4人の食卓  The Uninvited  
 原題:4人用食卓 4인용 식탁(サイリョン シクタク) <2003>

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4人の食卓

結婚を目前に控えたインテリア・デザイナー、カン・ジョンウォン(パク・シニャ ン)は、地下鉄で幼い 子供たちの死を目撃してからというもの、新居の食卓に子供たちの幽霊が頻繁に現れ始める。

そんなある日、ジョンウォンは、大通りで突然眠ってしまう嗜眠症 (しみんしょう)を持つ女チョン・ヨン(チョン・ジヒョン)に出会う。

ヨンも自分と同じように幽霊が見えるとい う事実を知ったジョンウォンは、彼女が自分の恐怖の秘密を解くことができると直感する。しかし、ヨンを通じて自分の過去に潜む恐ろしい秘密を知ってしまっ たジョンウォンは、更に激しい混乱に陥る。そして、ベールに包まれたヨンの謎が明らかになるにつれ、彼女に対して疑いを持ち始める。

【予告編】

監督 イ・スヨン <2003>4 人の食卓、 <2004>20のアイデンティティ

出演

チョン・ジ ヒョン

出演作品一覧

パク・シニャ ン(朴新陽)

<1996>ユリ、<1997>プワゾン、 <1997>モー テルカクタス、 <1997>手紙 The Letter、 <1998>約束
<1999>ホ ワイト・バレンタイン、 <2000>キリマン ジャロ、<2001>インディアン・サマー
<2001>達磨よ、遊ぼう、 <2003>4人の食卓、<2004>ビッグ・スウィンドル! 
<2004>達 磨よ、ソウルに行こう、<2007>ま ぶしい日に

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【レビュー&ネタバレ】
「4人用食卓」という、ちょっと ダサいタイトル。
「食卓」というものは、家族の団欒の象徴だということでつけたらしいわ。
そして、「4人」というのが、家族を現す上で最も一般的な数だと。
映画を観ると、英題の「The Uninvited(招かざる者)」が
一番しっくりくるように思うけれど、
急成長を遂げる中で失いつつあるものを、監督は描きたかったんでしょうね。
その結果がもたらすものを・・
人間の精神に与えるもの。
それがこの映画の狙っているものなのよね。
ミステリー仕立てのこの作品。
人間は「事実」ばかりを追い求め、
この映画を観た方も、「事実」ばかりに目を向けると思うわ。
だから、「消化不良で意味のわからない映画」で終わった方も多いでしょう。
けれど、この映画は「あるものが与える『結果』」を描こうとしているの。
だから、決して「意味のわからない映画」ではないのよ。
映画の中で「同心円」が小道具として出てくるわ。
最初は、ジョンウォンの婚約者ヒウンが皿に描き、
その後は事故で死んだ男の子が書いた絵に先生が書いてくれた評価。
この同心円というのは、精神学的に用いられることもあるわ。
「精神の状態は身体に反映し、身体の状態は精神に影響する」
主人公ヨンも、極度のうつ病による「嗜眠症(しみんしょう)」を抱えており、
ジョンウォンやジョンスクは、過去の記憶を封印してしまった。
人間は精神の限界を超えると、身体に反映する。
この映画は、人間の精神の脆さや、
その脆さが与える影響・・
そういった心理的、精神的なものを描いているの。
ミステリーばかりに着目しちゃってる方は、
その辺りに気づかないでしょう・・・
そこに着目してみれば、かなり奥の深い、考えさせられる作品だわ。
シナリオで受賞している作品なんだけれど、
本当に、見事なシナリオだと思うわ。

確かに、「ミステリー」としては、
観客が求めている結果ではなかったと思うわ。
mocaも、「こうして欲しかったぁー」と思ったけれど、
そもそも「狙い」が違うのだから、仕方ないわ。
それでも、先が気になって、気になって・・・
ミステリーとしても、なかなか面白かったわ。

mocaは、劇中でヒウンがジョンウォンに語った話が好き。
「好き」というか、軽いショックを受けたわ。
すごく意表を突かれるような引用をするのよね。
はっとさせられたわ。
ネタバレになるとつまらないでしょうから、見えない色にしてありますわ。
知りたい方だけ、↓薄い黄色の文字をマウスでドラッグして読んでください。

  ある村がありました。
  その村人たちは、深い 信仰を通じて固く結ばれてい ました。
  村では、日照りが続 き、
  村人たちは、みな集 まって何時間も祈祷を捧げまし た。
  村人たちの願いが届 き、雨が降り出しました。
  けれど、大勢の村人の 中で傘を持っていたのは、
  たった一人の子供だ け。
  「祈祷が終わったら雨 が降るから傘を持っていかな きゃ」
  そう考えたのは、たっ た一人の子供だけだったので す。

