キリマンジャロ Kilimanjaro |
原題:キリマンジャロ 킬리만자로(キルリマンジャロ) <2000> |
|
監督 | オ・スンウク | <2000>キ リマンジャロ |
出演 |
パク・シニャ ン(朴新陽) |
<1996>ユリ、<1997>プワゾン、
<1997>モー
テルカクタス、 <1997>手紙 The Letter、
<1998>約束、 <1999>ホ ワイト・バレンタイン、 <2000>キリマン ジャロ、<2001>インディアン・サマー、 <2001>達磨よ、遊ぼう、 <2003>4人の食卓、<2004>ビッグ・スウィンドル! 、 <2004>達 磨よ、ソウルに行こう、<2007>ま ぶしい日に |
アン・ソンギ (安聖基) |
出演作品一覧 |
【レビュー&ネタバレ】 |
これも一応ノワールなのでしょ
う。 それとも、これらが「ノワール」の王道なのか? ノワールというと、激しい銃撃戦や暴力・・・そういったアクションを想像しがちだけれど、 この作品は、静かに、淡々と・・・ 社会の底辺で生きねばならなかったチンピラたちの哀愁と、 やるせなさを描いているわ。 というのも、 この映画は、八月のクリスマスの脚本を執筆したオ・ス ンウクの初監督作品。 そして、ホ・ジノ監督も、この映画の脚本に参加しているわ。 まさに、ホ・ジノ・ワールド、ノワール版という感じ。 決してドラマティックではなく、 どこに向かっていくのかわからぬままに、淡々と進行する物語。 それは、単に彼らの人生をありのままに描いているだけだから。 ホ・ジノ作品が苦手なら、観ない方がいいでしょう。 まさに、「ホ・ジノ+北野武の世界」といった感じ。 そこにあるのは、無情の世界。 「俺らは、いつもこうなんだ」 こうするしかなかった。 こうするほか、生きる道はなかった。 社会の底辺を這いずり回り生きてきた。 どんなに頑張っても、 人生をやり直そうとしても、 結局は煮え湯を飲まされ、更に落ちて行く・・・ 世の中、恵まれた人間だけが得をして、 不幸な人間はとことん不幸だ・・・ 俺たちは、間違って生まれてきてしまった・・・ そんな男たちの侘しさが伝わってくる作品。 彼らのような人間を、人は「社会のクズ」と呼び蔑む。 けれど、「社会のクズ」にも、 人の心があり、情があり、懸命に生きようとするひたむきさがある。 逆に、彼らのような人間の方が、より人間的だったりするのかもしれない。 相対する双子の兄弟として描くことで、 既成概念というものがいかにバカらしく・・・ 自らの考えを改めさせられるかもしれないわ。 舞台となるのは、トンへ(東海)沿いのチュムンジン(注文津) ソクチョ(束草)と、カンヌン(江陵)の中間ほどに位置する町。 この寂しくも、温かい海が、この映画に彩りを添えているわ。 mocaの大好きなノスタルジックな映像・・・ と、言いたいところだけれど・・・ ノスタルジーを通り越して、昭和の映画のような映像・・・ <八月のクリスマス>も、かなりノスタルジックな映像だけ れど。 主人公は、双子の兄弟ヘチョルとヘシクに、パク・シニャン。 一人二役で、弟ヘチョルは冒頭のみの出演だけれど、 これがまた、別人に見えるのよー 似ているけれど、別の人でしょう?という感じ。 さすが、パク・シニャン。 そして、国民的俳優アン・ソンギ。 アン・ソンギがチンピラ?という違和感があるけれど、 彼の人徳が、そのままポンゲ(稲妻)に反映されているようだわ。 キム中佐には、 <ユリョン-幽霊->、<DMZ 非武装地帯 追憶の三十八度線>のチョン・ウンピョ。 