白夜行 - 白い闇の中を歩く   White Night  
 原題:白夜行 - 白い闇の中を歩く 백야행 - 하얀 어둠 속을 걷다 (ペギャヘン - ハヤン オドゥム ソグル コッタ)<2009>

 オススメ

 ストーリー

 韓流王道

 泣き

 笑い

名作

 映像

×

×



出所したばかりの一人の男が、残忍に殺害される。この事件が、14年前に発生し た殺人事件と関連していることを知った捜査チームは、担当刑事であったドンス(ハン・ソッキュ)を訪ねて行き、彼は本能的に、当時被害者の息子だったヨハ ン(コ・ス)が関わっていることを直感する。

一方、財閥総師スンジョ(パク・ソンウン)の秘書室長シヨン(イ・ミンジョン)は、スンジョのために彼のフィアンセであるミホ(ソン・イェジン)の調査を 行う。しかし、非現実的であるほど完璧だったミホに、釈然としない過去の痕跡が発見され、彼女のそばに影のようにつきまとう存在を発見するようになる。

互いに違う相手を追って一つの場所で出会ったシヨンとドンス。彼らは、ヨハンとミホの過去に関する衝撃的な事実を知ってしまう。14年前に発生した事件の 殺人容疑者がミホの母、被殺者がヨハンの父であり、新しい生活を送っているミホとは異なり、ヨハンは、相変らず闇の中に閉じ込められて暮らしていること。 あたかも光と影のように。

14年前... そして現在まで続くミステリアスな殺人事件。
果たして、その真実とは。
【予告編】
監督/脚本 パク・シヌ <2009>白 夜行-白い闇の中を歩く
脚本 パク・ヨンソン 【映画】
<2002>同い年の家庭教師、<2004>彼女を信じないでください
<2007>花美男(イケメン)連続ボム事件 、<2009>白 夜行-白い闇の中を歩く
【ドラマ】
<2004>波乱万丈~Missキムの10億作り~、<2006>恋愛時代

出演

ハン・ソッ キュ(韓石圭)

<1995> ドクター・ポン、<1996>銀杏のベッド、<1997>ナンバー3、< 1997>グリーン・フィッシュ、
<1997>接続、<1998>八 月のクリスマス、 <1999>シュリ、 <1999>カル、<2002>二 重スパイ
<2004>スカーレット レター、<2005>ユゴ 大統領有故、 <2005>ミスター主婦クイズ王
<2006>恋の罠、<2006>殴打誘発者たち、 <2006>愛すると きに話すこと
<2008>目には目、歯 には歯、<2009>白 夜行-白い闇の中を歩く

ソン・イェジン(孫藝珍)

<2002> 醉画仙(チファソン)、<2002>永遠の片想い、 <2002>ラブストーリー
<2003>君に捧げる初恋、 <2004>私の頭の中の消しゴム、 <2005>四月の雪
<2006>ナンパの定石、<2008>ファム・ファタール 、<2008>妻が結婚した
<2009>白 夜行-白い闇の中を歩く、<2011>不気味な恋愛

コ・ス

<2004>サ ム~Some~、<2009>白 夜行-白い闇の中を歩く、<2010>超能力者、<2011>高地戦


 
【ハン・ドン ス】
仁川署刑事
ハン・ソッキュ
【ユ・ミホ】
美術教師/服飾デザイナー
ソン・イェジン
【キム・ヨハ ン】
カフェ店員
コ・ス
 
【チャ・スン ジョ】
財閥総帥
パク・ソンウン
【イ・シヨン】
スンジョの秘書
イ・ミンジョン
【イ・ジア】
幼い頃のミホ
チュ・ダヨン
【パク・テホ】
ドンスの後輩刑事
チョン・ジン
【ヤクトン】
ヨハンの同僚
イム・ジギュ
【チョ・ミヌ】
江南署刑事
バン・ジュンヒョン
【チャ・ヨンウ ン】
スンジョの娘
ホン・ジヒ
【ナ・ヒョン】
ミホの大学同級生
ハン・イェウォン

パク・ウンソンは、Mr.ソクラテスのスキンヘッドの印象が強す ぎ、髪のある役を何度も見ていても違和感。
でも、財閥総帥似合ってますねぇ。イ・ギウみたいでカッコいいじゃない。
端役から見ていて、どんどん皆さん有名になっていきますね。

イ・ジア(幼いミホ)は、クロッシングのミソン。
大人っぽくなりましたねぇ。
でも、以前の可愛らしさが消えてしまい、イケてる or イケてない の落差が激しくなってしまったような。
すごくヘンな顔の時がございます。
それにしても、やはり韓国の子役は素晴らしい。
あの名シーン。
「あんたは今日はここにはいなかったの。私が殺ったの」
日本のドラマでは、雪穂の子役(福田なんだっけ?)の「私が殺ったの」の演技に寒気がして、かなり興ざめしました。
やはり、この映画の方が正統でしょう?
チュ・ダヨンの涙の演技は、素晴らしい。

チョン・ジンは、ソン・イェジンとはスポットライトつながりでしょうか。
この方も、端役ばかりですが、良い味出すんですよ。
仁寺洞スキャンダルの私設 競売士の役も笑わせてくれました。
いいバイ・プレイヤーになりそうです。

イム・ジギュは、ほとんど登場しませんが、重要な役どころ。
過速スキャンダルの、ジェイ ンの息子ソッキョンの父です。
アップで見ると、かなりキレイなお顔。

Sugarのハン・イェウォンがチョイ役で 出演しております。
オン・エアー、華麗なる遺産で、女優として活躍しちゃってますね。
Sugarの中では、一番行く末が心配だったのに(笑)

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【レビュー&ネタバレ】
2009年11月韓国公開。観客動員数は、約96万人。
原作は、言うまでもなく、東野圭吾の白夜行。
制作は、商業映画を得意とする公共の敵などのカ ン・ウソク監督。
それでも、100万人すら達成できず。

多くの映画関係者の間で、映画化したいが映画化が容易でない小説とされてきた東野圭吾の「白夜行」
760ページという長編に加え、14年の歳月を行き来する複雑な構成、
「殺人」で結ばれている男女主人公の衝撃的な関係と結末。
これを2時間ちょっとの映画にまとめるのは、確かに容易くありませんね。
それを、新人監督がチャレンジしたという。

一言で言えば、
単なる 「白夜行」のダイジェスト版。

小説から、重要シーンだけを抜き出し、まとめたもの。
ダイジェスト版から、何か伝わるものなどありますか?
「白夜行」という小説が、どんな小説なのか垣間見れるだけです。
14年という歳月を行き来する複雑な構成は、”解説”のような退屈さはなく、
様々なアイディアを取り入れているところは見事ですが、
観客はおいてけぼり状態かもしれません。
そういったことも含め、今回は「人物相関図」まで作っちゃいましたわよ(笑)
映画を観る前に、これは頭に叩き込んでくださいませ(苦笑)
「矢印がヘン!」とか、笑わんといてください!
mocaはイラレは使えまへんので(_ _;
もっと深く関係を入れ込みたかったのですが、ネタバレしちゃうもので...
これでも、十分やろ。( ̄^ ̄)えへん

ダイジェスト版とは言いましたは、それでも、パク・シヌ監督独自のカラーを出しております。
moca的には、日本のドラマ版よりも、こちらのカラーの方が好きですね。
亮司のサンタクロース姿のラストはちょっと...
それに山田孝之は、「いい人」のイメージが強すぎて....
ヨハンのように影があり、愛するが故に相手の望みを全て叶えてやってしまう....
愛ゆえに....
いい人だから、優しいから... じゃなく。
そして、せつなく美しいラスト....
徹底的に”美”にこだわったパク・シヌ監督の世界観がいいのです。


아저씨, 태양이 높이 뜨면 그림자는 사라지는 법이야...

アジョ シ、太陽が高く昇ったら、影は消える んだ...

