キリマンジャロ  Kilimanjaro  
 原題:キリマンジャロ 킬리만자로(キルリマンジャロ) <2000>

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キリマンジャロ

双子のヘシクとへチョル(パク・シニャン)。彼らは、お互いを憎み、それぞれの 道を歩んできた。

弟へ チョルは、故郷 チュムンジン(注文津)で有名なチンピラのボス。一方、兄ヘシクは、ソウルの悪辣な捜査方式で悪名高い刑事という位置を確立して10年になる。

ある日、殺 人嫌疑を受けたへチョルがヘシクの銃を奪って自殺し、そのためヘシクは職位を解除される。

ヘシクは、弟を火葬した後、遺骨を持って母の墓があ るチュムンジン(注文津)を訪れる。そして、そこで彼を双子の弟ヘチョルと誤解するポンゲ(アン・ソンギ)らチンピラたちと出会い、思いがけず彼らの利権 争いに巻込まれる。

ヘシクは、誤解されることを好まなかったが、 弟ヘチョルの行跡に対する疑問と、刑事としての直感から、へチョルであることを否定せず、ポンゲらと付き合い始める。ヘシクとポンゲらは、ジョンドゥ一味 に奪われた新築さしみ屋を取り戻すためにあらゆる努力をするが、 思い通りにはいかず、いつもジョンドゥ一味にされるがままだ。

ヘシクは、死んだ弟へチョルを理解し始め、ポンゲ、中佐(チョン・ウンピョ)、 伝導師(チェ・ソンジュン)にも、人間的な情を感じ始める。

監督 オ・スンウク <2000>キ リマンジャロ

出演

パク・シニャ ン(朴新陽)

<1996>ユリ、<1997>プワゾン、 <1997>モー テルカクタス、 <1997>手紙 The Letter、 <1998>約束
<1999>ホ ワイト・バレンタイン、 <2000>キリマン ジャロ、<2001>インディアン・サマー
<2001>達磨よ、遊ぼう、 <2003>4人の食卓、<2004>ビッグ・スウィンドル! 
<2004>達 磨よ、ソウルに行こう、<2007>ま ぶしい日に

アン・ソンギ (安聖基)

出演作品一覧

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【レビュー&ネタバレ】
これも一応ノワールなのでしょ う。
それとも、これらが「ノワール」の王道なのか?
ノワールというと、激しい銃撃戦や暴力・・・そういったアクションを想像しがちだけれど、
この作品は、静かに、淡々と・・・
社会の底辺で生きねばならなかったチンピラたちの哀愁と、
やるせなさを描いているわ。
というのも、
この映画は、八月のクリスマスの脚本を執筆したオ・ス ンウクの初監督作品。
そして、ホ・ジノ監督も、この映画の脚本に参加しているわ。
まさに、ホ・ジノ・ワールド、ノワール版という感じ。
決してドラマティックではなく、
どこに向かっていくのかわからぬままに、淡々と進行する物語。
それは、単に彼らの人生をありのままに描いているだけだから。
ホ・ジノ作品が苦手なら、観ない方がいいでしょう。
まさに、「ホ・ジノ+北野武の世界」といった感じ。
そこにあるのは、無情の世界。

「俺らは、いつもこうなんだ」

こうするしかなかった。
こうするほか、生きる道はなかった。
社会の底辺を這いずり回り生きてきた。
どんなに頑張っても、
人生をやり直そうとしても、
結局は煮え湯を飲まされ、更に落ちて行く・・・
世の中、恵まれた人間だけが得をして、
不幸な人間はとことん不幸だ・・・
俺たちは、間違って生まれてきてしまった・・・

そんな男たちの侘しさが伝わってくる作品。
彼らのような人間を、人は「社会のクズ」と呼び蔑む。
けれど、「社会のクズ」にも、
人の心があり、情があり、懸命に生きようとするひたむきさがある。
逆に、彼らのような人間の方が、より人間的だったりするのかもしれない。
相対する双子の兄弟として描くことで、
既成概念というものがいかにバカらしく・・・
自らの考えを改めさせられるかもしれないわ。

舞台となるのは、トンへ(東海)沿いのチュムンジン(注文津)
ソクチョ(束草)と、カンヌン(江陵)の中間ほどに位置する町。
この寂しくも、温かい海が、この映画に彩りを添えているわ。
mocaの大好きなノスタルジックな映像・・・
と、言いたいところだけれど・・・
ノスタルジーを通り越して、昭和の映画のような映像・・・
八月のクリスマス>も、かなりノスタルジックな映像だけ れど。

主人公は、双子の兄弟ヘチョルとヘシクに、パク・シニャン。
一人二役で、弟ヘチョルは冒頭のみの出演だけれど、
これがまた、別人に見えるのよー
似ているけれど、別の人でしょう?という感じ。
さすが、パク・シニャン。