伝道師には、<角砂糖>の獣医、チェ・ソンジュ ン。 ジョンドゥの手下には、<角砂糖>のシウンの牧場 のおじさん。 キム・ギチョン。 他にも、見たことある顔がチラチラ。 この映画は、<謎を解く>映画ではないわ。 それをわからずに観ていると、何をしたいのかわからなくなることでしょう。 謎を追っているわけではなくても、 ヘチョルの人間性が明らかになるのと同時に、 きっとヘチョルが着せられた殺人事件の謎も解けるでしょう。 ストーリーとしては、 ならず者の双子の弟を持った、悪徳刑事ヘシク。 ヘチョルはある日、「子供が病気なんだ。助けてくれ」と、 ヘシクに金の無心をする。 しかしヘシクは、「努力したのか?」などと、説教をするだけ。 「こんな頼み今までしたことあるか? お前を大学に行かせるために、俺と母さんがどれほど苦労したか知ってるのか?」 ヘチョルは、ヘシクに訴えるが 「なら、いくら渡せば満足なんだ?」と、ヘシクはヘチョルの神経を逆なでする。 そして、ヘチョルは殺人の嫌疑をかけられたまま、 ヘシクの銃を奪い、幼い息子と娘を撃ち殺し、自殺する。 その事件により、ヘシクは刑事をクビになる。 そして、ヘチョルの遺骨を持って故郷に帰ったヘシクは、 ヘチョルの昔の仲間たちに、ヘチョルだと間違われてしまう。 ヘチョルの因縁の相手ジョンドゥに捕まり拷問されるヘシク。 そこへ現れたのが、ヘチョルの昔の兄貴分ポンゲ(アン・ソンギ) ポンゲは、新たな人生を始めようと、 仲間たちと借金をしてまで手に入れた刺身屋を ヘシクを助けるために、ジョンドゥに手渡す。 何が起きようとも、ヘシクを庇うポンゲに、 ヘシクは「なんでこんなに俺に優しいんだ?」 と、ポンゲに問いかける。 ↓結末です。ご注意を↓ ジョンドゥの新車を見かけたヘシクたちは、 腹いせにジョンドゥの車をメチャクチャにしてしまう。 怒ったジョンドゥは、ポンゲの家に乗り込み、 ポンゲ、ヘシク、キム中佐、伝道師、ポンゲの妻ヨンランらを縛り上げる。 そして、彼らの指を切断しようとするジョンドゥ。 「俺らの全てをやるから、一生お前の前に姿を現さないから、許してくれ」 ポンゲはジョンドゥに懇願する。 それは、キム中佐が必死に集めてきた拳銃だった。 キム中佐は差し出すことを必死に拒むが、 ジョンドゥの脅しに負ける。 天井板を開けると、いくつもの銃が降ってきた。 皆が我先にと、銃を拾い構える。 ジョンドゥはキム中佐に射殺されるが、 気がふれたキム中佐は、銃を乱射し、 一瞬にして、血の海と化してしまう。 ポンゲの妻ヨンランまでもが、射殺され、 怒ったポンゲは、銃をキム中佐に向ける。 重傷を負ったポンゲは、ヘシクに過去の過ちを詫びる。 「お前をこんな風にしたのは俺だ、すまない・・・」 あの時俺は、仮出所中だった。 そこで捕まったら、一生刑務所暮らしだ・・許してくれ。 もう逃げるのはやめにしたい。 もう逃げる場所も、どこにもない・・・ ヘシクは、瀕死のポンゲを抱きかかえ 雪山の中を逃走する。 しかし、途中ポンゲは息を引き取る。 ポンゲの遺体を埋めるヘシク。 「ヘチョル、そこで俺を見ているのか?」 ヘシクは空に向かって語りかけ、銃を一発撃ち放つ。 しかし、その銃を聞きつけた機動隊に、ヘシクは銃殺される。 END 自分の罪をヘチョルが被ったと思われるようなポンゲの告白。 自殺する前に嫌疑をかけられた殺人も、 ヘチョルの弟分クァンハンが、「俺がやったんだ」と自白していた。 ヘチョルは、借金に追われながらも、 故郷の寝たきりの祖母にも、毎月送金していた。 ヘシクはようやく弟ヘチョルを理解したのだろう。 |
|