なんてせつないセリフ。
コ・スだからこそ、せつなく、哀愁漂う世界を感じることができました。
あのラストのコ・スの表情は最高でした。

結果的には失敗だったかもしれませんが、センスのある監督だと思います。
ただ、”心理描写”がイマイチで、”生きてるドラマ”を作る監督ではありませんね。
視覚的に訴えるタイプの監督です。

チャイコフスキーの「白鳥の湖」が流れると共に、
一方では事件が、もう一方では、情事が...
この交差編集のアイディアは見事です。
強烈で斬新で、衝撃的です。

音楽を担当したのは、 パク・チャヌク監督のオールドボーイ渇き Tirstのチョ・ヨンウク音楽監督。
主人公ミホとヨハン。
「光と影」という対照的な二人の関係のコントラストが視覚的に表現され、
クラシカルな映像と音楽でせつなさを醸し出します。
映像と音楽が織り成す耽美な世界観に酔いしれることでしょう。

また、コ・ス演じるヨハンの
”影”の演技が、更にこの映画のカラーを色濃くしています。
せつなくも、耽美な”影の世界”を作り上げたのは、コ・スの力が大きいことでしょう。
この映画を観れば、誰もがコ・スに魅了されるでしょう。
コ・スは”美形”というイメージしかなく、こんなにも影のある役どころが似合うとは思いませんでした。
美しいからこそ、”影”が映えるのかもしれません。
いやぁ、mocaはコ・スに心をブチ抜かれましたわよぉー
しばらく、”コ・ス”フィーバーになりそうです(笑)
長髪で、憂いを秘めたコ・スに女性軍はヤラれてくださいませ。
コ・ス。軍隊に行き、男 になって帰ってきました。
という感じ。
今まで感じなかったコ・スの「男の魅力」が溢れております。

「.....지켜졸게.....끝까지(.....チキョジュッゲ.....クッカジ .....守ってやる.....最後まで)」
ヨハンがミホに電話し、留守電に残すメッセージ。
ハートを撃ち抜かれました
この言葉、mocaの言われたい言葉ナンバーワン!(どーでもいいって?)
「愛してる」よりも、言われたい。
mocaの過去の彼たちは、最初にかっこいい硬派な言葉を言い放ち、
いつのまにか、mocaの方が守ってあげてることに.....
男なら、最後まで貫け!
クッカジ!クッカジ!クッカジー!!←放っといて

ベッドシーンには、ゾクゾクしちゃいました!
霜花店-運命、その愛でさえ、 ガン見しつつも、けっこう冷めた目で見てたmocaなのに。
コ・ス、やるなぁ。

そして、今回は、ソン・イェジン vs コ・スのベッドシーン対決。
男性陣はソン・イェジンに萌え、女性陣はコ・スに萌えるのでしょうか?(謎)


mocaとしては、前作 妻が結婚した で、頼まれてもいないベッドシーンを自ら強く要望。
自分の背中と細いウェストだけで、男性陣がウハウハして観客を呼べる!という考えが目に見えるようで、
ほんと、イヤなのよねぇ。


今回は、キャスティングが見事でしたね。
ハン・ソッキュ、ソン・イェジン、コ・ス。
誰もがハマリ役。

コ・スは除隊後、初の出演作品。
除隊後、数多くのオファーがあったが、すべて蹴り、
1年待ち、ようやく「これだ!」という作品に出会い、迷わず出演を決めたそう。

逆に、ハン・ソッキュと、ソン・イェジンのキャスティングは難航したそうです。
ハン・ソッキュは、「刑事役は負担になる」「14年の歳月を演じることへのプレッシャー」
そのような理由から、固辞し続けたそうです。
そういや、刑事役多いよなぁ。
ですが、このドンスは今までの配役とはまた違ったキャラクターで、
ハン・ソッキュは見事!
まさに、ハマリ役としか言いようがない。
ただ、14年の歳月については...
役者としては、「いいとこ無し」ですね........

最もドラマティックなキャスティングは、ソン・イェジン。
オファーを受けた当時、映画やドラマの撮影でのシナリオを見る余裕もない状況で、これまた固辞し続けたが、
原作の小説の本質をそのまま脚色したシナリオの密度とキャラクターの深い魅力を感じ、出演を決定。
しかし、出演を決めた直後の監督らとの顔合わせで、驚愕する事実が。
監督が、大邱(テグ)で暮らしていた高校時代、
読書室で偶然出会い知り合いになった近所の오빠(オッパ)!!
まるで、白夜行の雪穂と亮司のようよね。
原作は図書館だったけど。
まぁ、なんか、公私混同という気もしないでもないけどねぇ.....
自らを主人公に置き換えたような...
しかし、現実はドラマのようには、いかんぜよ( ̄ー ̄)☆ニヤリ

ソン・イェジンは、ファム・ファタールでのファム・ ファタールには、成り損ねましたが、
清純可憐に見えて、実は自己中心的な女という役どころがピタリ。
これは、素なんじゃあ?と、思えさえも。
あの微笑みの裏側で、何を考えているかわかったもんじゃない。←相当キライらしい

ミホは、【太陽の女】のドヨンを彷彿させるものがあるのよね。
ただ、ドヨンは欲望のために自ら罪を犯し、その罪を悔いたり、苦しんだり....
一方ミホは、自らの望みを叶えるために、すべてをヨハンに押し付け手を汚させ続けた。
自分で努力して手に入れるべきものでさえ、ヨハンを利用する。
しかも、罪の意識というものが、感じられない。
自分が気に入らないものに対しては、何をしても許される。
そんな自分勝手な論理があるのでしょう。
自分が傷つけられた世の中に対する復讐なのかもしれません。
すべてが許せない。

ヨハンはミホを愛していたけれど、ミホのヨハンへの感情は「愛」ではなく、「感謝」だけ。
自分の影のように「存在すること」が当たり前で、傷つけても構わない。
愛する男に、他の女をレイプさせる女なんていません。
それも、自分の心を満たすためだけに。
「好きな人ができたら、洋服を作ってあげたい」
幼い頃ジアが言っていた純粋な言葉をミホは忘れてしまったのでしょうか。
叔母に取り入るための演技ではないですよね。
ミホはヨハンへ服を作ってあげたりはしたことはないでしょう。
劇中の誕生日も、プレゼントは腕時計でしたし。
ジアのそんな言葉を知らないヨハンは、腕時計を大切にしているというのに。
「私の人生に太陽はなかった。でも、一筋の光があった。それだけで十分」
ミホは言うけれど、「一筋の光」ではなく、ヨハンを「自分の影」にしてしまったことにさえ、
ミホは気づいていないのですね。

深い傷を負って育ってきた子供は、
「幸せとは何か」
「愛とは何か」
知らないのでしょう。
それを知らないのは、人間として最大の不幸ではないでしょうか。
ドヨンはそれを知り、ようやく満たされたけれど、その時には....
ミホは、ヨハンの献身的な愛にさえ満たされず、どんどん上へ上へと登りつめようとする。
ミホは、罵られても仕方がないような女ですが、
結局は、一生不幸なままでしょう....
子供の頃の心の傷とは、一生を台無しにしてしまうのかもしれません。
あまりにも不幸です。
幸せとは何かも知らずに、ただひたすら見えないゴールを目指し、
上へ上へと登ることしかできないのかもしれません。
そんな人生は、「苦しみ」でしかありません。


ちなみに、「요한」は、韓国では”ヨハネ”の意。なので「洗礼名ですか?」というセリフがあるのでしょう。
なぜ「ヨハネ」の意味を持たせたのか。
「人を殺した犯罪者なのに、聖なる洗礼名」という皮肉。
「洗礼名ですか?」と、ミヌ刑事が母に聞いた時、母は言葉に詰まる。

