隣りのゾンビ  The Neighbor Zombie 
 原題:隣の家のゾンビ 이웃집 좀비 (イウッチプ チョムビ)<2010>

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新型インフルエンザの勢いが少し弱まり、多少不安ながらも平和が漂った2010 年の ソウル。全世界的に広がった<ゾンビウイルス>がソウル全域で発生し、政府は、直ちに戒厳令を宣言し、ゾンビ感染者を探しては射殺し始める。

一方、市民たちは、ゾンビに咬まれて感染する危険を押し切り、彼らを匿い、食料を与え、共に生き残るためにあらゆる智恵を集める。

結局、彼らにとってゾンビは、排除対象である前に、愛し、食料を与え、思いやりも施さなければならない恋人であり、母であり、ご近所同志であるためだ。

しかし、政府のゾンビ追及がより一層周到、綿密になり、ゾンビたちは、ますます窮地に追い込まれる。
【ミュージック・ビデオ】

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【レビュー&ネタバレ】
2010年2月公開。スクリーン数は、19。観客動員数は、約3千人。
本国で、たったの3千人しか動員できずに終わった映画。なのに、日本でDVD化。
何かちょっと気になっちゃう。

ゾンビ だって生きている

観るつもりはなかったのに、このコピーに惹かれついつい鑑賞。
何とも言葉にし難い映画だ。
面白い映画ではない。

ひ じょーにシュール。

このシュールさがたまらない。という人もいるかもしれない。
ですが、一般的に言えば「面白い」の類ではないでしょう。
但し、非常に興味深い。
奥の深い映画。
哲学的であり、問題定義的な映画でありながらも、目が離せない。
どんな展開を迎えるのか、画面を凝視しながら、ぐいぐい引き込まれてしまう。
今更語るまでもない哲学と、「ゾンビウイルス」という斬新な素材という相反するシナリオに拍手を送りたい。
見事だ。
ここまで言うと、皆さんの好奇心を刺激するかもしれない。
だが、一見の価値はあると断言したい。
この映画をDVD化したポニーキャニオンにも拍手。
但し、DVDは売れないでしょう(笑)
レンタルで勝負ですな。

あらすじに「新型インフルエンザの勢いが少し弱まり」とありますが、
この映画を制作するきっかけになったのが、「新型インフルエンザのパニック」でしょう。
感染者は「被害者」であるのに、ウイルスを他人に感染させたことで「加害者」になってしまう。
「新型インフルエンザ」でも死者は多数出ましたが、
この映画の「ゾンビウイルス」は、韓国内だけの死者だけでも320万人を突破してしまうほどの
猛威を振るってますから、次元は違います。
しかし、根底にあるものは同じです。
自らに危険が及ぶとなれば、人間は被害者への労わりなど忘れ、
被害者を加害者としてバッシング.... 最悪、この映画のように射殺されてしまう。
被害に遭ったのに、罪を犯したことになり、罰されてしまうのです。

そして、それに相対し、
そんな残酷な現実の中でも、被害者は「愛する恋人」であり、「愛する家族」であり、「愛する隣人」であり、
その愛する者を必死に守ろうとする美しい愛も同時に描かれております。

この世の理不尽さ、人間の残酷さ、身勝手さ....
そこには、道徳も倫理も存在しない。
そして、人間としての良心、愛。
人間の心理を見事に描いております。
教本のようにわかりやすく....

そして、収益のために危険な人体実験を繰り返す製薬会社への警鐘。
渇きでも、ウイルス開発のための人体実験で突然変異したウイルスのせいで吸血鬼になってしまいます。
実際、世界でこのような実験が行われているかと考えると恐ろしいですね。
被害者になるのも恐怖ですが、被害者になれば加害者になるんです。
この映画のように、加害者になれば殺されることだってあります。
犠牲者は、何も知らない市民です。

安っぽさも感じはしますが、心に残るエピソードの方が勝ってます。

重いテーマでありながらも、ホラー仕立てで観る者を楽しませます。
音楽も軽快なロックで、単なるホラー映画とは一味違います。

但し、 安易に手を出さないで下さい!

