だと、崇めた者たちの集まりだ。
そして、女性の悲鳴と、笛の音が聞こえる。
テントの入口を開けると、サンヒョンが女性を強姦していた。
人々に罵られ、殴られるサンヒョン。
しかしサンヒョンは、逃げながら「ニヤリ」と、笑っていた。
(この時、強姦されそうになる女性が、過速スキャンダルミスにんじんのファン・ウスレ。
サンヒョンが包帯姿で復活した時に取り囲む信者の中で、包帯を巻いたキリスト像の杖をつく女性)


空が明るくなり始める。
テジュは焦って、「日が昇るわよ!どこに行くの!」と、ヒステリックに叫ぶ。
辿りついたのは、周囲に何もない更地。
隠れる場所などない。
テジュは、サンヒョンの本意を察した。
死んでたまるか!
テジュは、車のトランクに積んだ荷物を放り出し、トランクの中に隠れた。
しかしサンヒョンは、トランクの扉を壊してしまう。
それでもテジュは諦めない。
扉を拾い、トランクに戻り、扉を被った。
しかし今度は、サンヒョンに扉を投げ捨てられてしまう。
それでもテジュは負けない。
今度は、車の下へと隠れた。
しかしサンヒョンは、車を移動させてしまう。
さすがに諦めたテジュ。
放り出した荷物の中から、あるものを取り出す。
いつかテジュが裸足で通りを走っている時に、サンヒョンが履かせてくれた靴だった。
逃げると言われ、テジュは持ち出す荷物として、この靴を選んだのだ。
テジュの気持ちは、あの頃から変わっていなかったのだ。
テジュは自分の履いていた靴を脱ぐと、その靴を履いた。ダボダボの靴。
「今まで楽しかったわ。神父様」
テジュは澄み切った瞳で、サンヒョンをみつめる。
そして、日が昇り始める。
二人の体が焦げていく....
その様子を、車の中から嘲笑うようにみつめるガンウの母。
そして、テジュとサンヒョンは、跡形もなく消えた.....


END

あの「強姦」の一件がよくわかりませんね。
「神父はただの人間なんだ」と、知らしめたかったのでしょうか。
そしてそれが、パク・チャヌク監督の考える、神父のアイデンティティなんでしょうか。
テジュが最後に「神父様」と言ったように、
しょせんサンヒョンは、最後の最後まで人間の尊厳というものを尊重し、
「自分は神父ではない」と言いつつも、神父であったということでしょうか。
しかし、ラストはせつないですね........





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