そして、ジアと、ミホ。
これ、漢字で書くと「地兒」「迷湖」なんですね。
「湖」はキレイだけど....
「地」とか、「迷」って、日本じゃ考えられないですよねぇ...
日本人と韓国人は、漢字の意味の捉え方が違うんでしょうか?(謎)
ただ、「迷湖」には深い意味があるんです。
「迷湖=白鳥」
ということでは?
この映画で、「白鳥の湖」が多用されているように、「白鳥=ミホ」なのです。
表面上では優雅に見えるが、水面下では、せわしなく足をバタバタさせているのです。




では、「mocaの言いたい放題」は、この辺で(*^ー^)ノ~☆


↓  結末までネタバレします。ご注意を! ↓






チャイコフスキーの「白鳥の湖」が流れる中、
ミホは、婚約者のスンジョに抱かれる。
しかしその心の中は空虚だ。
一方、その時、ヨハンはジェドゥを殺めていた。
自殺と見せかけ、絞殺したのだ。

(一応この時は、ミホは苦しんでいる様子)

江南署のチョ・ミヌ刑事は、「自殺」という捜査方針に
一人疑問を持ち、
単独で捜査を開始する。




14年前─

廃船の中で一人の男が殺害された。
男の名はキム・シフ。
質屋(金貸し)を営む金持ちだ。
死因は、心臓の破裂。
凶器は細長い刃物のようなものだが、ナイフではない。
凶器は断定できず。
ドアは施錠されており、密室状態。
そして、所持品にタバコがあるのにライターがない。
また、遺体が絞めていたベルトの留め金が外れていた。
「2つに1つだ。食いすぎか、女と楽しんでいたか」
ドンスは言い放つ。

「형(ヒョン:兄さん)は、殺人者を獣扱いするよな」
後輩のテホが言い放つと、ドンスはテホの頬を叩く。
「殺人者は獣にも劣る。わかったか」と。

ドンスは現場で、1本のカセットテープを拾う。
署でテホが捜査報告を行う。
最も有力な容疑者は、被害者と愛人関係にあるヤン・ミスク。
被害者から何度も借金をしているが、
返済したことが一度もない。
そして事件当日の夜、
被害者がケーキを買いミスクの町内で目撃されている。

ドンスは捜査報告中に、現場で拾ったテープを聴いていたが、
班長にたしなめられ、途中で中断する。

そしてテホはドンスに報告する。
「やはりライターがないらしい。
虎の絵のジッポで、被害者は相当大切にしていたらしい」と。
それを聞いたドンスは、不審に思う。



ドンスとテホは、ヤン・ミスクの家を訪れる。
しかしアパートにいたのはミスクの娘イ・ジアだけ。
ドンスは、ミスクが帰宅するまで中で待たせてくれと頼む。
ジアは渋々中に入れるが、何か後ろめたい様子だ。




ミスクが帰宅する。
ミスクは事件当日、被害者は来ていないと嘘をつくが、
「ケーキをくれた아저씨(アジョシ)じゃないの」
と、ジアが言い放つ。
ミスクは仕方なく認める。
事件当日、少しだけ立ち寄りましたと。
テホらは、ミスクに任意同行を求める。
ミスクはドンスらをアパートの外で待たせ、
ジアに詰め寄る。
「あんた、おかしなこと言ったりしてないわよね!」と。
言いたいことを心に溜めている様子のジア。
そんなジアをミスクは叱責する。
「いつまで、こんな暮らしを?お金なんかのために!」
思わずジアは大声をあげる。
「お金?道端に座りたいの?」
ミスクはジアの頬を叩く。
ジアは、悔し涙を流す。




14年後─

ヨハンは、駅のコインロッカーにやってくる。
携帯に届いたメールを見ながら暗証番号を入力し、
中身を確認する。
「誕生日おめでとう。いつも感謝している」
というカードを読み、微笑むヨハン。
そして、箱を開けると腕時計が入っていた。





財閥総帥のスンジョは、秘書室長のシヨンから報告を受ける。
婚約者のミホに関する報告だ。
「養女でした。ご存知でしたか?」
婚約者であるスンジョに隠していたミホを、
スンジョは快く思えなかった。
スンジョはその足で、ミホの元へと向かう。







ミホはスンジョから援助を受け、
夢だったデザイナーへの道と、
自分の店を持つという夢を叶え、
店のオープン準備に追われていた。
「もっと、こじんまりとした店でよかったんじゃ」
と、遠慮するミホにスンジョは告げる。
「それくらいの甲斐性はある。
こういう時は『ありがとう』だろ?」と、スンジョは微笑む。
(ステキよねぇ、器の大きな男ってぇ)
ミホは「ありがとう」と、微笑みながらスンジョを抱きしめる。
しかし、スンジョの表情は冷めていた。


スンジョはシヨンにミホの調査を続けるよう依頼。
シヨンはミホにピッタリと尾行する。
いつもミホが1時間ほど時間をつぶす行きつけのカフェ。
その向かいの店で、シヨンはミホを見張る。
しかしその店は、ヨハンが働く店だった。
ヨハンはいつも、
隣りのカフェでコーヒーを飲むミホを見つめていた。





そして、14年前─

(突然、14年前になったり、14年後になったりなのよね)

ドンスは、被害者の妻ソ・ヘヨンを訪ねた。
ヤン・ミスクの写真を見せるが、「初めて見る顔だ」と、
ヘヨンは答える。
ドンスはヘヨンに尋ねる。
「犯行時刻、家でどのテレビ番組を観ていましたか?」
(これは原作では重要ですが、映画には不要では?)
「動物の王国です。
猿は子が死んだ後、当分の間抱き続けている。
そういう内容でした」
ヘヨンは答える。
部屋から流れる「白鳥の湖」の音楽が気になり、
ドンスは被害者の息子ヨハンの部屋にやってくる。
切り絵に没頭するヨハンに声をかけるドンス。
(切り絵をジアに渡すシーンもないのよね)

ドンスはヨハンにも、テレビ番組のことを尋ねる。
ヘヨンは、ヨハンと、そして使用人のジェドゥと一緒に観ていたと答えていたからだ。
ヘヨンと同じことを答えるヨハン。
「ヨハン、おじさんが絶対に犯人を捕まえるからな」
ドンスはヨハンの肩を叩き出て行く。
使用人のジェドゥが呼びに来たのだ。
ドンスが去ると、ジェドゥはヨハンに問う。
「練習どおりにやったか?」
ヨハンは黙って頷く。


そして、14年後─

チョ・ミヌ刑事は、ある事実を掴む。
殺されたジェドゥが、
14年前の廃船内での殺人事件の記録に
関係者として載っていた。
担当刑事は、仁川警察署ハン・ドンス。
ミヌはメモを取る。
そして、記録にあった「同居人:ソ・ヘヨン」を訪ねる。



「カン・ジェドゥが死んだと?殺人?」
ヘヨンは淡々とした口調で尋ねる。
「そこまでは断定できてません」
ミヌ刑事は答える。
ヘヨンは鼻で笑う。
「確かに、あの人を恨む人間は多い」と。
ミヌは、14年前の事件について尋ねる。
「事件直後、カン氏と同居を始めましたね」
「あの時は、私も若かった」
ヘヨンは即答する。
「事件後、愛人関係にあったヤン・ミスクさんとはお会いに?」
ミヌは問う。
「会う間もなく、亡くなったじゃない」
ヘヨンは言い放つ。
「息子さんのヨハンは、父親に懐いていましたか?」
ミヌの不意打ちの質問に、ヘヨンは動揺する。
「もちろん」
ヘヨンは、動揺しながら答える。
「あの人は、子供が好きでしたから....」
と、意味ありげに答える。





