悲夢  Dream 
 原題: 悲夢 비몽(ビモン)<2008>

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あ なたがいるから、悲しい夢につながった... 悲しい愛


過去の愛に胸を痛めるラン(イ・ナヨン)。夢遊病状態でジン(オダギリ・ジョー)が夢見るままに行動する彼女。別れた彼女(パク・チア)を忘れることがで きないジンの夢のせいで、自分の意志に 反し、二度と会いたくない昔の恋人(キム・テヒョン)に会いに行くことになるランにとって、ジンという存在はたまらない悪夢。

過去の愛を偲ぶジン。鮮やかに焼きついた夢の中の交通事故現場を探し、その場所でランと出会い、彼女が自分が見る夢のままに行動するということを 知 る。ランの頼みにも拘らず、自分の夢さえコントロールできない彼。しかし彼女のために... ジンは一つだけ約束する…

公式:http://www.saddream.co.kr/
日本公式:http://www.hi-mu.jp/


【予告編】
監督 キム・ギドク(金基徳) 作品一覧

出演

イ・ナヨン

出演作品一覧

オダギリ・ジョー

<2008>悲 夢

キム・テヒョン 出演作品一覧

パク・チア

<2002>バス、停留所、<2002>コースト・ガード、<2003>春夏秋冬そして春、 <2004>うつせみ
<2007>ブレス(息)、<2007>奇談、<2008>悲 夢

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【レビュー&ネタバレ】
ちょーっと、主演がmocaの苦手とするオダジョーだっていうのが、
一番のネックではありましたが、作品が良かったので、
持ち堪えられました。
そして、最初はぎこちなかったオダジョーの演技も、
後半になるにつれ、鬼気迫るものを感じました。
それでも、オダジョーの演技力不足なのか、それとも、キャラクターが合わなかったのか、
ジン役が、どうしても違和感を感じてしまい、しっくりときませんでした。
ジン役は他の役者で観たかったですね。

2008年10月9日、韓国公開。
2009年2月7日、日本公開。
キム・ギドク監督の15番目の作品。
1週目の週末BOX OFFICEは、2万7852人を動員して6位。
キム・ギドク作品では考えられない順調な滑り出し。
やはり、日韓トップスターの起用、大手配給会社との提携の力は大きいのだろう。
しかし、最終的な動員数は、約9万人。
キム・ギドク作品では考えられない高い数字ではあるが、
やはり、作品のマニアックさが、一般的には受け入れられなかったのでしょうね。

【ジン】
オダギリ・ジョー
【ラン】
イ・ナヨン
【ジンの元カ ノ】
パク・チア
【ランの元カ レ】
キム・テヒョン


* * *

さて、レビューですが...
最 初っからネタバレしちゃいますので、ご注意を!

* * *

うわっはっは。

思った通り。ムチャクチャな「キム・ギドクわーるど」でござーました。
前作ブレスでは、言葉の壁は「一切、言葉を発しない」という人物設定で、
ものの見事に乗り越えましたが、
今回、日本語しか話せないオダジョー...
セリフは日本語...と、聞いておりましたが...
コレはアリなのか!?
韓国語しか話さない登場人物の中で、一人日本語でしゃべってんのに、
全く当たり前のように、韓国語と日本語で会話しております。
その堂々&平然としたキム・ギドクのスタンス。
あまりにも彼らしくて、笑うしかない(褒めている)
moca的には、コメディー映画以上に笑いましたね。あっはっは。

言葉の問題だけではなく、あまりにも抽象的な表現で、
初めて「キム・ギドク作品」をご覧になった方は、ついていけなかったのでは?
と、心配になったっす。
今回、オダジョーの主演ということで、初めて「キム・ギドク作品」を
ご覧になった方、ぜーったい多いハズ。
しかも、キム・ギドクにしては、良く言えばオーソドックス。
悪く言えば、陳腐... な、ラスト。
あまりにも大衆ウケを狙ったようなエンディング。
日本側から、大衆ウケするよう、うるさく求められたのか?と思えるほど。
それとも、単に「愛」とは、こういうことを言うんだ!と言いたかったのか...
それにしても、ちーっと、お粗末なラストよねぇ...
ありがちな純愛映画。
世界的に認められた鬼才。
世界三大映画祭制覇に最も近い男。
それが、こんな程度...と、思われてしまうのも悲しいですからねぇ...
まぁ、中盤は、キム・ギドク特有の
ムチャクチャで、抽象的な「キム・ギドクわーるど」を発揮しておりましたが。
いくらオダジョーが主演しているとはいえ、
まずは、うつせみ、サマリアを観てから、この作品を観て欲しいですね。
初めての方には。
とにかく、一般ウケする映画とは言えないですね。この悲夢は...