どう?
mocaはかなりズシリときたのだけど。
この監督、ちょっと気になるかも。
すごく面白い映画ではないのだけれどね。


チョン・ジヒョン大好きなmocaは、
彼女がなぜこんな作品に出演したのか理解できなかったのよね。
韓国の人気女優たちは、ホラーやら、スリラーやら、
みんな出演しているけれど、なぜ?という感じで。
特にこの作品は、若いのに「疲労感漂う」女性なのよ・・
なので、チョン・ジヒョンちゃんは、ほぼノーメークの上、
目の下にクマまで作っているという・・
彼女の美しさが・・・と、かなり残念で・・・
それでも、「あぁ、やっぱり可愛い」とか思うんだけれど。
前作「猟奇的な彼女」のキャラから脱したい。
それで選んだとかいう話を聞いて、
俳優たちの思惑と、視聴者の思惑は違うのね・・
と、実感しましたわ。
ものすごい数のオファーから選んだ作品なんだもの、
無意味に出演したわけじゃないのよね。


では、moca的解釈を。
ネタバレし放題ですので、未視聴の方はご注意くださいませ。

ある日、地下鉄で寝過ごしてしまったジョンウォンは、
終点のアナウンスで目覚める。
慌てて下車するが、扉が閉まった途端、
中に二人の幼い女の子が取り残されていることに気づく。
電車は回送電車となり、倉庫へと向かっていった。
翌日、ニュースでその二人の女の子が死体で発見されたことを知る。
倉庫内で死亡したのではなく、
運行中に死亡したということだが、
自分が声をかければ助かったかもしれない・・・
ジョンウォンは罪の意識に苛まれる。
その日以来、ジョンウォンのリビングの4人用の食卓に、
二人の姉妹の幽霊が現れるようになった。
そんなある日、精神科の病院の改装を請け負ったジョンウォンは、
そこで若い女性ヨンに出会う。
帰り道、大通りで突然気絶するヨンを目撃するジョンウォン。
そして、実家の教会で、再びヨンと再会する。
ヨンを自宅まで送り届けるジョンウォン。
なんと、ヨンはジョンウォンと同じアパートに住んでいた。
アパートが目前に迫ったところで、
車に轢かれた猫を目撃したヨンは気絶してしまう。
仕方なく自分の部屋に連れ帰るジョンウォン。
ヨンは目を覚まし、部屋を出てく時にジョンウォンに言った。
「食卓で寝ている子供たちを、部屋で寝かせてください」
ジョンウォンは耳を疑った。
ヨンにも子供たちの幽霊が見える?
彼女が自分をこの苦しみから救ってくれるのでは?と、
ジョンウォンはヨンに助けを求める。

ジョンウォンは改装中の病院で、みなが帰った後
こっそりヨンのことを調べる。
ヨンのカウンセリング中の録音テープには、
猫が嫌い。赤ちゃんの泣き声にそっくりだから・・
そして、ある日自分のアパートから投身自殺した女と目が合った
という、奇妙な告白が収められていた。
その話を夫は信じなかったと。
落下速度から考えて、有り得ない話だと。
人間というものは、経験したこと全てを信じるわけではない。
受け入れることができることだけ信じるのだと、医師に話すヨン。

ヨンはホテルで突然気絶する。
持っていたジョンウォンの名刺を見た従業員から、
ジョンウォンに連絡があり、ジョンウォンはヨンを迎えに行く。
ヨンは、ジョンウォンに告白する。
自分の母親は霊媒師だったのだと。
ジョンウォンは、7歳以前の記憶がないことを告白する。
「本当に知りたいですか?」
前にも同じような人がいた。
その人は真実を知ってからというもの、とても苦しんでいた。
それでも知りたいですか?
ヨンは透視能力でジョンウォンの過去を探る。

ジョンウォンは幼い頃、近所の子供が轢き逃げされるのを目撃した。
トラックの下敷きになり、運転手は子供を排水溝に隠して逃げた。
ジョンウォンは幼い頃、父親に虐待されていた。
ある日「学校に行きたい」と言ったばかりに激しい虐待を受け、
ジョンウォンは一家心中を試みる。
父が酒を飲んで眠った後、練炭を部屋に運び入れる。
妹だけは助かるように、狭い箪笥に押し込めた。
しかし、それが悲劇を招いた。
火災現場からは、父の遺体と妹の遺体が運び出された。
自分だけが助かった。
ヨンの助けで、あまりにも辛く封印してしまった記憶を呼び覚ましたジュンウォン。
耐え難い真実に苦しむジュンウォン。
一方、ヨンは友人ジョンスクの裁判に出廷していた。
ヨンの子供とジョンスクの子供が
ベランダから落とされ、殺害されたのだ。
多数の証言からジョンスクは有罪になるが、
ジョンスクが精神に異常をきたしていたということで、
医療病院に送還されることになる。
その途中、ヨンの姿を目にしたジョンスクは、
興奮しながら「ヨン!」と叫ぶと、そのまま地上に落下し死亡する。
妹からヨンの子供が死んだと聞かされたジュンウォンは、
翌日の新聞で、ヨンの事件とジョンスクが死んだことを知り怯える。
父に「私は父さんの本当の息子ですか?」と、詰め寄り、
何が真実なのか混乱し、ヨンを避け始める。