大人になった今も、ヨハンは切り絵に没頭していた。
一種の精神安定剤のような存在になっていた。
その時、危険を知らせるランプが光る。
慌てて店を出て行くヨハン。
カフェと厨房を挟んで1つになっているサロン。
ヨハンがサロンに足を踏み入れると、
罵声が飛び交っていた。
「薬をやった?証拠は?」
1つの部屋の中で、ホステスとヤクトンが言い争っていた。
ヤクトンはヨハンが部屋に踏み込んできたのを見た途端、
白い粉の入った袋をポケットから取り出し、
口の中に押し込めようとした。
しかし、その間もなく、ヨハンはヤクトンを殴りつけた。





「いつまでこんな生き方を?死にたいのか?」
ヨハンはヤクトンに言い放つ。
最初は弁解していたヤクトンだが、
最後には、騒ぎを収めに部屋に戻る。
ヨハンの目は、有無を言わさなかった。

ヨハンは、空を見上げる。
14年前の事件を思い起こすヨハン。











ジアは、「鍵がかかっていて部屋に入れない」と、
管理人に鍵を開けてくれるよう頼みに行く。



しかし、部屋を開けると、
中でジアの母ミスクが倒れていた。
部屋の中は、ガスで充満していた。
「엄마(オンマ)、死んだの?」
ジアはつぶやく。








またもやドンスらが捜査に当たる。
ミスクは風邪薬を飲んだ直後だった。
「自殺しようとする人間が風邪薬を飲むか?」
ドンスは疑問に思う。
そこへ、テホがあるものを発見する。
ドンスも目を見張る。






虎の絵のジッポライター。
廃船での殺人の被害者キム・シフが大事にしていたライター。
やはりミスクが犯人なのか?





ドンスはテホらと食事に行きチゲを囲む。
「あの子(ジア)の目を見たか?」
ドンスはテホに尋ねる。
「一度も母親の味方をしなかった」
ドンスは納得がいかない。
「もう終わったんだ!」
班長はたしなめる。
「형(ヒョン)も昇進試験の勉強をしましょうよ」
テホはドンスを誘う。
「まだ署長になる夢捨ててないのか?」
ドンスは呆れる。
ふと、煮え立ったチゲが吹きこぼれるのを見て、
ドンスはハっとする。
すぐさま署に戻り、ミスクの捜査資料を引っ張り出す。
ミスクの部屋の鍋は、吹きこぼれていなかった。
「事故死なら、チゲが吹きこぼれているはず。
殺された可能性もある。
あの廃船は、子供しか抜け出せない」
ドンスは必死に班長を説得するが、班長は聞く耳を持たない。
ドンスは逆上する。
ドンスは息子のミンジェを使って実験する。
密室だった部屋から出れるのは、唯一排気口。
あまりにも狭い排気口。
子供が通るのが精一杯だ。
ミンジェは、「自転車を買ってやる」の言葉に釣られ、
暗い排気口を少しずつ降りていく。
「どうだ?大人も通れそうか?」
ドンスは尋ねる。
「絶対に無理だよ。僕だってギリギリだ」
ミンジェは答える。
その途端、ミンジェの叫び声が。
ミンジェが足を踏み外し、落ちたのだ。
そして、ミンジェは亡くなった。


そして、14年後─

シヨンはミホの報告をスンジョにする。
特に問題はないと。
ただ、大学の同級生ナ・ヒョンから聞いたストーカーの話が、
スンジョは気になった。
引き続き調査するようシヨンに命じる。



チョ・ミヌ刑事は、ヨハンの勤務先にやってくる。
「カン・ジェドゥさんを御存知でしょ?」
ミヌは言い放つ。
ミヌはジェドゥのアリバイを確認する。
「その時間なら、普通眠っているでしょう」
ヨハンは淡々と答える。
ミヌは、14年前の事件について尋ねる。
カン・ジェドゥは容疑者線上の人物なので、
と言い訳して。
「思い出したくない。お引取り下さい」
ヨハンは告げる。
ヨハンの首筋の傷に気づいたミヌ。
「痛そうですね、顔を洗う度にヒリヒリしそうだ」
ミヌは意味ありげに言い放つ。
去って行くミヌを、ヨハンは氷のような目でみつめていた。








ミヌは14年前の事件の担当刑事であるドンスを尋ねる。
しかし、刑事としての使命感溢れるミヌに対し、
ドンスは、刑事としての情熱を失っていた。
いくらミヌが協力を頼んでも、いい顔しない。
「息子さんが亡くなってから2年ほどは、
あの事件を徹底的に調べ上げていたと。
その後、停職に離婚...」
ミヌは言い過ぎたと感じ、言葉を慎む。
「カン・ジェドゥは他殺です。直感を感じるんです。
14年前の事件の容疑者が、時効寸前に殺害された。
あれから、キム・ヨハンを監視しています」
ミヌは告げる。
糖尿を患っているドンスは、
わざわざミヌの前でインシュリンの注射を打ってみせる。
「糖尿は不快な病気だ。
食事の度に注射しながら、生きながらえる」
ドンスは少しも事件のことなど、関心がない。
そんなドンスに、ミヌはイライラし声を荒げる。
諦めたミヌは名刺を渡し、告げる。
「気が変わったら連絡ください。
キム・ヨハンの勤務先です」と。


そこには、ミヌの連絡先も書き込まれていた。



スンジョと、その娘ヨンウンと外食したミホは、
ヨンウンを自宅まで送り届けることに。
ミホにつれないヨンウン。
「そんなに私が気に入らない?」
ミホは微笑みながら尋ねる。
「学校でなんて呼ばれてるか知ってるの?保護者キラーよ。
去年はジスの父親との噂で持ちきりだった。
意味もなく親切な時点で気づくべきだった」
ヨンウンの容赦のない言葉にも、ミホは微笑む。
「いつもそうやって微笑んで、疲れない?」
ヨンウンは言い放つ。
その言葉にミホの心は怒りで燃え滾る。
表面上は、何事もないようなフリをしながら。

ミヌはガンジェの部屋を捜査する。
そこで、ある雑誌をみつける。
その雑誌に赤いペンで丸印が。
その丸印の中の女性、それはミホだった。
ミヌは、「何かある」と、直感する。






やはり事件のことが気になったドンスは、
ミヌの所属する江南署へ電話をかける。
しかしミヌは1週間ほど前から失踪してしまったと告げられる。
何かを感じるドンス。
ドンスは、ヨハンの勤める店の隣りのカフェから、
ヨハンを監視した。
ドンスが座った席の隣りの女性が、ミホだとも知らずに。



ドンスは、ヨハンの母ヘヨンを訪ねる。
ヘヨンは、夫が亡くなった廃船を改装し、
そこに住んでいた。
「死んだ夫でも守ってるのか?こんな船、気が知れない」
ドンスは言い放つ。
ヘヨンは、ドンスに出て行くよう促す。
そして、ドンスがヨハンを追っていることを知り、
不安がよぎる。






真っ赤に咲き乱れる花々。
ヨハンはその下に穴を掘り、黒い布で包んだ何かを埋める。
ふと気づくと、サングラスが落ちていた。
チョ・ミヌ刑事がかけていたものだ。
サングラスを拾い上げるヨハン。
その瞬間、土の中から手が伸び、ヨハンの手を掴む。
驚いて悲鳴を上げるヨハン。
そして、目が覚める。
夢だったのだ。

ヨハンは、眠れなくなる。



起き出したヨハンは、隣りの部屋で、
星の形の切り絵に没頭し、心を落ち着ける。
その時、向かいの部屋の電気が灯る。
そこは、なんとミホの部屋だった。
スンジョに抱かれた後のミホ。
「俺のどんなところが好きなんだ?」
スンジョは尋ねる。
ミホは微笑んで答える。
「お金がたくさんあるから?」
「正直でいい。どれくらい欲しいんだ?」
スンジョは尋ねる。
「私を守れるくらい?二度と傷つかないですむように」
ミホはつぶやく。






その時シヨンが、ミホのマンションの前から、
スンジョの携帯に連絡を入れる。
しかし、ミホに聞かれたくない話なため、
スンジョは「明日会社で聞く」と言って切ってしまう。
仕方なく車を発進させるシヨン。
前方を歩いている怪しげな男性が気になるシヨン。
それは、ドンスだった。