というのも、かなりエグいです。
先日鑑賞した悪魔を見たは、二度に渡り制限 上映可等級 を受けたほどの残忍な映画です。
ですが、萌香はへっちゃらでした。
エグいシーンもすっかり慣れたのか、映像ならぐちゃぐちゃの内臓でも直視できます。
そんな萌香でさえも、この映画は目を反らさずにはいられませんでした....
オールドボーイや、親切なクムジャさんが観れなかった方は観ちゃダメです!
この映画は6本のオムニバス形式で制作されてますが、
「segment 3<骨を削る愛>」は、一番惨いというか、痛いというか、直視できません!
ですが、このエピソードが6本の中で最も優秀でした。
せつなさ漂う秀作です。
観るか観ないか悩むところでしょうけど、エグいシーンだけ目を反らせば、何とか... なるか?!
「segment 1<すきま> 」も、千切れた自分の足をむしゃむしゃ食べちゃうんだよぉぉぉー
これも、とても見ていられない......
萌香はスティーブン・キングの小説ですら読んでいて耐えられなくなります。
スティーブン・キングのような残忍さ... といえばいいのか....
指を切断したりするシーンが、生々しいんですよー
他の映画では指の切断シーンもへっちゃらなのに、なぜこの映画は直視できないのか。
うーむ。


↓  結末まで簡単にストーリー紹介(結末ネタバレ) ↓




【segment 1<すきま>】 脚本:オ・ヨン ドゥ / 監督:オ・ヨンドゥ

6つのオムニバスの出発点となるエピソード。




フィギュアマニアの男がフィギュアを組み立て中にナイフで指を切ってしまう。
その瞬間から、ありとあらゆる【すきま】に体が触れると、体のあちこちが血まみれに....




恐ろしくなった男は、家から逃げようとする。
しかし、逃げようとした外も、【すきま】なのである。
逃げようとドアから突撃するも弾き返され、男の体はバラバラになってしまう。
血みどろに千切れた体に驚愕しつつも、男は自分の千切れた足を舐め、食べ始める。
そして男は.... ソンビと化していた。

【by 萌香】

ただの出発点というだけで、何の面白みもないエピソードです。
このフィギュアマニアの男を演じているのが「ホン・ヨングン」で、
「segment 3<骨を削る愛>」の脚本・監督をしています。
ホン・ヨングンとリュ・フンは、あちらこちらに顔を出してます。インパクトがなくて見つけづらいですけど。

「ブリンデル」というグローバル製薬会社が、中央アジアの少数民族を対象に、不法な臨床実験を行った。
インドで3年以内にエイズのワクチンを開発すると。
そのBH-1ワクチンを接種した小学生が死亡。
治験中に、突然変異型ウイルスが発生。
それは.... ゾンビウイルス......
そのゾンビウイルスの韓国での初の感染者を描いたエピソードです。
そして、ブリンデル側は、開発者であるデイビッド・パクを始め、あらゆる証拠を隠滅した。

世の中には、自分の知らない事実が山ほどある気がして恐ろしくなります。
一市民の立場とは、なんて弱いのでしょう。

【segment 2<逃げよう>】 脚本:オ・ヨン ドゥ / 監督:オ・ヨンドゥ




愛し合う男と女。
しかし男は「ゾンビウイルス」に一次感染し、オッド・アイ(それぞれの目の色が違う)になってしまう。
非感染者の女は、必死に男を守ろうとする。見つかれば射殺されてしまうからだ。




「ゾンビウイルス」の薬を入手したと親友から男の元に電話が....
しかし会話の途中で、ゾンビに感染してしまった親友は警察特攻隊に発見され射殺されてしまう。
親友が射殺されてしまったことにショックを受ける男。
自分もいづれ射殺されると...
男は愛する女に出て行くよう言い放つ。しかし男を愛する女は、頑なに拒む。
そしてついに、女は男の腕に噛み付く。
男の腕から血が流れ出る...
「これで私も感染者よ。出て行けなんて言わないで」
女は男に懇願する。




女もオッドアイになった。一時感染だ。感染した女は「肉」を欲するようになる。
肉を欲して狂うほど苦しむ女。そんな女を励まし、なだめる男。
ゾンビになった女を、男は前よりもずっと美しいと感じる。
そして、「ゾンビウイルス」の治療が可能だと聞き、男と女は「逃げよう」と、変装を始める。

【by 萌香】

このエピソードの男が、後に「segment 5<その後...ごめんなさい>」で、
過去にゾンビウイルスに感染した男として再び登場します。
このエピソードはちょっとコミカルで、ちょっと安っぽい。目玉が飛び出すネタは、いろんな意味で笑える。

【segment 3<骨を削る愛>】 脚本:ホン・ ヨングン / 監督:ホン・ヨングン

このエピソードは、キャプチャー画像だけでもエグいので、ご注意を!!!!!
勇気がない方は、トバしちゃってね!