そして、国民的俳優アン・ソンギ。
アン・ソンギがチンピラ?という違和感があるけれど、
彼の人徳が、そのままポンゲ(稲妻)に反映されているようだわ。

キム中佐には、
ユリョン-幽霊->、<DMZ 非武装地帯 追憶の三十八度線>のチョン・ウンピョ。
伝道師には、<角砂糖>の獣医、チェ・ソンジュ ン。
ジョンドゥの手下には、<角砂糖>のシウンの牧場 のおじさん。
キム・ギチョン。
他にも、見たことある顔がチラチラ。

この映画は、<謎を解く>映画ではないわ。
それをわからずに観ていると、何をしたいのかわからなくなることでしょう。
謎を追っているわけではなくても、
ヘチョルの人間性が明らかになるのと同時に、
きっとヘチョルが着せられた殺人事件の謎も解けるでしょう。


ストーリーとしては、
ならず者の双子の弟を持った、悪徳刑事ヘシク。
ヘチョルはある日、「子供が病気なんだ。助けてくれ」と、
ヘシクに金の無心をする。
しかしヘシクは、「努力したのか?」などと、説教をするだけ。
「こんな頼み今までしたことあるか?
お前を大学に行かせるために、俺と母さんがどれほど苦労したか知ってるのか?」
ヘチョルは、ヘシクに訴えるが
「なら、いくら渡せば満足なんだ?」と、ヘシクはヘチョルの神経を逆なでする。

そして、ヘチョルは殺人の嫌疑をかけられたまま、
ヘシクの銃を奪い、幼い息子と娘を撃ち殺し、自殺する。
その事件により、ヘシクは刑事をクビになる。
そして、ヘチョルの遺骨を持って故郷に帰ったヘシクは、
ヘチョルの昔の仲間たちに、ヘチョルだと間違われてしまう。
ヘチョルの因縁の相手ジョンドゥに捕まり拷問されるヘシク。
そこへ現れたのが、ヘチョルの昔の兄貴分ポンゲ(アン・ソンギ)
ポンゲは、新たな人生を始めようと、
仲間たちと借金をしてまで手に入れた刺身屋を
ヘシクを助けるために、ジョンドゥに手渡す。
何が起きようとも、ヘシクを庇うポンゲに、
ヘシクは「なんでこんなに俺に優しいんだ?」
と、ポンゲに問いかける。

↓結末です。ご注意を↓

ジョンドゥの新車を見かけたヘシクたちは、
腹いせにジョンドゥの車をメチャクチャにしてしまう。
怒ったジョンドゥは、ポンゲの家に乗り込み、
ポンゲ、ヘシク、キム中佐、伝道師、ポンゲの妻ヨンランらを縛り上げる。
そして、彼らの指を切断しようとするジョンドゥ。
「俺らの全てをやるから、一生お前の前に姿を現さないから、許してくれ」
ポンゲはジョンドゥに懇願する。
それは、キム中佐が必死に集めてきた拳銃だった。
キム中佐は差し出すことを必死に拒むが、
ジョンドゥの脅しに負ける。
天井板を開けると、いくつもの銃が降ってきた。
皆が我先にと、銃を拾い構える。
ジョンドゥはキム中佐に射殺されるが、
気がふれたキム中佐は、銃を乱射し、
一瞬にして、血の海と化してしまう。
ポンゲの妻ヨンランまでもが、射殺され、
怒ったポンゲは、銃をキム中佐に向ける。
重傷を負ったポンゲは、ヘシクに過去の過ちを詫びる。
「お前をこんな風にしたのは俺だ、すまない・・・」
あの時俺は、仮出所中だった。
そこで捕まったら、一生刑務所暮らしだ・・許してくれ。
もう逃げるのはやめにしたい。
もう逃げる場所も、どこにもない・・・

ヘシクは、瀕死のポンゲを抱きかかえ
雪山の中を逃走する。
しかし、途中ポンゲは息を引き取る。
ポンゲの遺体を埋めるヘシク。
「ヘチョル、そこで俺を見ているのか?」
ヘシクは空に向かって語りかけ、銃を一発撃ち放つ。
しかし、その銃を聞きつけた機動隊に、ヘシクは銃殺される。

END

自分の罪をヘチョルが被ったと思われるようなポンゲの告白。
自殺する前に嫌疑をかけられた殺人も、
ヘチョルの弟分クァンハンが、「俺がやったんだ」と自白していた。
ヘチョルは、借金に追われながらも、
故郷の寝たきりの祖母にも、毎月送金していた。
ヘシクはようやく弟ヘチョルを理解したのだろう。





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