ドンスはミホの郵便受けの手紙を調べていた。
その中に、「キム・ヨハン」宛の手紙が。
「キム・ヨハン?」
ドンスは不審に思う。
そこへ、シヨンがドンスを後ろから羽交い絞めにする。
すかさずドンスのポケットを探るシヨン。
出てきたのは警察の身分証。
「警察がなぜユ・ミホを調べている?」
動揺したシヨンの隙を突き、
今度はドンスがシヨンを投げ飛ばす。
失神するシヨン。












目が覚めると、シヨンはベンチに手錠でつながれていた。
ドンスはシヨンの持っていた資料を調べていた。
資料はミホの資料。

「夕方、カフェでミホさんの隣りに座っていた。
以前、ミホさんのマンションの前で見かけた」
シヨンは、なぜドンスがミホを調べているのか気になった。

(ってさぁ、ドンスはなぜミホの存在を知ったわけ?
ミヌに電話をかけた時には既に、ミヌは行方不明だったのに。
独自で調べ上げたわけ?その過程がまったくないじゃない)

「ユ・ミホと君の関係は?」
ドンスの問いにシヨンは口をつぐむ。
しかし手錠の鍵を投げ捨てられそうになり、
仕方なく口を割る。
「うちの理事の婚約者です」と。
「奥様にふさわしいか調査していたというわけか」
ドンスは資料をめくる。
そして、信じられない事実を目の当たりにする。
「イ・ジアの本名をユ・ミホに変更」
資料には、そう書かれていた。
イ・ジア....
忘れもしない14年前の事件の少女...
「これが、ユ・ミホか?」
ドンスはミホの写真をシヨンにつきつける。
ドンスは、ミホの住むマンションを見上げる。
この事件には、奥深い何かが必ずある。
ドンスは、そう感じていた。
スンジョがシャワーを浴びている間、
ミホは向かいの部屋に住むヨハンをみつめていた。
スンジョの様子がおかしいことに、ミホは気づいていた。
自分に聞かれてマズい話がある...
電話の相手は、秘書室長のシヨン。
何かある...
ミホは感じていた。












ドンスは、ミホをストーカーしていたミン・ギョンホ
について調べる。
ギョンホは今、別件で逮捕されていた。
婦女暴行の常習犯だった。
ドンスはミン・ギョンホの顔写真を見て、ガッカリする。
ヨハンの顔を想像していたからだ。
しかし婦人警官が尋ねる。
「さっき、誰っていいました?」
「キム・ヨハン?」
ドンスは答える。
なんと、ギョンホが逮捕された強姦未遂事件の目撃者だという。しかも、第一発見者は、ユ・ミホ。
ドンスは驚愕する。
こんな偶然が、あるはずがない。
ドンスは、何かを感じる。






ドンスは、ギョンホに面会に行く。
「ホン・ユンミなんて知らん」
ギョンホは言い放つ。
「じゃあ、なぜ写真を持ってた?」
ドンスは問う。
「郵便受けに何十枚もヌードの写真が入ってた。
アジョシなら、どうする?」
ギョンホは否定する。
「あの時、目撃者がいた」
ドンスは、更に問い詰める。
ギョンホは逆上し、部屋を出て行こうとする。
「あの女は知らねえ!」
ドンスはタバコをエサにギョンホを引き止める。
「なぜ、ユ・ミホをつけ回した?」
ドンスは尋ねる。
「愛は、罪ですか?
あんた達は、愛を知らない」
ギョンホは、言い放つ。
「それは、まさにストーカーだ」
ドンスは笑い飛ばす。
「本当のストーカーは他にいたんだ。
いつもミホのそばにピッタリとくっついている奴が」
ギョンホは笑い飛ばす。
それを聞いたドンスは身を乗り出して問う。
「顔は覚えているか?」
ギョンホは自信を持って答える。
「俺より、ブサイクだった」

(ギョンホのキャラ、最高!演じるク・ボジンがいい!
最高のバイ・プレイヤーになりそうな予感)



店の中での微笑ましいカップルをみつめるヨハン。
そこへ、ポケベルにミホからのメッセージが。


(「ブサイクだった」と切り替わったヨハンがかっこよすぎて、
もう笑うしかない(笑)惚れ惚れするわー)


ミホはいつものコインロッカーに、
ヨハン宛の一通の手紙を入れた。






ヨハンは、ミホの婚約者スンジョの会社の駐車場で、
スンジョの車を洗車する。
スンジョと共に出かけるミホの横を通り過ぎて行くヨハン。


一方シヨンは、ミホ... 
つまりジアの通っていた学校を訪れ、
当時の担任から話を聞く。
ジアとヨハンは同じクラスで、事件前は仲が良かった。
しかし事件後は、ヨハンの方が辛かっただろう。
自分の父を殺した犯人の娘と顔を合わせるのだから。
黙って耐えているようだった。
ジアもクラス中からイジめられ、
ジアの養子縁組が決まった時、
担任は正直ホっとしたと、本音を漏らす。

シヨンはスンジョに報告の電話を入れる。
ストーカーはもういないと聞いて安心するスンジョ。
しかしシヨンは、ヨハンの存在が気になる。
「そいつも調べればいい」
スンジョはシヨンの意をよそに、あっさりとした態度だ。
「でも、改名するほど....」
シヨンは自分の意を訴えようとするが、
スンジョは電話を切ってしまい、
待っていたミホに微笑みかける。








車中、ミホは不安そうな様子を隠せない。
聴いていた「白鳥の湖」の音楽のボリュームをあげるよう、
運転手に告げる。
一方その頃ヨハンは、囲われている愛人ミヨンとの
激しいSexに身を投じていた。
何かを忘れようとしているかのように、
ヨハンは、抑圧的なほどに激しくミヨンを攻める。
そして、その頃...
ミホやスンジョを乗せた車が、突然ブレーキが聞かなくなり、
横転して壁に追突する。



シートベルトをしていたミホは無事だった。
しかしスンジョは失神してしまった。
車からオイルまで漏れており、車に火がつき始める。
急がなければ爆発してしまう。
ミホはスンジョをようやく揺り起こすが、
スンジョは足を挟んでしまい、身動きが取れない。








時間がない!
ミホはドアを開け、外へ飛び出す。
スンジョは、開けたドアから、
運転手が、ただ様子を見守っているのを目にした。
スンジョは、ミホも自分の身可愛さに逃げたのだと思う。
しかしミホは、スンジョが座っていた側に回り、
窓のガラスを割り、ドアロックを外し、ドアを開ける。
ミホは自分を裏切ったのではない。
自分の身を顧みず、スンジョを助けようとしているのだ。
スンジョは、安堵の笑みを浮かべる。
間一髪、ミホはスンジョを車外へと救出する。





ヨハンは、今頃ミホの身に起きていることを想像し、
表情に、暗い影を落す。







「また射精しなかったの?あの女となら違うの?」
ミヨンは尋ねる。
ヨハンは黙ってしまう。
「いいのよ、私は良かったから。
何でも言ってみて。叶えてあげる」
ミヨンは告げる。
「歩きたい...」
ヨハンは、小声でつぶやく。
「え?」
ミヨンは聞き返す。
「太陽の下を歩きたい...」
ヨハンは、暗い表情のままつぶやいた。
ヨハンにとっては、昼間も闇の中と同じだ。
白い闇。


(せつないわよね、愛する女と以外は射精すらしないなんて)



ミホは内ポケットから、小型リモコンを取り出し、
投げ捨てる。




スンジョは入院することに。
そこへ、シヨンが報告に現れる。


一方ドンスは、ミホの養母でもある、
ジアの叔母を訪ねていた。
昔の写真を見て、ミホと、あの14年前の事件のジアは、
同一人物だと、ドンスは確証を得た。





スンジョの病室に、ミホが呼ばれる。
今までミホのことを調査していた。
話さなければならないようなことがあるのであれば、
ミホの口から直接聞きたいと、スンジョは告げる。