先送り>>>
















娘は、ナイフで自分の指を切断する。痛みに耐えるため、タオルを噛みながら。




部屋の中にはゾンビが一体。それは娘の母だった。
母を生かすために、自分の血を絞り、指を切り、母が生きるための糧としていたのだ。




変わり果てた母の姿に心を痛める娘。
その時、何者かがやってくる。ゾンビを追及する警察だった。




不審な物音を聞きつけ、部屋の中へと侵入する警察。
そして、ゾンビとなった母を発見する。
娘の母へ銃を向ける警察。娘は警察を殴打し気絶させる。




娘は刑事を監禁し、刑事の体をも、母が生きるための糧とした。




その瞬間、母をつないでいた鎖がちぎれ、母は暴れ出す。
娘に襲い掛かる母。
しかし、一瞬母は躊躇する。母の脳裏に「母であった記憶」が甦ったのか。




母に戻ったことを確信し、娘は期待する。しかし、ゾンビはゾンビでしかなかった。
すぐさま娘に襲い掛かり、首に噛み付く母。それを見た刑事は、娘の母を射殺する。




とめどなく涙を流す娘。
しかし、ゾンビに噛まれた娘も、もはやゾンビと化すしかない。
刑事は娘も射殺する。

【by 萌香】

せつない親子愛です。まさに、骨をも削る愛.....
グロテスクで直視できませんが、それすらも物語を盛り上げているように思います。
非常に秀作だと思います。
シュールで、ちょっと笑えます。
ホン・ヨングン監督の今後に期待したいです。







<<<先送り完了


【segment 4<ワクチンの時代>】 脚本: リュ・フン / 監督:リュ・フン

不完全な治療薬を開発し、巨額の利益を得た製薬会社ブリンデル。
そのワクチンを開発したデイビッド・パク。
失踪していた彼は、自らの体を実験台にし、ゾンビウイルスに対するワクチンを開発した。
肺からは毒ガスが噴出し、体は完全なゾンビ状態になった。
だが、完全なワクチンを完成させた。
これで、自分が開いた地獄の扉を閉じるのだ。




とあるビルに疾病統制局捜査隊の三人がやってくる。ソンビを射殺し、正常な人間を救うために。




そのビルには、謎の人物が二人。
毒ガス用のマスクを被った男と、ボランティアで人々を救おうとビルにやってきた医師団の一人。




そこで、捜査隊員はウイルスの入ったケースを発見する。
それを見つけた捜査隊員の男は、ケースを持ち逃げしようとする。
これを手に入れれば、巨額の富を手にしたのと同じだ。
それをとがめ、制止する女隊員。
「ウイルスを盗むのは大罪だ」と、正義を貫き通す女隊員。
しかし、捜査隊員らは、生き残った医師団の一人に襲撃される。
男は医師団などではなかった。
それどころか、ゾンビの体から作られた麻薬「ゾンビハイ」の常習者で、殺人鬼だった。
女刑事は隙を見て襲撃してきたゾンビらに、体のあちこちを喰いちぎられ、ゾンビウイルスに感染してしまう。
自らがゾンビと化し、女隊員は自らを救うためにウイルスを欲する。




そして、謎のマスク男と殺人鬼の対決が繰り広げられる。
マスク男は両目とも色が変わり完全にゾンビ化していたが、理性を失っていなかった。
(このマスク男が、開発者のデイビッド・パクなのでしょう)
マスク男は窮地に陥った。
マスク男の首を締め上げる殺人鬼。
そこへ一発の銃声が。
息絶え絶えの女隊員が、殺人鬼を射殺したのだ。




救出されワクチンを接種し正常になった女隊員は捜査官の尋問を受ける。
デイビッド・パクの写真を見せられ、「知っているか」と問いただされるが、
女隊員は知らないとシラを切る。
女には、あのマスクの男がデイビッド・パクだとわかった。
しかし、口をつぐんだ。
一度は良心を捨てた女隊員だったが、再び良心を取り戻した。