それでも、moca的にはキム・ギドク作品は大好き。
今回はちょっとラストが物足りない感が否めませんが、
どっぷりと「キム・ギドクわーるど」を堪能できました。
これほど先の読めない作品を作る監督はいるのでしょうか。
mocaはよくわかりませんが...

次の展開が気になって、気になって...
先が早く知りたい!
そう思わせる数少ない監督の一人です。
うつせみ以降、期待を裏切りません。
今回も、ランの「どんな夢でも、もう恨まない」という言葉に、
mocaは心が震えました。
「元カノ(パク・チア)をまだ愛しているの!未練があるのね!」
と、普通なら責めるのが、現世での「愛」でしょうけれど、
「まだ、夢が残っているのね」という言葉から、
ランのジンに対する愛を感じます。
ジンのランに対する愛も、ランはちゃんと理解していると...
だから、どんな夢を見ても、もう恨まない。
もう苦しまないで...と、

そして、キム・ギドクの多彩さを感じずにはいられないのが、
その色彩感覚。
今回、「ブルー」が、あらゆる場面で用いられており、
その美しさには心が震えます。
もちろん、キム・ギドクの持ち味である、
アジアンチックでヴィヴィッドな色彩感覚も健在です。
鏡を用いた演出も、おなじみですね。
まさに、監督であり、アーティスト。
緻密に計算しつくしても、この美しさは表現できないでしょう。
天才。
ランの寝室のベッドシーツなどが、「韓国カラーそのもの」なのだけは、
ちょーっと考えて欲しかったですが...



そして、毎回心奪われるのがキム・ギドク作品のロケ地ですが、
今回は韓国伝統の屋敷が立ち並ぶ「北村韓屋マウル」が舞台となっております。
他のドラマで見覚えのある韓屋もチラホラ。
ランの元カレの家は、「私の名前はキム・サムスン」で、
ダニエル・ヘニーが下宿していたゲストハウス「楽古斎」
ランの家は、「オンエアー」のイ・ボムスの芸能事務所であった韓屋。
ジンとランがカウンセリングを受ける診療所は、
「Dr.ギャング」で、ヤン・ドングンとハン・ガインが住んでいた壽硯山房(実際はカフェ)

結局、今回のこの悲夢のテーマとしては...
「愛」
一般的には「究極の愛、真実の愛」と呼ぶのかもしれませんが、
キム・ギドク監督からすれば、「究極」も「真実」もクソもない。
「愛」とは、こういうものなんだ。
相手の為に自己を犠牲にすること。
自己犠牲こそ愛であり、その辺に転がっている「愛」は、「エゴ」なのだと。
それがメインのような印象ではございますが、
やはりキム・ギドク監督は一筋縄ではいかない方で、
よって、鬼才なわけですが...
時間(絶対の愛)でも、根本的に同じことを訴えているように思いますが、
「繰り返し」であり、永久ループ。
同じことを時間を経て、繰り返している。

そして、今回のテーマとしては、何よりも...
色即是空(現世に存在するあらゆる事物はすべて実体ではなく、空無である)
ということでしょうか。

中盤、ジンとランの元カレ(キム・テヒョン)と、ランとジンの元カノ(パク・チア)が交差し、
バーチャルの世界のように展開しますが、
ジンと元カレ(キム・テヒョン)、ランと元カノ(パク・チア)も、
元をただせば、同じである... 
人間はみな、同じである...
ジンは元カレ(キム・テヒョン)であり、ランは元カノ(パク・チア)である。
元カレ(キム・テヒョン)はジンであり、元カノ(パク・チア)はランである。
人間みな、同じである。

ラストの収容所で、いきなり元カノ(パク・チア)がランと同室に収容されておりますが、
この解釈はいく通りにもできると思います。
結局、元カノ(パク・チア)も、ランと同じ道を辿る。同じ結果が待っている...
元カノ(パク・チア)は、ランであり、ランは元カノ(パク・チア)であるから。
劇中、「黒と白は同じ」とあるように、
ランと元カノ(パク・チア)は同じなのであり、
人間誰しも同じである、という解釈していいのかな、と思います。
まさに、色即是空ですね。
目の前に見えているものは、実体ではなく、空無なのだと。
ラン(イ・ナヨンの姿、形)の姿は実体ではなく、空無であり、
ですから、あのラストになるわけです。
ランも、蝶も、同じなのです。
空無なのですから。

しかし、あのラストはねぇ..........
お決まりの純愛映画みたいで、ちょっと不完全燃焼ですね。
内容的には一般ウケする内容ではないですし、
最後まで「キム・ギドクわーるど」を展開して欲しかったですね。
ってゆうか、ラストが納得いかないのが、
キム・ギドク作品...
という気もしないでもありませんが...........
あのうつせみのような心震えるラストを期待したいものです。






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