「まず、엄마(オンマ)の話からしなければね...」
ミホは語り始める。


実母であるミスクが亡くなり、
ジアは叔母の元に遊びに行く。
「洋服の作り方を教えてくれるというから」と。
叔母が服を仕立てるのを楽しそうに見ているジア。
「いつか、好きな人ができたら私も作ってあげたい」
ジアは微笑む。
そしてそれからジアは、服の作り方を習うために、
叔母の元へ通い始める。
一方叔母も、事故で夫と娘のミホを亡くしたばかりで、
生きることが辛かった。
そんな時に現れたジア。
「ジア、これからはミホって呼んでもいい?」
叔母は尋ねる。
「じゃあ、私は엄마(オンマ)ね?」
ジアは微笑み、二人は抱きしめあう。
そうしてジアは、叔母の養子になり、名前も変えた。



話し終えたミホは、スンジョに尋ねる。
「結局、私は殺人犯の娘。
迷惑になるから、別れますか?」
しかしスンジョは、揺れることもなく告げる。
「結婚しよう」
(スンジョ、かっこいー)
ミホは、涙を流す。
(この涙は演技なのかねぇ...それとも、金持ちになれる喜び?)

しかし、ヨンウンは納得いかない。
殺人犯の娘だと知ってまで結婚するという父。
清純そうなミホに隠されたしたたかさに気づかない愚かな父。
ヨンウンは、部屋を飛び出していく。

一方シヨンも、理不尽なことを言い渡される。
「しばらく休め。必要になったら連絡する」と。
それは、もう用済みと同じこと。
単にミホを守るためのスンジョの決断なのだろう。
シヨンは納得いかなかった。


シヨンはドンスに連絡する。
このまま引き下がるわけにはいかない。
ドンスの手を借り、調査を続けるつもりだった。
「これ以上は危険だ」
と、最初はたしなめていたドンスも、その熱意に負ける。
自分のアパートへと連れて行き、
14年前の事件の捜査資料を見せてやる。
膨大な数の量。
「この事件に執着する理由は?」
シヨンは尋ねる。
ドンスは答えず、「俺の方が知りたい。なぜ執着するのか」
「ただ、理事が心配で...」
シヨンは答える。
(要するに、好きってことかい)

ドンスは、14年前に現場で拾ったテープを聞かせる。
流れるのは「白鳥の湖」
しかし、最後まで聞き続けると、驚くものが録音されていた。
「ヨハン、食事よ!」
と、母の呼び声。
「なんで엄마(オンマ)は録音中に叫ぶの!」
と怒るヨハンの声。
このテープが現場に落ちていた....
そして、あの部屋は、子供しか脱出できなかった....
14年前の事件は、ヨハンが関わっている。
ドンスはそう考えていることを、シヨンに告げる。

しかし、アパートの外では、
ヨハンが二人の会話を盗聴していた。









ドンスは、失明しかけていた。

今度はカン・ジェドゥの事件について調べ始めるドンス。
そして、検視の結果、ジェドゥの爪の中から、
ジェドゥ以外の皮膚がみつかったとわかる。
AB型の男性のものだ。



ミホは養母の家を訪れる。
美しく咲き誇る花たち。
毎月は無理だけれど、これからも自分が世話をすると、
ミホは告げる。
そして、さりげなく叔母が家を留守にする日を聞きだす。
釜山に出かけるから、数日留守にすると。





その頃シヨンは、とんでもない証拠をみつけていた。
会社の駐車場で洗車する様子を録画された
監視カメラの映像だ。
洗車なのに、車のボンネットを開けている男がいるのだ。
これは、明らかにおかしい。
「事故ではなく、仕組まれた!」
シヨンは確信する。


ミホの店「M&Y」の準備に追われるミホ。
ようやく店の看板がかかるのを、感慨深げに見上げるミホ。
「その若さで全てを叶えるだなんて羨ましい。
まるで、明るい太陽の下に立っているようです」
スタッフに羨ましがられ、ミホは苦笑する。
「私の人生に太陽なんて一度もなかった。
あったのは、一筋の光だけ。
その一筋の光でも、私には十分だった」
ミホは答える。


(「M&Y」は、ミホ&ヨハン。
一筋の光でなく、自分の影にしてしまったことを
まったく気づかないのか。
太陽の下を歩けないヨハンの苦しみを考えないのか)


ミホの店を眺めながら、忌々しく思うドンス。
12.19。店のオープンが、14年前の事件の時効の日なのだ。
そこへシヨンから電話が。
「事故は仕組まれていました。
助手席から小さな爆破装置が発見されました」
それを聞いたドンスは、刑事魂に火がつく。
「今から寄るところがあるから、
先に家に入っていろ。鍵は植木鉢の下だ」
ドンスは、告げる。

しかしその頃、植木鉢の下の鍵を使い、
ヨハンがドンスの部屋へ忍び込んでいた。
トイレの便器に薬品を流し込み、毒ガスを発生させるヨハン。





ドンスは、テホの元へやってきた。
テホは昔の夢を叶え、今や警察署長になっていた。
テホの権力を借り、ジェドゥの爪の中の皮膚組織と、
ヨハンの皮膚組織のDNA鑑定を依頼するためだ。
「これはうちの管轄外だ。
もしヨハンじゃなかったら、형(ヒョン)が責任取るのか!
もう형を庇いきれない!」
テホは、ヨハンのDNA採取の協力を断る。
しかしドンスは、何とか頼み込む。
「もう、この仕事も長く続けられない。
実は、お前の顔も半分しか見えていないんだ」
ドンスは告白する。
ドンスの告白に、言葉を失うテホ。
ドンスの家に到着するシヨン。
異臭に気づき、用心しながら中に入る。
しかし、異臭の元であるトイレを開けた途端、
倒れてしまう。





意識が朦朧とし始めているシヨン。
ヨハンの顔をみつめながら、涙を流す。


ミホの養母が釜山に行って留守の間、
ヨハンは、養母の家の庭にシヨンを埋める。
埋め終わったヨハンは、うつろな目で赤い花をみつめ、
座り込む。





「ヨハンはどこにいる?」
ドンスは、またもやヨハンの母ヘヨンの元へやってきた。
「お前の息子のDNAが出たんだ!」
と、ヘヨンを脅す。
(まだDNA採取してないわよねぇ?ハッタリ?)
「あの事件に執着するのはなぜ?」
ヘヨンは尋ねる。
「自転車に乗れるか?」
ドンスは、語り始める。
「俺は、未だに乗れない。
面倒だった。いつでも乗れると思ってた。
今は時間もあるし、自転車もある。
だが、息子がもういない」
ドンスは、自虐の笑いを浮かべる。
ヘヨンは、ドンスに深い事情があることを察する。
「そういうことがあるんだ。
その時にやらなければいけないこと。
その時しかできないこと」
ドンスは言い放つ。


「あの子は、越えてはいけない線を越えた。
もう止めてやらないと」
ドンスは告げる。
しかしヘヨンは、ドンスに帰るよう促す。







ミホは、久しぶりに学校に登校する。
生徒たちの様子が、どことなくおかしい。
教室に入ったミホは、黒板を見て愕然とする。
「殺人者の娘」と、デカデカと書かれ、
ミホの実母の新聞記事がいくつも貼られているのだ。
教室を見回すと、ヨンウンが勝ち誇ったように微笑んだ。
ミホは何もなかったような表情で、黒板の文字を消す。

し かし、トイレに駆け込み嘔吐してしまう。
胸が張り裂けそうに苦しい。
なぜ、またこんな目に.....
どうして、私を傷つけるの....
ミホは、この苦しみに耐えられなかった。




