冬の小鳥 A Brand New Life,Une Vie Toute Neuve |
原題:旅行者 여행자 (ヨヘンジャ)<2009> |
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監督 | ウニ・ルコント | <2009>冬の小鳥 |
出演 |
キム・セロン |
<2009>冬の小鳥、<2010>アジョシ(おじさん)、<2011>俺はパパだ |
コ・アソン |
<2006>グ
エムル~漢江の怪物~、<2007>楽しき人生、
<2007>ラヂオ・デイズ、<2009>冬の小鳥、 |
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【レビュー&ネタバレ】 |
2009年10月公開。動員数は、約1万8千人。 この映画は名作と言ってもいいでしょう。ですが、名作だから万人にウケる、というわけでもありません。 興味が湧かない方にとっては、退屈な映画でしょう。 娯楽としての映画の要素は全くありません。 親に捨てられた一人の少女が、親に捨てられたことを受け入れられず、 反抗的になったり、暴力的になったりしながら少しずつ現実を受け入れ、 新たな旅立ちを決意するまでを丁寧に描いた文学作品です。 この映画は、監督自身の自伝的映画です。 下手すれば、自己憐憫にしかなりません。 ですが、人を引き付ける魅力があります。それは、演じた子役達の魅力とも言えます。 演技とは思えない自然さです。 静かに、淡々と流れていく時間の中で、子供たちの胸の内がせつせつと伝わってきます。 主人公のジニが医師にどうして施設に来たのか尋ねられるシーンでは、胸がしめつけられる思いです。 子供の純粋さがあまりにも健気で居た堪れません。 この映画は、1970年半ばの韓国が舞台となっております。 御存知の方もいらっしゃると思いますが、韓国は「孤児輸出ナンバー1」という汚名をつけられた国です。 生活苦のために、多くの子供が海外へ養子縁組されて行きました。 ただ、主人公のジニは生活苦のためというよりも、父親が新しい家族との幸せのために捨てたのです。 幼い子供にとって、どれだけ深い傷を負ったか想像できますか。 捨てられた子供は、原題の「旅行者」というように、一生旅行をしている気持ちでしょう。 面白い映画ではありませんが、良い映画です。 観る映画というよりも、感じる映画、考えさせられる映画です。 ちなみにソル・ギョングは一瞬顔が映るだけで、ほとんど顔出しなしです。 何のために出演したのか謎です(笑) ↓ 結末まで簡単にストーリー紹介(結末ネタバレ) ↓ ジニの父は旅行に行くからと、ジニを連れて買い物し、食事をし、一日中娘とのデートを楽しみます。 しかしジニが連れて行かれたのは孤児院。 ジニは父に捨てられた事実を受け入れられず、食事を床にぶちまけたり、 塀に登って脱出を試みようとしたりと、反抗的な態度を見せる。 医師はジニになぜここへ来ることになったか理由を尋ねる。 ジニは「安全ピンのせいだ」と答える。 ジニの父は再婚し、新しい母と母の実母、そして生まれた赤ちゃんが家族として加わる。 ジニは赤ちゃんを見て抱っこしたくなり抱くと赤ちゃんは突然泣き出す。 継母が赤ちゃんを見ると足に安全ピンが刺さっていた。 「この子は赤ん坊を殺す!」 と、継母の母は言い放ち、ジニはそのせいで孤児院に入れられたのだと泣き出す。 そんなジニを医師は優しくなだめる。 「君のお父さんは、もっといい家で暮らして欲しかったんだよ」と。 孤児院の生活にも少しずつ慣れた頃、ジニは傷ついた小鳥をみつける。 甲斐甲斐しく介護するも、小鳥は亡くなってしまう。 小鳥を埋め、墓を作り、祈りを捧げるジニ。 ある日、海外から養子を求めて一組の夫婦がやってきた。 夫婦はジニとスッキを気に入り、二人にいろいろ尋ねるが、ジニは全く答えない。 ジニは父が迎えに来ると信じており、どこにも行かないと頑なに拒んだ。 スッキはジニに「海外へ行って運を掴むんだ」「私となら一緒に行く?」などと、ジニを説得した。 ジニは「一緒になら」と、ようやく受け入れ、ジニから英語を習い始めた。 しかしジニと共に養子に行くことは夫婦に受け入れられず、スッキだけが養子へと貰われて行った。 ようやく養子に行くことを受け入れた末に取り残されたジニはやりきれない。 そして、ジニは父が新しい家族を連れて引っ越してしまったことを知る。 もはや父は迎えに来ない。 真実を受け入れざる得なくなったジニは、凶暴で反抗的になる。 貰った人形を次々とバラバラに引きちぎるジニ。 怒りのやり場がないのだ。 怒りが冷めると、今度は食事を取らなくなったジニ。 そうして、かつて小鳥を埋めた墓を掘り起こすジニ。そして、埋められた遺体を放り投げる。 ジニから、傷ついた小鳥を労わる優しさが消えてしまった。 小鳥よりも哀れな自分。 ジニは深く深く穴を掘り、今度は土の中に自分を埋めようとする。 しかし息苦しくなり、死ぬことを断念する。 諦めを知ったジニは、養子に行くことを決意する。 孤児院に来て笑ったことなどないジニが、孤児院を旅立つ日に笑顔を見せた。 捨てられた傷を自ら回復し、大きく前に進んだジニ。 一人海外で暮らす養父母の元へと飛行機にやってきたジニ。 しっかりと前を向いて。 END |
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