* * * * *

では、ここからは結末までの謎をまとめましょう。

○ジョンウォンはジョンスクの事件を知り、なぜ怯えたのか。

 ジョンスクの死と、ヨンの子供の事件を知り、
 ジョンウォンはヨンを疑い始める。
 病院のヨンのカウンセリング中の録音テープから、
 ヨンが「赤ちゃんの泣き声に似ているから猫が嫌い」
 と言っていることを聞いており、
 ヨンが自分の子供を殺し、その罪をジョンスクになすりつけるために
 嘘の記憶を植えつけたのじゃないか?
 父は自分を「実の息子」だと言い、
 ヨンへの疑いが深まる。
 実際、父と妹を持つジョンウォンは、
 自分がジョンスクのように錯乱し、
 父と妹を殺してしまうのではないか?という恐怖を抱いたことも考えられる。

○ヨンの夫は、何を疑っていたのか。

 ヨンが自分の子供を殺害したのではないかということ。
 「投身自殺した女性と目が合った」などという有り得ない話から
 ヨンの精神状態を疑っていた上に、
 事件の証人の一人であるアパートの管理人から
 「秘密を知っている」と言わんばかりに脅迫されていたから。

○ヨンの夫の「なぜ、あのことを話さなかったんだ?」とは?

 ジョンスクが母親の肉を食べて生きながらえたこと。
 「投身自殺した女性と目が合った」と主張するヨンの言葉
 を夫に否定され、
 「あなたは私のことを疑っている。嘘じゃない」
 とヨンは主張するが、
 「嘘じゃないなら、なぜジョンスクが母親の肉を食べて
 生きながらえた・・ということを話さなかったんだ?」と、突きつけた。

○ジョンスクはなぜヨンを恨んだのか。

 ヨンが自分に罪をなすりつけたとも考えられるが、
 それなら、法廷で否認しない理由が見当たらない。
 自分に「母親の肉を食べて生きながらえた」という
 封印された記憶を教え、自分の子とヨンの子も、
 母親の肉を食べて生きながらえようとしていると錯乱し
 子供を殺してしまったジョンスクは、
 知らずにいれば・・・
 と、真実を教えたヨンを恨んだ。

○嗜眠症 (しみんしょう)になるほど、ヨンは何に苦しんでいたのか。

 ジョンスクのためを思って、封印された記憶を教えたのに、
 忌々しい事件を引き起こし、また、逆にジョンスクから恨まれることになった。
 自分は真実を話していても、誰も信じてくれない。
 他人とは違うという、孤独感。

○ヨンはなぜ命をかけてまで証明しようとしたのか。

 昔は、「母と自分」の二人だった。
 たった「二人きり」だった。
 「私達は同じものを見たじゃないですか」
 と、ようやく自分を信じてくれる人間。
 同じ苦しみを共有できる人間に出会えた。
 なのに、ジョンウォンにも疑いの目を向けられ、
 避けられ始めた。
 耐え難い孤独を味わってきたヨンにとって、
 ジョンウォンは「唯一」の理解者であり、仲間であり、友達であり、
 唯一の救いだった。

○飛び降りたヨンと、ジョンウォンは目が合ったのか。

 これは「目は合ったのかもしれない」というだけ。
 この映画では、そこを重要視していないので、描かれていない。
 ポイントは、ヨンが命をかけてまで証明しようとしたと いうこと
 そのことで、ジョンウォンはヨンの言ったことを「真実」として受け入れる。
 ヨンの言葉に<受け入れられない事実は事実じゃない>とあるように、
 ジョンウォンが受け入れたことで、初めて<事実>になった。
 子殺しは真実を知り神経を失調したジョンスクのしたことであり、
 自分が幼い頃、父親と妹を殺してしまったということも事実であると。
 ジョンウォンが受け入れたということは、
 今までニコリともしなかったヨン(最後は幽霊)が
 「おいしい?」と、まるで勝ち誇ったような笑みを浮かべることでわかる。
 「いや、まだ熱いよ・・」と、ぎこちないながらも、
 親しい友人のように答えるジョンウォンから、
 <真実>を受け入れたジョンウォンにとって、
 ヨンだけが 同じ苦しみを知り、分かち合える
 たった唯一の人間(幽霊だけど)になってしまったことがうかがわれる。

最後は、ヨンとジョンウォンの目が合ったシーンを描いた方が
ずっとわかりすくて、スッキリするのだけれど、
この映画自体が、<心理的>なことを描いているので、
ヨンの取った行動により、ジュンウォンが怯えながらも真実を受け入れるという、
人間の心理を鋭く描いているラストがふさわしいと思うわ。
この映画は、あらゆるシーンで人間の心理を巧みに描いていて面白いわ。


以上、mocaの謎解きでございました。






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