【segment 5<その後...ごめんなさい>】  脚本:チャン・ユンジョン / 監督:チャン・ユンジョン




ゾンビウイルスのワクチンが完成し、ゾンビ化した人間らも、正常な人間に戻り、世の中は平和になった。
過去ゾンビだった男ペ・ヨングン。(segment2の男ですね。女は死んでしまったのでしょうか....)
ヨングンは、ようやく社会復帰しようと、履歴書を書き、面接を受ける。
しかし社会は元ゾンビに甘くない。
「ゾンビだった頃、人間の肉を食べたか?」
などと、容赦ない質問を浴びせ、ヨングンは社会に受け入れてもらえない。
「菜食主義者になった」
と主張し、野菜を食べる毎日だが、肉の味が恋しくなり焼肉屋へ足を踏み入れてしまう。




家に戻ると、一人の少女が待っていた。





「ペ・ヨングンさん?」
女の問いに頷くヨングン。その途端、女はヨングンの腕をナイフで刺し立ち去っていった。
ヨングンには、事情が呑み込めない。




ある日、元ゾンビだった仲間の集まりが開かれ、ヨングンも顔を出す。
ゾンビだった人間には、定期健診が義務付けられている。
しかし健診でもらった薬を飲むと、体がおかしくなると仲間の一人が語る。
「そんな薬飲むな」
と、仲間らはやめさせようとするが、男はポツリと告げる。
「ゾンビに戻るのが怖いんだ」と。
その言葉に、皆言葉に詰まる。




あれから、何度となくヨングンの前に現れては体を刺し立ち去る少女。
少女は復讐だと言い放つ。
「今日が何の日かわかる?」
少女は尋ねる。
その日は少女の両親の命日だと少女は告げる。
私の目の前で、あんたに食べられた両親の命日だと。
その言葉に衝撃を受けるヨングン。
少女はヨングンの隣りに住んでいた隣人だった。
ヨングンを復讐のために殺すと告げる少女。




だがそこに、強盗が現れる。
しかし、銃を突きつけられても少女はうろたえない。




実は強盗もかつてゾンビだった。
少女が両親を殺された復讐のためにヨングンを殺そうとしていることを知った強盗は、銃をヨングンに渡す。
少女を殺せと。
自分らが、どんな思いで生き残ってきたか。
ゾンビになった人間らは、少女のような正常な人間に射殺されてきたのだと。
銃を持って震えるヨングン。
ヨングンの様子に見兼ねた強盗は、自分が少女を殺すと少女に銃を向ける。
バァーン。
銃声が響き渡る。
少女の顔には、血しぶきが.......




撃たれたのは、少女をかばったヨングンだった。
「彼女を殺しちゃダメだ....」
そう言って、ヨングンは倒れる。
撃たれて殺されたヨングンをみつめ、少女は涙を流す。
「私は、あんたを殺そうとしたのに」と....

【by 萌香】

陳腐と言えば陳腐な作品ですが、この映画では重要な役割を果たすエピソードだと思います。
ゾンビと化し、人間を食べて生き長らえてきたゾンビ感染者たち。
被害者が加害者となり、罪を犯した。
しかし、生きるために仕方がなかった。
それでも、心には人間としての良心が残っていた。
いつまでも、人間を殺し食べてしまった罪の意識にさいなまれ、苦しみ続けていた。
人間に戻っても、「元ゾンビ」は、やはり、「元ゾンビ」としてしか生きられない。
社会からも受け入れられず、罪の意識が何度も悪夢を甦らせる。
生きるために人間を食べてきたゾンビと、
生きるためにゾンビを射殺してきた人間たち。
一体、どちらが被害者で、どちらが加害者なのか....
「贖罪」と呼ぶには、あまりにも気の毒だ。
加害者である元ゾンビの苦しみが、せつないエピソードである.....

【segment 6<ペインキラー>】 脚本:ホ ン・ヨングン / 監督:ホン・ヨングン




原稿の締切に追われる脚本家。締切まで、残り5時間19分37秒.........




そして、締切時間ジャスト。
その瞬間、締切を守れなかった脚本家は、頭から血を流し絶命する。

【by 萌香】

このエピソードは要らないんじゃあ?
segment1から5までのダイジェストを織り込んだ、ユニークなエピソードですが、
このエピソード自体は何の面白みもありません。
エンドロール代わりと思えばいいのでしょうか。
segment5で終わってしまったら、なんかちょっと陳腐で安っぽい映画に感じてしまう気はしますが....
それを思えば、締めくくりとしての必要性は感じなくもありません。

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