ミホはまたもや駅のコインロッカーにヨハンを呼びつける。
ロッカーに入っていたのは、ヨンウンの写真。
ヨハンは愕然とする。
ヨハンは、ヨンウンの写真をみつめたまま、座り込む。

そして、そのままミホの元へ向かう。
スクランブル交差点の向こうにミホの姿が。
ヨハンは信号を無視し、
突っ込んでくる車を交わしながら、
どんどんミホの方へ向かってくる。
「来ないで!」
ミホは慌てて携帯電話でヨハンに電話をかける。
「そこで、話しましょう」
ミホは告げる。
ヨハンは、交差点の真ん中に立ち往生したままだ。
「これだけはダメだ」
ヨハンは、ヨンウンの写真を差し出す。
「これを越えれば、すべてうまくいくわ」
ミホは告げる。
「ミホ...」
と、ヨハンが言おうとすることを、ミホは遮る。
「結婚して数ヶ月後に、弁護士と準備を進める。
ちょっとだけ待てば、私達一緒に暮らせるわ」
ミホはヨハンを何とか説得しようとする。
ヨハンは、そんなミホの魂胆を見抜き、声を荒立てる。
「ジア!」
と、昔の名前でミホを咎めるヨハン。
「私の名前は、ユ・ミホよ」
ミホは顔色が変わると、冷たく言い放つ。
「お前が言った未来とは、こんなことなのか?」
ヨハンは、悲しそうに尋ねる。
「俺にとって、このことが、どんなことかわからないのか?」
傷ついたヨハンの気持ちなど察しようともせず、
「諦められない」と、ミホは言い放つ。
「これは、本当に俺達の未来をダメにする」
ヨハンは冷静に警告する。
「ジア、俺達一緒にどこかへ逃げよう。
金なんかがそんなに大事か?」
優しく諭すヨハン。
しかし、「金なんか」の言葉に、ミホは逆上する。
「そのお金のために、どれだけ苦労したか」
ミホは、言い返す。
「私達の未来のために、엄마(オンマ)まで殺した」
その言葉を聞いた途端、ヨハンは何も言えなくなる。
そう、ミホは自分の母親を殺したのだ。
ヨハンは黙って去って行く。




スンジェの家に忍び込むヨハン。
そして、ヨンウンの服を引き裂き、レイプするヨハン。

そこへ、ミホがやってくる。

(ってゆうか、レイプする前にミホが現れたわよね?)
「後悔してないわ」
ミホはヨハンに告げる。





しかしヨハンは、ミホが掴んだ手を握ろうともせずに、
去って行った。



スンジョの家を出ると、
全力でやみくもに疾走するヨハン。
もう、どうにかなりそうだ。





ミホはヨンウンを病院に連れて行く。
あまりのショックに、涙を流すヨンウン。




「お父様には、風邪だと言っておいたわ。
私達、二人だけの秘密よ」
ミホは、ヨンウンに告げる。



スンジョは帰宅するなり、
ヨンウンの様子を見に行こうとするが、ミホは制止する。
「私が行くわ。こんな時は、親しくなれる」
それを聞いたスンジョは、嬉しそうに微笑む。



ヘヨンは、ドンスを呼び出す。
ドンスは、14年前の「動物の王国」という番組の話をする。
イヤになるくらい観た。
そして、あの猿の話はウソだと知った。
だが、本当に猿は死後も子供を抱いて歩くそうだな。
まるで、俺達みたいじゃないか?
ドンスは問う。
ヘヨンは語り始める。
恐喝の罪で5年服役し出所した後、
ジェドゥはヨハンを訪ねたと。





「時効まであと少しだ。頑張って耐えろよ」
と、ジェドゥはヨハンを抱きしめた。
そして帰り際、ミホの話を持ち出す。
「いい女になったな。ユ・ミホ?改名までして、
気づかないところだった」
ヨハンは、ジェドゥの言葉に危険を感じた。
ミホの身に、よくないことが起きるのではないかと。




14年前─

ヘヨンは、ヨハンの父が殺されたことを翌日知った。

キム家の使用人だったジェドゥは、
ヨハンの洗濯物を洗濯機に押し込めた。
そして、ヨハンのセーターに血がついているのをみつける。
ヨハンの父を殺したのはヨハン?
ジェドゥは気づく。
そして、それをネタに、ヨハンの母を強姦した。
ドアの隙間からその様子を見ていたヨハンは、
胸を痛めた。







愛する息子のため、ジェドゥのいいなりになるヘヨン。
ジェドゥの愛人になり、店までジェドゥに渡すと。
その代わり、絶対に口外するなと約束させる。
「お前の亭主は、あの女の娘に会いに行ったんだろう?」
ジェドゥは、何もかも見抜いていた。



「キム・シフは、ヤン・ミスクではなく、
ヤン・ミスクの娘に会いに行ったの」
ヘヨンは告げる。
ドンスの顔色が変わる。
「キム・シフ。あの人は変わった性癖があった。
幼い子供じゃないと、ダメだったの」
ヘヨンは告げる。






ヨンウンの部屋にやってくるミホ。
しかしヨンウンは出て行くよう促す。
ミホは衣服を全て脱ぎ、ヨンウンのベッドにもぐりこむ。
そして、ヨンウンの衣服を引き裂くようにし、
まるでレイプするかのような行動を取る。
「こんな風にされたの?」
ミホは問う。
ミホの言葉に、ヨンウンはあの日の恐怖を思い出す。
「目を閉じれば、光景が浮かぶでしょう?
忘れようとするほど、自分の首を絞めるのよ。
あの苦痛と、思いは生涯つきまとうはず。
これからは、あのことを思い出した時、
私の体... この感じを思い出して。
あの男の代わりに、今の私を思い出すのよ」
ミホは自分の体をヨンウンに触らせる。
「私は、もっと酷い目に遭った。
あなたより、もっと幼い時に。
私のオンマは、怪物に私を売ったの。
怪物は、私の体をむさぼった。
毎日、踏みにじられた。
一日たりとも、逃げられなかった」
ミホは語ると、ヨンウンの髪を撫でる。
「可哀想に。あの時の私になってしまったのね。
可哀想に...」
ミホの言葉に、ヨンウンの目から涙がこぼれる。
「心配しないで。あなたは私が必ず守ってあげるから」
ミホはヨンウンを抱きしめる。
ヨンウンは、悲しみを解放し、嗚咽し始める。
ミホは、ヨンウンを同じ痛みで傷つけ屈服させた上に、
ヨンウンの信頼まで勝ち取った。
「初めから知ってたわ」
ヘヨンは告げる。
「私もオンマなの。理解してくれない?」
ドンスは、「はい..」と、声にならないような返事をし、
動揺を隠せないまま、部屋を出て行く。
「あの子は、あなたの手で捕まえて...」
ヘヨンは去って行くドンスに告げる。








14年前の事件のあった部屋。

裸にされたジアが横たわっている。
目をギラギラさせながら、興奮して写真を撮るキム・シフ。
そして、自分のベルトを外そうとする。
ジアを抱くためだ。
その瞬間だった。

「や めて!!」
そう言って、シフの息子ヨハンが体当たりしてきた。
手には、切り絵のための細長いハサミが.....




ドンスには、14年前の悲しい光景が、
まざまざと見えるようだった。


「いい?今日は、あんたはここには来ていない。
何度も何度も、殺したかった。いつかは私が殺してた。
だから、殺したのは私よ」
ジアは泣きながらハサミを握ったヨハンの手を握る。
「私達、もう会うのはやめよう。
本で読んだんだけど、
どんな罪でも、15年経てば許されるんだって。
その時まで、会わないでいよう」
ジアは、ヨハンに告げる。
二人は潰れそうな胸を抱えながら、泣き続けた。










ミホの養母は、ミホが育てた花が枯れているのをみつけ、
ミホに電話をかける。
「心配ないわ」
とミホは言うが、養母は既に庭師を呼んでいた。







ドンスは、ミホの店を訪れる。
「イ・ジア。ヨハンはどこだ。
カン・ジェドゥが殺された。
ヨハンを追う二人も疾走した。
ジア。あの日、お前らに何が起きたか全てわかっている」
ドンスは穏やかに同情の意を表す。
「何のことがわかりませんが」
ミホはとぼけて、去ろうとする。
「いつまでヨハンをあの暗い船の中に閉じ込めておくんだ!
ヨハンを救えるのは、お前以外にいないんだ!」
ドンスは声を荒立てる。
「意味が理解できません。お引取りを」
ミホはドンスに背を向ける。







ヨハンはミホの携帯の留守電にメッセージを残す。
(なんで公衆電話なんだ?)

「ミホ。あの日... 俺が助けなかったら、どうなってたかな?
俺がお前を好きじゃなかったら....
俺達が、知らない者同士だったら....」

ヨハンは、太陽を見上げ、
あまりのまぶしさに、目を細めてしまう。

「ジア。お前の言う俺達の未来が何かわからないが、
守ってやる。最後まで.....」
ヨハンはそう言い残すと、悲しそうに微笑む。




ミホは、ドンスの言っていた言葉を噛み締めていた。
マネキンの手をヨハンと思って握り、
ヨハンのことを想うミホ。







ドンスはテホに相談する。
12月19日だ。ミホの店のオープン。
その日は、14年前のあの日だからな。ヨハンは必ず現れる。
二人にとって、意味のある日だ。
ドンスは断言する。
「二人はシャム双生児として生きてきた。
一緒だと苦しむが、離れては生きられない」
ドンスは語る。
それを聞いたテホはドンスの変貌ぶりに驚く。
「昔は殺人者を獣扱いしてたくせに」と。
ドンスは苦笑する。
「テホ、もう止めてやろう」
ドンスはテホに同意を求める。
テホは微笑む。
「俺は、何を協力したらいいんだ?」


その頃、ミホの養母の家の庭で、
遺体2体が発見され、大騒ぎになっていた。
所持品には、ミヌ刑事のサングラスもあった。








ニュースを見たミホは、すぐさまヨハンの元へ駆けつける。
しかしヨハンは鍵を開けない。
ドア越にミホは語りかける。
幼い頃、ヨハンから貰った切り絵のブックマークを見ながら。
そこには、「2009年12月19日」と書かれていた。
約束の15年後だ。
「死にたかった。息をするにも、あまりにも苦しかった。
でも、どうにか生きてきた。
ヨハンがくれた人生だから。
ヨハン... ヨハン...」
ミホは、泣き出す。
「ヨハン、あの時は助けてくれてありがとう」
ミホは、切り絵のブックマークを大切にしまう。
「ヨハン。もうすぐ店もオープンする。
私達が約束したあの日よ。
祝ってちょうだい。そして、おめでとう。
もうちょっとだけ、待ってちょうだい。連絡するから」
そう言ってミホは去って行く。







ヨハンは、追いかけたい衝動を何とか堪える。






そして、2009年12月14日。
ミホの店「M&Y」のオープン、そして、二人の約束の日。
スンジョの所有する大型施設で、
「M&Y」は、華やかなファッションショーを行い、幕を開ける。
「M&Y」のマークは、ヨハンが作ってくれた切り絵が
モチーフだ。





テホらは、凍えるような寒さの中、
車の中で待機していた。
すると、車の視界を塞ぐサンタクロースが。
テホが声をかけようとした瞬間、
サンタクロースは、窓ガラスを割り逃走する。
追いかけるテホら。
しかしサンタクロースは、逃げる途中で車に跳ねられる。







しかしそれは、ヨハンの友人ヤクトンだった。
では、ヨハンはどこに?


ドンスは、女の子が持っていた風船の先についている
星の形の切り絵が気になった。
「これ、どこでもらったの?」
ドンスは尋ねる。
「仮面を被ったアジョシが....」
と、指を指す。
そこには、仮面を被ったヨハンの姿が。
ヨハンを追いかけるドンス。







ステージでは、ミホが感謝の意を述べていた。
「この瞬間のために生きてきた気がします。
ここまで来るまで、多くの困難や試練に苦しむ度、
いつも影で明るく照らしてくれたあの方に、
感謝の心を伝えます」
ミホの言葉を、ヨハンは噛み締めながら聞いていた。
そこへ、追いかけてきたドンスが現れる。
ヨハンは、会場の2階へと逃げる。




ヨハンは、マネキンが並ぶ倉庫へドンスを誘い込む。
そして、ふいをついてドンスの腹を刺す。
「俺達二人が消えればいい。それで守れる」
ヨハンは言い放つ。
「やめろ、もうやめるんだ!ジアも、わかってくれる」
ドンスは諭す。
「その名を呼ぶな!」
ヨハンは声を荒立てる。
「お前達の気持ちはわかる。どれだけ辛かっただろうか」
ドンスは、どうしてもヨハンに引き返して欲しかった。
そこへ、テホらが駆けつけ、ヨハンは逃げ去る。





屋上へと追い詰められたヨハン。
後ろにはもう逃げられない。
壁の下は、ガラス張りの屋上のショー会場だ。
落ちれば、死ぬだろう。




重症を負ったドンスは、フラフラしながら屋上へやってくる。
そして、他の刑事たちに下がるよう命じる。
ドンスはヨハンに語りかける。
「悪かった。悪かった、ヨハン.....」
そう言って、ドンスは拳銃を捨てる。
「あの時、お前を受け止めてやれなくて」
ドンスは泣きながら語る。
そんなドンスを、ヨハンは冷めた目でみつめる。
よろめきながら、ドンスは一歩一歩ヨハンに歩み寄る。
手を差し伸べながら。






「アジョシ」
ヨハンは、ようやく口を開く。
そして、告げる。
「太陽が高く昇れば、影は消えるんだ」
そう言って悲しく微笑むと、ヨハンはハサミを振り上げた。


ドンスが止めるまもなく、ハサミで胸を突き刺したヨハン。




そして、そのまま屋上から落ちていく。


ガラス張りの天井を突き破り落ちてきたヨハンに、
会場はざわめく。
騒ぎを聞きつけ、ミホは様子を見に行く。





驚くことに、そこに横たわっていたのはヨハンだった。
衝撃のあまり、手にしていたシャンパングラスを
落としてしまうミホ。


息絶え絶えのヨハン。
ヨハンに近づこうとするミホをヨンウンが引き止める。
「知り合いなの?」
その言葉に、我に帰るミホ。
「いいえ、知らない人よ」
それを聞いたドンスは逆上する。
「なに?知らない人だと?
この子は、お前のためだけに生きてきた子なのに!
お前、本当に知らないのか!」





ド ンスの剣幕に押されつつも、ミホはシラを切る。
「知らない人だ」と。
そして、気高く前を見据えながら、
ヨンウンを連れてエスカレーターで2階へと上がっていく。
そんなミホの後ろ姿を、ヨハンは眩しそうにみつめる。

ヨハンにはわかっていた。
ミホの心のうちを。
あぁは言っても、心の中ではヨハンを案じていることを。
そして、これはミホを守るために自分が望んだ結果だ。
ヨハンは、満足そうに微笑む。








時は遡り─

ミホとヨハンが高校生の頃。
二人は他人のふりをしながらも、つかず離れずの関係だった。
隣りに並んで座れなくても、心はそばにいた。
ヨハンがやってくるとミホは、
ヘッドホンステレオのイヤホンを抜き、
スピーカーで音楽を流す。
ヨハンが自分のために録音してくれた「白鳥の湖」だ。
そしてヨハンは、ポラロイドカメラのタイマーをセットする。
別々のベンチに座りながらも、
二人はまるで、隣りに並んで座っているようだった。
二人は、幸せそうな笑顔で、写真に収まっていた。

END







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